高く晴れ渡った空を見上げ、煙草を燻らせる。

 千草の身柄の取り扱いを巡って、あっと言う間に派閥間の折衝が始まってしまったのだ。
 尤も、肝心な部分の記憶消去は済ませたし、関係資料は一切を自分の責任で処分済みだ。 それを知れば、その内大人しくなるだろう。
 本山への襲撃自体はけして小さい被害だったとは言えず、各派閥の人材へも等しく被害は出されているから、擁護そのものはそう大きな声にはなるまい。

 細い目で見詰める京の町は、何事もなくそこにある。

 アレが解放されていたら、果たしてどうなっただろう。
 かつては盟友たるナギが居てくれたから、なんとか封印出来た。 だが、今回は…
 いや、昨夜の顔触れなら、それでも何とかしていたか。

 盟友の子と娘のクラスメートたち、なにより既知の女傑エヴァンジェリンが居るのだ。

 そして。
 義父から電話で聞き出した、彼の下に身を寄せていると言う、あの異能の少年。

 魔法を駆使して尚 達成の容易ならざる事を、ああも無造作にやってのけた異種へと改めて思考を走らせる。
 これからエヴァと共にやって来る彼に顔を合わせた時、内心の鬱屈を出すのは宜しくない。 一緒に来ると言う娘の、不興を買いたくは無いのだ。 ただでさえ離れて暮らしているのだから。
 願わくば、懐くより先に進まないで欲しいと思う。

 と、一瞬巻き起こった風が、紫煙を一筋の紐へと変えた。
 ブルっと身体が震えたのは、寒かったからか。

 腕にした時計を眺め、少し早過ぎたかと近衛詠春は独りごちた。

 

 

 


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その34   
 
逢川 桐至  


 

 

 

 それは姦しく、またバラエティ豊かな一団だった。

 10を越える人数の中、男は僅かに二人。
 しかもその片方は小学生くらいの少年である。 肩に乗せた白い小動物と、背負った長い棒とが微妙にアンバランスだ。 眼鏡の下から覗く顔は、幼いなりに整った白人系のソレ。

 女性の大半は、同じ制服を纏った傍目に歳もバラバラな少女たち。
 何かのアイドルグループの様だ。 それぞれがそれぞれに整った顔立ちを持つだけに、そのイメージを後押ししてする。

 もう二人、高校生くらいと中学生くらいの少女が共に居た。
 こちらは黒系統の私服で、だがその容貌はやはり整ったモノ。

「くくく…」

「なにを緩んだ顔してるんです」

 一体何の集まりなのか不明な百花繚乱の中、ヤボったい少年が、しかし一員としてその中に居るのだ。

 集まる嫉妬の視線は、それなりに横島の自尊心をくすぐっていた。
 ちなみに、昨夜のショックはもう引き摺っていない。 その後に見れた巫女さんたちのお蔭もあるが、自分から無理矢理したとか言うのではないし、何より気持ち良かったのは確かなのだ。
 それに、今朝は今朝で極上の胸を堪能出来た。 …途中で落とされた事なぞ、彼にとっては些細な事らしい。

 その上…

「いや、高音ちゃんみたいな美少女とのお出掛けだからな」

「な…」

 揶揄うなと眦を上げる。 慣れない率直な誉め言葉に頬を赤らめながらだから、そんな様子も常と違って可愛らしい。
 勿論、横島としては本気の発言だ。 口にするだけで行動に出ないのは、と言えば…

「しかも、いくら中学生とは言え、こうも美少女だらけだ。 これを喜ばんでナニを喜べと?」

 …と言う事が大きい。 未来の美少女予備軍に悪い評価は与えたくないのだ。
 尤も明日菜や刹那からは、既に胡乱な視線が飛ばされていたりするのだが。

「おぉ、お兄さん、目が高いね」

 ひょいっと二人の話に口をはさんだのは朝倉だ。
 ジャーナリスト志望だからか、ほとんど初対面同様の相手にも物おじしない。

「まぁな。 これだけ艶やかだと、手は出せんにしてもこれはこれで素晴らしい」

「ってネギくんも?」

「ヤローなんぞ、今は視界に入らんっ」

 ぎゅっと拳を握った腕を曲げて、力説した。

 すぐ側で空気扱いされたネギが、どう言っていいか判らない苦笑を浮かべる。
 相手がどういった人間なのか、それすらも聞き出せていないのだ。 エヴァにとなると、聞き出しに掛かるのも難しい。
 そんな彼を見て、明日菜もさすがに同情の視線を向けた。
 ここぞとばかりに彼の注意を引くのどかに、強くなったなぁ、と感慨の念を浮かべながら。

「なるほどねぇ。
 にしてもさ、なんで手ぇ出せないの?」

 昨夜だって、と、口に出さずに尋ねた。

 あのキス2連発は、しっかりとメディアにも残してある。
 だから、いかにも女好きとばかりのこの年上の少年が、喜ぶどころか却ってダメージを受けていた事を、彼女はレンズ越しに見取っていたのだ。
 それは、正直に言って不思議だった。

「いやいや、子供に手を出すようじゃ人としていかんだろう」

 ちょっとの動揺の後、返されたそんな言葉に、朝倉はにんまりと笑顔を浮かべた。
 その返事に、何人かがピクっと身動ぎしてみせたからだ。

 木乃香にしてみれば、昨夜のキスはそれなりの好意もあった上での行動だ。 子供ではない男性への、文字通りの口付けなのだから。
 恋とか愛とかそう言うものを判っているとは自身言い難いが、彼を好きかどうかと聞かれたら、好きだと言えるだろう。 それだけに、感情的にちょっとムっと来るものがあった。
 えっちぃなんもダメやけど、そやって気持ち読まんのもあかん思うえ、と。

 そんな彼女の様子に、結局付かず離れずの距離を保ってついて来た刹那が、こめかみをひきつかせて横島を睨み付ける。

 エヴァにとっては、単に珍しいおもちゃを自分のモノにしようとしただけの事。
 だが、だからと言って『女として論外』なんて扱いは、やはり腹に据えかねる。 自身は3桁の年月を経た大人の女のつもりなのだ。 横島のソレとは別ベクトルだが、最後まで自分を子供扱いし続けたナギの事を反射的に連想してしまったから、尚更に気に入らなかった。
 なんでこんなバカの事で、アイツを思い出さねばいかんのか、と。

 苛立つように横島を無視して、周囲へと視線を走らせたエヴァを、茶々丸は微笑ましげに見遣っている。

 高音と愛衣は、あの彼をしてソコまで躾た母親に畏敬の念と、どうせなら無軌道な行動全般を規制して欲しかったと言う憾み言とを抱いていた。
 堅い所の多い高音だが、眉目良い女性に対するアレな行動さえ除けば、横島に親しみを感じていない訳ではないのだ。
 懐いていると言っていい愛衣に至っては、言うまでもない事だろう。

 それだけに二人は思うのだ。
 もう少し。 もう少しでいいから、抑えてくれたらなぁ、と。

 まぁ、横島にそれが出来るくらいなら、そもそも彼女たちがお目付役になる事も無かったのだが。

「くぅ〜 これよ、これ」

 僅かな遣り取りが引き出した空気に、ハルナは喜び悶えて、やってのけた朝倉を親指立てて誉め称えた。

 早速スケブに何やら書き出した辺り、色々と刺激を受けたのだろう。
 ヨコシマな愛の修羅場劇場〜、とか、微妙に無視し難い呟きを発しながら、手を激しく動かし続ける。 …歩きながら、だ。

 慣れてる3−A勢はともかく、横島たちはドン退きだった。

「あぁ、そうそう…」

 怪しく眼鏡を光らせハルナが自分の世界に突入したのを見て、朝倉は横島たちに小声で話しかける。

「なんです?」

 内緒話だと理解して、高音も声を潜めて聞き返した。

「パル……あっちの逝っちゃってる眼鏡だけど。 ここに居る面子の中で、あの娘だけ一般人だから」

 その答に ぎょっとして、未だ異世界に居る少女へと高音は視線を向けた。

 この場の顔触れのほとんどは昨夜もいたから。 噂の子供先生の担当クラスだから、こんなにも魔法生徒が集められていたのかと変な感心と納得をしていて、一般人が混ざっていると言う可能性に全く気付いていなかったのである。
 そもそも彼女の想像と違い、そんな事を言い出した朝倉すら魔法生徒ではないのだが。

「バレないようにしないと、って事ですね?」

「そそ。
 それにあの娘、マズイ事に噂話とかが大好きなのよ。 聞くのも広めるのも」

 苦笑でのその言葉に、高音と横で話を聞いていた愛衣とが、ビシっと顔を引き攣らせた。

「したら、そこのハルナちゃんにバレたら、みんなオコジョ確定だな。 俺は無関係やのに…」

「私もそうなんないように動くけど、そっちも注意ヨロシク」

 ボヤく横島に、笑いかけてパチリとウィンク。
 そんな朝倉に一瞬見惚れて、彼の口から「くぅ、中学生やなかったら…」と呟きが漏れた。 彼女もビジュアルだけなら、おもむろに横島のストライクゾーンなのだ。

 騒がしくなった一行を横目に、夕映は昨夜の失礼な言葉を思い返し僅かな羞恥に身を捩りながら、今朝の のどかとの会話を反芻していた。

 

 

 

 のどかが落ち着くのを待って、部屋の外へ出た。
 ぐっすりと寝ているようだから、寝ているハルナの邪魔をしないようにとの気配りだったのだが、話を聞き終えてその配慮が正しかったと自身を誉める事になる。
 ともあれ、取り敢えず二人は朝の ひとけ
 ともあれ、取り敢えず二人は朝の人気の無いお風呂へと移動した。

 昨日の夕方にもここには入っている。 だが、改めて見るとなんとも豪勢なお風呂だ。 こんな朝から入れるのも、まるでホテルのソレの様だった。
 混浴騒ぎがなければ、きっと昨日の時点で充分堪能出来ただろう。 まぁ、今しっかり味わえているのだと、気持ちを切り替えた。

 桧張りだろう湯船の入り口から最も遠い端の方に歩み寄る。
 そこで、二人はゆっくりとお湯に身を沈めた。

 柔らかく湯煙が舞う。
 それを抜けてきた朝の柔かな光に、透明なお湯が宝石の様に輝く。

 その光が、ついでの様に水面下の自分たちの身体を浮かび上がらせた。
 見る者次第では、美しいと、妖精の様だと称賛してくれるだろう、1枚の名画のような光景。

 だが、その凹凸の薄い子供の様なスタイルは、彼女の、いや彼女たちのコンプレックスの一つだった。 多過ぎるのである、3−Aにはナイスバディの持ち主が。
 …夕映自身や鳴滝姉妹のような、逆に並外れた者たちも少なくないけれど。

 まじまじと見てしまった自分の身体に、思わず溜め息を吐く。

「もうちょっとくら…い…?」

「どうしたの、ゆえ?」

「い、いえ、なんでもないです。 気の所為です。
 そ、それより。 あの後、どうなったんですか?」

 首をブルブルっと振って、やおら夕映はそう尋ね掛けた。

「うん、あのね…」

 そう言って、のどかが話し出した内容。 それは、ある程度の非常識を想定していた夕映にも、口をポカンと開かせる態のソレだった。

 ──秘匿されているが魔法使いは実在し、担任の子供先生も魔法使いだ。

 まぁ、それはいい。 こんな不可思議な事件に、既に捲き込まれたのだ。 却って納得がいく。 ネギの事も、あの白い少年の言動から予想の範囲内だった。

 ──本人にも秘密にされていたらしいが、親友の木乃香は関西の魔法使いたちを束ねるトップの娘だった。 そして、魔法使いの内部抗争の流れで、その絶大な魔力故に生贄にされ掛かった。

 もうなんだかなぁ、と思い始めるが、魔法使いと言う異能者も やはり人だったと言う事なのだろう。 集団が作られれば、そう言う膿も吹き出て来るものだ。 それは歴史が証明している。

 ──木乃香を取り戻しに行った先でたくさんの鬼が現れて、ネギたちや武道四天王が活躍した。

 なんでそうなったか、聞き返して力が抜ける。
 まぁ、あの4人なら何が出来ても不思議は無いし、呼び出した朝倉の気持ちも頷けたから良いとする。 自分がその場に居たら、やはり同じ選択をしただろう。

 ──途中、空からエヴァが現れて、物凄い魔法であっと言う間に鬼たちを蹴散らした。

 それで昨夜 彼女も居たのか、と、そろそろ現実逃避に入る。
 混乱と困惑の中、目の前でやらかされた濃厚なキスの方が衝撃が大きくて、居る事自体への不自然さは気になっていなかったのだ。

 ──最後に白い少年が反撃に出て、エヴァが撃退したもののネギが石化された。

「えっ? せ、先生は無事なんですか?!

 昨夜、あの責任感の強い少年は、あの場に居なかった。
 居なかったのではなく、来れなかったのでは、と不安に駆られたのだ。

 そんな夕映へ、のどかは微笑んで答える。

「大丈夫だよ、ゆえ。
 なんか物凄く危険な状態だったらしいけど、エヴァちゃんが呼んで来た知らない男の人が、あっと言う間に治したから」

 横島はのどかを認識しているが、出逢った時に意識の無かった彼女にしてみれば、彼は見知らぬ人でしかない。
 勿論、夕映にはのどかの言うのが誰なのか、想像がついているが。

 ──そうして戻ってきたら、木乃香のお父さんから夕映が絶望的状態だと聞いた。

「だから、ゆえが無事で、ホントに安心して、私…」

「あああああ、な、泣かないで下さい、のどか…」

 思い返したのだろう、ぶり返して涙ぐむ彼女を夕映は慌てて宥めた。

 そうしながらも、あの場に居た誰かからも話を聞かなくてはと頭の隅で考える。
 あの時の朝倉や木乃香たちの表情を思うと、かなりロクでもない事になっていたのは間違いあるまい。 記憶では石にされただけだったのだが、そもそもソレだけならハルナも先にされていたのだ。 なのに夕映だけが絶望視と言うのは、つまり自身がそれだけの目に遭っていた、と言う事の証左だろう。
 あまり聞きたくは無いが、それでも聞いておくべきだろうと、頭に刻み込む。

 あの場に居た顔触れの中だと、木乃香はあまり詳しくないだろうから除外するとして、朝倉かエヴァ。
 さもなくば…

 とにかく、その辺の誰かと行動を共に出来れば、と考えた所で、のどかに話し掛けられた。

「でも、ゆえもひどいな。 私たちにまで魔法使いだって事、内緒にしてたなんて…
 私も、先生に内緒にして欲しいって言われて黙ってたから、お相子なんだけど」

「…はい?」

 思わず固まる。

「ねぇねぇ、ゆえ。
 なんで魔法使いって、バレたりするとオコジョにされちゃうの?」

「なななな、なんですか、ソレは〜?!

 ザバっと湯を散らして立ち上がる。

 ここに来て尚、夕映への誤解は全く晴れていなかった。

 

 

 

「やあ、皆さん」

 手を上げて詠春は声を掛けた。

 やって来たのはネギと娘の木乃香。 それに昨夜あの場に居合わせた娘のクラスメートの内の6人。 それに加えて、エヴァンジェリンとその一行。 総計13名と1匹。
 若い娘が大半を占めているだけに、何かと賑やかだ。

「お待たせしました、長さん」

 ぺこりと挨拶するネギの、その父親の傍若無人っぷりとの違いに苦笑しつつ、彼は手を振って鷹揚に応える。

「お父様、煙草アカンゆうたやん」

「あぁ、すまんすまん」

 やけに素早い動きで、木乃香が詠春の手から煙草を取り上げた。

 彼女の動きを制止すべきだったかと、思い悩むように視線を行ったり来たりさせる刹那のアタフタした様子がなんとも可愛らしい。 普段とのギャップもあるから尚更に。
 だが、それを言うと固くなるだけだと、誰もが優しげにただその様子を見守る。

 そんな親娘の遣り取りを一頻り見た後、横島が口を開いた。

「そんで、その目的地ってここから遠いんすか?」

「…?!
 いやいや、そんな事はない。 ほんのすぐそこ、ちょっと奥に行った所です」

 一瞬の動揺の後、指差した先には木立に続く一本の細い路地。
 そこへ向かって「では行きましょう」と歩き出した彼に続き、一行はぞろぞろと動き出した。

 そんな先導する詠春の横へ、すぐに歩調を合わせて並んだのはエヴァ。
 黄金の髪をたなびかせ、彼女は視線を向けぬまま小さく彼へと声を掛けた。

「近衛詠春」

「はい?」

「首尾は?」

 ぼかしての問い掛けに、詠春は小さく微笑み縦に首を振った。
 被害への対処自体は、既に指示をほぼ出し終えている。 でなければ、トップの彼が遠くないとは言えこんな所に居られる筈も無い。 そも、一番大きな人的被害は、今、すぐそばでぴんぴんとしているくらいなのだ。 施設に対する物的被害は、確かに小さくなかったが、元に戻すのに然したる労は掛らないだろう。

「…尤も、これからが苦労しそうですが」

「は、今まで手をこまねいていたツケだ。 自業自得だな」

 フンとエヴァはそう切り捨てた。

 勿論、詠春なりに苦労して努力して、今の均衡が有る事は彼女とて判っている。
 それに、そのゴタゴタのお蔭で、こうやって京洛の散歩と相なっているのだ。 だから、口ほどにその状態を気にしている訳でもなかった。

 その会話の切れ間を縫う様に、エヴァの反対側に進み出たネギがおずおずと話し掛ける。

「あの…」

「ん? なんでしょう、ネギ先生?」

 ちなみに、図書館組……と言うか、ハルナには彼らの話は届いていない。 横島たちや茶々丸が、ネギたちのすぐ後ろを歩いて壁になっている為だ。
 この数時間でそれなりに親しくなっては居る。
 が、それでも横島たち側から話し掛けねば、ハルナらとてそうそうおしゃべりに興じると言う訳にもいかない。 ましてや押し退けてネギたちの側へなぞ出来よう筈もないから、ただそれだけで充分壁足り得ているのだ。

「あのお姉さんは、一体何がしたかったんでしょうか…?」

 とにもかくにも無事に解決した今。
 そうとなんなれば、良くも悪くも恨みを引き摺る様な少年ではない。

 だが、何故、何がしたかったのかは、やはり気になるのだろう。
 何せ狙われたのは彼の生徒なのである。 しかも、日本に来てからずっと暮らしを共にしてきた、家族同然とも言える少女なのだ。

 その疑問に、軽く顎に手を当て少しだけ思案する。
 そして詠春はゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。

「もう20年近く前の事です。
 この京の地で、リョウメンスクナノカミと呼ばれる鬼神が暴れ出した事がありました」

「鬼神… ですか?」

「えぇ、身の丈50mを越えようかと言う大鬼神です」

 大変じゃないですか、と慌て出すネギに、昔の話ですよ、と微笑み返して詠春は話を続けた。

「その時は、偶々居合わせた私とナギとで、何とか鎮めて封印したのですが…」
「父さんが?!

 父の事となると反射的に動く彼を、その肩に乗ったカモが小声で「まだ話の途中ですぜ、兄貴」と諌めた。

 その彼の耳打ちに後ろの方を見遣れば、図書館組の面々が何事かと見詰めて来ていた。 慌てて、ネギは誤魔化し笑いを返して何でもないとアピールする。
 その様子に、朝倉が旅行での話を振って気を逸らし始めた。

 そんな彼女を眺めて、カモは舌舐めずりする様な視線を向ける。 やはり お買い得だよなぁ、と。
 あの姉さんにも兄貴と仮契約をして貰わなきゃな、とネギに聞かれないよう口の中で呟く。

 思い返す様に空を見上げていた詠春が、頃良しと見て再び口を開いた。

「中々に手間取ったあの時の話は、まぁ今は置いておきましょう。
 それで彼女、天ヶ崎千草の目的ですが…
 木乃香の膨大な魔力を用いてそのスクナを復活させ、強力なそのチカラを用いて西を牛耳る事だったようです。 彼女の両親はかつての大戦の時に亡くなっていますから、東に対する私のやり方が気に食わなかったのでしょう」

「そんな事の為に、このかさんを?」

 まるで理解出来ないとばかりに、疑問が口を突く。

 詠春はその姿を好ましそうに眺めて、自分の判断を是とした。
 口にしないまま済ませた、恐らくはそのまま東との戦いへと雪崩れ込むつもりだったのだろう、と言う推測。 それと、そんな彼女を西の一部勢力が支援していた、なんて裏の動き。
 こんなにも純粋で、しかも年端の行かない少年に、それらは敢えて話して聞かせるべき事ではあるまい。

 その気遣いに、エヴァは気に入らなそうにフンと吐き捨てた。
 そして、それよりも、と話を続ける。

「あのガキについて何か判ったか?」

「現在も調査中、です…」

 歯切れの悪さは、いっかなロクな情報が集まらないからだ。
 状況的に良くないとは言え、組織を上げての調査は行っている。 だが…

「今のところ判っている事と言えば、フェイト・アーウェルンクスと名乗っていた事くらいです。
 一月前にイスタンブールから研修目的で派遣されてきた事になっていますが、これはおそらく偽装でしょう…」

「だろうな。 アレは裏の、更に裏の存在だろう」

 実際に斬るまで、エヴァですら実体ではない事に気付かなかったのだ。
 それでいて、あの魔法戦闘である。 アレは、組織の中に安穏と護られている者では、到達し難い高みに居るモノのソレだ。

 二人の話に、なんで魔法を悪い事に使おうとするんだろうと、ネギは一人胸を痛めていた。

 そんな彼に、もう一度 微笑ましげな視線を向けると、話を変えるように詠春は少し大きめの声を出した。

「見えてきましたよ。
 ほら、アレです」

 指差し示すその先、木々の切れ間に建物が見える。

「あの3階建ての小さな建物がそうです」

 銀に輝くドーム状の天文台を最上階に備えた、周囲を塀と樹木に囲まれたほっそりした建物。

 どこが小さいっつーんじゃ、との横島のボヤキを無視して、一行はそれを見詰めた。
 他の面々にしても、色々感じ入る所のある趣の建造物である事に変わりない。

「この10年ほどの間に、周りは草木でこんなになってしまいましたが、中はキレイにしてありますよ。
 さぁ、中へ」

 そう言って、門を潜る詠春に、ドキドキした内心を満面に写したネギが続いた。

 

 

 

 【ハッハッハ… 先のこたぁ先だ。 続きに行け】

 


 ぽすとすくりぷつ

 むぅ… やはり修学旅行、まだ終わんない… orz

 ちなみにせっちゃんは、出しなに合流しています。 …木乃香の意を受けた、明日菜の呼び出しに応じて。 それ以前に班行動の都合もありますしね。 朝倉は撮影担当として、割とフリーハンドで動けますけど、刹那はその辺 選択の余地が少ないですから。

 にしても人数が多いったら…(T_T
 例によって、刹那と茶々丸が沈黙中(爆) ハルナにはこのまま妄想の中に居て欲しい、切実に(苦笑)

 そいと、別に詠春×刹那とか無いですからね。 あくまで、同じ大事な物を守りたい、同士って事で(^^;


 
 

前へ
戻る
次へ

 

感想等頂けると、執筆の糧になります。 お手数でなければお願いします。
  

タイトル

お名前をお願いします。
(任意)

差し支えなければ、メールアドレスをご記入下さい。
(任意)

ご感想・コメントをお願いします。

入力内容を確認後、下のボタンを押してください