「んにょあぁぁ〜〜っっっ?!!!

 奇声を上げ、しゃかしゃかと言う擬音が聞こえそうな走り方で、横島は逃げ惑っていた。

「なんなのっ、このどこかの遺跡荒しじみた状態はっっ?!

 隣を走る高音も、現実逃避気味に声を荒げる。
 なにせ背後からは、ゴロンゴロンとか言う鈍重さではない勢いで、彼等を押し潰さんと巨大な岩が迫ってきているのだ。

「…まぁ、場所が場所ですし」

 不本意ながら横島の腕に抱えられている夕映が、どこか他人事とばかりに呟く。

 図書館島、その地下の奥深く。
 相変わらずココは、インディでジョーンズな異常地帯だった。

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その47   
 
逢川 桐至  


 

 

 

 第一の目的地である地底図書室に到着して、もう一度小休止。
 上層部以上のアレな景色に、しかし呆れを浮かべたのは横島と高音、愛衣くらいなものだった。

 そもエヴァ達は、そんな事に興味を向ける気など欠け片も無い。 木乃香と夕映に至っては、これで2度目。 しかも一泊とは言え滞在すらした事が有るのだから、この非常識な光景に違和感なぞ感じる筈も無い。

「魔法使いってさぁ…」

 ただ一点、本棚さえ本棚さえなければ、まだそれでも納得は出来るのだ。
 だが、何処の未踏地かと言わんばかりの光景のあちらこちらに突き立った本棚が、どうしようもなく浮いている。 地下北壁でも思った事だが、水に直接触れさせると言うのは、本の取り扱いとしておかしすぎないだろうか。

 それに関しては同意せざる得ない高音と愛衣も、何をどう弁解していいのか判らず口を開こうとしては閉じるを繰り返す。

「そんなつまらん事を気にしてる暇が有ったら、さっさと次への手掛かりを捜せ」

「そうですね。
 先程の出口は滝の裏でしたから、そう言うベタな場所と言う可能性は大きいかと。 但し、私たちが最初にここに落とされて来た直後には、あの出口には全く気付きませんでしたから、何らかの魔法での隠蔽が計られてる事も考えに入れておくべきかと」

 その夕映の言葉に、木乃香も「そやな〜」と同意する。

「しかし虱潰しにとなると、少し時間が掛かりそうですね」

「確かにそうね」

 苦笑混じりの愛衣の言葉に、高音もげんなりとしたモノを隠せずに頷いた。
 幾重にも流れる滝に隠された向こうや、木々の彼方に広がる空間は、かなりの広がりを感じさせる。

 もし今、ネギの持つ地図が有ったなら、そんな苦労の必要は無かった。
 だが、彼の手元に有るソレの事をこの場の誰もが知らない以上、仮定の話でしかない。 エヴァがもう少し腰を落ち着けて取り組んでいたならば、のどか越しに夕映が情報を掴んできた可能性も有っただろう。 この瞬間にもエヴァに会おうと行動しているネギたちと合流出来れば、直接その情報を得られた可能性だって有っただろう。

 だが既に動いてしまっている今、それは言っても詮の無い事でしかなかった。

「取り敢えず私の感知機能と、横島さんのアーティファクトを使えば、多少の手掛かりは得られるかと」

「そうすっしかないか…」

「ケケケ… マァ、頑張レヤ」

 気怠げにカードをバンダナから取り出した横島に、茶々丸の頭にしがみ付いたチャチャゼロのやる気の無さそうな声が掛けられる。

「夕映は茶々丸に、木乃香は横島に付いて、それぞれ当たりを付けろ。
 連絡は横島のカードを使え。 広いとは言えこの程度なら、固まっていれば使えるだろう」

 エヴァはそう指示すると、更に高音たちへお前たちは好きに動けとばかりの視線を向ける。

「えっと… じゃあ、お姉様、私はこのかお姉様の方へ」

「判ったわ。 なら私はあの娘たちの方に」

 ほんの少しだけ顔を見合わせると、二人はそう言ってそれぞれの方へと足を向ける。
 わざわざ別行動を取ったのは、きっとエヴァは動かないだろう、と見たからだ。 実際 彼女は、相変わらず置かれっぱなしになっていた椅子に踏ん反り返って腰を下ろすと、さっさと散らばれとばかりに視線を向けてきた。 頭にチャチャゼロを貼り付かせたまま。

 高音が夕映側に向かったのは、まぁ、昨夜の一騒動の所為だ。
 夕映としても、この組み分けは有り難いと思っていた。 こちらも一昨日……彼女の体感での話だ……のハルナとの一件で、色々気まずいモノを抱えている。 気持ちの整理、と言うより、理性的な落とし所の確定が出来るまでは、たとい一時なりとてその方が有り難い。

 ちゃんと見ていないようで、エヴァもその辺 しっかりと考えては居るのだろう。

「では私たちは南側へ行くです」

「したら、ウチらは反対やな」

 それなりに広い空間の中、2チームしかないのだ。 闇雲にでは効率が悪過ぎるのは、言われるまでもなく判っている。
 が、ココの経験者であり、また有る意味探索のプロである二人は、その為に連れられてこられた様なもの。 普段の活動とは毛色が多少違うが、ぐずぐずしていても始らない。

「そっちも気を付けてな」

「アナタもいつもの馬鹿な行動で、メイたちの手を煩わせないで下さいね」

 お小言混じりの返事に「へいへい…」と横島が手を振り返し、それぞれ決めた方へと歩き出す。

「そろそろ出しとかんとな。 あであっと、と」

 歩きながら思い付いてバンダナから取り出したカードをヒゲメガネ……とは最早言い切り難いが……に変える。 それを躊躇無く被ろうとして、横島は下からの視線に気が付いた。

「ん? どした?」

「なぁ、なぁ」

「おう?

「ウチが被ってもええ?」

「ぅ゛え゛ぇっ?!

 おずおずと尋ねた木乃香の言葉に、愛衣が思わず悲鳴を上げた。

「メイちゃん、どないしたん?」

「い、いえいえ。 な、なんでもないんです、このかお姉様」

 嬉しそうに横島からその物体Xを受け取る彼女に、両手を振って気にしないでとアピール。
 愛衣にとっての罰ゲームも、興味深い不思議グッズでしかないのだろう。 こちらもまた躊躇無く被ると、視界を切り替えては「ほわぁ」とか「ふわぁ」とか嬌声を上げている。

 一頻り楽しんだと見て、横島は木乃香に声を掛けた。

「もういいか?」

「ウチ使ぅてたらあかんの?」

「いやダメって言うか、折角かわいいのにそんなもんで隠しとくのは勿体無くてなぁ… なんかスゴイ目で見られてるし…
 まぁ、んだから、木乃香ちゃんは怪しいトコ指示してくれよ」

 苦笑いで答える辺り、横島としてもあまり嬉しくないビジュアルなのは確かなのだろう。

 誉め言葉もあってか、木乃香も割とあっさりソレを彼へと返す。
 そして周囲を見渡して、付けていたアタリの場所へと指を差した。

「…ん。 したら、まずあそこからゆこか」

「あぁ、あの無意味に意味ありげな洋館ですね」

 滝の向こうの少し離れた先に建つ古びた洋館へと、3人は歩き出した。

 

 

 

 一方。 夕映たちもかつて過ごした一帯を抜け、順調に歩を進めていた。

「まずは何処へ?」

「そうですね。 前回、今エヴァさんが居る辺りからこの辺くらい迄は調べ終えてますし、あの水道の向こうをと思ってるです」

 茶々丸の問い掛けに、そう夕映は答えた。
 眼前を遮るその壁の向こうは、天井から落ちているらしい水の柱が覗いており、飛沫とまではいかないが霞の様に周囲を湿気った空気が取り巻いている。 時間単位で居続けたら、じっとりと服が濡れそぼちそうだ。

「…水道って… まぁ、そうなのかも知れないけれど」

 いわゆるローマ式の構造物……っぽいモノは確かに見えている。 一定距離で開けられた開口部から水が流れ落ちている、木々の間に渡されたあの石造りの橋……と言うか壁は、水道と呼ぶのが正しい筈だ。
 …例によって桁や側面の部分が本棚だったりするので、違和感はやはり凄い事になっている。 ここまでくると、デザインポリシーでやってるとしか思えない。 一々本に魔法的保存処理を掛けているとしたら、『無駄な』としか言い様が無いが。

「ともかく、でしたらあの上へ行きましょう」

 そう言って高音が呪文を口遊むと、3人の足元に広がった影が彼女たちを乗せたまま立ち上がる。

「どうしたのですか、綾瀬さん?」

「いえ… いつになったら、私はコレくらいの事がこう簡単に出来るようになるのかと」

 望み過ぎと言ってしまえばそれまで。
 だが高音は、夕映がどうして魔法を手にしようとしているのかを知っている。 それを思えば、気持ちは解るのだ。

「焦ってもいい事は無いわ、今だって充分以上に駆け足なんだから」

「えぇ、それは解ってるですが…」

「それに、私とてまだ修行の身。 突き詰める気なら先は遥か彼方よ。
 今は目的をもって力を溜める時。 そうでしょう?」

 なぜ親身になってくれるのか、まだまだ浅い付き合いでしかない高音の気持ちは判らない。 それでもその言葉は有り難いと、視線に感謝を載せて夕映は頷いた。

「ところで、そこに降りても大丈夫かしら?」

「…あ。 そうですね、罠の警戒は必要だと思うです」

 一歩踏み出せば水道の上。 そんな所での問い掛けに、一瞬考え込むもすぐにそう答える。
 上層階同様、要らん所に要らん罠、なんて造りになってる可能性は低くない。 茶々丸に視線で問い掛けると、彼女はその辺りを凝視した後小さく頷いた。

「不自然な凹凸が何ヶ所か見受けられます。 欺瞞情報の可能性は有りますが、考慮は必要でしょう」

「そう。 じゃあ、今はこのまま向こうの確認を」

 水道からその向こうへと意識を移す。

 そこに在ったのは、不自然な円形の広がり。
 真っ直ぐに落ちる水柱の真下、丸い池の中央にお椀の底と底を重ね合わせた様な形の石組みの建造物が鎮座していた。 その形と流れ落ちる水とで、どこか砂時計を思い起こさせられる。

 水を受け止めている上のお椀状の部分の側面からは、両翼へとやはり水道らしき石組みが延びていた。 それらのどちらもが、この周囲を囲う水道へと繋がっている。 周囲を囲む水道からは更に支線が四方へと延び、更に大外を囲む木々の隙間へと消えていた。
 もしかすると、このフロアの水源はそもそもこの水道網なのかも知れない。

 下のお椀部分には、向かって正面に入り口と思しき門。 御丁寧に開け放たれている。
 それが常時そうなのか、それとも何かを関知してか、もしくは時間設定が有ってなのか、遠目で見ただけではその理由は窺い知れない。

「あからさまに怪しいわね」

「とは言え、調べる必要は有りますね」

 高音の指示に従って、影の巨体は3人を乗せたまま、そこへと踏み込んだ。

 

 

 

 エヴァが腰を落ち着けているのは、確かに面倒くさいと言う思いから でもあるが、他にも理由が有った。
 2つに分けた探索チームの、連絡係としてのソレである。

 高音たちの実験もあり、横島のカードを介した念話が普通でないのは判っていた。

 自身も調べた結果で言えば、極めて魔力的に希薄な仕様だと言う本来有り得ない特徴を持っている。
 その為 一般的なモノと比べ、感知され難く妨害され難い。 いや、魔法的にはほとんど無理と言っても言い過ぎではあるまい。

 その反面、到達距離がかなり短いと言う欠点も有している。 単体同士であれば1kmを下回るのだ。
 ただし、複数有るカードが互いに干渉し合える程度の近距離に纏まっていると、召喚などの他の機能も含めて有効距離は多少改善されるの事も判っていた。

 島の地下と言う事も有り、また経験談から判断するに広くても2〜3km四方が精々だと思われるが、いざバラけて繋がりませんでしたでは意味が無い。
 つまりはその為に、エヴァはチャチャゼロと自身とを中央に配したのだ。 チーム分けも、それぞれ最低2枚ずつカードが有る様に考えての事。
 敵陣への秘密裏の侵入調査で有る以上、リスクを減らし楽をする為に必要な手配のつもりだった訳だ。

『エヴァさん』

 何故か冷えていた缶ジュースを手近に有った冷蔵庫から取り出し、寝そべってちまちま飲んでいたエヴァの下に、夕映の念話が響いて来たのは地底図書室到着後1時間半が経とうとしている頃だった。

「オウ、ナニカ怪シイモンデモ見付カッタカ?」

 自身では額に宛えない為、横島よろしく頭にカードを括り付けたチャチャゼロが虚空へと問い返す。 サイズの所為で、どこかキョンシーの様にも見えるのはご愛敬。

『ええ、軽く調べた限りではかなりの規模ですし、茶々丸さんも当たりではと推測されてます。
 メイたちも呼んで、一緒に調べた方が宜しいかと』

 一人、このヨコシマネットワーク(仮)を利用出来ない茶々丸の代わりに、そう高音が伝えてきた。

「ふむ…
 横島、木乃香、愛衣。 そっちの状況はどうだ?」

 提言に対し、もう一方の現状確認を求める。

『おう、エヴァちゃんか…
 そうだなぁ、外ればっかだぞ』

『そやな。 なんや言わなあかんよぉなん、まるでのぉやったえ』

『…って、あの罠の群れは、おかしな物じゃないんですかぁ?』

 疲れた様な愛衣の言葉に、反応したのは高音。

『罠って、メイは大丈夫だったの?』

『あ、はい、お姉様。 ほとんど横島さんが私たちを助ける代わりに引っかかってて…』

『だめナリニ役ニ立ッテルッテ訳カ、ケケケ…』

『って、誰がダメだ、誰がっ

『横島さんは凄いえ。 こうぱぁっと来てな、ぶぅんってやってやなぁ…』

『…このか、それじゃ何がなんだか判らないですよ』

 まるで脳内チャットルーム。
 頭の中で無節操に響き回るのは頂けない。 まして、エヴァは聖徳太子ではない。

「いい加減黙れ、貴様らっ!!

 だから好き好んで中間点に入ったとは言え、エヴァの機嫌が傾いだのも仕方の無い事だろう。

「とにかく、横島っ。 貴様は二人を連れてとっととこちらと合流しろ。
 夕映。 現在地は?」

『エヴァさんが動いてないでしたら、そこからほぼまっすぐ南に1kmちょっとのところにある水道橋と言うか水道壁の更に先、水の流れ落ちる特徴的な構造物の内部です』

「ふむ、判った。
 ならば、お前たちは一旦外へ出て、周囲を警戒しつつ私たちが合流するのを待て」

 

 

 

 立ちはだかる壁を越えるのに手子摺った。 …主に、横島が。

 何せ愛衣一人では、どんなに頑張っても木乃香とエヴァしか連れて飛べない。 通信用アンプ兼アクセサリーでしかないチャチャゼロは言わずもがな。
 結局、横島は一人 罠に掛かりつつ自力で乗り越えるしかなかったのだ。

「つか…ハァハァ、エヴァちゃん…飛べんのか?」

「魔法薬が勿体ないだろうが」

「…さいで」

 女王様なのは判っていたコト。 横島は諦めて息を整え出した。
 実際、何か有った時の為、エヴァの手持ちは出来るだけ保持せねばならないのも事実。 魔法薬の数が、イコールで彼女の使用可能魔法数なのだから。
 美神の下での荷物運びを当初の彼がやっていたのと、理屈的にはそう変わらない。 だから、納得してだと言うのも有る。

「あ、あそこにお姉様たちが居ます」

「ホンマや。 夕映たちは無事みたいやな」

 池を越えた向こうに佇む姿を見付けて、二人はホッとしたように笑う。

「なぁ、これも俺、泳いで渡るのか?」

「別に問題有るまい」

「あるっちゅうんじゃっっ
 高音ちゃわ〜んっ、へるぷ〜〜」

 溜め息を吐きながらも、仕方なく高音はその声に応じてすぐに飛んで来た。
 僅かに20mちょっとでしかない。 跳ぶのは無理でも、使い魔に乗って飛ぶなら大した距離では無かった。

「なんなんですか、一体」

「高音も〜ん、エヴァちゃんが酷いんや。 わいにここ泳いで渡れって…」

 あぁ確かに言い出しそうだな、と彼女はちらりとエヴァを一瞥した。
 そんな視線を気に留めた風も無く。

「その後、状況に変わりは無いか?」

「えぇ、今のところは。
 奥に関しては進んでみないと判りませんけど」

「ナンダ、血飛沫アゲルすぷらったナ展開トカネーノカヨ」

 真面目な遣り取りが、しかしエヴァの頭に貼り付いたチャチャゼロに砕かれていく。
 御札の様に貼られた額のカードの絵柄も、ソレを助長していた。

「なぁなぁ、ゆえたちも待っとるし、早よ行かん?」

「そうだな、時間もそうは無い。 急ぐとするか」

「って言うか、いい加減 腹減ってきたんだが…」

 号を掛けた所での泣き言に、エヴァの眉が傾く。

「その辺の雑草でも喰っておけ
 そいつはほっといてさっさと行くぞ」

 しかし、もう6時近く。 内部時間で朝8時過ぎだった別荘を出て来てから、そろそろ3時間ほど経つだろう。
 その間ずっと探索行だった事も考えると、横島の腹具合もけしておかしくない。 ましてこの数日と言うもの、きちんと3食を摂る生活が続いていたのだ。

「したら横島さん、はい」

 そう言って木乃香が差し出したビスケットを、彼は男泣きに貪った。
 そんな彼をそのまま掴ませ、高音は続けて飛び立つよう使い魔に指示を出す。 エヴァと木乃香を乗せた愛衣の箒もそれに続いて飛び立った。

 

 

 

 既に一度通った道と悠々進む茶々丸の先導で入った内部は、一種のジャングルもどきだった。

 開いた門を潜ったすぐ目の前に、広がる微妙な高さの緑の壁。
 夏場の行楽地に作られる迷路の様な、そんな状態が外周部を占めている。 そして道なりに辿り着いた中央には、やはり円形のホールが広がっていた。

 天井には、上のお椀との接点部分なのだろう位置に嵌め込まれた、分厚く大きな硝子状の何か。 それ越しに、上から溜まった水を抜けた光が降り注いでいる。 時折、魚影が差す事もあり、コレ単体でも充分入場料が取れそうだ。

 ど真ん中にはステージの様に盛り上がった、半径2mほどの石舞台がある。 その妙に滑らかな表面には、なにやら魔法陣の様な模様が刻み込まれていた。

「なるほど、わざとらし過ぎるが当たりの様だな」

 その呪式に移動関係のパターンを見出して、エヴァは誰にともなく呟いた。

「つか、バリバリに魔力纏ってるしなぁ…」

 場違いにも程がある仮面の横島もそうボヤく。

 どちらにしても、こんなものを調べられそうなのはエヴァくらい。 高音には少々荷が重かった。

「転送陣か… 座標の指定は…」

 そう呟きながら、エヴァが一歩踏み出した瞬間だった。

「むっ…」

 突然周囲を包んだ暗闇に、彼女の金の眉がぴくりと動く。

 あえて言うまでもない、何らかの魔法の発露。
 だが、害す意図でない事はすぐに判った。

『お久しぶりですね。 まぁ、初めての方もいらっしゃるようですから、改めてご挨拶を。
 私の名はクウネル・サン…』
「アルっ やはり貴様かっっ!!
『…エヴァンジェリン。
 せめて自己紹介くらいは、最後まで待って欲しいものですねぇ』

 舞台の上に現われた暗い空間に、ぼやっと浮かび上がった影。
 何人かには見覚えの有る、胡散臭い笑みを湛えたフード姿の男の顔がそれだった。

「貴様の戯れ言なんぞ、私の知った事では無い」

 忌々しそうに答えつつも、そうと見えぬ様にその小さな身体を身構えさせた。
 つまらない……と言うか、しょうもないとしか言い様の無い被害を、少なからず受け続けてきた彼女なのだ。 警戒してし過ぎる事は無い。

 そんな緊迫した空気に押されてか、残る面々は口を閉ざしてその遣り取りを見守る。

 尤も、茶々丸は主の主導する話に口を挟む事など有り得ないし、横島は元々興味を持っていない。 木乃香と夕映はお付き合いでの探索こそが目的で、高音と愛衣はそんな彼女たちの護衛のつもりでしかないのだ。 話に混ざる必要と言うか理由が、そもそもまるで無いのだが。

『まぁ、いいでしょう。
 ともあれココでの私の名は、クウネル・サンダースです。 なので、そう呼ばれなければ答えませんから あしからず』

 にこやかな宣言に、チッと音を発てて唾を吐き捨てる。

「いつから麻帆良に涌いていたか知らんが、貴様に訊きたい事が有る」

『ナギの事、ですか?』

 ぬけぬけとした聞き返しに、エヴァの額に太い筋が走った。

「そうだ。 ヤツは無事か? 今、何処にいる?」

『そうですねぇ…』

 変わらず何を考えてるか掴ませない笑みで、視線を逸らして考え込む。

『本当は、もう少し時間を置きたかったんですが。
 まぁ、い…』
「さっさとゲロせんか、アル」

 苛立たしげな言葉に、しかし開き掛けた口は閉ざされ、ぷいっと横を向く。

「貴様…」

 険悪な空気を振り撒くエヴァに、茶々丸と木乃香、愛衣らがおろおろとしだす。
 その雰囲気を払ったのは、クウネルだった。

『はぁ…
 ま、いいでしょう。 エヴァンジェリン、あなたの要求に答えるのは吝かではありません』

「なら…」

『ですが、簡単に答えてしまうと私がつまらない』

 オイ、と横島のツッコミが入る。
 反射的なソレに笑みを浮かべつつ、彼は言葉を続けた。

『一つゲームをしましょう。
 なに、簡単な事です。 今回来た面々揃って、3時間以内に私の下に辿り着いたらあなたたちの勝ち。 制限時間以内に揃わなければそちらの負け』

「随分、貴様に有利なルールだな」

『まぁその通りですが、私も勝ち負けのドキドキは楽しみたいですし、既に起動している常設の仕掛け以外には手を付けません。 勿論、私自身が動くのもNGで。 且つ道は基本的に一本道です。 そんなところでどうです?』

 逆に甘過ぎて不審が募る。
 しかし暫し考えて、エヴァは乗る事にした。 結局、欲しい札は相手の元に有るのだ。 虎児を得るには仕方が無い。

「ちっ、仕方有るまい」

『では、そう言う事で。
 チキチキ暇人猛レース、始まり始まり〜』

 そう宣言した瞬間、この場の全ての面々の足元に、それぞれ丸い穴がパカっと開いた。

「ちょ、またか〜?!!

 愛衣や木乃香、夕映らの同感の思いを乗せた横島の叫びは、落ちて行く勢いに小さくなり。
 そして、その場には何事も無かった様な沈黙が満たされた。

『さてさて、どうなる事やら』

 他人事の様な呟きを残して、クウネルの姿もこの場から消え失せた。

 

 

 

 【続キ…マダ?】

 


 ぽすとすくりぷつ

 え〜、お久しぶりです。
 遅くとも7月終わりにはくらいのつもりで居たのに、えぇその通り、暑さに負けた訳です… orz
 また、久しぶりと言う事もあって、全然指が動かないしで、見事にズルズルと(泣) また暑さがぶり返すらしいんで、続きは頑張りますとしか言えないです、ごめんなさい(__)

 それはさておき、書いててふと悩んだ事。
 初期の背景とかから図書館島って、世界樹から西乃至北西側のつもりでいたのだけど… 湖を向こうに夕日が手前に影を落としてるトコとか、湖の向こうから朝日が登ってるシーンとかが有って、正直 手持ちの資料じゃ方角が色々とわやな事に(^^;
 私の勘違いならごめんなさいですが、3Dで背景起こししてたりしてる所為もあってか、頻繁に影が無くなったり変な方向に影が有ったりとかしてるんですよねぇ、原作(苦笑)
 魔法界でのアレソレは、ある程度見なかった事にするとしても、こっちでのは色々悩ましい所。

 …何よりまだ4/27の夕刻だと言うのが、一番悩ましい(爆) 5月末って何時だっけ?(T_T


 
 

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