「木乃香、ちゃん?」

「あ、覚えてくれはったん? あん時は、ほんまおおきに助かりました」

 ぺこりと可愛らしく下げられた頭に、手を振って気にするなとジェスチャー。

「で、こんなとこでどうしたの?」

「クラスん子とぶらぶらしてたら、横島さん居てはったから…
 邪魔やった?」

 ほわんとした空気を振り撒く彼女に、横島も笑顔で首を振る。

「いや、んなこと無いぞ。
 可愛い娘に声掛けられるのは大歓迎だ」

「ややわぁ、かわいいなんて〜」

 この男にそう言われるのは二度目だが、何度だろうと誉められて悪い気がする筈も無い。
 本当に嬉しそうに笑って答える。

 そんな二人の妙に和んだ空気に置いて行かれて、少し拗ねた愛衣が こほんと一つ咳をした。

 

 

 


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その14   
 
逢川 桐至  


 

 

 

 ふと、残りの顔触れの中に知った顔があるのに気付いて、愛衣は彼女へ話し掛けた。

「あの… そちら、一昨日の…」

「長瀬楓でござる」

 楓は軽く頭を下げて、そう名乗った。
 それを聞いて、横島も彼女へと向き直る。

「あぁ、そう言やこっちも名乗ってなかったよな。
 俺は横島忠夫」

「私は佐倉愛衣です」

 改めて二人も楓へと名乗った。

「ボクは鳴滝風香」
「鳴滝史伽ですー」

 流れで、一緒に居た二人も続けて名乗る。

 元より人懐こいところのある二人だ。
 木乃香の知り合いで楓とも面識が有るとなれば、遠慮したり萎縮したりする事もあるまい。

 こんな一見 取り留めない組み合わせの彼女らに、横島は気になった事を聞いた。

「木乃香ちゃんと楓ちゃんは同い年だったよな。 で、そっちの子たちは部活かなんかの後輩?」

「む〜」
「むー」

「イテ」

 それを聞くなり鳴滝姉妹の口からブーイングが漏れ、ぽかぽかと横島を殴り付ける。
 サイズ相応なソレだけに、じゃれつかれている様なものだったが。

「いや、4人揃って同じ3−Aのクラスメートでござるよ」

「はい?」
「えっ?」

 更に入った楓の苦笑混じりの補足に、横島と愛衣は思わず声を洩らした。
 木乃香にしても、背丈はともかく凹凸はやや歳より少な目だ。

 だが、鳴滝姉妹のソレに至っては、小学生と見紛う程のサイズなのだ。
 しかも、一緒にいる楓が成人女性のボリュームを持つものだから、より一層 子供っぽさばかりが強調されている。 親娘だと言われたら、そう言う事もあるかもと思えてしまいそうなくらい。

「…じゃ、じゃあ皆さん、私の先輩なんですか?」

 何とも言えない複雑な声音で愛衣が呟く。

 楓のボリュームの衝撃は、目の前にいるだけに少なくない。 だが並ぶ双子を見てしまうと、気にしても仕方ないんじゃないかと言う、諦観と言うか平静とした気持ちが生まれてくるのだ。

「そうやえ」

「え、佐倉さん後輩なの?」

「って、お姉ちゃん、制服見たら判るじゃない」

 今日も今日とて学校帰りに待ち合わせて、だったので、当然の様に横島も愛衣も制服姿だ。 勿論、ソレは下校途中の木乃香たちも、だが。
 ともかく、同じ制服を着ているのに見覚えがまるで無いとなれば、史伽の言う通り自明の事。

 そんな立ち位置が計り切れない微妙な沈黙は、しかしすぐに破られた。 ほわわんとした木乃香の声で。

「そや、横島さんたち 今日何してん?」

「えっと、今日は図書館島の方を案内しようかと」

 案内をしているのは愛衣なので、視線で横島に促され、彼女はそう答えた。

「昨日も一緒に出掛けておられたが、デートでござるか?」

「えっ? ええっ?!
 ち、違いますよぉ…」

「俺がさ、こっちに来たの4月になってからなんで、全然 街の造りが判んなくってなぁ。 …ほら、ここってばメチャ広いだろ?
 なもんで、愛衣ちゃんにあちこち案内して貰ってんだわ」

 楓の質問にワタワタと慌て出した彼女へ、横島が苦笑しながらそう助け船を出した。
 全く取り乱すところの無いその様子に、愛衣も落ち着きを取り戻す。 代わりに、ちょっとだけ口元を尖らせたが。

「そぉなんや。
 したら、一緒したらあかん? ウチ、図書館島やったら詳しいんよ」

 その言葉に、横島と愛衣は一瞬視線を合わせる。

 この市内案内行は、バイトの為の土地勘合わせの為のもの。
 だが、そもそも日中から裏の話なぞ、そうそう出来るものでも無いのも確かだ。 だから部外者が一緒でも、考えてみるとそう困ると言う事も無かった。 地理が頭に入れば、それでいいのだから。
 刹那の遣り取りでそう結論に至ると、横島は木乃香に笑って頷いた。

「可愛い娘たちが増えるのは歓迎だぞ。
 けど、木乃香ちゃんたちって、その図書館島だかにそんな良く行くんだ?」

「このかは、図書館探検部だもんね」
「うん。 下手な人より詳しいよー」

「探検部?」

 双子の言葉に、横島は首を傾げた。
 普通、図書館と言う言葉に繋がる単語ではないのだから、その疑問も当然だろう。

「あの島は、まるごと全て図書館なんでござるよ」

 楓がそう続けると、横島は ぐるんと再び城のような建物の見えるそちらへと顔を戻す。
 湖岸に近い辺りに浮かぶ島は、ぱっと見でも一周 数100mは優に有りそうだ。 その上に建つ城と言うか大聖堂と言った感じの建物群も、下手な公民館の類いでは追従出来ぬほど立派で大きい。

「あれが全部?」

「そう言う話です」

 思わず愛衣に尋ねて、即座に返った言葉に横島は呆れ返った。
 普段からいいとこグラビア誌やエロ本の類いしか読まないから、そのスケールの大きさは無駄以外の何物にも思えない。
 と言うか、アレを埋め尽くすほど、この世に本が存在すると言う事が、そもそも信じられなかった。

「ま、見れるとこそう多くないねんけどな」

「下の方は罠だらけで、ほとんどダンジョンでござったしな」

 木乃香と楓のそんな遣り取りも、彼からすれば何かの冗談にしか聞こえない。

「外から見てても判らないですよー?」
「そうそう、百聞は一見にしかずってね〜」

「で、ござるな。
 ここで眺めてても埒が明かぬ故、実際に向かってみてはどうでござろう?」

 そんな促しに頷いて、一行は島へと繋ぐ桟橋へを歩き出した。

 

 

 

「はぁ…」

 おしゃべりしながら歩いて、ほんの10数分ほど。 辿り着いたその中で手近の椅子に腰を下ろすと、横島は再び呆とした溜め息を零した。

「相変わらず、ここは凄いです」

 愛衣にしても、そう何度も利用した事が有る訳ではなく、やはりこの大きさには圧倒されずに居られない。
 奥まで50mは有りそうな室内は、中央に配された読書スペースや所々に設けられた休憩用の部屋を除いて、至る所びっしりと本棚で埋め尽くされている。  ここ1階だけでなく、上の全てのフロアが似た様なものなのだ。 蔵書数は優に100万単位に届くのではないか。

「史伽ぁ、こっちこっち〜 変な本あるですよ」

「え、どれどれー?」

「これこれ、騒ぐと周りの迷惑になるでござるよ」

「は〜いっ」
「はーいっ」

 やはりほとんど来た事がないのか、きょろきょろしながらあちらへこちらへと動き回る鳴滝姉妹を、楓が窘めながらも一緒に見て周る。
 周囲の他の利用者たちも騒ぐと言うほどではないが、おしゃべりに興じたりもしているので、3人は大して目立っては居ない。 思っていたより、ルールは緩いようだ。

「つーかさ、こんなにデカいと迷子になりそうだ」

「ん〜 そやけどこの辺は一般に解放されてるよし、まだ大した事ないんよ」

 見てるだけで疲れたとばかりの横島に、木乃香が苦笑混じりで答える。
 実際、今居る1階フロアを始めとした地上部分は、図書館島のほんの表層に過ぎないのだ。 ここの真価は、地下にこそ有る。

「これで、ですか?」

 のてっと背もたれに身体を預けた横島の、その隣に腰を下ろした愛衣も、木乃香の話に驚いたように呟いた。

「愛衣ちゃんだって、やっぱそう思うよな」

「え、えぇ。
 調べ物くらいだったら、学校の図書室だけでも充分ですし…」

 余程難しい事を調べたり、小説などでもマイナーな物を読みたかったりなんて事でもなければ、ここに出向く事は多くない。 規模が大き過ぎて、慣れない者には逆に使い難いからだ。
 小学生なぞ、実際にかなりの頻度で迷子になると聞く。

「けど、一般にって事は、そうじゃないとこもあるって事か?」

「そやえー
 地下は、年齢制限とかもあるんよ」

「なんつーか、無茶な話やなぁ…」

 もう溜め息すら出て来ない。

「なんやったら、見に行ってみます? ウチ一緒やったら、地下3階までなら行けるよって」

 基本的には、管理の司書たちや図書委員、それに図書館探検部の部員くらいにしか解放されていないのである。 この制限は、単純に慣れていない者では確実に迷う上、トラップの回避なども出来ないからだ。
 その上で、年齢による立ち入り制限も加えられている。 10階以下ともなると地図すらなく、大学部の生徒たちによる地道なマッピングで、少しずつ明らかにしていっているなんて有様なのだ。

「…つーか、図書館にトラップって何だよ」
「戦前からの貴重書やらきこうぼん
「戦前からの貴重書やら稀覯本やら、地下にはぎょーさんあるゆぅ話やから、盗掘避けやってゆわれてますん」

 その言葉に、また横島は視線で愛衣に問い掛けた。
 守られている貴重書の少なからぬ割合が、おそらく魔術書だろうと踏んだからだ。

 自信なさげではあったが、愛衣もそれに頷いて返す。
 彼女や高音にしても、裏の仕事としてココへ周された事は無く、それ故に確証までは持っていない。 実際、横島のバイトとしても、この中までは範疇に数えられていないのだ。 都市の広さと彼女らの年齢を考えれば、けして無理からぬ事ではあるが。

 まぁ、だとしても、だから興味が起きないと言う訳もなく。

「んじゃ、触りでいいんで案内して貰えるかな?」

 軽く見る事が出来ればいいやと思っていた横島は、だから言葉の意味通りの『触り』を味わう事になるなんて当然思っていない。
 それは愛衣とて同じ事。

「そうですね、私もちょっと気になりますし」

「ん、えぇよー」

 にぱっと笑って、くるりと振り返り楓たちへと声を掛ける。

「なぁ、ウチら下に行ってみるけど、どないするー?」

 ああでもないこうでもないと本を眺めていた3人も、木乃香の呼び掛けにすぐ「ボクたちも行くー」と返事を返して戻ってきた。

「しかし大丈夫でござるか?」

 一度、この中で探検と言っていい状況を経験しているからの確認。

「今日は、あない深くには行かんよって、平気や思うえ」

「大丈夫、って、なんかあるんか?」

 二人の会話に、思わず問い掛けた。
 興味は有るものの、横島は危険に近付いたりとか、わざわざそんな事をしたい人間ではないのだ。

「以前、罠にかかって、かなり奥の方まで落された事があっただけでござるよ」

「ものすご下ゆくとウチでも迷ってまうけど、今日は浅いトコしか行きひんから」

 イマイチ頼りなげな保証ではあったが、まぁ、ならいいかと横島は腰を上げた。

 

 

 

 地下層への入り口でチェックを受け、一行は奥へと進んだ。

「この辺は初めてでござるが、随分違うものでござるな」

「あぁ、この辺はほんまに上もええとこやし。 学祭ん時やったら、部活の出し物で案内してる辺りやもん」

 リノリウムと言うより、何かの合金ででも出来ている様な、そんなSFチックな通路。
 以前楓が入った時は、正規のではない入り口から地下3階へと直行した為、未改装な古い造りをした場所しか辿っていない。 だから、彼女にしてみると、かなりのギャップが有ったのだ。

「学祭かぁ、いつぐらいなんだ?」

「6月です。 都市全体でやるんで凄く賑やかなんですよ」

「そりゃまた…」

 横島にしてみれば、いいとこ学校単位の、それも高校までのくらいしか参加経験は無いのだ。 愛衣の答に苦笑するしかない。
 そも、こんな案内の必要な建物がごろごろしている街全体で、なんて規模のは普通お目に掛かる事なぞまず無かろう。 彼が見た事のある中で一番大きいのと言えば、中高一貫の六女の学祭くらいなのだ。

「この辺は部屋ん中もこんなやよ」

 ほら、と言って、途中の扉を開けて中を覗き込む。

 一般解放部と違い、フロア辺りの高さが相当に高い。
 良くあんなとこまでぎっしりと本を詰めたなと、感心せざる得ないほど本棚自体が積み重なっていた。 天井の上の方……一階相当部分になるのか、大きめの窓が設けられていて、そこから午後の陽射しが降り注いでいる。

「あれ? なんか音がするですよ?」

「ほんとだ、なんだろ?」

 風香たちの言う通り、確かに低く響く音が聞こえて来る。

「あぁ、そろそろ北端やからな」

 そう言って先頭を進む木乃香が、暫く歩いた先で開けた扉の向こうの景色に、一同はあんぐりと口を開いて沈黙した。

「な、すごいすごいやろ?」

 何事も無い様な問い掛けが、ドドドドっと言う音と共に5人に向けられる。

「…な、ナニ考えてんじゃあ、ここは?」

 横島の言葉にも無理はない。
 先の部屋同様、高さ10mは有ろうかと言う天井の方にある窓から射す光に、キラキラと輝き音を立てているソレは まごう事無き滝だった。

 しかも、その滝のある壁面は、本の詰められた本棚なのだ。

「いやはや、なんとも凄いものでござるなー」

「見て見てお姉ちゃん、下、すごいよー」
「ほんとだ〜」

 一行の居る通路は、キャットウォークか つり橋かとばかりに壁面の横、少し離れた所を走っている。 そして、本棚は通路の下、更に10m以上に渡って続いていた。 底には、滝から落ちた水が川を形作って流れている。

「ここなぁ、秋にフリークライミング部が大会開くんよ」

 嬉しそうな木乃香の説明は、もはや既に本棚に向けられるモノとは思われない。

「……愛衣ちゃん?」

 思わず、ここじゃコレが普通なのかと呼び掛ければ、ふるふると彼女は首を横に振った。
 その様子に、横島は少しだけ安堵する。 本来なら非常識の塊そのものな彼だが、事ここに於いては楽しげな3−Aの4人よりも、ずっと常識の中にいると言えよう。

 呆然と立ち尽くす二人に、木乃香から声が掛かった。

「どないしてん? 先行くえー」

 見れば、通路の奥の開口部近くまで、彼女たちは進んでいる。
 その声に急かされるように通路を渡り、下へ続くらせん階段へと横島たちは足を踏み入れた。

 

 

 

 【続……かないったら続かない】

 


 ぽすとすくりぷつ

 周囲の湖から流れ込んでるんでしょうけど、濡れないんですかねぇ、本(笑)
 無粋なツッコミだとは思いますが、正直気になる所。

 しかし、合流して入るだけで終わってもーた… 横島の視点で考えたら、中それなりに描写せなならんし、文字がやたら食われてまって。 出るのも18話になってまったし、なんやもうダメダメですねん(^^;

 それと、木乃香はまだしも、愛衣が ちーとも目立てなくなってるのがなぁ…


 
 

前へ
戻る
次へ

 

感想等頂けると、執筆の糧になります。 お手数でなければお願いします。
  

タイトル

お名前をお願いします。
(任意)

差し支えなければ、メールアドレスをご記入下さい。
(任意)

ご感想・コメントをお願いします。

入力内容を確認後、下のボタンを押してください