辿り着いたのは、少し広めのテラス。
 例によって滝を背にしていたり、柔らかな陽射しが差し込んでいたりして、何処だココはと言いたくなるような空間だ。

 その手摺りの付いた端の方。
 先程のフードの男と思しき人影が、ローブを揺らして振り返った。

「ようこそ、私のペライベートスペースへ」
「ここは、学園都市の施設ン中だろうがっっ?!

 手を広げてそんな事を曰った男に、横島のツッコミが瞬時に入る。

「それは言わぬが華と言う物ですよ、横島忠夫くん」

 嬉しそうな返事に、しかしサッと顔色を変えて、横島は木乃香と愛衣を守る様に立つ。
 楓も背に双子を隠して、軽く腰を落とした。
 愛衣も動きに合わせて、木乃香をいつでも庇えるよう、即座に姿勢を正す。

 木乃香は状況について行けず、双子は観客と化して状況を見守る。

 そんな様子に、クウネルと名乗った男は、大仰に手をあげて顔を逸らした。

「おやおや…
 別にあなた方を取って喰おうとか、そう言うつもりは無いんですけどねぇ。 要らぬ警戒をさせてしまいましたか、ハッハッハ」

「そもそも、わざわざ罠で拙者たちを誘導しておいて、それを警戒するなと言われても…
 それこそ無理と言うものでござろう?」

「なるほどなるほど、それは確かに。
 これは1本取られましたね、フフフ」

 再び笑う男に、脳が足りないんと違うか、とか横島はつい失礼な事を考えた。

「で、なんの用だ?
 俺は野郎なんかにゃ、用は無いんだが」

「用、ですか…
 実は、ですねぇ」

 クウネルの方から、不意に強い風が吹く。
 纏ったローブの裾が、バタバタと大きく羽ばたいた。

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その17   
 
逢川 桐至  


 

 

 

「…ちょっとした悪ふざけです」

「なんっぢゃあ、そりゃあぁっ?!

 思わず、ズズっと滑り掛けた足を踏んばって、横島が叫ぶ。

「いえ、ね。
 私、諸般の事情によりココを離れる訳にもいかないものですから、日々 暇で暇で暇で暇で暇で暇で、本っ当に暇で…」

 右手を額に持って行きそのまま俯いて、そんな身も蓋も無い事を言い出す。

「なものですから、たまたま目に止まった活きのいい若い方々と、ちょっとお話でもしたいなぁ、などと思いまして」

「その為だけに、拙者たちを罠に?」

「ぶっちゃけ、そう言う事になりますね。 ハッハッハ…」

 緊張感も何もあった物じゃない。

「なら、何で横島さんの名前を?」

「それはヒミツです」

 愛衣の質問にピッと指を立て、ニコッと笑う。
 その様子に、簡単には口を割りそうに無いと、続きを口にするのは諦めた。

「さて、立ち話もなんですし… まずは腰を降ろしませんか、皆さん?」

 ふと見れば、大きめの白いテーブルが中央に『有った』。

「わぁ…」

 その上に置かれた美味しそうなケーキに惹かれてか、少なくとも一般人側の3人はその魔法のような不自然さに気付かない様だ。
 匂いに釣られて手近の席へと、風香たちはさっさと座ってしまう。

「大丈夫でしょうか?」

「まぁ、いざとなりゃ手品とでもなんとでも言って…」

 ぼそぼそっと愛衣と横島は言葉を交わす。

「さぁ、他の皆さんも席へどうぞ」

 そう言いながら、クウネルもさっさと椅子に腰を下ろした。

 顔を見合わせつつ、横島たちも仕方なく席へと向かう。
 ココまで来たら、毒も食らわば、だ。

「それはそれとして、その格好は失礼ではござらぬか?」

「む… なるほど、そうですね。
 では、失礼して」

 先に座った楓の指摘に、クウネルも頷くとフードを除けた。
 現われたのは無造作に髪を一房括った、どこかシニカルな年齢不詳の青年。 言うまでもなく、美形のカテゴリーに入っている。

「くっ、やっぱり美形かぁっ!?
 くそうくそうどちくそうぅっっ!!

「ぐはぁっ?!

 いつもの様にどこからか取り出した藁人形を、すぐ側の壁に打ちつけ出すと、クウネルが胸を押さえて苦しみだす。

「えっ、なになに〜?」
「何事でござるか?!

「よ、横島さんっ?」

 慌て出す周囲を他所に、ヒートアップする彼を止めたのは木乃香だった。

「そぉゆぅんは あかんて」
「ぬはっ?!

 言葉のテンションとは、まるで違う鋭い一撃。
 何時の間にか手にしていた鞄で、木乃香は彼の後頭部をドツいたのだ。

「何を?!
 って言うか、その鞄は何処から?」

「ん? なんやそこに置いてあったえ」

 見れば指差した先には、他にも横島たちや楓たちの鞄が置かれている。
 地下3階で落された時に投げ出され、何処かに行ってしまっていた物だ。

「い、いやいや、なかなか面白い方ですね」

 苦しかった事は苦しかったのだろう。 ちょっと荒い息で、しかしそれでも彼は笑ってそう言った。

「ただ、さすがにもう勘弁して欲しいですけど」

 ファサッと髪を掻き上げるその仕草も、横島を刺激すると気付かないのか。
 だが、横島も横島で動けない。

「そないな事しとらんと、ほら行くえ」

「は、離してくれ、木乃香ちゃん。
 俺は世のモテない男たちの為にも、騙されて捨てられてしまう美女たちの為にも、あーゆー美形は滅殺せにゃいかんのだぁっっ!!

 木乃香に取られた右腕を振り解く訳にもいかず。

「そ、そうですよ。 取り敢えず座りませんか?」

 ソレで横島を抑えられると気付いた愛衣も、左腕を抱かかえる様にして引き寄せる。

「あぁ、腕の感触が… い、いや、愛衣ちゃんも木乃香ちゃんも中がく… 
 ぬぅおぉぉ…」

 煩悶する彼を挟む様にして、二人は席へと着いた。

 横島が大人しくなったのを見て、クウネルは仕切り直して話し出す。

「フフフ… 少々想定外のハプニングもありましたが、ともあれ どうぞ召し上がって下さい」

「は〜いっ」
「あ、コレ美味しいっ」

 息急き切って双子が食べ出す。
 横島も愛衣と顔を見合わせた後、結局 目の前のケーキに手を付けた。

「む…
 こ、こら旨いっ。 うまうはがつがつくはっぱくむしゃ…」

「横島さん、もう少し…」

「いや、んな事言うたかて、こらうまぁ〜」

 恥ずかしそうな彼女を他所に、見事な食べっぷりを披露する。
 まるで欠食児童だが、元々彼はこんなものだ。

「そやなぁ、確かにこのケーキ美味しいもんなぁ」

 こちらは見事にマナーを守って、にこにことケーキを口に運ぶ。

「そうそう。 夕食まで時間もそんなに有りませんから、食べ過ぎには注意して下さいね、お嬢さん方」

 今更の忠告に、だが鳴滝姉妹は「デザートは別腹だから大丈夫だよぉ」と言って、お代わりを要求した。
 テーブルの上に置かれた大皿には、実に30個ものケーキが載っていたのだが、何時の間にか空になっていたのだ。

 木乃香と愛衣が口にしたのは、それぞれ2個。
 その間に、鳴滝姉妹が5個ずつ。

 残りはと言えば、横島と楓が平らげていた。

「おや、少々読み違えましたか…
 ではちょっと失礼して」

 クウネルは大きめのスカーフを取り出すと、それを皿の上に被せる。
 そして呪文を唱えスカーフを一気に引くと、大皿の上に再びケーキが現われた。

「おぉ…」
「すごいですー」
「マジックやぁ… かっこえぇなぁ」

 自身同じような事をやった癖に、横島はバレないかと肝を冷やし、愛衣も楓も口元を小さく歪める。

「ささ、どうぞ」

「けっ、なにカッコつけてやがる」

 そう拗ねながらも、ケーキに手が伸びる。
 幾つ食べる気なのだか、この男。

「あ、そのクリームシフォンは狙ってたのにぃ…」

「えっ? コレまだ手ぇ付けてないから食うか?」

 涙目の史伽に、彼女の皿を受け取って乗せ直してやると、風香からも「ボクはそっちのを」と給仕を催促される。
 さらに続けて木乃香からも。

「ウチ、そっちのマロングラッセがええな」

「ん、これか? ほいよ。
 愛衣ちゃんは?」

「え、じゃあ、私はそっちのババロアを」

 楓に尋ねていないのは、少女たちの中で一番長いリーチを活かして、さっきからひょいひょいと手を伸ばしていたからだ。

 そうこうしている内に、2皿目も空になる。

「いやはや、凄いものですね。
 紅茶だけではなくハーブティーも用意してあるんですが、いかがです?」

「は〜い、飲みまぁすっ」

 真っ先に声を上げた双子だけでなく、残りの少女たちも頷いた。
 それを見て、クウネルは新しいティーカップを取り出し、やはり新たに取り出したティーサーバーからお茶を注いでいく。

「さ、どうぞ」

「いい匂いー」
「だね〜」

「ほんま美味しいわぁ」

「ホントですねぇ」

 いきなりガブ飲みした横島以外、ゆっくりと味わう様に喉を潤す。

「さて、一息つけた事でござるし、そろそろよいでござるか?」

「なんなりと」

 頬にクリームの跡を残しつつも、きりっと表情を変えて楓が尋ね掛ける。

「ここは何処でござるか?」

「あ、それ、ウチも気になってたん。 落ちた感じやと、6階辺りやろ思うんやけど…」

 簡易概略図を思い浮かべても、記憶してる限りでは合致しない気がするのだ。
 まぁ、木乃香にしても低階層の全てを周った訳ではないので、まだ見ていない部分と言うのは有り得る話だったが。

「それもヒミツと言う事で。
 あ、帰りはちゃんとお送りしますから、その点はご安心を」

「まぁ、そんならええけど… ふわぁ」

 軽く欠伸を洩らしつつ、木乃香はこくりと頷く。

「なれば、もう一つ」

 視線でクウネルが促すと。

「なぜ、拙者たちのお茶には薬が盛られていないのでござるか?」

「ナニ?!

 言われて、横島も気が付いた。
 鳴滝姉妹は、どうやらちょっと前から夢の中。 見れば、木乃香も頷いた時の姿勢のまま、こっくりこっくりと舟を漕いでいる。

「ここの事は、関係者以外には出来るだけ知られたくないんですよ」

「なら、最初っからちょっかい出してくんなっつーの」

「それなんですが… 君に興味がありまして」

「えっ?!

 愛衣のハートマークが付いていそうな声と同時に、ずささっと横島が一歩 後退る。

「愛衣ちゃん、嬉しそうな声上げないっ 楓ちゃんもンな表情しないっ!!

 起きてる二人の少女を見ての悲鳴の様な声に、だがクウネルから更なる一撃が下された。

「あ、そう言う意味では趣味じゃないですよ?」

 にこやかな言葉に、今度こそ横島は盛大に退いた。
 愛衣を盾にするほどのテンパリっぷりだ。

「うわ〜うわ〜」

「本当にそっちの人でござったとは…」

「フフフ、それも秘密です」

 愛衣の喜んでるんだか驚いてるんだか判らない声と、楓のナニカ微妙に感心した言葉とに、例によって謎めいた微笑みを浮かべる。

「それはそれとして…
 魔力も気も感じられないのにとんでもない身体能力と、スカだと言うのに呼べるアーティファクト。 どちらも見れたので、まぁ、もう用事はあんまり無いんですけどね」

「なら、とっとと帰らせろっ。 んでもって二度と出て来るなっ。
 つーか俺に近寄るなっ、泣くぞっっ」

 二周りほど小さい少女の影から、威勢だけは良い言葉を返す。

「おやおや、嫌われてしまいましたか」

「あたりまえじゃっ。
 女に興味持てない男なぞ、精神ピーだっちゅうんじゃっ!!

「いえ、女性は女性で好きですよ」

 その言葉を聞いた瞬間、木乃香を抱え上げ愛衣を引っ張って、横島は更にクウネルから距離を取った。
 何気に、楓も双子を抱えて後退っている。

「そう言う反応は、さすがに傷付くんですが… まぁ、いいです。
 お帰りでしたら、入って来た扉の隣からどうぞ。 一方通行で地下1階に辿り着く、エレベーターが用意してありますから」

 それを聞くなり、荷物を回収し まだ眠ったままの3人を抱えて、さっさと横島たちは言われた通りエレベーターへと向かった。 愛衣と楓は、去り際にケーキの礼を残して。

 

 

 

 そんな一行を見送って、クウネルは再び席に着く。

 しばらく何やら思い返しながら笑みを浮かべてお茶を啜り、それを飲み干した後 懐からカードを取り出した。
 自らのアーティファクト『イノチノシヘン』を呼び出す為に。

 しかし、周囲を渦巻くその中から取り出した一冊の本を、開こうとした所で彼の動きがぴたりと止まる。

「おや…?
 どうも感触が変だと思えば…」

『どうしたんじゃね?』

 突然浮き上がった映像は、学園長室からのモノ。
 話し掛けて来たのは、言うまでもなく近衛近右衛門、その人だった。 エレベーターの稼動に、事が済んだと読んで連絡してきたのだ。

「巧く記録出来なかった様で、再生出来そうにないんですよ」

 悔しそうな顔で、『TADAO YOKOSHIMA』と打たれた本を睨みつける。 開かないのだ、遣い手であるこの男の手にあってすら。
 異世界の出来事とやらを楽しみにしていただけに、憤懣やるかたないとばかりの表情を隠そうともしない。

『む…
 おぬしのアーティファクトでもダメとはの』

「確か、夢への侵入は出来たんでしたよね?」

『うむ。 じゃが、少々若過ぎる内容ばかりでの。 肝心な情報は未だに得られとらん』

 協会側で手配した寮での一人暮らし。 当然、侵入調査も行っている。

 が、何せ横島は横島だ。 見る夢見る夢、年若い女性には見せられないようなモノばかり。
 ある程度なら誘導出来るとは言うものの、知りたい情報だけをピンポイントに得られるような便利な魔法ではない。 それに無理な探査をし掛ければ、当人にも気付かれかねない事もある。

 そんな訳で、図書館島行きは判っていたから、クウネルことアルビレオに連絡を付けたのだ、近右衛門は。 その趣味……もとい彼のアーティファクトで、横島の確認をして欲しいと。

『まぁ考えられるのは、彼の特殊な能力の所為、じゃろうなぁ…』

 内緒で測定もしていたりするが、横島の出現からまだ半月程。 こちらで知られているモノとは異なるナニカである、と言う程度でしか判っていない。

「面白いですね、カレ。 もう一度来てくれればいいんですが…
 最悪、私が出向けられる学祭期間までお預けですか」

『ま、ほどほどにの。 何か判れば、おぬしにも連絡しよう。
 エヴァ嬢の件もあるし、修学旅行も近い。
 木乃香と顔見知りになられてしまった事もあるし、そろそろ彼に関して対応を確定しときたかったんじゃがのぉ…』

 悩む学園長の姿を楽しげに見遣りながら、ふと思い付いたようにアルは手を打った。

「そうそう、それで思い出したのですが」

『なんじゃね?』

「一緒でしたよ、木乃香さん」

 人の悪い笑みに、近右衛門の顔が ビシっと固まった。 孫の同行までは、さすがに読んでなかったのだろう。
 罠での誘導を始めた段階でその事を連絡しなかった上、刹那が飛ばした式の邪魔までしているクウネルの行い自体、かなり悪質だと言えるのだが。

 慌てたように消えた画面に、再びニヤリと笑みが浮かんだ。

 

 

 

 【まだまだ続くぞい】

 


 ぽすとすくりぷつ

 あくまで本作での設定で、ですが、再生不可の一因として霊力との相性の悪さがあります。 加えて、霊力と言う概念の無い世界、アルも霊力は当然ほとんど無いでしょう。 自身より高い能力者の再生は短時間しか出来ない、イノチノシヘンの特性も原因になっています。 記録自体は出来てるんですけどね。
 後書きで書くのもナンなんだけど、現在のコンテではもう出番ないんでカレ(^^; この話、学祭前に終わりますから。 …繰り返しになりますけど。

 それと、なんでかこう言う手配を腹黒いと取る人が多いんですが、私的には当然の処置……って言うか、世界観に合わせて甘くしてるくらいのつもりなんですよね。
 学園長は、隠さなければならない事を抱えている秘密組織の総責任者ですし、人柄での判断なんて甘い事をバックボーンの定かならぬ異邦人に安易に適用するようでは、それこそダメダメでしょう?(笑)

 まぁ、既に木乃香と顔見知りな段階で、十二分に甘過ぎなんですが(^^;


 
 

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