まだ早い朝の陽射しがカーテン越しに差し込む室内に、少し高い電子音でハーレムノクターンが鳴り響く。

「ふぁあぁぁぁぁぁ…
 誰だよ、ンな朝っぱらから」

 ごそごそとベッドから手が伸びる。
 続けてぼさぼさの髪。

 寝ぼけ眼で、横島は早朝の電話に口を開いた。

「ふぁい、横島…
 あぁ、おはよーさん…
 はぁ? 今から…? いや、ちょっと… ちょっと、茶々丸ちゃん…」

 あ、と言って、呆然と通話の途切れた携帯を見遣る。

「まだ7時すぎじゃんか…」

 京都から帰って来た翌朝。
 横島自身は、2泊2日の行程で大して疲れてる訳ではないが、そもそもギリギリまで寝ていたいクチの男である。 学校だっていつも遅刻ギリギリなのだ。 走ればそう掛らぬ距離に住んでいるのに。

「はぁ、しゃあねぇなぁ…」

 諦めた様に呟くと、のそのそと布団から出て立ち上がる。
 気の乗らない用件だが、こっちから頼んだ事もあるし仕方がない。 うーんと伸びをして、取り敢えずトイレへと向かった。

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その37   
 
逢川 桐至  


 

 

 

「それじゃあこのか、行って来るから」

「気ぃつけてなぁ〜」

 いつもの遣り取りで、朝の配達に向かう明日菜を見送る。
 踵を返してキッチンへ向かうと、彼女が帰って来た時の為に木乃香は朝の下準備に取り掛かった。

 一度布団に戻って、明日菜が帰って来る頃に起き出しても間に合うのだが、ルームメイトになってよりこちら、木乃香も習慣の様に付き合って寝起きしている。 何だかんだ言っても、家族のようなものなのだ、彼女にとっての明日菜は。
 だから、木乃香にとっては当たり前の事だった。

 ちなみに、ネギはまだ寝ている。
 夜遅くまで何やらやっていたらしいので、仕方あるまい。 何よりまだ10になるやの子供である。
 逆にカモは縄張りの見回りだとかで、明日菜より先に外へ出掛けていた。

「カモくんもその内帰ってくるやろし、今朝なんにしたろーかなぁ」

 べらべら喋るようになったオコジョを思い出しつつ呟く。

 少し悩んで、木乃香は煮魚を中心にした和食にしようと決めた。
 毎朝の事と ちゃちゃっと手早く作業を始め、中学生らしからぬ手際の良さで形崩れしないように仕上げる。 それを1つ1つ皿に分けると、ラップして冷蔵庫へ。 各自の朝食のタイミングが掴めない為、その時その時にレンジで温めれば済むように準備したのだ。

 その作業を終えると、更に丁寧に鍋などを洗い出す。

 やがてやる事が無くなると、木乃香はテーブルに腰を下ろした。
 あまり良くないのだが、手持ちぶさたに軽く焼いたパンと紅茶を口にする。 さてこの後どう暇を潰そうかと思案して、不意に彼女は立ち上がった。

「えっ? …あぁ、そやそや」

 そう呟くと、慌てて懐から一枚のカードを取り出す。 意匠は凝らされているのに、中央の絵と文字が全てを台無しにしているカードを。
 すぐに木乃香はソレを額に当てた。

『おはようございます。 どないしたん、横島さん?』

『あぁ、おはよーさん。 早くに悪いな』

 初めての普通の生活での遣り取り……勿論カードを介してと言う意味での、に少し紅潮して『もう起きとったしなぁ、別にえぇよ』と返す。
 たわいもない遣り取りを交えた後、彼女は切り出した。

『それより、なんや用なん?』

『あぁ、そうだった。
 それがなんかエヴァちゃんがさぁ、泊り仕度で木乃香ちゃんと夕映ちゃんを連れて来いって言うんだよ… で、寮のそばまで来たんだけど、考えてみたら二人の携帯も知らないしさ、どー呼び出したもんかと』

 その言葉に首を傾げた。

 ネギをと言うならまだしも、エヴァが自分と夕映を呼び出す理由にイマイチ心当たりが無かったからだ。 これは、詠春が近右衛門を通してからと考えた為、まだ彼女自身に話が通っていなかったからである。

『ま、ええわ。
 したら、ゆえ起きてるか確認してくるよって、待っとって貰えます?』

『あぁ、よろしく頼むな』

 会話を終えるなり、空になったカップをシンクへと運び、ととっと部屋に戻って今度は自分の携帯を手に取った。
 すぐ側の部屋なので直に行ってもいいのだが、日曜となれば今はまだ早朝の時間帯だ。 電話もどうかとは思うが、こればかりは まぁ仕方ない。
 短縮で登録した番号を押すと、コールの音を聞きながら少し待った。

 

 

 

「これも… これも… これも… これもっ。 これもっっ」

 がっくりと肩を落として夕映が呟く。
 ぺたりと座り込んだベッドの上は乱雑に散らかされ、彼女のショックの大きさを物語っていた。

 と、ソコに鳴り響いたのはホルストの木星。

 2小節ほど鳴った所で、夕映はのそりと自分の携帯を手に取った。
 この着メロは木乃香に割り振ったものだ。

「はい… おはようございます。 どうしたですか、このか?」

 こんな時間の電話に、ごそごそと起きてきたルームメイトの のどかとハルナが、彼女へと顔を向けた。

「えぇ。 いえ、起きてましたから別に。
 はぁ? なにゆえに… って、あぁそう言う事ですか…」

 何やら困惑気な夕映の様子に、二人は視線を交わした。

「なんだろうね?」

「さぁ… ネギ先生の事じゃなさそうだけど」

 何気なくの呟きに、ハルナの目が光る。

「もう、この娘と来たら、寝ても醒めてもネギ君の事ばかりなんだから〜」

「えっ?
 あ、そのっ、別に、そう言う意味じゃ…」

 無意識の発言に気付いて、わたわたと赤くなったのどかが弁解を始める。

 そんな二人に気付かず、夕映は話を続けていた。

「…はい。 丁度、私も訊きたい事があったです。
 えぇ、すぐに準備して… では」

「このか、なんだって?」

 一頻りのどかで遊んでいたハルナは、話が終わったと見て尋ね掛けた。

「ちょっと急ぎの用があるので、申し訳ないですが私は出掛けるです」

「えっ? ゆえ、どこか行っちゃうの?」

 一人で抑えきれる様な状態ではないだけに、のどかの声はどこか懇願調だ。

 ハルナもまた、人手が足りなくなる事もあって、じっと夕映を見詰めている。
 言ってしまえば簡単な話、旅行で描いていた原稿の仕上げを、今日明日で仕上げる予定だったのだ。 彼女の手伝いは、二人にしてもいつもの事だし、それだけに何だかんだでアテにもしていた。
 しかも、来たる5日の即売会に合わせる事を目論んでいた為、時間が有るとは到底言えない状況。 3割の戦力減は小さくないのだ。

 その事は夕映も当然判っていた。
 とは言え。

「ごめんなさい。 私が頼んでいた事なので、向こうの用事も外せないんです」

 ぺこりと頭を下げる彼女に、ハルナは気にし過ぎるなと苦笑した。

「麻帆良の印刷屋は、今月いっぱいなら何とかしてくれるだろうしね。
 とは言え、出来りゃ早く帰ってきて手伝ってくれると嬉しいけど」

 

 

 

『準備出来たえ』

「お、早かったな」

 直接頭に届いた木乃香の言葉に、所在無げに佇んでいた横島の表情が明るくなった。

 ここが女子高の寮と言うなら、そりゃ気持ちも浮き立っていただろう。 抑え切れず吶喊していたかも知れない。
 だが、ナンパも出来ない中学生しか出入りしていないとあっては、ただただ居辛いもいい所だ。 下手に目の保養になりそうな粒まで混じっているもんだから、尚更に。
 しかも、通りすがりに時折向けられる奇異の視線が、向けて来るそのほとんどが女子中学生とあって、その事もまたガリガリと彼のハートを削っていた。

『んじゃ、入り口のそばで待ってっから』

 バンダナの下に入れたカード越しにそう言葉を送ると、よっこいしょ、と立ち上がる。
 そんな彼に、不意に背後から声が掛かった。

「このかお姉様に何の用なんですか?」

「って、愛衣ちゃん?」

 少し不機嫌そうな声に振り向けば、既知の顔と気付いてホッとする。

 彼のカードを介しての念話は、コピーとだけでなくマスター間でも繋がる。 と同時に、一定範囲内に居るカードの持ち主全てにも、満遍なく届いてしまう仕様だった。
 である以上、この寮に暮らしている彼女にも、木乃香との念話は届こうと言うもの。

「なんかエヴァちゃんが呼んでてさ。 で、夕映ちゃん連れて来て貰ってんだわ」

「ああ、エヴァンジェリンさんが…」

 こちらは理由に思い当たるだけに、納得も早い。
 夕映の弟子入りへの経過は目の前で見ていたのだ。 少なからず気に掛っていた事でもある。

 と、そこへ夕映の声。

「お待たせしました」

 視線をそちらに向ければ、寮の入り口から出て来る、それぞれ小さなバッグを持った二人の少女の姿があった。
 木乃香は淡いピンクのカーディガンに白いサマードレス。 夕映は、ひざ丈の黒いワンピースに同じく黒のハイソックス。 見事に対称的な色合いだが、共に素材が良いだけになんとも映える。
 もう少し育っていたらなぁ、と横島はいつもの様に内心で嘆いていた。

「あ、おはようございます、このかお姉様」

「愛衣ちゃんや〜 おはようさん〜」

 朝の挨拶を交わし合う木乃香と愛衣に、夕映もぺこりと頭を下げて混じる。

「したら、愛衣ちゃんも一緒なん?」

「い、いえ。 私は不審な男性が寮の前に居るって起されて、そしたら このかお姉様と横島さんの話が聞こえてきたんで…」

 その言葉に納得いった様に、木乃香と夕映が頷く。
 まあ、夕映は頷くだけでなく、言葉も零したが。

「横島さんでは不審者扱いも仕方有りませんね」

「おいこら、なんで俺だと仕方ないんじゃ?!

 食ってかかる横島に、彼女は半目で肩を竦ませると、フッと溜め息を零した。

「言ってもいいんですか?」

「くっ…」

 夕映の言葉に、心当たりがアリ過ぎて横島が怯む。

「まぁまぁ、ゆえもそぉ尖らんと…」

 そんな二人の間に入って木乃香が宥めるのを、ちょっとつまらなそうに眺めた後、愛衣は3人に声を掛けた。

「取り敢えず問題なさそうですし、私はそろそろ戻りますね。
 朝ご飯まだなんです」

「ん? そっか。
 じゃ、また明日な」

 そう声を掛ける横島に「はい」と答えて頭を下げると、愛衣は寮へと戻って行く。

「さて、さっさと行こうか。 エヴァちゃん、あんま遅いとうるさいだろーしな」

「そうですね」

 3人は、葉桜になった並木道の方へと、ゆっくり歩き出した。
 どこか嬉しそうに歩く木乃香が、横島の顔を覗き込むようにして問い掛ける。

「なぁなぁ、横島さん?」

「ん?」

「さっき、愛衣ちゃん、また明日って。 なんやあるん?」

 二人に歩調を合わせていた横島は、その質問に軽く逡巡して立ち止まった。

「ん〜
 ま、木乃香ちゃんたちになら、いっか」

「私が聞くと拙ければ離れてますが」

「いや、言い触らさなきゃいいよ」

 手を軽く振ってそう笑う。

「まぁ、ぶっちゃけた話、愛衣ちゃんや高音ちゃんと夜間警備やってんだわ」

 その言葉に一瞬怪訝そうにするも、横島のみならず愛衣にしても魔法と言う異能持ちだと思い出して、夕映は納得した。 ここ麻帆良が木乃香の実家と同じく魔法使いの拠点だと、その事を彼女は認識しているのだ。

 逆に認識の甘い木乃香は、心配げに訊ねた。

「そら、あぶなないん?」

 横島の事は頼りになると認識しているが、それでも愛衣は彼女から見て尚 年下の少女なのだ。

「いや、あんましそー言う事は起き…」
「ゆぉ〜こ〜しまぁ〜〜っっっ!!

 返事を遮って掛けられた突然の怒声に、木乃香と夕映がびくりと身を震わせた。
 対して、いつもの事だけに横島は、疲れたように顔をそちらに向けて溜め息一つ。

「なんだなんだなんだ、横島。 その態度はっっ!!?

「いや、おまいら、ホンっトに暇だな…」

 繰り返すが、そろそろ日が高くなってきているものの、休みの日だけにまだ早いと言える時間帯である。
 こんな時間にこれだけの人数が自然に集まる筈は無いから、横島に対する監視体制と何かあった時の連絡網が、彼らの中で確立されているのだろう。

「突然休んだかと思えば、女子中等部の修学旅行に紛れて帰って来やがって!!
「これ以上、貴様が無垢な少女たちへと毒牙を掛けるのを、黙って見過ごす俺らだと思うかっっ?!

 周囲を取り囲む中等部から大学部にかけてらしき男たちが、血涙流して「そうだ、そうだ〜」と唱和する。
 あまりのアレっぷりに、朝の散歩やジョギングを楽しんでいた人たちが、道から我先に消えていった。 ふだんとは異なる時間帯だけに、まだこの光景に馴れた人は そう居なかったらしい。

「な、なんですか、コレは?」

「いや、何と言ったらいいか…」

 異様な集団を目にし、思わず横島の影に隠れて呟く夕映に、額に手を当てて言い淀む。
 木乃香もほわわ〜と笑いながら、やはり彼に隠れる様に寄り添っているものだから、周囲のヒートアップはますます高まるばかり。

「問われて名乗るもっおこがましいがっっ」
「われわれはっ不幸な子羊たちをっっ」
「邪悪な狼のっ魔の手から守るっっ」
 み  な  し  ご  た  ち
「彼女無き漢達の会っっっっ!!

 轟く名乗りに合わせて、その背後にドドンっと土煙が上がる。
 色こそ着いていないものの、まるで戦隊ヒーローの名乗りの様だ。 …100人単位と言う規模故、どちらかと言うと悪の組織な気もするが。

 ちなみに、後ろの方には地に拳を構え苦笑している漢たちが居る。 どうやら、彼らが遠当てを地面に向けて効果の演出をしていたらしい。 何とも付き合いのいい事に。

「ちなみに、現在、絶賛 会員募集中っっ」

「部活かよっ!!

 思わず、横島がツッコミを入れた。

「学園側には、ちゃんと申請済みだっっ」

 …本当に部活動だったらしい。

 はぁ〜〜っと、その身も蓋もなさに、溜め息が零れた。
 そんな気力を根こそぎ奪われて行く彼の様子に、勝ちを確信したのか彼らの口上は続く。

「女子中等部の佐倉愛衣嬢やっ」
「ウルスラの高音・D・グッドマン嬢だけに飽き足らずっ」
「数々の美少女たちに、手を出し続ける貴様の所業っ」
「今日これまでと知るがいいっ」

 どうやら追いかけっこの常連組たちは、身元の特定が済んでいるようだ。
 と言うか、既にストーカーの領域に突入し掛かっているのではなかろうか?

「む〜
 横島さん、どぉゆぅことなん?」

 笑顔のまま、どこか不満を漂わせて、木乃香が尋ねる。

「ほら俺、3月の終わりにこっちに来たばかりで、ここの地理判んなかったから案内して貰ってるって、木乃香ちゃんには言った事無かったっけ?」

「…あぁ。 そないな話、前ゆーてたなぁ」

 図書館島を案内した時に、確かに説明を受けている。
 頬に指を当てて可愛らしく首を傾げながら、木乃香はあの時の愛衣の表情をなんとなく理解した。 何の気もない横島の口調は、なるほど親しくなってみると、どうにも悔しいモノがある。

「で、その最初の時にさぁ。 愛衣ちゃん、ウチの学校まで迎えに来ちゃってさぁ…」

 タハハ、と思わず苦笑い。

「あぁ、それでこの騒ぎですか…」

 夕映も話から、即座に理解した。
 あれだけ可愛らしい少女が直接男子高に迎えに来たとなれば、相手がこの男でなくとも嫉妬されるのは仕方なかろう。
 横島が中学生は射程範囲外だと聞いているだけに、珍しく彼を案じた響きがその言葉にはあった。

 まぁ、嫉妬する側からしたら、相手の都合など考慮の外。
 怨嗟の声は尚も続く。

「いつぞやの双子の小学生やっ」
「今日のそこの姉妹と言いっ」
「都内で4人もの女性を侍らしてお茶していたりっ」
「大学部のキャンパスでナンパしまくっていたとも聞くっ」
 
 後ろ二つが伝聞形なのは、武闘派の面子が視認したからだ。
 嫉妬派のグループと違って、彼らは横島とガチで遣り合いたいだけなので、あえて女性連れの時に襲撃するつもりは無いのである。 フェミニストも少なからず混ざっているし、脳筋なりに馬に蹴られる愚を知っていた。
 とは言え、集合が掛かれば どの道 気にしても始らないので、こうして集まって来る訳だが。

「色々と、なされてるんですね。
 と言うか、誰が姉で誰が妹ですか全く… ブツブツ…」

「ま、まぁ、それは置いといてだな」

 それぞれ別の理由で、プクっと頬を膨らませてる二人に、横島は愛想笑いを掛けた。

 そんな様子すら、嫉妬の眼鏡越しには いちゃついているようにしか見えないのだろう。
 周囲からの怒気は一気に脹れ上がり、叫ぶ様な宣言が向けられた。

「怨敵滅殺。 今日こそ、我等が天誅を受けよっっっ!!

「だ〜っっ ナニが天誅じゃボケ〜〜っっ!!
 逃げるぞ、二人共っ」

 叫び返すなり、『いつもの様に』二人を小脇に抱えて走り出す。
 声も無い夕映と、「早い早いわぁ〜」と喜ぶ木乃香を伴った追いかけっこが、今 始まった。

 

 

 

 ドドドドドっと地響きを上げて遠くなる集団が居なくなったソコに、二人の少女がスクッと降り立った。

「相も変わらず、でごさるなぁ、あの御仁は」

「やはり出来るアルか?」

 チャイナの古菲が、ラフなロングパンツ姿の楓へと尋ね掛ける。
 彼女が横島を初めて見たのは、つい4日前の晩なのだ。 その身体能力を目の当たりにしたのに至っては、今さっきなのである。

「拙者が初めて会った時には、あの伝で30分ほど山の中を走り回っておったでござるよ」

「む… なかなかの体力アルな」

 歳を考えると天才的と言っていい古菲であるが、そんな彼女にも彼の実力は判別し難かった。
 何せ、ナニカを習得している者の挙措が全く無いのだ、横島には。 姿勢の軸は不安定で、確かに身体こそ柔らかそうだが、その動きにもまるで理が無い。 いわゆる格闘技者のソレだけでなく、スポーツ関係者のソレすらも、なのだ。
 かと言って、実戦で鍛え上げられた戦士の気概も見当たらない。

 だがそうである故に、あの走りは不自然な点も多かった。

 如何に軽いとは言え、少女二人。 荷物と合わせれば80Kg近くになるだろう。
 なのに、足取りにソレだけの負担が見受けられない。 木乃香と夕映の15cm近い身長差を思えば、左右でのウェイト差もかなり有る筈なのだ。 しかし、それから生じる姿勢の偏りもまた見当たらない。
 古菲ならずとも、楓の目にすら異様な動きだった。

 それに。

「追いかけてる中に、見た顔が有るアルよ。
 それに後ろの方にいた人たちには、出来そうなのがたくさんいるネ」

 朝のトレーニング相手の何人かが混ざっていた。
 その面々だけでなく、そんな彼らより明らかに強そうな気配の面子も、だ。

「なかなかの練度の者が、確かに混ざっていたでござるな」

「楓もそう思うアルか?」

 こくりと頷かれて、うんうんと笑顔を零す。

 強い者と戦ってこそ。
 それはあの武闘派の面々のみならず、この少女にとっても最たる望み。

 そして、明らかに突き抜けた……とは言っても表に居る水準でだが……面々が、勝負を求めて横島を追い掛けている。 表情を見る限り、その筈だ。
 それはつまるところ、クラスメートを抱えて走るあの男が、彼らにそこまで求められる程 強いと言う事でもある。

「楓は、あの男に勝てるアルか?」

「横島殿に、でござるか? うーむ…
 ちゃんと戦っている所を見た事が無い故、何とも断言し難いのでござるが…」

 首を傾げるのは、戦っている姿を見た事が無い故、想像するしかないから。
 身体能力そのものは、間違いなく高い。 おそらく、こちら側に到達するレベルで、だ。 楓の隠形を容易く見破っていた事から、感知能力とかそう言うのも含めて。
 しかし、その動きからは、戦闘スタイルが何とも判り難いのだ。

 予想もつかない突拍子の無さこそが横島の真骨頂なのだから、当然と言えば当然。

「…まともに攻撃が入れば、何とかなるやも知れぬ。
 と言った所でござろうか」

 顎に手を当て、首を傾げ傾げに出てきた答。
 それに、古菲の片眉がぴくりと動く。

 彼女が知る限りで、ここ麻帆良の最強の一人なのだ、楓は。
 その彼女が、当てられるかどうか判らない、と、そう言うのである。 古菲の意気が上がらぬ訳が無い。

「それほど、アルか…
 ならば、私も一度勝負を申し込むアル」

「あの性格故、出逢いしなに襲い掛かるより、きちんと申し込む方が良いでござろうな。
 お主の見掛けなら受けてくれる可能性も小さくなかろうし、少なくともいきなり逃げられたりはしない、と思う」

 何度か顔を合わせてるだけに、そのアドバイスは的確だった。
 いっそ、自分や真名が付き合うのも手かも知れない、等と そんな事も考えている。 実際、その方が逃げられる確率は下がるだろう。 何せ、横島だ。

「そか。 楽しみアルな」

 本当に嬉しそうに、歳相応の笑みが零れる。

 バトルジャンキーに付け狙われるのは、最早 横島の運命と言ってもいいのかも知れない。

 

 

 

 【続きは… 神の思し召すままに】

 


 ぽすとすくりぷつ

 ちなみに、ネギはまだ寝てます。 もう暫くすると明日菜が帰って来て、2度寝に入るかなってくらいの所ですね。 彼らに関しては、次回辺りで触れられる……かなぁ?(^^;

 そりと、この話では夕映の部屋も のどかたちと一緒にしちゃってますけど、実際の所、部屋割りってどうなってるんでしょうねぇ? 明日菜・木乃香と亜子・まき絵、楓・鳴滝姉妹と千鶴・夏美・あやかの4部屋は描かれてますけど… 千雨はなんか一人部屋っぽいし、ハルナとのどかも会話からそうらしいってだけだし。
 そも、原作で出た寮の配置図。 小さいのを二人部屋、大きいのを3人部屋と見ると、1フロアあたりの収容人数90人ほどなんですよね。 描かれてた分で言えば、2学年4フロアで360人ほど。 だけど、明日菜たちの学年って最小でも570人近くいる筈なんで、それだけで7階層は必要な筈(苦笑) あの寮の規模だと、付属女子中の生徒だけでも同じ建物が3個は必要なんだが、そう言う設定なんだろうか? なら、学年単位で建物替えてもいいのにねぇ…(^^;


 
 

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