高音・D・グッドマンにとって、横島忠夫と言う一つ上の青年は、なんとも評価のし辛い相手だった。

 彼女にとって重要な価値観である『有るべき魔法使い』と言うソレにおいて、少なくとも精神面では問題外以外の何者でもない。
 使命感なぞろくに無く、ちゃらんぽらんと言うのが彼ほど当て嵌まる人間は、この広い都市内でもそう多くは居ないだろう。
 一定対象に対するあからさまな欲求の発露……あえて言ってしまえばセクハラ行為だ……も、言うまでもなく減点材料だ。

 だが、だからと言って完全に拒絶する事は、彼の数少ない良さも知っているだけに選び難い。

 客観的に見れば高音自身からして、彼の助けの手を繰り返し差し伸べられてきているのだ。
 それに愛衣からの報告で、少なからず横島が善意での行動をしている事も知っている。

 少なくとも人見知りする所のある妹分が、気が付けば懐いてしまっているくらいには、良い所もある男なのは確かなのだ。

 

 

 


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その21   
 
逢川 桐至  


 

 

 

「…と言う事で、今夜の配置に変更はありません」

 しずなの言葉に、場に集まった魔法先生たちは一斉に頷いた。
 …一人以外は。

「それなんじゃがのぉ…」

「なんでしょう?」

 聞き返すしずなに、ただ一人の例外であった学園長が答を返す。

「状況次第で、彼をぶつける事も検討しておきたいんじゃよ」

「彼と言うと、まさか…」

「うむ、ガンドルフィーニ君の懸念通り、横島君の事じゃ」

 ガンドルフィーニの苦い顔にそう話し掛ける。

「彼が麻帆良に来てもう20日。 そろそろ彼に対するスタンスを、確定しておきたいんじゃよ。
 主立った者の目が集まる事になるし、彼のお披露目に使えんかな、と思ってな」

 魔法に対する不自然な抵抗。 それを成している魔力とも気とも異なる使用エネルギー。
 ある程度進んだ調査が、彼の言葉に対する裏付けにはなっている。 荒唐無稽な出現理由も、照らせば信用出来なくもない。
 繰り返された夢への侵入で、得られた断片を繋ぎ合わせた推論もまた、その事を支持していた。

 この世界において、彼は何処にも属さない異能者なのだ。
 そうなってくると、個人としての彼を今後どう扱って行くかに焦点は移る。

 排除は心情的に選び難い。 困った所の多い人間だが、しかし悪質な人間ではないのだ。
 だから、受け入れると言う方向には確定していた。 問題は、組織として彼をどこまで内側に置くべきか、である。

「うーん…
 彼、微妙にものを考えてない節が窺えますからねぇ…」

 明石の言葉に、何人かから苦笑が漏れる。

 ここに居る面々には、ガンドルフィーニと高音たちによるレポートが公開されているのだ。 執筆する少女たちが真面目に書けば書くほど、内容がどんどんおかしくなっていくソレを。

「そうですね。
 今のままでは、倫理面だけでなく知識面においても、見習い魔法使い並みが精々でしょう。 暫くは、その位置を保つしかないのではありませんか?」

「シスターのおっしゃる通りでしょうね。 取り敢えず、現状維持で相応に教育を、とするのがベターではないかと。
 あまり面白がって引っ掻き回すのは如何かと思いますが?」

 シャークティと明石の続けての言葉に、ガンドルフィーニはホッとした顔をし、学園長はささっと視線を逸らした。
 この場の面々は、近衛近右衛門と言う人間が時として、リスクを承知で面白さに重点を置く事が有ると知っている。 なればこその反応だ。

「それに、例年通りだと今回も余計なサーチャーが紛れ込もうとするでしょうから、どの道ソッチに当てる事になるんじゃないですか?」

 会議の場と言う事で吸えない煙草を指先で玩びながら、タカミチが続けてそう口にする。

 今夜のメインステージは、これからの麻帆良の先行きをも左右する大きな舞台なのだ。 万が一の為に一線どころが集められているから、警邏には見習いを含む面子を当てざる得ない。

「少なくとも戦闘能力では、ここの人間の中でも上位の者に匹敵するからね、彼は」

「そうですわね。
 高畑先生とあれだけ遣り合えるのは、魔法使いの中でも一握りでしょう」

 こと、戦闘能力においては、信頼に値するだけのモノを持っているのだ、あの少年は。
 その事もまた、この場に於いては周知の事実。

「まぁ、じゃからエヴァ嬢には、判り易いカタチで紹介しときたかったんじゃがの」

 学園長のそんなボヤキに、あぁなるほど、とタカミチは目を細めた。
 かつての賞金首でもあった彼女の事は、クラスメートだった事もあって彼がこの場では一番良く理解している。

 エヴァンジェリンは、他者を見定める際に能力の大きさにも相応の敬意を払う。 その事は、タカミチには自明の理。
 普段の横島の事を思えば、学園長の考えは良く理解出来るのだ。

 なにせ、あの少年の普段の素行ときたら、一見では内に秘めた凄さをロクに感じさせない。
 英雄にすら匹敵し得そうな能力を持つのに、歴戦どころか新米の気概すらないのだ。 本気のカレを見させる為には、横島をしてそうせざる得ない場を設けるしかない。 …例えば、以前タカミチと行った模擬戦の様な。
 それとて餌をぶら下げてだから、先入観を持たぬまま噛み合わせる事は、確かに大きい意味がある。

 とは言え。

「まぁ、でも、今回は避けといた方が無難でしょう。
 ネギ君の今後にも関わりますから、あまり大きいイレギュラーは抱え込みたく有りませんし」

「そうか…
 そうじゃの、仕方有るまいて」

 しぶしぶながらも隣に座る老爺が納得したとみて、しずなは〆に入った。

「それでは、以上をもって会議を終了します。 各自、今夜に備えた準備をお願いします」

 

 

 

「ふぅあぁぅわぅぁぁ…」

 ずるずると引き摺る音に重ねて、大きな欠伸が横島の口から流れ出る。

「みっともないですよ」

「そーゆーたって、高音ちゃん。 連チャンじゃあ、やっぱ眠くなるって」

 不機嫌そうな叱責に、気の入らぬままの様子で答える。
 停電に合わせての、本来の勤務時間よりかなり早い内からの招集。 それも普段と異なり連夜での、と言う事もあって睡眠も足りていない。
 横島ならずとも、やる気が下がってしまうのは仕方なかろう。

 愛衣も、納得混じりに苦笑する。

「眠いのは、確かにそうですけど…」

「気の緩みは何かあった時の行動に影響するんですから、もっとしゃんとして下さらないと」

 まだ停電が始まるまで数分有るが、だからと言って気を緩めていられるほど、今日は楽に済まないだろう。
 それが判ってるからこそ、高音は彼の言動に不機嫌さを隠さないのだ。
 加えて。

「時に高音ちゃん」

「なんですか?」

 振り返らず、少し固めの声音で聞き返す。

「そろそろ解いてくんない?」

 何をか、は言うまでもない。
 高音の傀儡が引き摺る、やはり影のロープの先。 横島をグルグル巻きにしている彼女の影の帯を、だ。

「はぁ… 仕方有りませんね」

 呆れを満面に、パチッと指を鳴らすと全ての影が解け彼女の下へと戻って行く。

「あぁ、しんどかった」

「どうしてこうなるって判ってて、あんなことするんです?」

 こきこきと首を鳴らして伸びをする彼に、愛衣が小首を傾げて問い掛ける。

「愛衣ちゃん、漢には判っていてもやらなきゃならない事が有るんだよ」

 ふっと無意味に笑って曰う彼に、二人の生温い視線が向かう。

 突然の風にスカートが捲くれた女性に、誘ってるんですね〜、と飛び掛かったのだ、この男は。
 それを、苦難を越えてでもしなければならない事なのだと言われても、呆れる以外の反応なぞ返せまい。

 そんな気の抜けた空気は、しかし停電のアナウンスと共に消え失せた。

「えっ?」
「コレは…?」
「なんだなんだ?!

 普段 灯が絶えないだけに、それが一斉に消え失せたとなれば、最早 周囲は闇の中。
 一部とは言え感覚情報が途絶えれば、それだけ他の感覚が研ぎ澄まされる。 その故に気付けた巨大な気配に、3人は一斉に身構えた。

「エライ剣呑な気配だな、こりゃ…」

「私たちもあちらに向かった方が…」

 それが『闇の福音』の復活の狼煙と知らぬとも、あまり良いナニカであるとは思えぬ故に、愛衣はおずおずとそう提案する。 感じ取れた方向が、自身の住まう学生寮の方だったのも大きい。

「…う」

 高音も、それに思わず頷き掛ける。
 何を置いても、放置する訳には行かない気配。 彼女はアレをそう捕らえたのだ。 実際、放置出来る様なシロモノではなかったし、高音たちには知らされていないが、対応する為の人員は今夜の動員の実に50%に届いている。

「愛衣ちゃん、わざわざ危ないトコ行こうとせんでも。
 ガンドルの先生だって、持ち場を任せたって言ってたしさ」

「ですけど…」

「アレが陽動だったり、アレと関係なしに他のが便乗してきたりしたら、それはそれで拙いんじゃないか?」

 横島は、言うまでもなく面倒な目に遭いたくないだけだ。
 見た目にも退け腰になっていて、その内心は高音たちにも目に見えて判る。

 しかし、言っている事自体は正論だ。
 しかもそれは、経験に裏打ちされた実感を伴っている。

 加えて、ここに居ないガンドルフィーニが、彼女らに言い置いていった事もあった。

「…そう、ね。
 今日は都市中の魔法使いたちが動員されている筈ですし、私たちが行っても邪魔になるかも知れないわ。
 それよりも、先生から任されている仕事を、やり遂げる事が重要よ」

 自身に言い聞かせる様に、高音はそう口にした。
 ガンドルフィーニも、前々のスケジュール通り、定められた配置に入っている。 その為、この場には来ていないのだ。
 である以上、彼女の責任は小さくなかった。

「んじゃま、このまま持ち場の巡回を続けっか」

 

 

 

「言ってるそばから、コレだもんなぁ…」

 ズズズズと地を這いずるソレを遮る様に、横島と愛衣は立ち塞がった。

 白くぷよぷよとしたミミズ。 ただし、電柱ほどのサイズの。
 ビジュアル的に余り近付きたいソレではないし、あからさまに囮以外のナニモノでもないが、自由にさせておく訳にもいかない。
「行きますっ!  サギタ・マギカ ・ セリエス・イグニス
「行きますっ 魔法の射手・火の七矢!!

 箒を手に愛衣が唱えると、産み出された炎の矢が立て続けに頭と思しき場所へ降り注ぐ。

 矢が当たる度に少しずつ削れて行くものの、そのもの自体は健在だ。
 とは言え、前進する動き自体は止められた。

「行きなさいっ」

 そこへ後ろに回り込んでいた高音が、6体の影傀儡を差し向ける。
 それに合わせて、横島も栄光の手を出しながら走り出した。

「ん〜どぅおぉりゃあぁぁっ!!

 傀儡たちの総掛かりで、その長い身体は抑え込まれている。
 そのど真ん中へと、横島は光る剣を振り下ろした。

 ジュッと、触れる先から蒸発するように断たれていく白い肉。
 だが真っ二つになったソレは、抑え付けようとする3体ずつをものともせず、暴れまくって動きを止めない。

「え、そんなっ?」

 愛衣が愕然とした声を零す。

「どっかに核があんのかも知れんけど、判らんっ。
 けど、大して強くないからな、擦り潰れるまで叩きまくるぞっっ

 こう言うシロモノとの戦いに一番慣れた横島が指示を出した。

 見た限りでは一発で終わらせられる様な弱点は、どこにも見当たらない。
 と言うか、どこを見てもひたすら白くぷよぷよしているだけで、僅かにでも違う場所が存在していないのだ。 かつて彼が戦ったデミアンの如きタイプかも知れないが、だとしても今は力押しするしかなかった。

「判りましたわ。 メイっ

「は、はいっ」

 高音の一喝に、愛衣も箒を握り締め直す。
 彼女の矢でも容易に削れたのだ。 けして魔法が効いていない訳ではないのだ。

 3人の攻撃で、どんどん小さくなって行く。 終いには一抱え程度の塊にまで。

 …もう少し。
 それぞれがそう思った瞬間だった。

「ぬぁんですとぉっ?!

 もう一押しで消え去りそうなソレが、まるでマヨネーズか何かが押し出されてくる穴の様に、白い肉の紐を吐き出してくる。

「なんで?!

 魔法で再生しているにせよ、使い魔の類いにあるまじき再生速度だ。
 あっと言う間に、最初に見掛けた時の電柱ほどのサイズまで復活する。

「一気に消し飛ばさないとあかんっつー事か?!

 言いながら、横島は掌に奥の手を取り出した。
 そこへ掛けられるカードを介した念話の声。

『横島さん』

 見れば、ガードの傀儡の影でカードを構えた高音の姿。

『ん?』

『アーティファクトを。
 アレの魔力の流れを追って欲しいんです』

 言われるままに、横島はバンダナの下にいれっぱなしの……わざわざ取り出して額に当てずとも念話を可能とする為だ……パクティオーカードを取り出す。
アデアット
「来いっ」

 現われた鼻眼鏡を即座に装着すると、彼は高音の要求通りに巨大ミミズへと目を向けた。

 

 

 

 【まだまだ続くアルね】

 


 ぽすとすくりぷつ

 また読み違いを… orz
 なんか想定の半分しか進んでないのだな、今回。 ここ数年、事前のコンテでの予定より、長くなっちゃうのが定着してきちゃってるなぁ(苦笑) このミミズ、引っ張るネタとちゃうのんに…

 次回、エヴァが出るトコまで届くんじゃろーか? それは、私自身にも謎なのだな(^^;


 
 

前へ
戻る
次へ

 

感想等頂けると、執筆の糧になります。 お手数でなければお願いします。
  

タイトル

お名前をお願いします。
(任意)

差し支えなければ、メールアドレスをご記入下さい。
(任意)

ご感想・コメントをお願いします。

入力内容を確認後、下のボタンを押してください