そのふざけてる様にしか見えない姿に、男は戸惑っていた。

 麻帆良学園都市は、日本の魔法使い集団の2大巨頭の一つ、関東魔法協会の総本山である。
 この事は、一般にはともかく、裏ではごく普通に知られた話だ。 組織の規模は認知度に直結するから、秘匿を旨とする魔法界でも知られる事を避けられるものではない。 一般人に向けて常に掛けられている認識阻害の影響も、魔法使いを始めとして免れ得る者たちはけして少なくないのだから。

 そして組織の大きさは、それだけでも潜在顕在を問わず敵対者を作り易い。
 まして関東魔法協会は、日本のもう一方の雄、関西呪術協会との間で、過去の紛争よりこちら冷戦状態を続けているのだから尚更である。

 となれば、内部事情を調べる為の諜報要員の類いも、日向に日陰に送り込まれようと言うもの。

 この男の今回の仕事は、潜入する者をフォローする為、一定時間騒ぎを起こす事だった。
 その手始めに、警邏中と思われる3人の若年者に襲撃を掛けたのだが、さすがは音に聞こえた魔法都市。 年に似合わぬチカラの持ち主たちで、任ぜられた陽動を果させてくれない。

 男とて長く裏に、それもその更に影の中で生きてきたのだ。 ただでさえ、年齢を才が上回り得る魔法界、力量を認識して侮る事など無い。
 …いや、無い筈だった。

「ヨコシマン・アイっ

 その姿を見るまでは。

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その22   
 
逢川 桐至  


 

 

 

「で、どーしたらいいんだ?」

 格好つけて装着してみたものの目的が解っていての事で無し、首を傾げた横島の姿は見た目と相まって妙に間抜けだ。

『あそこまでしてダメなんです。 外部からの魔力供給と考えた方が自然でしょう』

「なるほど。 どりゃっ」

 念話での高音の返事に、気合いを入れて白ミミズを見詰める。
 まるでヘソの緒の様にも見える繋がりが、確かに外へと伸びていた。

「見える、見えるぞ…」

「真面目にやりなさいっ

 どこかやる気無さそうに動き出した白ミミズを、傀儡で牽制しながら高音が喚く。

「むぅんっ、そこじゃあっっ!!

 横島は慌てて創り出したソーサーを、離れた茂みの向こうに隠れている、ラインの繋がった魔力の発生源へと投げつける。

 爆発の穿ったソコには、しかし人影一つ無い。

「何をやってるんです?!

「逃げんなっ」

 高音の叱咤に構わず、そこに居た誰かが逃げた先、潅木に作られた別の暗がりへと続けて投擲する。 魔力のケーブルが繋がっている以上、どれだけ高度な隠形を掛けていても横島の目からは逃れられる筈が無い。

 その2投目は、合わせる様に撃ち出された白い魔力塊に阻まれ、空中で散った。
 だが更に、横島の投擲とタイミングをズラした愛衣の炎の矢が、続けざまに突き刺さる。

「ぐはっ」

 対処しきれなかった2発の魔法の矢の命中に、現われた男が呻き声を上げる。
 不自然に全身白尽くめの姿が、闇の中、何故今まで目に触れなかったのか不思議なくらいだった。

「…くっ。
 マヌケな格好の癖に隠形を見破るか…」

「ほっとけやっ

 悔しげな声に、思わずツッコミ返す。
 ビジュアルのアレさは、横島自身とて重々自覚している。 まぁ、だからと言って言われて嫌な気がしない筈も無いのだが。

 そんな様子をよそに、高音が胸を張って口を開いた。

「やはり術者が潜んでたのね。
 無駄な抵抗は止めて大人しく投降されるなら、身の安全は保障します。 ですが、抵抗されるなら…」
「あぶねっ

 警告を遮り、白いミミズから伸びた触手が彼女に襲い掛かる。
 間髪入れず閃いた栄光の手が、ソレを切り落とした。

「お姉様に何するんですかっ?!

 続けて走る愛衣の炎の矢。
 だが、今度は全て躱された。

「往生際の悪いっ」

 傀儡に暴れ回るミミズを押え込ませて、高音が舌打ちをした。

 術者の居所が判らないままならともかく、この手の術は魔力を供給している本人さえ押さえてしまえば、後はいくらでもどうにか出来るのだ。
 それが解っていないとは到底思えない以上、悪足掻きでしかなかろう。

「横島さんはあの男を、愛衣は私と使い魔をっ」

 その指示に、二人はすぐ動いた。
 男を相手に手加減する様な横島ではない。 捕獲ではなく、伸してしまう勢いで吶喊して行く。

「どぅおぉぉりゃあぁぁっ

 大きく振りかぶった栄光の手を、思いっきり振り下ろす。
 男もろとも、大地が弾けた。 ちなみに、アーティファクトは付けたままなので、それだけの事を起こしてみせてもマヌケさは拭えていない。

「がはっ…」

 男が弾き飛ばされるのと同時に、白ミミズの姿がボヤけ細くなって行く。

「横島さん、凄い…」

 愛衣が思わず呟き、高音も柔らかく相好を崩す。
 実力は十二分に承知しているが、普段が普段だけにこう言った時には光って見える。

 その時だった。
 夜空に響き渡る轟音が鳴ったのは。

「なんです、一体?」

 遠くの空で、かなり大きな魔法と魔法がぶつかり合っていた。 星の天蓋を切り分ける様に、天の一点から斜めに落ちるナニカと反対に地から昇るナニカ。
 そんなとんでもない物に、一同の視線が一瞬集まった。

「高音ちゃんっ

 捕獲に向かおうと二人が歩き出したところで、横島が叫ぶ。

「えっ? きゃっ?!

 気を抜くのが早過ぎた。
 細く消えそうだった白い紐が、いきなりチカラを取り戻したように太さを増すと、尖端から更に伸びた繊毛が高音に襲い掛かったのだ。

「ちっ
「お姉様っ?!

 横島が走り寄り数本の繊毛を切り落とすものの、敢えなく捲き込まれるように二人して囚われる。

 操っている本人を問答無用で叩くべきだったのだが、その間に高音が傷付くのを恐れたのだ。
 結果として揃って捕まったのだから、完全な横島の失策である。 まぁ、物事に対する優先順位が覆る筈も無いから、彼が彼である以上なるべくしてなった結果とも言えるが。

「ガキで助かったぜ…」

 炎の遣い手の少女は、状況に応じ切れずおろおろとしている。 手強い前衛系の少年も、残る傀儡遣いも抑えた。 受けたダメージは小さくないが、人質が居ればもう暫くの時間を稼げるだろう。 他でも誰かが騒ぎを起こしているようだし…
 と、男は ほっと胸をなで下ろしていた。

「くっ… 高音ちゃん、大丈夫か?」

 締め付けられ拘束される事に慣れた横島が、同様の目に遭っている高音を気遣う。

「なん、とか…」

 簡単には解けそうにない拘束に、彼女は苦しそうに答えた。

 とは言え、慣れている横島に比べ、余裕が無いのは明白だ。
 横島は躊躇わず切り札を切った。 片手の内に取り出した2個の文珠に、刻み込んだのは『脱』『出』の文字。

 そんなあからさまな動きを、男は見逃してくれなかった。

「うぎゃっ?!

 締め上げる力が突然強まり、横島が悲鳴を上げた。
 反射的に愛衣が男へと炎の矢を撃ち出すが、僅かな本数のソレは当然の様に避けられ ただ空しく地面を弾けさせるだけ。

 だが、それが場面を動かした。
 弾かれた砂礫の一つが、横島の伸ばされた手を打ち据えたのだ。

「いっ?!!

 夜目に仄かな光が二つ、彼の手を離れて宙を舞う。
 バラバラに飛んだ一つは草むらに転がり落ち、一つは高音へと当った。

「…えっ?」

 唐突に失せた圧力に、当惑の声が上がる。

「お… お姉様?!
「ぬほっ」

 同時に、愛衣と横島の、場にそぐわない響きの声も。

 白い男もまた、あっけにとられていた。
 全裸で立ち尽くす、少女の姿に。

「えぇい、はずれろ、このっ そこに桃源郷があるんじゃ、外れんかっっ!!

 鼻息荒く横島が身を震わせる。
 そこで当の高音も、漸く自分の状況に気が付いた。 服も白い触手も全て『脱』ぎ落とす事で、拘束を逃れられたのだと言う事に。

「いやぁ〜〜〜っっっ!!
 なぜっ? なんでっっ?!

 叫びながらも『黒衣の夜想曲』を展開すると、目の前で鼻を伸ばしていた横島と彼を拘束している白ミミズとを反射的に殴り飛ばす。

「なんでや〜〜っっ?!

 感情の高ぶりがソレだけの力を呼んだのか、横島はお空の星の一つとなった。

 

 

 

 背後に巨大な人影を背負った少女に見据えられ、男はそのキツい視線に意識を戻す。

「くっ…」

 けして余裕の無い魔力残量に無理をさせて もう一つの白ミミズを創り出すと、団子の様に丸く歪ませたその中へと身を沈ませた。

「えっ?」

 愛衣が思わず声を上げる。

 ソレがこの男の、近接戦闘での攻防一体モードだった。
 中に彼が居る限り、再生は早くなり力も強くなる。 一気に破れるほどの力を用いない限り、男に攻撃が届く事も無い。

 勿論、今まで使っていなかったのには理由がある。 

 転がる以外での移動速度が、いいとこ普通に歩く程度でしかないのだ。
 転がった場合はもう少し早くなるが、長時間続けると三半規管に異常を来す。 …つまるところ目が回ってしまい、その後の行動が著しく損なわれてしまうのだ。

「っ、このっこのっこのっっっ!!

 そんな白い物体へ、八つ当たり気味に巨大な影の腕が打ち込まれる。
 が、ソレに合わせて、触手が白いダルマからも打ち出された。

 拮抗するかに見える状況だが、しかし高音には彼女をサポートする手があった。

「メイプル・ネイプル・アラモード!!
オムネ・フランマンス・フランマ・プルガートゥス
 ものみな焼き尽くす浄化の炎、
ドミネー・エクスティンクティオーニス・エト・シグヌム・レゲネラティオーニス
 破壊の主にして再生の徴よ、
 イン・メアー・エンス・イニミークム・エダット
 我が手に宿りて敵を喰らえ」

 聞こえてきた呪唱に高音が即座に後退する。

「お姉様、行きますっ
 フラグランティア・ルビカンス
 紅き焔っ!!!!!

 側面からの劫火に白い塊が包まれる。

 だが、一気に燃やし尽くされるほど、その塊は脆くなかった。
 大きさを減じながらも、炎の中からソレは抜け出てきた。

「そんな…」

 愛衣にとっては最上級の攻撃呪文だ。
 だが気を取り直すと、彼女は再び同じ呪文を唱え始める。

 合わせて再び飛び込んだ高音の猛攻とに、男もさすがに脅威を感じてか、転がりながら逃げ出す。

「待ちなさいっっ!!

 そう言われて待つ筈も無い。
 陽動としてはほぼ失敗としか言い様が無いが、命有っての物種である。 残る魔力もけして多くは無いのだ。
 殉ずる様な仕事でも無いし、この男にとってここでの逃げの選択は当然のものだった。

 意想外に早いその動きに、高音は焦った。
 だが、慌てて追おうとした脚はすぐに止まる。

「……え゛っ?」

 男の口から、間抜けな音が零れた。

 その視界には、自分の意に反して彼を吐き『出』し、前へ前へと転がり続ける白い塊。
 その足元には、草むらの下、淡い輝きを放つナニカ。

 背後の威圧感に、ギギギと軋ませる様に首を向ければ、額に血管を浮かばせた少女の笑顔。

「あー、その、なんだ…」

 意味の無い言葉が口をつく。

 何時の間にか光を取り戻した常夜燈の下、高音は無慈悲に口を開いた。

「愛衣。 おやりなさい」

 男の愛想笑いに、彼女の背後から炎が襲い掛かる。
 静かな林の中、男の悲鳴は大きく響き渡った。

 

 

 

 【漸くか… 待ちかねたぞ、馬鹿者が】

 


 ぽすとすくりぷつ

 お久しぶりです(__)

 最早、出し尽くされちゃったネタですけど、『脱』で高音ちゃんが脱がされちゃうのはお約束と言う事で(^^;
 書き始めた当初から考えてたもんで、使わないのもナンだしなぁ、と(苦笑) 時間を掛け過ぎる私が悪いんですが… orz
 もうじき2年だよ、コレ書き始めてから(^^;

 で、次は殴り飛ばされた横島のその後(笑)


 
 

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