「ここが、今ウチらが行ける一番深く。 地下3階やよ」

「すっご〜いっ」

 木乃香が指す先を見て、風香が喚声を上げる。

「ここも久しぶりでござるな」

「楓姉ぇは、もっと下に行ったことあるんだよね?」

「何階まで降りたの?」

「あの時は… 確か11階でござったか。
 尤も、そこから更に落された故、判らないのでござるよ」

 細い目を更に細めて、楓が思い返しながら史伽に答える。

「…横島さん」

「図書館ってさぁ、なんなんだろうな…?」

 階段の出口、壁に面したベランダから二人の目に入る景色は、これまた非常識だった。

 幾層にも積み重ねられた本棚と、それらを繋ぐ通路と階段。
 時に本棚の天板そのものすらキャットウォークと化し、所々に設けられたテラスには5〜6mは有りそうな樹木が配されている。

 レンガ造りだろうか、ぽつんぽつんと照明の灯る天井は十何mも上に有り、本棚と本棚の間に出来た谷底は、暗い闇に覆われてどれ程の高さが有るのかも容易に窺わせない。

 本当に、ココのどこが図書館なのだろうか。

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その15   
 
逢川 桐至  


 

 

 

「向こうにベンチが有るよ〜」

「自販機もですー」

 本棚の通路を渡った先、中央に木を配したテラスの一つに、確かに休憩用とばかりのスペースが造られている。

「あ、二人共気ぃつけやー。 こっからは罠有るんよー」

 走り出した鳴滝姉妹に、木乃香がそう声を掛けた瞬間。

「えひゃいっ?!!

 呆然としていた横島の顔のすぐ脇を、正面から飛んできた矢が翳めて背後の壁に突き刺さる。

「はて? 前と罠の位置が変わっているようでござるな」

「そーなん?」

 この階層へは2度目の楓が首を傾げる。
 その彼女より更に多く足を踏み入れている木乃香だが、いつもは地図と首っ引きなので場所までは覚えていない。

「ほ、ホントに罠があった〜?!

「お、お姉ちゃん、危ないから戻ろーよぉー」

 引き当てた風香はどこか嬉しげで、逆に史伽は怖じ気づく。 先へ進もうと妹の手を引く姉と、戻ろうと姉の手を引く妹の姿は、細い通路の上だけに見ていてとても危なっかしい。

「横島さん、大丈夫ですか?」

「は、はは… 愛衣ちゃん、大丈夫だよ……たぶん」

 頬を引き攣らせて愛衣に答えると、横島はぎぎっと音を立てるように首を木乃香の方へと周す。

「こ、木乃香ちゃん? よく判ったからさ、そろそろ戻らないか?」

 裏返った声に、彼女も苦笑した。

「そやね。 今日は探検に必要なん持って来てへんし」

 木乃香にとって、ここに罠が有るのはいつもの事で。 少なくともそれで誰かが怪我をしたのを見た事が無いのもあって、危機感みたいなものは まるで無い。
 ただ、いつもの装備も無く通学用の鞄だけしかない現状では、彼女にしてもこれ以上進もうとは思っていなかった。

「二人共、そろそろ戻るでござるよ」

「えぇ〜?」
「はぁいっ」

 楓が二人を呼び戻したのは、良い判断だった。
 …その筈だった。 戻って来る史伽の足元で、なにやら硬い音さえしなければ。

「あれ?」

「史伽、どうしたの?」

「…なんか踏んだ」

 ズンっと小さく、誰もの足元に振動が走る。
 そしてすぐに全員を襲う浮遊感。

「ちょっとマテや〜っ!!

「きゃあぁっ?!
「ほわ〜?」
「ふぇえ〜っ?!
「いやぁーんっ?!

 突然ベランダが ガタンっと傾き、6人を下へと投げ出したのだ。

「のぁあぁっふぉあぁぁっどぇあぁっとりゃあぁぁぁっっ」

 とっさに反応して本棚へと飛び移り、友人たちを助けようと視線を巡らせた楓の動きが安堵で止まる。 横島が奇声を上げながら、愛衣をひっつかみ、木乃香を抱え込み、残る2人を回収しようと落ちて行く姿が目に入ったから。

 器用にあっちへ跳ねこっちへ跳ね、楓が言うのもなんだが まるで忍者の様だ。

 背中に風香を張り付け、左腕に木乃香を右腕に愛衣を抱え、その愛衣が更に史伽をと、良くそんな事が出来るものだと正直 感心すらしてしまう。
 鳴滝姉妹と木乃香がいるから、魔法の類いを使えないからなのか。 だが、その程度のハンデは、彼にとって大した事ではなさそうだ。

 とは言え、重力に逆らうまでは出来ないのだろう、そのまま下へと落ちて行く。
 まぁ、小柄とは言え4人の少女を張り付けてるのだから、純粋に筋力だけで逆らえたらそれこそどうかしているのだが。

「やはり、出来る御仁でござるな、ニンニン。
 と、見てるだけと言う訳にもいかんでござる。 拙者らも行くとしよう」

 そう言って、意味ありげに入って来た入り口へ視線を飛ばすと、彼女もまた身を翻して横島たちの後を追って飛び降りた。

 

 

 
  ・ ・ ・
 2度目の着地の衝撃で、足が痺れて悶絶してる横島の腕の中。
 木乃香がほわっと笑って呟いた。

「びっくりしたわぁ」
 
「それだけ かいっ!!
ですかっ!!

 さすがの横島も、愛衣と一緒に思わずツッコんだ。

 彼にしたって、あの高さを落ちるのは恐かったのだ。 しかも、底に付いたと思ったら、その瞬間に床が更に開いて再び落ちると言うオチまでついた。
 それを、いくら軽いとは言え合計100kgを優に越える重量を張り付けて、経験させられたのだから当然だろう。

「っと、楓ちゃんは?」

「拙者は ここでござる」

 はっと気付いて見渡すと、すぐに返事が返って来る。
 逸早く反応したのも見ているし、彼女だけはちょっとやそっとじゃ問題にならなかろうと判っていた。 それでも、このメンツの中で一番早くターゲット入りするのは間違い無しの楓だ。 気にならない筈が無い。

 と、上の方でパタンとナニカが閉じる音がした。

「あっ…」

 愛衣の顔が、薄く蒼醒める。
 魔法を使える状況ならともかく、楓は別にしても3人も一般人が居ては、安易に行使する訳にもいかない。 未知の場所でもあるだけに、少なからず不安に思うのも当然だ。

「史伽の所為です〜」
「えぇ、なんでぇー?」

 下ろされた双子が、即座に口喧嘩を始める。

「で、木乃香ちゃん、ここからどう戻ったらいいか判る?」

「ん〜 そやなぁ…
 落ちたんは3階の入り口んとこやから…」

 尋ねられて記憶を引っ繰り返す。
 多少フロア間でズレが有るが、それでも階段の位置を思い返せば ある程度は想像がつく。

「多分、東南の端の方に階段あるんやないかと」

「ソレだけでも判れば、かなり楽でござるな」

「そだな」

 自信無げな答に、それでも楓と横島は笑みを浮かべた。

「後は、とにかくトラップを避ける事ですね」

 愛衣が続けると、二人もこくりと頷く。
 さすがに、更に下へ落されたら堪ったものではない。

「なれば、拙者が先導するでござるよ」

「そうだな、任せるわ」

 技能としては、本職の楓の方が上なのだ。

「これ二人共、そろそろ動くでござるよ」

「えっ? はーいっ」

 未だ仲良く口喧嘩していた二人を促し、一行は本棚の合間を縫って動き出す。
 が、そう経たぬ内にその動きは止まった。

「どうしたの、楓姉ぇ?」

 拡げた腕に進むのを止められ、風香が尋ねる。

「ナニカ有りそうなんでござるが、良く判らんのでござるよ」

 本棚の谷間の通路を進んで、初めて出てきた小さく開けた空間。
 ここまで棚や床にあったのは、普通の触れたり踏んだりすれば作動するような罠だった。 だが、楓が目を凝らしてもこのスペースには、その手の物は見当たらない。 罠の設置頻度を考えると、無いと判断するのは軽挙にも思えたのだ。

「横島どの」

「ん?」

 手招きされて、横島は側に寄った。

「もしかすると魔法的な物ではないかと思うのでござるが…」

 他の面々に聞こえないよう小声で掛けられた言葉に、やっぱりこっち側だったかと思いつつ、しかし横島も腕を組んで悩む。 何だかんだ言っても、知識の不足はこう言う場面では致命的だ。
 結局、愛衣に尋ねてみれば、思わなかった返事が返された。

「そう言うタイプのだったら、横島さんの、アレ使えるんじゃないでしょうか?」

「アレって、アレ? アレかぁ…」

 その指摘に更に悩む。

 が、他には文珠を使うくらいしか思い浮かばない。
 ストックはあるのだが、アレは使うと光を出す事がまま有るのだ。 そうなった場合、ここみたいに暗い場所だと誤魔化し難い。 また、この先何ヶ所同じ選択を強いられるか判らない以上、浪費自体も避けた方が良いだろう。

 仕方なく、横島は額のバンダナを解く。
 木乃香たちの視線を集める中。

「取り出だしましたる、この1枚の何の変哲もないバンダナ。 種も仕掛けもございません」

 ひらひらと表裏に振って見せた後、バンダナに隠す様にカードを取り出す。

「1。 2。 3。 アデアット

 数えながらバッと振って、アーティファクトを取り出した。

「はい、じゅわっ」

 掛けてみた姿に、揃って少女たちはドドドっと ずっこけた。
 まぁ、そんな前振りで鼻眼鏡なぞつけられたら、そんなリアクションも当然だろう。

「…な、なんでそんなに楽しそうに」

 自身の本質との折り合いはとっくに付いていたらしい。 愛衣の想像より、ずっと楽しそうだ。

 そんな周囲の様子に満足しながら、横島は正面を覗き込む。
 スカ故か名の判らなかったこのアイテム。 今判っているその機能は、サーモグラフの様に魔力の多寡を見る事が出来ると言うもの。

「こ、これは…」

「どうしたんですか?」

 小さい、しかし固い声に、愛衣も小声で問い返す。

「良く解らん」

 愛衣は黙って鳩尾を突いた。

「げふっ… ちょっ…」

「なんですか、ソレは?!

「い、いや、ここって、周り全体が魔力帯びててさぁ…」

 横島の言う通り、本棚や収められている本の幾許か、それに通路を始めとした床面全体が魔力に覆われていた。
 尤も、この場で一番強い反応を示しているのは木乃香で、次が愛衣だったりするのだが。

 ついでに言うと、横島自身に関してはロクな反応が示されていない。
 この点は楓も一緒なので、霊力のみならず気も対象外と言う事らしい。

「つー事だから、ほい」

「えっ?」

 ソレを差し出されて愛衣は戸惑った。

「えっと…」

「俺じゃ判断出来んから、愛衣ちゃんに見て貰うしかないだろ?」

「わ、私が掛けるんですか、コレ?」

 言われた事を理解して、ちょっと涙目になる。
 人目の全く無いところでならまだしも、同年代の少女のいる場所でこんな物を着けさせられるだなんて、花も恥じらう美少女にとっては一種の罰ゲームも同然だ。

 だが残念な事に、横島はその事に思い当たってくれなかったらしい。

「ん、どうしたんだ? ほら」

「その…あの…」

 視線を巡らせても、木乃香は微笑ましそうに、楓は興味深そうに、鳴滝姉妹は楽しそうにこちらを見ているだけで、助け船は期待出来そうに無い。

 だが、運命の女神は彼女に微笑んでくれた。

「…『カチ』?」

 いや、悪意の女神の微笑み、だったのかも知れないが。

「どうしたんえ?」

「なんかそこに手を置いたら… その、カチって…
 ア、アハハ…」

 風香が、気まずそうに笑う。
 予想通り、続けて起きる振動音。 6人は揃って上を見上げた。

「なんか上、狭くなってないですかー?」

「と言うか、本棚が傾いてきてる様でござるな」

 史伽に楓が答えた通り、風香の触れた側の本棚の、その上半分が徐々に傾いて来ている。
 中に詰め込まれている本も、当然、嫌な摩擦音と共に迫り出し始めていた。 と、1冊の本がついに本棚を離れ、続けて他の本も重力に従って次々に動き出す。

「に、逃げろぉっ

「お姉ちゃんのバカーっ!!
「そんな事言われたってぇ〜」

 雨あられと本が降って来るのと同時に、横島が木乃香と愛衣を、楓が鳴滝姉妹を抱えて広場へと逃げ出した。

 …のだが。

「って、やっぱこんなオチかぁ〜いっっ!!?

 ドサドサと本の落ちる音をBGMに横島が叫んだ。 脚は固い床の感触を伝える事無く、中へと素通りしている。
 どうやら、床自体が幻だったらしい。

 再びの浮遊感と共に、一同は床に溶け込む様に下へと落ちて行った。

 

 

 

 【ボクらと続け〜】

 


 ぽすとすくりぷつ

 お返事とかでは宣言してましたが、ちゃんとスカアーティファクト使わせます。
 役に立ってるかと言われると、横島の問題でアレですけれども(苦笑) ハイスペックな身体機能に対し、知識面は穴だらけ。 まして麻帆良側のソレなんて、2週間やそこらで詰め篭められる筈も無いし、詰め込んで貰ってもいません。

 高音が出てない分、愛衣に皺寄せが逝っちゃってるよーな…(^^;
 さすがに脱がしたりはしませんけど(爆) …高音ならともかく。


 
 

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