「うおぉぉおぉぉぉっっ
 超・必殺っ!! 漢魂ぁっっっ!!!

「んにゃあぁ、ソ、ソーサーぁっ!!

 迫り来る暑苦しいまでの漢の臭いを纏ったソレを、サイキックソーサーで迎撃すると、そこへ更なる攻撃が来る。

「隙ありっ、裂っっ空掌っっ!!!

「のぁあぁぁぁっっ?!

 続けて飛んできた空気の刃をどうにか躱すと、動線を遮る様に別の漢が立ちはだかる。
 ちょっとばかり見目のいい顔に反射的に蹴り飛ばすが、そいつもハンパじゃない。 飛ばされたベクトルをそのまま三角蹴りの要領で変えると、横島の懐へ飛び込んできた。 慌てて飛び退き避けるが、そこへ更に長衫姿の髪をぼさぼさに伸ばした男が拳を放つ。

「なんで俺がこんな目にぃぃ〜っっ?!!

 情けない声で嘆き叫ぶ横島を、男ばかりで構成されている集団が追い続ける。

 愛衣との待ち合わせは午後2時。 その前に食事を済ませておこうと早めに寮を出た彼の前に、既に包囲網を張って待っていたのだ、この連中は。
 それからかれこれ30分。 そろそろ真昼になろうとしている今になっても、横島は振り切れずにいた。

 理由は明白。
 この男たちは、二種類の集団の混成団体なのである。
 一つは、横島曰くの、『み な し ご ど も
 一つは、横島曰くの、『彼女無き輩達』。
 追撃して来る連中全体の内、9割がそいつらで占められている。 単純に言えば、本校男子生徒の群れだ。 こいつらだけなら、彼にしても数が厄介なだけで逃げるのは難しくない。

 問題なのは、残る1割弱だった。

 先程から「魔法の秘匿、ナニソレ?」とばかりの物騒な攻撃を仕掛けて来る、年齢層もバラバラの漢たち。
 中村達也を始めとした、超常の技術を有した戦闘民族どもの存在が、この上なく厄介だった。

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その19   
 
逢川 桐至  


 

 

 

 情けなく逃げ惑う横島を追う漢たちの顔は、しかし喜びに溢れている。

「聞いてた通り、やるじゃねぇか、あいつ」

「あぁ、アンタもな」

 超ラン、リーゼントの漢の言葉に、中村も頷き答えた。

「アンタは、今日からか。 俺は本校男子高等部の中村達也」

「大学部、豪徳寺薫だ」

 ニヤリと口の端を歪ませ、親指を立てて答える。 追跡劇を繰り広げながらなのだから、なかなかに余裕のある行動だ。
 尤も、初日と違い数人掛かりでの攻撃をし掛けられているから、横島の逃げの速度は以前をかなり下回っているのだが。

「あっちのは…」
 スリーディー
「『3 D』 の山下だな。 見たのは初めてだが、噂は聞いた事がある。
 向こうの拳法遣いは知らないが」

「あぁ、あっちも今日が初だ」

 わくわくした気持ちを隠さず、中村は彼らの戦い様を見据えていた。

 たった3日なのだ。

 横島を追う様になってまだ3日。
 その僅かな間に、麻帆良に来ての2年の日々が嘘だったように、自分と腕を競える漢たちが次々と現われた。 まるで誘蛾灯に誘われた虫の様に。 自身を虫と例えるのは余りいい気持ちがしないが、だが横島は確かに強い光を放つ存在だった。 あまりに広い学園都市、そこに通う数多の生徒たち、その中の僅かな強者を呼び集めるほどのキャラクター。
 アレで逃げずに戦ってくれたら、尚 良いのだがと胸の中で嘆息する。

 似た様な思いを抱いていたのだろう豪徳寺も、だが視線を定めたままそれでも嬉しそうに笑った。

「あいつらとも、後できちんと遣り合いたいな」

「ああ、アンタとも楽しい戦いが出来そうだ。
 だが…」

「うむ、今はあいつだな」

 リーゼントの指し示す先。 躱し・避け・弾き・逃げを繰り返す男の姿を見詰めて、中村は深く深く頷いた。

 何せこれだけの数で掛って尚、足止めにすら成功していないのだ。
 故に、この場の誰よりも強いと、他ならぬ この漢たちがそう認識している。 少なくとも、彼らにとってはそれが真実だ。 …追われる当人にとってみれば、誤解以外の何物でもなかったとしても。

 だからこそ、横島を追う遣い手は減らない。 いや、減る筈が無い。
 この漢たちは戦いたいのだ。 出来るだけ強い相手と、己が力の限りを尽して。

「にょわっ、はわっ、とわっっ
 いいかげんにしやがれ、ちくしょおぉぉぉっ!!

 曰く有象無象が十重二十重に包囲網を敷き、遣い手たちが隙を突かんと入れ代わり立ち代わり攻撃を繰り返す。 それを泣き言混じりの横島が避け、どうにかして逃げようとする。

 そんなルーティンワークを止めたのは、外から掛かった声だった。

「あ〜、横っちだ〜」

 場にそぐわない甲高い声に、視線が一気に集中する。

 そこに居たのは、物おじしないツーテールの少女と、視線にビクついたシニョンの少女。
 春らしい柔らかな色合いのカーディガンと、動き易そうなキュロットと言うお揃いの組み合わせが、その容姿と相まって なかなかに可愛らしい。

「こ、今度は小学生か?」
「くっ… 横島の分際で…」
「美少女双子萌え〜」
「モテヤロー許すまじっっ」
「ロリはいかん、ロリはっっっ
「おうとも、巨乳こそ至極っ」

 なにやらちとアレな呟きが多々混じって居るが、ともかく細波の様に包囲組から瘴気が湧き立っていく。 今更言うのもナンだが、襲撃側の9割は しっとマスク予備軍なのだ。
 逆に、バトルジャンキー
 逆に、 『漢 た ち』 の集中が途切れた。
 1対多くらいならまだしも、人質を取る様なハンディキャップ・マッチは、彼らの望む所ではないのだから。

 そんな極端な理由での硬直した空気を割いて、一陣の風が吹き抜けた。

「うわは〜い〜
「なんなんですかーー?!

 遠くなって行く双子の嬌声に、我に返った集団がその後を追って走り出す。

「ちっ、今日はここまでだな」

「…あぁ」

 一部の漢たちを残して。

「なぁ?」

「ん?」

「ガム食うか?」

「有り難く貰うわ」

 

 

 

 午後1時。
 学園中央駅近くのSTARBOOKS。

「はぁ、ふぅ、はぁ…」

 その屋外席で、横島は へたり込んでいた。

「横っち、凄いよね〜」
「うん、楓姉くらい早かったですー」

 当然の様に奢らせたドリンクを啜りながら、史伽と風香は頷き合う。

 遣い手連中が居なければ、横島にとって逃げ切るのは容易い事。 愛衣一人より重くなったとは言え、鳴滝姉妹程度の重さなら誤差の範囲でしかない。

「あれ? ゆえ吉だ。 ゆえ吉〜」

 通りに向かって、不意に風香が声を掛けた。
 彼女の視線の先には、裾の短い上着に白いブラウス、チェックの巻きスカートを身に着けた、長い黒髪の小柄な少女。

「風香さん、史伽さん…?」

「今朝ぶり〜」
「一人なの? 珍しいねー」

 セットの様な級友の姿が見当たらないのに気付いて、史伽がそう問い掛ける。
 今朝の朝食の席でもそうだったのだが、誰か一人居れば残る二人も側に居るのだ、大抵は。 それだけに気になったらしい。

「二人は昨日の疲れでまだ沈んでるです。
 私は、頼んでいた童話が届いたと連絡が有ったので、それを受け取りに…」

 言い掛けて言葉が途切れる。

 見知らぬ同席者に今初めて気が付いて、彼女は二人に目で問い掛けた。
 返されたのは、簡素でけれど聞き流せない言葉。

「横っちだよ〜」
「楓姉とこのかさんの知り合いだってー」

「このかの?」

 楓と一緒に上げられた、より親しい名前に首を傾げた。
 ルームメイトたちほど頻繁に一緒にいる訳ではないが、彼女たち以外では最も親しいといっていい。 それだけに、ある程度の交友範囲は諳じているのだが、その中に目の前で伏せる男に該当する者は居ない。
 且つ楓の知り合い、ともなると、どう言う関係なのかまるで判らなかった。

「横っち〜」

「ん〜?」

 隣から風香に揺すられて、横島が顔を上げる。
 何時の間にか増えていた見知らぬ顔に気付くと、姉妹へと口を開いた。

「あー、なんつーか やっぱり小学生にしか見えんのだが、同級生か?」

「いきなり、随分失礼な人ですね」

 答えたのはムッとした夕映だ。
 風香たちは、無言でテーブルの下の彼の脚を蹴っている。

「ったってなぁ、木乃香ちゃんとかだけならともかく、楓ちゃん見ちまうとなぁ…
 つか、二人共 痛いからいい加減やめれっ」

 その返事には、さすがの夕映にしても言い返せる言葉が無い。
 バラエティ色豊かな3−Aの中、尤も大人びている体格の者たちと較べられては、確かに子供にしか見えないだろう事に納得せざる得ないからだ。

 とは言え、納得がいくのと不満を感じないのとは別の話。
 そも人は真実を突かれた時ほど不快に思うものだ。

「ゆえさんも何か頼むといいですよー」

「そだね〜
 横っちが奢ってくれるから、ナニ頼んでもいいよ〜」

 人見知りが激しく、常識的で礼節にも緩くない彼女が、それでも即座に姉妹の提案に乗ったのは、だから仕方のない事だろう。

 文句を言い掛けた横島だったが、出て来た注文に思わず言葉を失くした。

「でしたら、私はこの抹茶ドリアンソーダを」

 メニューを見て、誰が頼むんだこんなモノと思っていた代物が、躊躇も惑いも何もなく飛び出て来たからだ。
 彼にしてみれば、自ら罰ゲームに飛び込んでいるようにしか見えない。

 絶句する彼を横目に、姉妹は苦笑いでさっと流す。
 彼女のドリンクに対する感性は、クラスでは知らぬ者が居ないのだ。 普段から、かなり変わったドリンクばかり飲んでいるのだから、当然だが。

「さすが、ゆえ吉だよね〜」
「そこにしびれるですー」

 プロ意識からか ごく普通の様子でウェイトレスが運んできた、えもいわれぬ香りを放つ国防色に泡立った謎のドリンク。
 それを見て、思わず横島の口からゲッと言う音が零れた。

「…なんか、飲んだ人間が痺れちまいそうだな」

「ムっ…
 未知なるモノに対する好奇心を失くすようではお終いだと、ある学者も語ってるです。
 何か問題でも?」

 顔色も変えずストローを咥える少女に、横島の腰は退け気味になる。
 可愛らしい格好も、10年後が楽しみな容貌も、ナニか色々と台無しだった。

「い、いや、お嬢ちゃんがいいんならいいんだが…」

 その言葉に、不意に気付いて夕映は彼に向き直った。

「遅れたですが、私は綾瀬夕映と言います。
 二人やこのかたちのクラスメートです」

「あぁ、確かにイマサラな気もすっけど、俺は横島忠夫。 男子高等部の3年だ」

 横島の自己紹介に、再び夕映の顔に疑念が浮かぶ。
 やはり木乃香との関係が判らない。 他の誰はともかく、のどかとハルナ、それに次いで木乃香は、彼女にとっては別格なのだ。
 問い質したげな夕映に先じて、あっさりと答を明かしたのは鳴滝姉妹だった。

「桜通りで本屋ちゃん見付けた時に〜」
「このかさんの手助けして運んでくれたんだってー」

「のどかを?」

 更に出てきた無視出来ない名前に、夕映の視線が横島へ向かう。
 確かにその話は、彼女の記憶にも有ったからだ。

「あなたが?」

「こんな娘の事か?」

 そう言って、彼はぼさぼさの前髪をバサッと顔の前へと下ろした。
 1度見掛けただけだと言うのに、良く特徴を掴んでいると言えばそう言えなくもない。 女の子の事となれば、横島の記憶力は常の数倍では利かないのだ。 まして、対象外とは言えあんな出逢い方をすれば、それはもう当然と言えよう。

「そうそう〜」
「似てる似てるー」

「なら、木乃香ちゃんに初めて会った時の事だな」

 思い返しながらの彼に、夕映は席を立って横島へと向き直った。

「でしたら、私からもお礼を言います。
 のどかを助けて下さってありがとうございます」

「ん? いいっていいって…
 俺がしたのは、頼まれてただ運んだだけだしな」

 手をひらひらとさせて苦笑する横島に、彼女は頭を下げて腰を下ろす。

「そうです、これのお金を…」

 気付いて財布を取り出す夕映を、再び手を振って止める。

「あー気にすんなって。 10年後の先行投資と思えば、二人も三人も大して変わんないしな」

「そうそう〜」
「そうですー」

「おまいらが言うなっつーの」

 キッと睨みつけると、てへーっと視線を逸らして二人は誤魔化しに掛かる。
 まぁ、学生向けの店のドリンクだ。 そう高い物でもないから、横島とて言うほど気にしていない。

「では、お言葉に甘えて」

 引っかかる単語を無視しつつ、財布をしまって夕映は再びストローに口を付ける。
 そんな彼女を、横島は何とも言えない目で見遣った。 飲んでいる物がモノだけにそれは仕方あるまい。

「あ〜 そうだっ それで思い出した〜っ!!

 急に上がった風香の奇声に、何事かと残る3人の視線が向かう。

「ねぇねぇ横っち横っち横っち〜
 ボクもアレ欲しいなぁ〜 ねぇ、ちょうだい〜」

 腕を掴んでブンブンと振りながらの甘えた声に、一瞬 横島の心がビクンと揺れる。 相手が高校生なら、飛び掛かっていたかも知れない。 尤もこの少女は進学しても見た目は余り変わりそうに無いので、微妙な所だが。
 ともあれ裡に動揺を抑え込んで、彼は尋ね返した。

「…って、ナニをだ?」

「楓姉や、このちゃんだけってズルくない?
 だから、お守り、ボクらにもちょうだい」

「あ、私も、ちょっと欲しいかも…」

 木乃香に渡った物イコール楓に渡した物だとは、二人共に気付いていないらしい。
 まぁ、楓は昨夜から山篭りに入っているし、今朝 木乃香に見せられるまで忘れていたから、確かめていよう筈も無いのだが。

「あぁ、今朝、このかが見せてくれた、あの丸い珠ですね」

 夕映もそれを見せられて居たらしい。
 その言葉で、横島も何を ね だ
 その言葉で、横島も何を強請られているのかに漸く気が付いた。

「アレ、楓ちゃんには あげてないんだが…
 それに、おまいらは いつもあんな目に遭ってる、ってんでもないんだろ? 木乃香ちゃんは探検部だから、いつもだろうけど」

「探検部で、あんな目、ですか?」

 次から次へと出て来る捨て置けない単語に、思わず夕映は問い掛けた。

「ケーキ美味しかったんだよ〜」

「お姉ちゃん… アレで言うのがまずソレですか?」

 返された二人の言葉に、余計に謎が深まる。

「木乃香ちゃんがさ、案内してくれるっつーんでさ、図書館島だっけ? アレの地下に入ったんだけど、いや、罠に引っかかるったら引っかかるったら…
 あんな事しょっちゅうやってんじゃあ、お守りの一つも要るだろうしさぁ」

「そっか〜 ゆえ吉も、いつもケーキ食べてるんだ、いいなぁ〜」

「このかさんも初めてだったみたいだし、それはないんじゃ…」

 横島と鳴滝姉妹との話の差に、夕映の困惑は更に深さを増した。

 

 

 

 【ケケ… マダマダ続クラシイゼ、オイ】

 


 ぽすとすくりぷつ

 ぢつは、奇数話偶数話で、AB構成になるくらいの感じで書いてたりするものだから、奇数話は特に半端な切れ方になり易いんですよね… orz
 …いや、今回は特に言い訳せざる得ない形になっちゃったもので(苦笑) 流れ的に、冒頭の追いかけっこを次回に周すのもナンだしねぇ。

 それはそれとして、この3人、私服だと小学生にしか見えないだろうなぁ、きっと…
 夕映はまだファッションそれなりだけど、双子なんかモロ子供服な気がするし(笑) いや、似合うと思うけどね、その方が。
 でも横島としては、つまんなかろうなぁ、たぶん。 可愛い女の子に囲まれてるってのに(^^;

 ちなみに、楓が山ん中でネギをシゴキだしたくらいの時刻です、今(笑)


 
 

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