「やるやないか、新入り!?

 関西呪術協会の本部、そこからそう遠くない川の直中の岩の上。
 フェイトから手渡された木乃香を式の猿鬼に預けて、千草が嬉しそうに叫ぶ。

「にしても、どうやって本山の結界を抜いたんや?」

 関西呪術協会は、麻帆良どころではない年月の蓄積を持つ。 故に本部への侵入者に対する備えは、当然かなり固いものだった。 確かに、本部の実戦戦力を削り、前以っての準備もしてきている。 だが入られてしまったらお終いだと考えていた。
 なのにみすみす入山を見過ごしたのは、フェイトがそれを要求したからだ。 その上で自身が何とかすると請け負ったのである。
 この表情を全く変えない少年が、見掛け相応の実力に収まっていないだろう事は千草も実感していた。 だから、祈る様な気持ちで任せたのだが、それは正解だった。

「…こない易々やれるんやったら、最初から任せといたら良かったわ」

「正直、本山は然程じゃなかったからね」

 ふいっと視線を逸らしたフェイトに、千草は不審げな視線を向けた。

「…『本山は』やて?」

 まるで、それ以外の障害が大きかったと言わんばかりだ。
 協会に所属していた身としては、内情を知るだけに不思議にもなる。

「昼にお姫様を守ったと言う結界。 ソレを起こしていた術者が居てね。
 かなり手間取った」

「へ? アレ、お嬢様のチカラやなかったんか?
 にしても、あないな事出けるん居たやろか…」

「アヤセ・ユエと名乗ってたけど、きっと知らないんじゃないかな。 関東の術者なんだろうと思う、ネギ・スプリングフィールドの生徒の一人だったみたいだから。 おかげで、コタロウの言ってたアーティファクト使いを逃してしまったしね。
 …もう二度と邪魔出来ないようにしてきたから、まぁいいんだけど」

 その言葉に、猿鬼に抱えられていた木乃香が呻き声を上げた。

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その29   
 
逢川 桐至  


 

 

 

「生徒はん言うたら、お嬢様とおんなし中学生やろ?
 むごい事しはるなぁ…」

「もう少し下くらいにも見えたけど、まぁ仕方ない。
 術者がろくに動けなくなるとしても、僕の魔法すら防ぎきるあの結界は厄介だからね」

 その返事に、千草も仕方ないかと頷いた。 自身、あの結界の前では、手も出せずに引き下がるしかなかったのだから。
 遅くとも翌日の昼には協会の戦力も整ってしまう筈なのだ。 今、ここで手子摺るのは、彼女たちには致命的に過ぎる。

「さよか…
 まぁえぇ。 このかお嬢様はこの通りこっちの手ぇに入ったんやし。
 後はあそこまで連れてけたら、ウチラの勝ちは決まりやからな」

 そう言ってニヤリと笑うと、式の腕の木乃香の顔を覗き込む。

「安心しなはれ、なんも酷い事しまへんよって」

 そんな事を言われても、こんな状況、そして聞かされた夕映の事を思えば、安心なぞ出来る筈が無い。
 呻きながら、がっちり抱えられた腕の中で木乃香は暴れた。

「大人しゅうしいひんと危ないで」

「それより急いだ方がいい」

「そうやな。
 さぁ祭壇に…」
「待て!!!

 千草の声を遮って、制止の叫びが投げ付けられる。

「そこまでだ、お嬢様を放せっ!!

 大太刀を地擦りに構えた刹那が、杖を両手で構えたネギが、突き付ける様にハリセンを構えた明日菜が、川面に踏み込んで威嚇してくる。
 口を封じられた木乃香が、それでも嬉しそうに呻いた。

「なんや、またあんたらか…」

 しかし、そんな子供たちの気勢も、優位に立っている千草からすれば仔犬が吠えている様なものでしかない。
 くすりと笑って、3人を見下ろした。

 嘲る様子に憤る明日菜を抑えて、打ち合わせ通りにネギが叫んだ。

「天ヶ崎千草さんっ 僕の生徒を返して下さい。
 何をしようと、明日には応援が来るんです、今なら間に合います」

 イマイチ迫力の無いセリフだが、それでも怒りを抑えているのは口調から判る。
 だが、だからなんだとばかりに千草はうそぶ
 だが、だからなんだとばかりに千草は 嘯 いた。

「は… 応援がなんぼのもんや。
 あの場所まで行きさえすれば、そない有象無象ウチラには意味ないで」

 フフンと笑い掛けた彼女の顔色が、しかし次の瞬間固まった。

「先生っ
 その人、このかを生贄にして大きな鬼を復活させるって!!
「ちょ、本屋ちゃんいきなり立ち上がっちゃ…」

 横手の薮から立ち上がった3人の少女たち。
 その中の一人が口にした核心を突く言葉に、さすがに千草も内心の動揺を面に出した。

 焦っていたのは、のどかの護衛と隠形を担っていた楓もだ。

 ただ、いきなり立ち上がったクラスメートのこの反応は、しかし今回の件に関して言えば仕方ないかとも彼女は思っていた。
 当人が口にした情報では、のどかの様な一般人では黙っていられる筈も無いだろう。 まして彼女と木乃香とは、クラスの中でも親しい友人同士である。

「君も居たのか…」

 見据えてくるフェイトの言葉に、のどかの肩がピクっと震える。
 そんな彼女と朝倉とを守る様に、楓はその前へと立ち塞がった。

「小太郎が言うてたガキか。
 ち… 新入り、ここは任すで」

 そう言って身を翻そうとする千草の前で、猿鬼の巨大な頭が弾け銃声が轟く。

「な…」

 慌てて木乃香を確保する彼女の側に、フェイトの連れていた使い魔が庇う様に盾になり、彼自身もまた身構えた。

「あのアーティファクトかな? 周到に待ち構えられてたみたいだね」

 実際には、偶然上手く包囲出来ただけ。
 だが、どの程度の精度があるかまでは、実際に被害を受けた小太郎も判っていないのだ。 だから、その話を聞いただけのフェイトでは推測でしか計れない。

 ただ、どちらにしても、ネギたちをここでどうにかしなければならなくなったのは、千草たちも、である。
 そこそこの戦力で掛って来られているのは確実で、しかも祭壇の位置がバレてしまった公算は高い。 ならば、儀式の為に戦力が抜けてしまう向こうでよりも、ここで始末を付けた方が都合が良いのだ。

「ルビカンテだけじゃ足りないね、手数を増やして」

「わ、判ったわ」

 フェイトの催促に、千草は慌てて呪符を取り出し式を呼び出すと、続けて信号弾を打ち上げる。
 この京洛一帯に、呪術協会の手は残っていない。 だが彼女の手……万が一追跡を受けた時の為の待ち伏せ要員は、近隣に存在しているのだ。

「仕方有りません。 力尽くでこのかさんを取り戻します!!

 こちらも意を決して走り出すネギに、刹那と明日菜も後を追って足を動かす。
 同時に、のどかと朝倉を抱えた楓が一旦退避を始める。

 近付いてくる3人へと、フェイトは呪唱を始めた。

「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト。
バーシリスケ、ガレオーテ、メタ・コークトー・ポドーン・カイ・カコイン・オンマトイン
 小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の主よ、
ト・フォース・エメーイ・ケイリ・カティアース・トーイ・カコーイ・デルグマティ・トクセウサトー
 その光、我が手に宿し、災いなる目差しで射よ。
カコン・オンマ・ペトローセオース
 石化の邪眼!!

 突き付ける様に伸ばした二本抜手。 その指先から光が放たれ、薙ぎ払う様にネギたちへと襲い掛かる。

「ネギ

 飛び越える様に避けた刹那は、なんとかその魔法を凌いだ。
 だが、逆方向にネギを庇いながら飛び退いた明日菜は、間に合わず光をその背に受けてしまった。

「神楽坂さんっ?!

 刹那の悲鳴が上がる。
 岩の上で一部始終を見ているしかない木乃香も、ぎゅっと目を瞑る。

 しかし、その服を石化されながら、何故か明日菜は無事な姿を見せた。

「な…」

 本山の大浴場では、ネギたちのガードを潜り抜けて木乃香を攫うだけ攫ってすぐに戻ったのだ。 その為、初めて見る事になったこの予期せぬ現象に、フェイトは目を見開き驚いていた。

 だが、現実に起きている事は起きている事だ。
 戦いの場で自分を見失う様な、そんな底の浅さの持ち合わせのある少年ではない。
 アヤセ ユエ
「あの少女と言い、レアタレントばかりだね」

 呆れる様に呟いて すぐに気持ちを切り替えると、近付いて来る刹那へと石の槍を放った。
 それらを切り裂きながらも、刹那は後退せざる得ない。

 

 

 

 一方で、突然飛び込んできた浅黒い二人組に、千草は折角出した式を磨り減らされて焦っていた。
 銃砲遣いはフェイトの使い魔が抑えているものの、功夫遣いが式を蹴散らして行く。

「しゃーない、お嬢様の力、借りますえ」

 そう言うと、真言を唱え出す。

「マズイ。 古、アレを止めろっ
「はいアル」

 龍宮の警告に、古菲が走る。
 しかし。

「遅いで」

 展開された輝く魔法陣の中、一層の光を木乃香の身体が放つと、周囲に無数の鬼たちが湧き出してきた。

「はわ〜 なにアルか?」
「ちっ」

 それらの姿を物珍しそうに見回す古菲と、ルビカンテを牽制しながら舌打ちする真名の姿は実に対照的だ。

「ほんにえらいぎょうさん掻き回してくれよって。
 手加減抜きや、いてまえ鬼どもっ

 漸く優位を回復したと、苦々しく顔を引き攣らせた千草が号を放つ。

 だが、この場に集った者たちの実力は、その程度では揺らがない。

「ん〜 哈っ

 嬉しそうな気合いを発して、先手必勝とばかりに手近な鬼どもを古菲が蹴散らす。

「温い」

 ルビカンテの牽制をしながら、真名のバラ撒く銃撃が鬼どもを撃ち抜いてゆく。

「百裂、桜華斬!!!

 神鳴流の奥義が刹那の大太刀から放たれ、鬼どもを切り裂き散らす。

「甲賀中忍、長瀬楓。 推して参る」

 そして、戻ってきた10数人の楓が、鬼どもの数の優位を覆していく。

「…な、なんやてっ?!!

 千草の驚愕は悲鳴に近い。
 この場に立つのは、敵も味方も年端の行かぬ子供ばかり……の筈だ、彼女自身以外は。 外見的に首を傾げざる得ない少女が二人と、中身は相当に経ていそうな少年が一人居るが。
 だと言うのに、呼び出した100を優に越える鬼たちが、明らかに削られて行く。
 フェイトの方へ目を向ければ、こちらも微妙な膠着状態を作り出していて、すぐには来れそうにない。

 そして気付けば、3人の支援を受けてドンドン近付いて来る刹那に、思わず悲鳴を上げ掛けた。

 だが、彼女の焦りは、またすぐに晴れた。
 足止め用に配していた少女が、漸く駆け付けたのだ。

「はぁ〜 ざ〜んが〜んけ〜んっ」

 横合いからの一閃を、大太刀『夕凪』にのせた気で散らす。
 刹那が視線を向ければ、そこには余り見たくない顔が有った。 思わず顔を顰める。

「人見てそない顔するんは、どないやと思いますえ〜 刹那センパイ」

 語尾にハートマークをつけんばかりの口調。
 場に全くそぐわない可愛らしいワンピースの出で立ちに、コレばかりは禍々しい輝きを放つ両手の小太刀。

「月詠っ」

 千草が嬉しそうに彼女へと声を掛ける。

「遅ぅなりました〜
 ウチが来たからには刹那センパイは任しといて下さい」

 そう言うと、刹那へと身を振り返して走り出す。

「さぁ、ウチと一緒に遊びましょ〜」

 鋭い連劇と、気の抜ける声とが刹那を襲う。
 気を篭めた得物同士が、キキンと甲高い声を上げた。

「くっ」

 後少しで木乃香の下に辿り着けたのに。
 その悔しさを視線に篭めるが、月詠の笑顔はますます輝くだけだ。

 本来の日本刀の使い方では有り得ない刃先同士での火花が散る中、刹那は叫んだ。

「そこをどけぇっ!!

「ウチより、あっちのお姫さんやなんて、ほんにいけずやわ〜」

 気合いの一閃が、しかし十字に構えられた小太刀に受け止められる。
 そのまま軸を流されかけ、刹那は已む無く一歩退いた。 リーチの利は、懐に入られた瞬間、不利へと変わる。 腕の差が大きいならまだしも、ほとんど差と言うほどの差は無さそうだ。

「これはいかんでござるな」

 戦況にそう呟くと、楓の内の4人が千草へと走る。

「御札はん御札はん、守っておくれやす」

 符から放たれた劫火が、楓たちを包んだ。
 だが、それを物ともせず飛び出して来た一人が、また複数に別れて走って来る。 今度こそ千草は悲鳴を上げた。

 しかし、そこへ更に再び救いの手が入る。

「むっ?!

 背後からの黒い連撃を、それぞれ楓たちは容易く蹴散らした。

「やらせんで、細目の姉ちゃん。
 ホンマはあっちの西洋魔術師の相手、も一度したかったんやけどな。 あっちに横入りすんのもなんだし、あんた女の癖に強そうや」

「ふむ。
 拙者に向かって来る意気は良いのでござるが、今ソレを受けると思ってるのでござるか?」

 言いながら、分身二人だけが残って彼の前に立ち塞がる。
 優先順位と能力を考えれば、それで充分と言う事だろう。 この場における彼女らの勝利条件は、まず第一に木乃香の確保なのだから。

 それは理解出来る。
 だが、だからと言って侮られた事を許容出来る様な少年ではない。

 小太郎は口元を歪ませ、狗神を引き連れて走り出した。

「無理にでも、相手さしたるわっ

 

 

 

「あっちも切羽詰まってるみたいだから、そろそろ終わりにさせて貰うよ」

 ネギと明日菜、その二人を抑えていたフェイトが宣告するように呟く。

 二人とネギの肩の上のカモとは、それをはったりとは見ず身構える。

 魔法の矢の撃ち合いと、その隙を縫った斬撃とを、軽々とあしらわれてきたのだ。
 受け続けている威圧感も、エヴァとやり合った時にも等しい。 だが、あの時の彼女は遊ぶ気の本気だったのだ。 今の目の前の少年のソレと比べたら、軽いと言わざる得ない。
 間違いなくこの場で一番の実力者だ。 本気でなくとも、新米魔法使いと見習い従者二人だけで相手出来ている事自体が奇跡に近い。

 と、その時、不意にフェイトの意識が外れる。

「ルビカンテ?」

 真名がついに彼の使い魔を下したのだ。
アクセレレット 
「加速」

 自身に呪文を掛け勢いを増して、ネギが杖と共に白く浮かんだソコへと飛び込む。
 だが。

「あまい」

 魔力を篭め 不意打ちで仕掛けた一撃は、しかしその身が纏った障壁一つであっさりと止められた。

「つまらないね。
 サウザンドマスターの息子… やはり期待ハズレか」

「かはっ

 逆に殴り飛ばされ、ネギの身体が宙を舞う。

「ネギっ?!!
「兄貴っ!!

 明日菜とカモが、悲鳴を上げる。
 周囲を見回すが、すぐに助けに来れる位置には誰一人居ない。 この状況に気付いた真名も、しかし鬼たちに阻まれ近づけないでいる。

 半裸の明日菜が庇う様に抱き起こす。
 そんな咽せているネギへとも見下ろした言葉が掛かった。

「明らかに格が上の相手へ、得意でもない接近戦を挑むなんて何を考えている?」

 そうは言っても、今ネギの持つ呪文では不意を突ける……つまり無詠唱で行える最強の攻撃がアレだったのだ。
 痛む身体に鞭打って、自分を庇おうとする明日菜の前に立とうと、ネギは膝に力を入れた。

 そんな様子に、フェイトは軽く肩を竦めた。

「この分じゃサウザンドマスターと言うのも高が知れているね」

 ピクッとネギの身体が震える。
 確かに自分は未熟だ。 そんな事は指摘されるまでもなく、ネギ自身 判っている。

 だが。
 だが、ソレを理由に父が侮辱されるのは、それは許容出来ない。
 一気に立ち上がると、ネギはフェイトを睨み付けた。

 

 

 

 【続かせると思うのかい?】

 


 ぽすとすくりぷつ

 またしても横島、影も形もなし(笑)

 それにしても、戦闘シーンが相変わらず下手やなぁ、私。 苦手意識を持ち続けているのが悪いのか(苦笑)
 それに、今回のじゃ、まるでネギが弱いみたいにしか見えない。 成り行きで、とは言え、フェイトの足止めは果してるんだけどねぇ(^^;
 一番弱そうなのは千草だけど、彼女は原作でもそんなに強そうじゃない上、色んな意味でプロじゃないから、こんなもんじゃないかと(笑)


 
 

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