「おや…」

 学園都市を離れた場所での見知った顔に、楓の口から思わず言葉が漏れた。

「ん? どうした楓?」

 不意に顔を上げた友人に、一緒に買い物をしていた龍宮真名が問い掛ける。
 それに答えたのは、彼女の見知らぬ面々。

「あ、長瀬先輩」
「よう、楓ちゃん」

 一人は、ボサボサの髪をバンダナで纏めた高校生くらいの少年。 トレーナーにジーンズの、有る意味目立たない格好をしている。
 もう一人は、自身たちより年下かくらいの少女。 左右2つのお団子ポニーが可愛らしい彼女は、パステルカラーで纏めた、丈の短い上着とワンピースを纏っている。
 どちらも、真名の見知らぬ顔だった。

「今日もデートでござるか?」

「もう、違うって言ってるじゃないですかぁ…」

 どこか揶揄っている風な楓に、少し顔を赤らめて少女が抗議する。
 そんな様子を眺める真名に、残る少年が近付いてきた。

「お嬢さん、お名前は?」

 その無駄のない動きに、真名は彼への警戒心を持った。
 武術の徒や裏に生きる者たちのソレではないが、気付いたら一刀足の間に侵入されていたのだ。 プロとしての自負が、警戒をいや増している。

 まぁ、だがそれもすぐに失せてしまったが。
 なにせ。

「横島殿、真名は拙者のクラスメートでござるよ?」

 その言葉で、少女共々真っ白に硬直して、塩の様に崩れさってみせたからだ。

 支払いから戻ってきた桜咲刹那が、増えていた顔を見てあからさまに嫌そうな表情を浮かべる。
 そんな珍しい様子の彼女と、男たちの様子を気遣う楓を眺めながら、真名は一人溜め息を吐いた。

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その24   
 
逢川 桐至  


 

 

 

 停電の晩から既に4日。 都市内の案内をする様になってからで言えば、10日が過ぎている。

 実を言うと、もう学園内の案内は一通り終わっていた。
 広いとは言え、ブロックブロック毎に分けてポイントを絞れば、そうそう時間が掛かる様な事ではないのである。
 そも学園都市としての機能デザインも、考慮されての都市内配置がなされているのだ。 結果、各地区がそれぞれ目的に特化していて、その事も覚え易さに繋がっている。

 なのに愛衣が日中、それでも横島と行動し続けているのには訳があった。

 彼女の敬愛するお姉様である所の高音・D・グッドマンが、ここ数日壊れているからだ。
 事は停電の夜、高音が横島に全裸を見られた事に端を発している。

 

 

「ふ、ふふふ、ふふふふ…」

「お、お姉様?」

 一旦 横島を回収し、その夜の巡回を終え、報告を済ませて横島と別れた帰り道。
 どんどん暗くなって行く高音が、壊れたような声を上げた。

「しゅ、衆目の中では無かったとは言え、またしても肌を殿方の目に晒してしまうなんて…」

 微妙にらしからぬ口調の呟きで、あぁなるほど、と愛衣も納得した。

 思えば、半月近く前の暴走ロボットの時もこんな感じだったのだ。
 あの時は、途中で任務を投げ出した自責の念の方が強かったようだったが、どちらにしても潔癖性の彼女が心に傷持つのに、充分だろうと愛衣には思われた。

 今回は、きちんと任務こそ済ませたものの、終わって我に返った事で内心のソレが吹き出したと見える。

「そ、その、不幸な事故ですから… あの…」

 推測出来ても経験的な未熟さから、愛衣に上手く言える言葉も無く。

「そ、そうかしら…
 けど、素で胸に触れられて、揚げ句に全裸…」

 思い返しながら、自分の言葉で更に深くへと沈んで行く。
 遊び回ってるどころか、ストイックに夢を目指している聖職者じみた部分が有るのだ、高音は。 固過ぎるに過ぎるところが有るだけに、羞恥がエライ結論を運んで来る。

「こうなったらもう、横島さんに責任を取って貰うしか…」

「ちょ、ちょっと、お姉様?」

 さすがに思考がいけない方向へ向かったと、愛衣は慌て出した。

 内弁慶な節があり、ここ一番では ふっ切れないと動けない高音の事。 口だけで終わってしまう可能性は高いが、逆に変な方向に切れた時には実行しかねない。
 相手である横島も、愛衣の見る所、迫られると言うカタチでは躊躇しそうなのは確か。 だが、こちらも(理性が)切れたらヤバそうだ。 普段の行動を鑑みれば、ソチラ方面の信用は皆無と言うか絶無だし。

 相思相愛で、と言うならまだしも、不幸な事故に始まる暴走で、なんて言うのは愛衣としては看過し難かった。
 どちらもが個人的に親しいのだから尚更だ。

「その… ちょっと落ち着いて考えましょうよ、ね、お姉様」

「うぅ…」

 背の高い高音の上目遣いの涙目に、ちょっとだけ可愛いなどと思いつつ、愛衣は宥めながら寮へと脚を速めた。

 忘れたい失敗なら、さっさと寝て忘れてしまうに限る。
 緒を引かないように言葉を選びながら、愛衣は胸の内で溜め息を吐いた。

 

 

 そんな事があったので、暫くの間 横島と高音を出来るだけ引き離しておこうと思ったのである。

 何故それで横島に貼り付いているか。
 言ってしまえば簡単な話。 高音の方は割ときっちりとしたスケジュールで暮らしているが、彼の方は目を離すと何処へ行くか判らないからだ。

 例の追いかけっこも、今や『いつもの』になってしまっているのも痛い。 …原因の一つは、ここ最近張り付きっぱなしの彼女自身にあるのだが。
 それに、放置するとナンパスポット探しに動く為、当然の様に高音との遭遇率も上がってしまうのだ。

 また逆に高音と一緒だと、行動の主導権がほぼ愛衣の手から離れてしまうのも難点だった。
 だが横島となら愛衣の意見を通し易く、その行動を制限するのも割合 簡単なのである。

 まぁ、クラスメートに見咎められて羨ましがられたりしていて、否定しつつもちょっと先を歩く優越感みたいなモノも感じてたりするので、自身この流れには吝かではなかったりもするのだ。
 一緒にいると楽しいし、彼のお兄さん的な対応も心地好く新鮮なのである。

 ナンパやらなんやらせずに居られない、と言う点は勿論 大いに不満なのだが。
 恋愛関係に無かろうと、横に女の子である自身が居てもなのだから、それは仕方なかろう。

 ちらりと、その不埒者を横目で窺う。

「ま、まさか中学生だとわ…
 この俺の目ですら見分けられぬとは、なんてぇはいすぺっくだ」

 未だに苦悩しているその馬鹿者は、このファーストフード店の一角で、自身が両手に花だらけと見られている事に気付いていなかった。
 これが後日伝わって、例の集団の規模が更に膨らんでしまうのだが、その事も当然認識出来ていない。

「ふぅ…
 取り敢えず、きちんと紹介してくれないか、楓?」

 彼の様子に呆れた目を向けていた真名が、そう楓へと言葉を振った。
 薄手のセーターにGパンと、ラインがくっきりしている装いが、歳不相応な色気を醸し出す。
 軽く指先を動かしての仕草もまた、大人っぽさをいや増していた。

 …それでも彼女は中学生だが。

 横島は、更に頭を抱えて身悶えた。

「ふむ、そうでござるな。
 そちらのその… いや、男性が横島殿。 木乃香殿とも知り合いでござるな。
 一緒に居るのは佐倉殿。 拙者らの1年後輩でござる」

 そう楓に紹介されて、どうにか戻ってきた横島と、愛衣とが軽く頭を下げた。

「佐倉愛衣、麻帆女の2年です。 よろしくお願いします、先輩方」

 尤も、前にいる3人の内 2人の胸に目が行ってる辺り、彼女も微妙にショックを引き摺ったままらしい。

「横島忠夫だ、男子高等部3年。 よろしくな。 …えっと、真名ちゃんとせっちゃんちゃん」

 その言葉に、これまで黙ったままだった少女が思わず突っ伏した。
 ゆったりした飾り気のない白いブラウスが、心なしか引き攣ってるようにも見える。

「だ、誰がせっちゃんちゃんですかっ

「いや、つーても、木乃香ちゃんがそう言ってるの聞いてただけだしさぁ…」

「私は桜咲刹那ですっ!!

 怒った様にそう言うと、刹那はドリンクを手に取って口を閉ざした。

 ルームメイトの珍しくアクティブな反応に驚きながら、真名は初対面の二人に話しかけた。

「私は龍宮真名。 私もこの二人同様、近衛のクラスメートだ。
 で横島さんと佐倉さん、刹那とも面識が?」

「いや、チラっと見た事がある程度だよ、その娘は。
 名前も木乃香ちゃんがせっちゃんって呼んでるの聞いただけだったしな」

 色々な懊悩を抑え込み続ける横島が、視線を揺らしながら答える。

「あ、私の事は愛衣と呼び捨てで構いません。
 それで、私もその時一緒に居て、少しこのかお姉様から昔話を伺っただけです」

 木乃香の名前が出る度に、そっぽを向いている刹那の肩がぴくっと動く。

 普段クールな彼女が、その身に熱いモノを秘めていると知っている真名と楓だったが、こうもそれを簡単に表に出すのを見るのは初めてだ。
 友だち甲斐が無いと自省しながらも、面白さを感じてしまう自身を抑え切れず、揃って口元を緩ませている。

「ほう、近衛との昔話?」

「おう。
 幼馴染で仲良しだったのに こっちじゃあ冷たいって、そりゃあもう嘆いてたぞ、木乃香ちゃん」

 水を向けられて、横島は咎める様に刹那へ言葉を掛ける。

 何も知らない癖に、と叫びそうになりながら、それでも彼女は言葉を飲み込んだ。
 多少なりとも木乃香に近付いた人間として彼らを調べた刹那と違い、そんな事をする筈も無い横島たちが、自身の深い事情を知ってるとは思えない。 融通が利かないほど生真面目な彼女の事、それを思い返せば自制も出来る。

 そんな彼女の気持ちに気付かず、いや気にせずに、なのかも知れないが、横島は話を続けた。

「なんか事情が有るにしても、あんまし突っぱねてっと嫌われてると思われちゃうぞ。
 ンなこた無いんだろ?」

 キッと睨み返すも、堪えた節も無く、逆に微笑み返されて刹那は視線を逸らした。
 その先に細い目であらぬ方向へ目を向けた楓に、何故止めてくれないのかと恨み節を目で向ける。 それに応えての下手な口笛に、がっくりと肩を落とすしかなかったが。

 その様子に、愛衣が助け船を出す。

「横島さん、その、私たちに言われても、そうそうアレでしょうし…」

「まぁ、愛衣ちゃんの言う通りか…
 しかし、君らのクラスはどーなっとるんだ?」

「は?」

 話を切り上げ、別の話題に変えてきた横島に楓が首を傾げる。

「いや、木乃香ちゃんや刹那ちゃん、のどかちゃんなんかは、まぁ年相応だけどさぁ。 楓ちゃんといい真名ちゃんといい明らかなオーバースペックが居るかと思えば、あの双子やら夕映ちゃんやらと どう見ても小学生まで居て、バラエティ豊かもいいとこだと思うんだが、お兄さんは」

 その言葉に、楓と真名は目を見合わせて苦笑した。
 自身、確かに標準から外れている自覚は有るからだ。

「しかし、随分たくさんと出会っているんだな、横島さんは。
 クラスのおよそ4分の1になるぞ、それだと」

「って言うか、私の知らない名前もいくつか有るんですけど…」

 指折り数えた真名の知る限り、名が上がった中で裏の人間はここにいる3人だけ。
 だから、そう言う方面の人間かどうかの判断は保留する。 拗ねた様に口を尖らせている愛衣の様子からすると、彼女を介してと言う訳でもないらしいので、早々に判断する訳にもいかないし。
 後で楓に確認しておこうと、胸の中にメモをしておく。

「ん〜 あと、見ただけっつーなら、ちゃおちゃん、だっけ? その娘も有るんじゃねぇかな。
 屋台で見た中華っぽい娘って二人いたから、どっちかがそうなんじゃないかと思うけど」

 ウェイトレスをしている少女の中に、二人ばかり『アル』言葉を使う少女がいた。
 今時そんな言葉遣いをするなぞ、怪しいもいいところである。 だが、何せ横島にはそう言う知り合いが既に居るので、その辺はそう言うもんかとスルーしていた。

「あぁ、それは多分、両方 拙者らのクラスメートでござるな」

「そうなんですか?」

 超包子へは一緒に何度か行っているから、やはり心当たりがある愛衣が聞き返す。

「愛衣さんのようにお団子にしっぽを作っている黒髪のが超だ。
 私ほどじゃないが浅黒い肌をしたのが古と言う」

「あぁ、多分その二人だわ」

 その二人を合わせれば10人。 実際には厨房に五月も居た筈だから、見ただけなら彼女も数に入るだろう。 加えて、横島は昨夜、エヴァと茶々丸にも会っている為、合計13人。
 クラスのほぼ半数を横島は見知っている事になる訳で、その遭遇率の高さときたら、まるでナニカが操っているかの様だ。

「ふぅ〜ん。
 いや、ホントにバラバラだなクラスん中」

「まぁ、確かにそうでござるな」

 クラスメートを思い浮かべて二人は再び苦笑した。 コレばかりは刹那も同感の様で、知らず頷いている。

「そう言えば、今日は お二人で何を?」

 都市内の案内をしてると言う話は聞いていたが、ここは麻帆良から離れた東京都内。
 楓にしても、珍しい遠出なのだ。

「向こうじゃ手に入んないのも有るしさ、だったらこっちまで出たらどうかって、愛衣ちゃんに言われてさ」

「あぁ、確かにね。
 学園って文字が入ってる分、多少の偏りは仕方ないんだが…」

 そう頷いた真名の仕事道具は言うまでもなく。 他にも遊行面や趣味に偏り過ぎた物も、やはりさすがに手に入れ難いのだ。 入らない、と言う訳でもないが手間や時間はそれなりに掛かる。
 都市内の商店は、購買としての機能を兼ねている事もあり、当然と言えば当然と言えなくもないのだが。

「拙者らも、今日は修学旅行用の買い物にここまで出向いておるのでござるしなぁ」

 普段 土日は山篭りの楓と、翌日に木乃香が買い物に出掛ける事を聞いた刹那との都合で、3人は3日後に迫った旅行用の買い物を済ませに来たのだ。

「あぁ、来週でしたっけ、そう言えば。
 先輩方は、どこへ行くんですか?」

「奈良・京都だな」

「へぇ〜 いいなぁ、私も行ってみたいんですよね」

 羨ましそうな言葉に、楓と真名は揃って視線を愛衣へと向けた。

「おや? 割と定番だと思うのでござるが」

「あぁ…
 私、ちょっと前までアメリカにいたんです。 だから、そう言うトコ行った事なくって」

「え? そうなんだ」

 思わず聞き返した横島に、こくりと頷く。
 まぁ、片田舎なんですけどね、と続ける愛衣に、だからブルジョワジーはと彼の口からグチが零れた。

「ならば却って新鮮だろうな」

 そう言う真名も、仕事以外では行った事が無かったりする。
 だから今回の旅行を、それなりに彼女も楽しみにしているのだ、実は。

「木乃香ちゃんや楓ちゃんは地元かな」

「さて、どうでござろう?」

 目をあからさまに逸らす。
 横島にしても木乃香の場合言葉から、楓の場合忍者と言う認識から当たりを付けただけなので、それ以上追求する気もなく苦笑いで流した。

 

 

 

 【ここは俺っちに任せて、続きへ】

 


 ぽすとすくりぷつ

 閑話みたいな感じだなぁ… って、ソレ言ったら、コレ、全編そんな感じがしなくもない様な… orz

 とまれ、超とか五月なんかはともかく、一応絡むキャラはほぼ出揃ったかな?
 ちょいと初期想定から更に膨れてきてるんで、この月2ペースでも今年中には終わんないどこじゃなくなってるよーな… 寝込むと止まるから、それだけでも避けられるといいんだけどなぁ(T_T

 それと、この話では木乃香と横島の距離が近い分、刹那にとっての彼は、お嬢様に近付く悪い虫、でしかないです。 なので懐く刹那を楽しみにしている方には、ごめんなさい。

 横島にとっても、懐かれてんならともかくバリバリに警戒されてる現状、何年後かが楽しみな少女ってだけでしかなかったりしますし…(^^;


 
 

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