「そうだなぁ… エヴァちゃんは、どこまで聞いてるんだ?」

「異世界からやって来たと言う事と、アシュタロスがどうこう言う良く判らん戯言が少し、後は貴様のココでの生活ぶりくらいか」

 渡された報告書を纏めればその程度。
 『生活』の中には、彼の奇矯な行動やら性癖やらも当然含まれている。

「生活ぶりって、ストーカーかよ?」

「阿呆。
 正体定かならぬ怪人を、無闇に信用する馬鹿が何処に居る?」

 じろり、と視線を向けられ、横島は愛想笑いを浮かべた。
 実際、考えてみれば怪しい事は、自身 否定のしようが無い。 この際、怪人扱いはスルーの方向で。

「そりゃまぁ、そうかもしんないけどさ。 俺にだってプライバシーとか……前から無かったような気もしなくもなかったりもするけど…
 ま、ともかく、ここに来る事になった切っ掛けからだな」

 何となくかつてを思い返してしまってすぐにソレを振り払うと、以前タカミチや学園長に語った言葉を繰り返す。

 いきなり飛び出てきたのは、雷で時間移動を起こしただの、ソレを文珠で『避』けてしまっただのと言う、人間界どころか魔法界の常識的にすら奇怪な話。

 まずそれに、エヴァは頭を抱えた。

 

 

 


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その42   
 
逢川 桐至  


 

 

 

 常夏の陽射しが周囲を明るく照らす。
 尤もこの場所は、高さ故にか吹き続ける風と大きめの屋根が落とす影とで、適度に居心地の良い状態を保たれている。
 朝食後のまるまる午前中一杯を、木乃香と夕映はそこでの鍛錬に当てて過ごした。

「もう少し、で手が届きそうな気がするですが…」

「そうなん? ウチは、こう、もどかしぃゆぅか…」

 例によって茶々丸が運んできたランチを前に、思わず二人は溜め息を吐いた。
 何分、二人にとって魔法の習得は、これから先の人生を左右する大きなファクターなのだ。

 始めたばかりだと言うのに落ち込む夕映を、エヴァはらしからぬ苦笑で見詰めた。

「焦るな。 本来なら三ヶ月や半年掛けるものなんだぞ。 ブーストしているからと言って、そうそう巧くいくものか。
 まぁ、早く掴めるに越した事が無いのは事実だが、1日や2日でどうにかなるものじゃないぞ」

「ま、そりゃそうだろうな」

 その言葉に、横島も頷いた。

 魔法を霊能に置き換えて考えれば、簡単でないのは彼にだって判る。
 美神の胸に煩悩を集中して霊力を送り込んだりと、結構早い内から横島は霊能の片鱗を見せては居た。 だが、自発的に発揮出来るようになったのはと言えば、それはGS試験以後の事になる。 それとても、心眼と言うサポートが有っての話なのだ。
 まるで経験の無い感覚を、一から身に付けようと言うのである。 少なからず時間が掛かるのは当然だろう。

 ちなみに、もうカモの姿はこの場に無い。
 24時間が経過するなり、兄貴の方も気掛かりだからと言って、さっさと別荘を後にしたからだ。

 ここで見聞きした事は、僅かなりとてネギの今後にも影響するだろう。 なるべくソレを早く聞かせておいた方がいいと、そう判断したのだ。
 カレはカレなりに自身の主の為に手を惜しまない。 …同時に自分の実益を追ったりもするけれど。

 そんなカモと共に横島もさっさと帰ろうとしたのだが、こちらはエヴァに引き止められた。 モルモット兼 雑役夫として。
 どの道、戻ったところで休日の昼間。 愛衣が来るかも知れないが、他に何かしなければならないと言う予定も無い。 ここに居れば黙ってても美味い食事が出て来るので、まぁいいか、と彼にしても居残る事には特に抵抗は無かった。
 元々自堕落な質である。 楽が出来るなら、それはそれ。

 ターゲット範疇の女性が居ない事だけは、少々ならず不満に感じている様だが。

 そんな物足りなさはまるで感じさせずに、茶々丸の給仕で次から次へとお代わりを平らげている横島を、微笑ましそうに木乃香は眺めた。

「ようけ食べたるなぁ。 男の人はそうやないとな、うんうん」

「つか、喰える時に食う習慣が出来てんだよ」

「へぇ… したら、ウチの残りもさらえる?」

 自嘲気味に溜め息を零す彼を見て、木乃香はまだ残っている自身の皿を差し出した。

「それくらい食べないと大きくなれないぞ。
 木乃香ちゃんには、是非ともナイスバディになって貰わんといかんしな」

「もう、ややわぁ。 いけず言ぅ」

 にやけた視線が語る内容に、恥ずかしげに身を捩ると皿を手元に戻す。
 別に食べきれないと言う訳でもなかったのか、すぐに彼女は残りの山を啄ばみ始めた。

「はぁ、お気楽な…
 いっそ、横島さんの霊能とやらでなんとかならないですか?」

 相変わらずの他人事っぷりに、やはり炒飯の山を崩しながら夕映がボヤく。

「おいこら、綾瀬夕映。 そう何かをしたと言う訳でもない癖に、いきなり楽をしようとするんじゃない、全く…
 そもそもこいつとて出来な… そう言えば、今、文珠は幾つ有るんだ?」

「ん? あの次の朝に出来てた1つだけだな。
 明日には、もう1個出来てんじゃねぇかな」

 忙しなく動かしていたスプーンを止めて、宙を見上げるようにしながら答える。

 夕映に手持ちの全てを費やした翌朝、想定より若干早く次の一つが出てきていた。
 色々とショックでもあったエヴァと木乃香のキス2連発。 そして、その後に見る事の出来た巫女さんの群れ、のお蔭なのかも知れない。 所詮、ヨコシマはヨコシマ、と言う事か。
 その後も、高音のサービスシーンがあっただけで、ナニガ有るで無く経過しての今だ。

「となると、3日で1つくらいか」

「だいたい4日くらいだな。 まぁ、こっちじゃそんなに霊力使わないし、何より麻帆良は美人がいっぱいだし」

 鼻の下を伸ばしながら曰う彼に、エヴァの半目の視線が突き刺さる。
 横島の霊力源がナニかは聞き出していた。 非常に突拍子もない話だが、普段が普段だけに彼が言うと妙に説得力が有るソレを。

 また、霊力消費が少ないと言うのも事実。
 夜間警備とて頻繁に何か起きると言う訳ではなく、何事も無く終わる事の方が多いのだ。 まぁ美神事務所での除霊作業ほどの頻度なぞ有ったら、兼業教師や生徒なぞ悠長にやっていられる筈も無い。 それこそ、常に出席日数に問題を抱えていた 、かつての横島の様に。

「その、もんじゅ、と言うのは?」

「ん? あぁ、コレ」

 夕映の疑問に、現物を取り出して答える。
 見覚えがバッチリ有るソレに、彼女のみならず木乃香も反応した。

「あのお守りやぁ…」

 ちょっと悲しげなのは、夕映の時に見て尚、映画村でのアレで発動して消えたのだと気付けていないから。
 実家で落ち着いた時にはもう無かった為、映画村で失くしたとばかり思っていたのである。 何せあの騒動だ。 その際に紛失したと思ってしまっても不思議は無い。
 続く誘拐されてからのハプニングの連続の中、次に横島の手に有ったソレを見た時には、目の前の夕映の事で一杯々々だった。
 その後は色々有って、場の流れにすっかり忘れてしまっていたのだ。

「横島さん、ごめんなぁ… ウチ、気ぃ付いたらなくしててん」

「このかのお守りなら、あの時あなたと桜咲さんを守ってくれたですよ」

「えっ、そらどない…?」

 文珠の事を知る筈も無いネギと刹那とに、あの現象に対する推測を聞かされていた為、その事に気付いていなかったのだ。
 そんな彼女に、夕映は手短に説明した。 アレが、文字通りにお守りだったと言う、その事を。
 それを聞いて視線を向けると、横島も照れ臭そうに頷く。

「そっかぁ…
 あん時も横島さん、ウチらの事守ってくれてたんやね…」

 嬉しそうに微笑む木乃香に、穏やかな空気が流れた。

「と、それはそれとして…
 その『もんじゅ』には、頂いたお守りと違って文字が入っていない様ですが?」

「言ってなかったっけか…」

 質問に徒然と答える。
 文字を篭める事で、ソレに応じた不可思議を現実のものとする奥の手の事を。

「それはまた、何と言うかまるで魔法ですね…
 ところで、これはどうやったら文字が入るですか?」

 光る珠をしげしげと眺めつつ夕映が訊く。

「こんな感じだ」

 そう言って、横島は掌に乗せた文珠に次から次へと文字を入れては書き換えて行く。

「ほわぁ… これ、ウチでもでける?」

「ん〜 多分無理じゃないか?」

「それはどう言う事です?」

 木乃香の問いに返された否定に、やはり自身もやってみたかったのだろう夕映が、疑問を口にした。
 それには、横からエヴァが口を挟む。

「私も気になってやってみたが、無理だった。
 尤も、考えてみれば当然だな。 これは一見アイテムの様にも見えるが、実際にはこの男の能力なんだから。
 干渉する為には、当然同種の能力……こいつの言う所の霊能が必要だと、そう言う事なのだろう」

「あぁ、なるほど。 それは道理ですね」

 思念を関知して勝手に書き換わるのなら、ただ持ってる最中にすら反射的思考で書き換わってしまいかねないし、持っている全てが同じ反応をしてしまう事にもなりかねない。 横島の様に、思考があちこち飛び火するようなタイプなら尚更の事。
 木乃香も事あるごとにお守り袋に手を当てていたが、あの時の効果を思い返す限り書き換わっていたと言う事は無いだろう。

 実際のところ、書き換え自体は意図的になされるものだ。
 当然、書き換える為のインターフェイスを持っている事が、その前提になっている。

「とは言え、今お前らが苦心している魔力の扱いと同じで、何かの弾みで使える様になるかも知れんがな」

 この世界の魔力同様、誰もが持ち得ながらも、意図的に使う為には何らかの条件が必要なチカラ。
 霊能力と言うモノを、エヴァはその様に推測していた。

「そぉなんかぁ…
 ウチにも使えたらえかったのになぁ」

「ま、必要な時にはこの男が何とかするさ」

「いや、まぁ、木乃香ちゃんたちみたいな将来楽しみな美少女にだったら、頼まれりゃ何でもしようと思うけどさぁ…
 勿論、ナイスバディな美女の為なら、頼まれんでも何でもするが」

 便利屋だのセイギノミカタだのと言った、無償奉仕のメンタリティは持ち合わせていない。 彼自身にとっての利益……眉目良い女性の歓心を買う事などが、横島を動かす原動力なのだ。

「はぁ… その辺、どうにかならないものですか?」

「そうは言うが、こいつがこうでなければ、綾瀬夕映、おまえはまだ砕かれた石のままだったかも知れんぞ」

 そうエヴァに揶揄されて、夕映は思わず顔に手を当てた。

「う… いえ、そうかも知れませんが…
 もう少し、こう…」

 助けられておいてなんだが、しかしそれでもと、そう思わずには居られない部分が横島と言う少年には有る。 恩だの成した行為だのが、それでも当人の全てを肯定させるかと言えば、やはりそんな事は無い。 彼のそう言う部分は、どうにも夕映の感性的な好みから大きく外れるのだ。

「それに癪な事だが、はっきり言って魔法でアレを再現するのは、けして容易じゃないしな」

「ほーなんは?」

「…おい」

 感歎混じりの溜め息に、最後の一口を頬張りながらの疑念を上げた横島へと、胡乱な視線が向かう。

「なにか? きさまの居た所では、アレが誰にでも簡単に出来る事だとでも言うのか?」

「いや、けどなぁ…」

 キツい目を向けられ、誤魔化す様に頭を掻く。
 人間には難しいかも知れないが、神・魔族にならその限りではあるまい。 そちらに少なからず知り合いの居る横島には、そんなに凄い事だとは思えないのだ。

「と言うことは、ソレは横島さんが霊力と言うもので創ってるんですか?」

「おう。 時間が掛かるけど、その分 色々出来て割と便利なんだよな」

 あっさりとした首肯に、魔法だけでなく霊能への興味が夕映の中で湧き立った。
 どちらもが常識の中に生きてきた彼女には、非常識にも非常識に過ぎる。 だが同時にその不可思議さが、夕映の知的好奇心を煽るにあり余っていた。

「その辺を含め、その霊能と言うモノについても詳しく伺いたいですね」

 目をキランと光らせて夕映が身を乗り出すと、木乃香もニコニコと頷いた。

「そやな。 グレちゃんの話以外も聞きたいし」

「グレちゃん? 一体何の事です?」

「昨夜 話してもろたんやけどなぁ…」

 茶々丸が遅滞無く配膳したデザートのカットメロンを、啄ばみ啄ばみ昨夜聞いた話を話し出す。
 何だかんだとボヤキながら、エヴァもそれに耳を傾けていた。

 

 

 

 兄貴、との声に、ネギはそちらへと振り返った。

「カモくん?
 と、あ、そ、その、のどかさん。 こんにちは」

 肩にカモを乗せた朝倉の横で、ちょっと所在無げにしていたのどかとへ声を掛ける。

 学園長への見舞いと、形式的な報告とを明日菜と共に済ませている間に、彼女にのどかの呼び出しを頼んでおいたのだ。
 カモの事は、その途中で目敏く見付けてくれたのだろう。 カレもまたネギの所へ戻ろうとしていたのだろうし。

「こ、こんにちは、ネギ先生。
 きょ、今日は、その、お日柄も良く…」

「えっと、その、そうですね…」

 赤くなって頓珍漢な遣り取りを繰り返す二人を、朝倉は苦笑しながら見守った。

 考えてみれば、あの大事の後、顔を合わせたのはこれが最初だろう。
 落ち着いてしまえば、あの晩のキスは互いに意識し合うに足るファクターだ。 ファーストキスだったのどかは当然、明日菜との経験が有るネギにしても、緊急避難的な仮契約の儀式と言う心の準備無しのソレだっただけに色々と考えてしまう所は少なくなかった。

 こう言う初々しさは、自身には無いものだけになんとも微笑ましい。

「…で、アスナ、用事はもう終わったの?」

「……
 …え? ええ」

 鈍い反応に、チラリと明日菜を見遣る。
 照れてるような拗ねてるような、なんとも言い難い表情で、頭を振ったり頭を抱えたりと奇行に走るその様子に、朝倉はあっけにとられていた。

「どうしたんだ、アスナの姐さんは?」

「さぁ? なんか今日は、会った時からちょっとおかしいのよね。 どうしたのかしら?」

 小声でとは言え、すぐ横でこんな会話をしていても、まるで気に留めた様子を見せないのだから、本格的におかしい。
 2年の月日を共にしたクラスメートの事だけに、強く違和感を感じていた。

「まぁ、それはそれとして…
 ネギくぅん、そろそろいいかな?」

「うぇ? あっ、はい」

 痒くなるようなお見合いを続けていたネギへと声を掛ける。

「本屋ちゃんも呼んできたし、これからどうするの?」

「あ… それなんですが…
 これから先、僕に……と言うか魔法に関るつもりなら、聞いておいて欲しい事があるんです」

 さっきまでの微笑ましい慌てぶりが消え失せ、彼の眼差しに力が篭る。
 元より整った顔立ちの少年だ。 のどかや明日菜のみならず、朝倉すらも一瞬見惚れた。

「ん〜 だったら、場所、移した方が良くない?」

 それでもすぐ首を振って意識を切り替えると、そう提案する。
 人も疎らな日曜の午後とは言え、ここは自身も通う学校の敷地内だ。 どこに一般人の耳目が有っても不思議は無い。 ただでさえ、校内では有名人なのだ、ネギは。

「そう、ですね。
 そうしたら何処がいいかな…」

「部屋でいいんじゃないスか、兄貴。 このか姉さんは、あの分じゃしばらく帰って来ないだろうし」

「そうなの、カモくん?」

 朝から居なかったのに何故知ってるのだろうと、首を傾げる。
 途端に年相応の子供らしさが戻るから不思議だ。

「真祖の姐さん、なんだかんだでやる気んなってたし、夕方くらいまではあそこじゃねぇかと」

「えっ? このか、エヴァちゃんとこに居るの?
 って言うか、エヴァちゃん、家に居たの? なら、意地悪しないで、出て来たっていいのに」

 訪ねて反応が無かったから、留守だろうと思って後回しにしたのだ。

「なに? どーしたのよ、アスナ」

「それがさぁ。
 こいつが弟子入りするんだって、さっきエヴァちゃん家に行ったのよ。 けど、誰も出て来なくて、しょうがないからって帰って来たってぇのに」

「あぁ、そりゃ、仕方ねぇっスよ。 姉さん。
 あん中ぁ、一度入っちまったら外の事なんか、全然判んない造りっスから」

「む… なによ、それ」

 聞いて尚、微妙に納得し難いかの様に明日菜がふてくされる。

 その横で、話にまだ理解が追付かないでいたネギが首を捻り々々尋ねた。

「それで、このかさんがエヴァンジェリンさんと何を?」

「あぁ、兄貴は聞いてないんスね。
 なんでも、このか姉さんとゆえっちとが真祖の姐さんに弟子入りしたらしくって、さっきまで俺っちも拉致られてたんスよ」

「えっ、ゆえも?」

 そう尋ね掛けながら、のどかは今朝の呼び出しがソレだと言う事に気が付いた。

「おう。 このか姉さんもだが、逃げるにゃあちょいと踏み込み過ぎちまってるからなぁ、あの嬢ちゃんも…」

 関西呪術協会本部襲撃事件において、夕映が見せてしまった存在感は……それがたとい張りぼてであろうとも大き過ぎた。
 カモもまた、その事を正確に認識している一人である。 故に、その言葉には、やはり痛ましさ混じりの重みが有った。 無論、立場が立場の木乃香に関しても、それは言うまでも無い事。

「その辺の話も含めて、とりあえず落ち着ける場所に移ってからにしない?」

「そ、そうですね。 じゃあ、一旦部屋の方へ行きましょう」

 色々と心乱されながらの一行は、のろのろと寮への道を歩み出した。

 

 

 

 ろうそくの明かりがゆらゆらと揺れる。
 前の晩に横島が呼び出された様な、しかしあそことは別の部屋。 ソコにノックの音が響いた。

「オ連レシマシタ」

「うむ。 ご苦労」

 大きな水晶球を乗せたテーブルを前に、ワイングラスを揺らしてエヴァは大仰に従者を労った。

「さて、桜坂刹那。 そこに座るといい」

 茶々丸以上に無表情な従者の一人が部屋を後にし、居心地悪げに入り口の側で立ち尽くしている刹那へとそう促す。
 言われるままに腰を下ろすのを見て、エヴァは用件を切り出した。

「で、お前はどうするつもりだ?」

「どう… とは?」

 おずおずと尋ね返す様子に、フッと鼻で笑う。

「全く面倒な事だが…
 お前の所為で、近衛木乃香は落ち着いて修行に取り組めていない」

 そう言って指し示す水晶球の中には、木乃香の姿が有った。
 おそらく刹那の名を呼んでいるのだろう。 あっちをうろつきこっちを彷徨い、物陰を覗き込んでは声を掛け、ゴミ箱の中や小窓の外へ顔を突っ込んだりしている。

 何をしているのかとツッコミたい気持ちを抑えて、エヴァは更に言葉を続けた。

「だが、綾瀬夕映ならまだしも、あいつにはあまり無茶な事は出来んからな。
 私にしても色々と考えねばならん訳だ、判るな?」

 頷く。
 木乃香には、なんだかんだ言った所で、立場と言うものがある。 爺馬鹿・親馬鹿がどうこう言う以前に、生まれとしてのソレが組織の中に在っては けして小さなものたりえない。
 敵対がデメリットにしかならない現状では、エヴァとて気を払わざる得ないのだ。

 そのくらいの事は、刹那とて理解している。

「別にここから出て行け、などと言っている訳ではない。 おまえが目に付かなくなった所で、それでどう変わると言う話でもないしな。
 それに、私とてお前の状況には共感も覚えるし、些少なら手を伸べてやっても構わんとも思っている。
 だから訊いておく。 お前がこの先どうしたいのかを」

 そう聞かれても、しかし困る。
 どうしていいのか判らない、と言うのが偽りなき心情なのだから。

 何とも答えられなくて、刹那はただ俯いた。

「ふむ。 まぁ急き過ぎても詮なき事か。
 ま、いいだろう。 ここに居る間に関しては、それなりに便宜を計ってやる。 何かあれば、これまで通り茶々丸を通せ」

 初日よりこちら、ここへ入るのやここでの食事など、茶々丸に色々融通して貰っている。
 完全なエヴァの管理下にある上、外界と完全に隔離されているのだ。 彼女たちの手を掛けさせないと言うのは、実質 不可能である。

「…はい、ありがとうございます」

「だがな」

 くいっとグラスを空けて、エヴァは刹那を見詰めた。

「私にとってはともかく、お前たちには時間は無限ではないぞ。
 命なぞ簡単に失われるものだ。 そうなってから後悔しても遅いと言う事は忘れるな」

 それはヤケになっていた頃の自身への自嘲か。
 嘘だ嘘だと思いつつの数年。 そして、噂すら聞こえて来ない事に諦め、今更ながらに人の生の短さに、脆さに気が付いた。 重ねてしまう部分が有るだけに、その言葉はけして軽くない。

 そんな様子を、どう取ってか。

 判っています、と言う言葉を飲み込んで、刹那はただ頭を下げた。

 

 

 

 【続きですか? 私は関与していませんが、それで良ければ】

 


 ぽすとすくりぷつ

 鍛錬シーンは書く事無いんでカットカットカット〜(笑) だって、魔力供給した後、ひたすら杖持って『火よ灯れ』って言い続けるだけなんだもん(^^;

 しかし、刹那は失敗した。 いつまでもうじうじうじうじと… まぁ、私の刹那観が内罰気味の妄想体質だったりするので、吹っ切れるとこまで持ってかないとどうにもならんのです(泣)
 ギャグとコメディを主体にした作品同士のクロスなんだから、もっとお笑いとかおちゃらけに流したいんだけどなぁ…
 ジツリキが足んないから、安易なシリアス方面が簡単に侵食してくるったら(T_T


 
 

前へ
戻る
次へ

 

感想等頂けると、執筆の糧になります。 お手数でなければお願いします。
  

タイトル

お名前をお願いします。
(任意)

差し支えなければ、メールアドレスをご記入下さい。
(任意)

ご感想・コメントをお願いします。

入力内容を確認後、下のボタンを押してください