来た時と似た通路を進んで5分ほど。
 小さな小ホールに一つだけ設置されたソレは、拍子抜けするほど普通な造りをしていた。

「おぉ、本気でエレベーターだ」

 木乃香を背負ったままの横島の呟きに、愛衣は苦笑した。
 確かにクウネルは あやしすぎる人間だったが、こんな所に居るならソレは関東魔法協会から配されている、もしくは承認されているとみて間違いないだろう。 ならば一般人が混じっていると知って、こんなところで嘘は吐くまい。

「直行便の様でござるな」

「なら、とっとと戻ろう。
 なんかもう精神的にどっとくたびれたわ、俺は」

 生理的に受けつけないのだから仕方有るまい。

「佐倉殿。 あい済まぬがボタンを」

「あ、そうですよね、はい」

 何せ楓も風香と史伽をそれぞれ抱えている。 愛衣も、彼女らの鞄を持っては居るが、一番手が空いている事には変わりなかった。

 B1Fのボタンを押すと、小さな震動を上げてエレベーターは動き出した。

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その18   
 
逢川 桐至  


 

 

 
 ひとけ
 人気の無い奥まった、パッと見には入り口からも直視出来ない様な場所。
 横島たちが出てきたのは、そんな一画だった。

「無駄に凝ってやがるなぁ…」

 イマサラなので、彼の口調も呆れが薄い。
 出るなり閉まった扉は、見た目 本棚そのものだった。

「うご、きません、ね… やっぱり」

 念の為、愛衣が力を入れて本棚を揺すってみたが、ほんの僅かにも動かない。
 周囲にも開ける為のギミックは見当たらないから、これなら確かに一方通行だ。 今回は横島たちが起きているが、いつもならココに出迎え要員が居るのだろう。

「聞こえて来る音からして、例の滝から遠くない部屋の様でござるな」

「だろうな」

 ドドドドッと言う滝の音は、そう遠い音ではない。 この部屋から出れば、もっと大きく聞こえるのではないだろうか。

「取り敢えず、このかお姉様たちを下ろせそうな、1階まで行きませんか?」

「確か談話室があったでござるな。 まずはあそこへ行くのが良いでござろう」

 両の腕の中で幸せそうに寝ている風香たちに目をやり、続けて横島に移動を促す。
 こちらも幸せそうな吐息を洩らす木乃香を背に、「だな、んじゃ行くか」と出口へと歩き出した。

 愛衣が扉を開くと、予想通り滝の音が少し大きくなる。

「あっちから聞こえて来ますから、こっちですね」

 見覚えのある通路だ。 音のおかげで、どっちへ向かえばいいかもすぐ判る。
 難なく辿り着いた1階の談話室で、取り合えずソファーに寝かせた3人の目覚めを待った。

「どこまで告げれば良いでござるかな?」

「そう、ですね…
 お茶の事と……コチラ側の事は省かなきゃいけませんから、疲れて寝てしまったみたいなので私たちで連れてきた、って感じに留めるだけでいいんじゃないかと」

 ちょっと思案しての愛衣の答に、楓も納得して頷いた。
 彼女も、最近級友絡みで裏の仕事は何度か手伝っているし、魔法界の事情や隠匿の理由も了解している。

「それより、どのぐらい寝てそうですかね?」

「アイツの考えなんか判りたくねぇけど、まぁ、そう長くなりそうなのは盛らないだろ?」

 嫌そうに答えたその時だった。

「ナニを盛ったんですか?」

 突然の闖入者は、愛衣や木乃香とそう変わらない体格の少女。
 帯びた大太刀に手を添えながら、それでも落ち着いた声は凛とした鉄の響きを持っている。

 引き離された後、更に入った邪魔に翻弄されつつ、漸く木乃香を見付けてみればこの様だ。
 自らに護衛を任ずる少女としては、看過出来る状況では無かろう。

「軽い眠り薬でござるよ。 相手は、恐らく学園長殿たち側の関係者でござろうな」

 だがすぐに返された楓のそんな答に、彼女は明らかにホッとして肩の力を抜いた。
 表情も目に見えて柔らかくなっている。 どんな気持ちでいるか丸判りだ、クラスメートたちの知る普段の彼女とは異なって。

 が、すぐにビクッと身体を震わせた。

「…あれぇ? せっちゃんやぁ…」

 眠そうな瞳を擦りながら、目を覚ました木乃香が声を掛けたからだ。

「し、失礼しますっ」

「あ…」

 いつも以上にぼんやりした声に、弾かれる様にして少女は踵を返して慌てて出て行く。

 止める間も無い。
 木乃香の伸ばされた手が、その内心を示す様にガクリと下ろされた。

「あの… お知り合い、ですか?」

「せっちゃんのこと?」

「えぇ」

 心配そうな愛衣の問い掛けに、こくりと首肯して彼女は口を開いた。

「せっちゃんなぁ、ウチの幼馴染やねん。
 小さい頃は いっつも一緒やったんやけど。 なんでやろなぁ… こっち来て久しぶりに会えた思たら、ちぃとも話ぃしてくれへんくなってて。
 ウチ、なんや嫌われるよなコトしたんやろか…」

 今の様に、手を伸ばせば逃げられる、を何度か繰り返しているのだ。
 のんびりしつつもポジティブな木乃香とて、避けられ続ければ暗い気持ちにも囚われよう。 それも理由が全く判らないのだ。 話をさえして貰えないのでは、彼女にはどうするすべもない。

「ん〜?
 けど、あの娘、木乃香ちゃんの事バリバリに気にしてるぞ? それも嫌う、じゃない方に」

「そぉ、やろか?」

「おう。
 俺の言う事じゃ信用出来ないか?」

 自信満々に見える横島に、ふるふると首を振って木乃香は小さく「おおきにな」と微笑み返した。
 そんな彼女の頭をくしゃりと乱暴に撫でると、楓にも視線を向ける。

「まぁ、横島殿の言う通りでござろうな。 嫌いなれば、あの様な心配は せぬでござろう」

 何か事情が有る程度は付き合いから察しているが、今は木乃香のフォローの方が必要だろう。
 そう判断して、ただでさえ細い目を細めて頷く。

「…と、そうでござる。 コレをお返ししてなかった」

 不意に気付いたように懐から取り出したのは、小さな丸い珠。

「あ、それ、さっき渡しとったお守りやな。 ウチにも見してくれん?」

 気が紛れると見たか、楓は横島に視線で尋ねる。
 頷き返され、すぐに木乃香へとそれを手渡した。

「わ〜 えらいきれいやなぁ…」

「本当ですね。
 けどこれ、何で出来てるんだろ?」

 しげしげと眺めつつ喜ぶ木乃香の手元を覗き込んで、愛衣も首を捻る。
 触れると硝子の冷たさも、プラスチックの柔らかさもない。 微かに光るそのシステムも、文字以外は完全に透き通っていて、想像する事も出来なかった。

 それでも、魔力もまるで感じないし安易に手渡されてもいたから、愛衣にはコレがこちら側に属する様には思えていない。

「内緒だ。 結構、霊験あらたかなんだけどな」

「う〜ん… これ、えぇなぁ…
 なぁ?」

 知る人ぞ知るだが、そう言うグッズコレクターだったりする木乃香には、まるで宝物かの様に見えている。
 いや、実際、ちょっとやそっとの金で替えられる様な代物ではないのだが。
 とは言え美少女に上目遣いで ね だ
 とは言え美少女に上目遣いで強請られては、抗える筈の無い横島だ。
 先の落ち込み掛けた様子を思えば、コレくらいの事で喜んで貰えるなら否やは無い。

 それに、彼女は『図書館探検部』なのである。
 今日の出来事を考えると、保険が有るに越した事はあるまいとも思えた。

 もし、実際に発動してしまった時。
 その時に、言い訳に苦慮するだろうなんて事は、今の横島の頭には無かった。

「…ん〜 ま、いいか。
 なんかお守り袋にでも入れてずっと持ってな、きっと木乃香ちゃんの事 守ってくれっから」

「ほんまに、ええの?」

「おう」

 わ〜いと喜んで大事そうにしまい込む彼女から、横島は視線を横へと移す。

「楓ちゃんはどうする?」

「拙者は… 大丈夫でござるよ」

 ちらっとだけ首を傾げて、楓は結局そう答える。

 受け取った時のシチュエーションと、今の木乃香への物言い。 それを思えば、アレが綺麗なだけの代物であるなどと取る少女では無い。 なまじ魔法側の知識が多くない事もあって余計に。

 だがそれでも、自身の能力に少なからぬ自負もある楓だ。
 それにどれ程の効能を示すにせよ、数多く有るとは考え難かった事もあって断った。 彼とは、そうそう親しいと言う訳でもないのだし。

 対して、この場で横島に一番親しい少女は、少々ご機嫌が傾いていた。

「…なんで私には聞いてくれないんですか?」

「へっ?
 その、ほら… 愛衣ちゃんは良く一緒にいるしさ、なんかあっても守ってあげられるし」

「えっ?」

 苦し紛れの言葉に、愛衣の頬が赤く染まる。

 横島的に対象外である以上、言葉通り以上の深い意味は無いのだ。
 だがまぁ、それでも面と向かってそんな言われ方をすれば。 それもある程度以上の好感や親しみを抱いている相手からとなれば、色々考えてしまうのも仕方ないこと。

 そこへ煽る様な言葉が掛かる。

「あれー? なんかメイちゃん赤くなってるですよー」

「ホントだ〜 きっと横っちがセクハラしたんだ〜」

「おいコラ、ちょっとマテや。
 なんでいきなしそんな結論になるんじゃ、納得イカんぞっっ」

 双子の起き抜けのトンでも発言に、思わず声が荒くなる。

「けどセクハラゆーたら、セクハラなん気も…」

 だが残念な事に、その点に関しては味方は誰も居なかった。

「な、なぜに、木乃香ちゃんまで?!

「女の子は繊細なんや、ゆーたやん。
 あないな風にゆわれたら、まるで告白みたいやぇ。 へんな気ぃ持たすみたいなんもダメやよ、判ってはるん?」

 これはこれと、諌められる。
 遅まきながら他意は無いと気付いた愛衣も、赤い顔のまま深く頷き同意した。

「くっ… 俺か? 俺がそんなに悪いんか、なぁ楓ちゃん?」

「まぁ、それはともかく、そろそろ出ようと思うのでござるが?
 風香たちも起きた事。 そう長居するのも躊躇われるでござるし」

 簡単にスルーされて、横島はガックリと肩を落とした。

 

 

 

「良く入るな…」

 ハーフボトルのドリンクをラッパ飲みする風香と史伽を見て、横島は小さく呟く。

 当直の図書委員の注意も受け、騒がしいまま一行は図書館を後にした。
 その道すがら、今度は双子に強請られて、それぞれにドリンクを奢る事になってしまったのだ。

 ただ、如何に小さめとは言え10個近いケーキと3杯のお茶を、ほんのちょっと前にその小さな身体に収めているのだ、彼女らは。
 彼でなくとも不思議に思うだろう。

「しかし、拙者らもご馳走になって良かったのでござるか?」

「あ〜 いいっていいって。
 可愛い娘たちへの先行投資と思えば、これっぽっち大した事は無いしな」

 ひらひらと手を振って答える。

 かつてのような激貧ではないとは言え、それでも底辺に近い給与の下。 にも拘わらずシロやタマモ、稀に雪之丞らにまで たかられていた横島だ。
 加えて今の懐具合は、長くない人生の中でも最も潤っていると言ってもいいのである。

「はぁ… 本当に横島さんらしい理由ですね。
 じゃ、これからは私も遠慮しませんから」

「あ〜、その、多少は控えて貰えると…」

「無茶やない範囲やったらええねんの?
 っ? アレ…」

 小さい震動に、木乃香がポケットから携帯を取り出す。

「おじいちゃんや… 今からって何の用やろなぁ?」

「どうしたのでござるか?」

「なんやおじいちゃんが呼んでるんよ。
 ウチ、学校に戻らなならなってまったわ」

 楓の問い掛けに、短いメールを見せて苦笑する。

「って、なんで学校なんですか?」

「メイちゃん、知らないんだー?」
「このかのおじいちゃん、学園長先生なんだよ〜」

 クラスの中では割と知られた事だ。
 あっけらかんとしたその言葉に、しかし横島は違う意味で驚いた。

「なにぃっ?! あの妖怪ぬらりひょんと、木乃香ちゃんの血が繋がってるって言うんか?!

「えっ? 本当なんですか、それ?!

 続く愛衣の、言外に横島と同意見だと言わんばかりの問い掛けに、木乃香は再び苦笑いを浮かべた。

「二人共ウチのおじいちゃん知ってはるん?
 てゆぅか、そないに似てへん?」

「全く

 間髪入れない彼の返事には、残る3人も引き攣った笑顔を浮かべるしかなかった。
 実際、彼女たちにしても、全く似てないとは常々思っていたからだ。

 と、再び携帯が揺れる。

「あん… なんやろおじいちゃん?
 そないやからウチ行くわ。 横島さんたちとも、また会えたらええな」

「おう、そうだな」
「そうですね。 またお会いしましょう」

 手を振って道を急ぐ木乃香に、横島は手を上げ、愛衣は頭を軽く下げて応える。
 続けて風香と史伽が掛けた「また明日〜」と言う言葉にもう一度手を振って、意外に早めの足取りで彼女は遠ざかっていった。

「そいじゃ、俺らもとっとと帰るか」

「そうですね」

 愛衣たち4人の帰る学生寮と、横島の暮らす職員寮とではそれなりに離れているのだが、途中までは一緒の動きになる。 都市内の主要路線である路面電車を使った方が、どちらに向かうにしても早いからだ。
 人目を顧みないなら、鳴滝姉妹はともかく横島たちには大した距離ではないのも事実だが。

「しかし、なんか色々疲れる一日だった…」

「確かに」

「まぁ、あの程度ならここでは珍しくない気もするでござるが」

 愛衣の苦笑混じりの返事に、楓が しかし軽く言ってのける。
 確かにと、横島も苦笑いで頷いた。

 

 

 

 【続きはそのうちに、でござるな】

 


 ぽすとすくりぷつ

 その出来る事に対し、横島の文珠への評価って低そうなんですよね。
 まぁ、自身に自信の無さ気な彼が、自分の能力に高過ぎる評価を持つのも何からしからぬ気がするので、私的解釈じゃそんなものですが。 凄く無いとか思ってるんじゃなく、俺程度で出来るコト、くらいな感じで(^^; 彼にしたら14文字使って時間移動とか、覚えてないし考えもしないでしょうから、大した評価にもならんでしょうしね。

 つーことで、使うとなったらポンポン使うし、無駄遣いじみた事も平然とします(笑)
 ここまでに存在の匂わせすらしなかったのは、単に必要がなかったってだけで。


 
 

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