「楓姉ぇ」
「今日はドコ行こっか」

 一見小学生に見紛う様なクラスメートに、長瀬楓は細い目を穏やかに歪めた。
 180を越える彼女と130そこそこの鳴滝姉妹とは、体格と言い性格や雰囲気と言い見掛けの共通項はロクに無いのだが、それ故か不思議と仲が良い。 ルームメイトでもあるし、麻帆良でもトップクラスの弱小部、散歩部の部活仲間でもあり、また真似事程度ではあるが忍びとしての師弟関係でもある。

「今日は散歩部なんやね?」

 放課後の喧騒の中、そんな3人に声を掛けたのは木乃香。

「おや、今日は一人でござるか?」

「そなんよ。
 夕映たちは、ハルナの手伝いに借り出されてもーたし、明日菜は なんや気が付いたら居てへんし…」

 苦笑いで更に、「今朝ネギくんのペットに下着持ってかれたから買いに行ったんやろか、朝からなんや変やったしなぁ」と、彼女は小さく言葉を続けた。
 明日菜の様子が変だったのは、カモに唆されて仮契約(スカ)におよんでいたからだ。
 ぼやっとしている割に、これでなかなか目が敏い。

「だったら、ボクらと一緒に行く〜?」

「あ、いいね、いいね。 行こうよー」

 風香と史伽の誘いに、ちょっと考えて木乃香は頷いた。

「そやなぁ、したら一緒さしてくれる? 今日はウチもする事あらへんし」

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その13   
 
逢川 桐至  


 

 

 

「それで仮契約かね…」

 どこか呆れたと言ったニュアンスを含ませながらタコ仙人……もとい、学園長はガンドルフィーニに聞き返した。

 昨日、カモの事を確認した事と、おそらくしずな経由とで彼の耳にも入ったのだろう。
 報告する前に切り出されて、ガンドルフィーニはただ頷くしか出来なかった。

 それでも胸の裡だけで、学園長への文句を並べ立てる。
 何せそこへと踏み切ったのは、横島がこれ以上桜通りの件に首を突っ込めないよう監督する事を、近右衛門が強く命じてきたからなのだ。

「にしても、スカのままで役に立つのかの?」

「それが、なんとかなりそうなんです」

「ほう?」

 濃い眉の下から片目を開いて、続きを促す。

「愛衣くんの疑問と言うか提案で、彼女と高音くんとで同時に召喚を行ってみたところ、なぜか呼び出せてしまったんです」
  非 常 識
 規格外もここに極まれる。

 後から仮契約に関して調べ直してみたのだが、スカカードでのアーティファクトの召喚や、同じく本人の召喚など、前例を見付ける事が出来なかったのだ。 少なくとも、広く知られている範疇では、有り得ない事だった訳である。
 学園長にしても、やはり聞き覚えの無い事だったらしい。

「それはまた異な事じゃな」

「一人では出来ない事とは言え、彼女たちは行動を共にしている事が多いですし、ならばこのままでも良いのではないかと思われまして」

 やり直しせずに済みそうだと判った時の高音の顔を思い返すと、そのままにしておいてあげてもいいのではと思うのだ。
 必要条件は満たせている以上、必然性自体も無い事であるし。

「ふむ…
 それはそれとして、その分じゃと他にも色々試したようじゃな」

「はい。 昨夜は大した問題も無かったので、色々確認してみたのですが…
 基本的に二人がかりでなら、本来の仮契約に近い状況を作り出せるみたいなんです」

 例えば、魔力供給だ。
 どちらか一人では、10秒ほどの維持しか出来ないが、二人がかりでだと1分は持たせられる。 本来の効果より短いとは言え、スカカードを用いてだと言う事を考えれば脅威の長さだ。 まぁ、本人のスペックが普通じゃない事と、供給中は逆に動きが鈍くなってしまう事とで、おそらく実際に使う事は無いと思われるが。
 また念話も、片方が離れてしまうと伝達範囲がかなり短くなってしまうのだが、双方が近くにいれば、確認出来た範囲内では問題なく利用出来ている。

「それに、あの状態でとは言え、アーティファクトが使えると言うのも、どんな偶然の悪戯なのか…」

「ふむ。 あの、と言うと?」

 見ていない者には、あの外見の脱力感は判るまい。
 どんな代物なのか説明されて、学園長は楽しげに笑った。 だが、確認出来た効果を聞いた途端に、その笑いが強ばった。

「どうされたんですか?」

「…もしそのアーティファクトが、本来ワシが思った通りのモノじゃとしたら」

「したら?」

「仮契約のやり直しをさせるのは、ちとマズイかも知れん」

 顎の髯を撫ぜながら、固い声でそう答えた。

「まぁ、それはこちらで調べてみる事にしよう。
 時に、今はどうしとるのかの?」

「そうですね、この時間なら愛衣くんが市内の案内をしている頃でしょう。
 この間ので1日遅れていますから、湖岸部の方へ足を延ばしているんではないかと」

 腕時計に目をやって、ガンドルフィーニは答えた。

「ふむ。 まぁ、それも含めてしっかりと頼むぞ」

「はぁ…」

 

 

 

「おや?」

 急に立ち止まった楓に、鳴滝姉妹と木乃香も足を止める。

「どうしたのー、楓姉ぇ?」

「いや別になんでもないでござるよ」

 そう答えた彼女の視線の先に、木乃香は知った顔を見出した。

「あれ? 横島さんたちや…
 デートやろか?」

「知った御仁でござるか?」

 再び視線を向けた先の二人は、出逢いの時の事を思えば少なからずこちら側だろうと、彼女はそう認識していた。
 対して、木乃香は裏の事を知らないと、刹那との親交を通して知っていたからだ。

 それに、確か愛衣と呼ばれていた少女は、行動範囲の広い楓にしても普段あまり見掛けないので、おそらく学年からして違うのは間違いない。 横島と呼ばれた少年に至っては、麻帆女とかなり離れた区画の男子高生である。
 接点がまるで思い浮かばないだけに、詮索を良しとしない彼女もつい聞き返してしまったのだ。

「前なぁ、困ってたん助けてくれたんよ。
 けどあん時はただの知り合いみたいやったのに、なんやえらい仲良さそやなぁ…」

 前日の事があってか押され気味な横島と、ここ数日の同行で距離が縮まったのか彼の腕を引くように歩く愛衣とは、確かに傍目には仲が良さそうに見える。

「ふむ。 昨日、一昨日と、あんな感じだったでござるが」

「そーなん?」

 他意無く尋ね返す木乃香に、楓もこくりと頷いた。

「しかし行動範囲の広い人たちでござるな。 観光でござろうか?」

「ねぇねぇ、楓姉ぇとは どうゆう関係?」

 どこか嬉しげな彼女の様子に、くししとヤな笑い方で「もしかして横恋慕〜?」とか聞いて来る。 そんな双子に、首を振ってから楓は口を開いた。

「一昨日、いつもの様に山に居た所、あの二人がいきなり現われたのでござるよ」

 そう聞いただけで、風香たちは楓がどう言う興味を持ったのか気が付いた。
 だてに弟子を自任していない。 何より、彼女がどんな場所で何をしているか、それを知っているから後は簡単だ。

「なにやら誰ぞに追われていたとかで、あちらの彼女を抱えて凄い勢いで走っていったもので、つい…」

 追い掛けてみたら気付かれたと聞いて、双子は紛れもない感歎の声を上げた。
 気配を消した楓に気が付けた例しが、彼女たちには無いのだ。

「なんや、バイトで鍛えたんやゆーてたえ。 ウチの前でも のどか軽々背負ぅてたし」

「なんでそこで本屋ちゃん?」

「もしかして、まきえさんみたいに倒れてたってアレの時ー?」

 風香の疑問に、勘良く史伽が続けて尋ねる。

「そや。 見付けたんはえぇけど、どないしよ思ったらなぁ、ちょうど通りがかって運んでくれたんよ」

 にこにこと答える木乃香に、二人はへぇ〜と頷いた。

「ほう、それは…
 と、あの様子だと、今日の目的は図書館島の様でござるな」

 彼らが曲がった道を進めば湖岸に、そしてそのまま道沿いに進めば図書館島へと到達する。
 それを聞いて、木乃香は頬に人差し指を当てて考え込んだ。

「…なぁ、ウチ」
「後を追うなら、急いだ方が良いでござるよ。 あの御仁らは見掛けより足が早い故」

 図書館探検部の部員でもある木乃香にとって そこがテリトリーなのは、この場の誰もが知っている。 楓に至っては、ほんの一月ほど前に中を一緒に彷徨ったりもしているのだ。

「だったら、ボクらも図書館島に行こうよ」

「あ、それもいいかもー」

 散歩部の活動と言えば、あちらこちらを彷徨っておしゃべりをする、なんてモノだったりする。 言ってしまえば無目的に駄弁って居るだけなのだから、当座の目的地は何処でもいいのだ。

「ええん?」

「邪魔でないなら是非。 拙者も一度きちんと挨拶したいと思っていたでござるし」

「じゃ決まり〜」

「さんぽ部、れっつごーっ」

 腕を振り上げた双子の声と共に、4人は横島たちの後を追って走り出した。

 

 

 

「なんつーか、ホントに日本か、ここは?」

 目の前に広がり出した光景に、もう何度目かの驚きを口にする。

 横島にとってよく知った日本ではないが、それでも都心からそう離れていない埼玉の一画にしては、麻帆良がかなり異質なのは事実だ。 魔術師のセンスなのか癖なのか、西洋的な印象は建物だけではなく風景にまで及んでいる。 明らかな計画都市である以上、意図されての結果なのは間違いないだろう。

 そんな様子に愛衣はくすりと笑った。
 そして見えてきた湖岸の浜辺を指し、お馴染みになった説明を始める。

「夏だと、ボートや泳ぎに来る人もたくさんいるんですよ。 今はまだ、散策する人がちらほらって感じだと思いますけど」

「随分デカい湖だけど、ここは?」

 問いは、あくまで警備の時にどうするのか、だ。
 まだ、こちらへは周された事が無いので、どうなっているか横島は知りたかったのである。

「対岸に警戒用のが張ってあるって話です。 でも、見回りの時はコチラ側だけになると思いますよ」

「そっか… ボートに乗って、とか言われたらどーしよかと」

 ほっとした様に苦笑する。
 パターンからすれば良くても愛衣と、下手をすればガンドルフィーニとペアで、なんて事すら有り得るだろう。 高音と乗れるなら、厭うものなぞアリはしないのだが。
 ボートの上では何かあった時に対処し辛い、なんて事よりも横島にとってはその事の方が重要だった。

「私も、出来ればソレは遠慮したいです。
 まぁその時は、飛んでになるでしょうけど… って、そう言えば横島さん、飛べないんですよね?」

 自身泳げないので水上は遠慮したい愛衣だったが、それで思い付いて逆に問い掛ける。
 横島自身が飛べるなら、やはり一昨日の迷子になった一件は起きなかっただろう。

「ん〜 ちゃんとは難しいな」

 文珠を使えば無理ではあるまい。
 だが、ソレにしたってそう言う使い方をした覚えが無いのも事実。 まして、その上で戦闘なんて事になったら、文珠の効果が切れた時が悲惨だ。

「後でお姉様や先生にも相談して、何とかしといた方がいいですよねぇ。
 有り得ないとも限らないですし…」

「ん? 愛衣ちゃんたちは、やっぱり飛べるんだ」

 今気が付いた様に愛衣へと首を傾げる。
 GSの中で飛べる者はそう多くない。 だから、失念していたのだ。
「私は、昨日見せた『ファウォル・プールガンディ
「私は、昨日見せた『オソウジダイスキ』が有れば飛べます。 お姉様と先生は、確か飛行魔法が使えた筈ですけど」

「はぁ… 魔法ってのもズルイなぁ、やっぱ」

「何でしたら私が乗せましょうか?」

 そう入れたフォローに、しかし返されたのは更なる溜め息。

「いや、魔法の箒には、あんま いい思い出ないんだよな」

「そうなんですか?」

 そう多くない経験の中の一回、一人で乗った……と言うか載せられた時の事が思わず頭を過ったからだ。

「前にさ、勝手に飛ぶ奴に乗った時に音速突破しちゃってさぁ」

「それは凄いですねぇ。 認識阻害とか、空気圧回避の魔法ってそのクラスになると とっても高度なんですよ」

「いや、そんなの無かったから」

 炎の狐は誰にでも見れたし、最後には空気の壁に追突したのだ。

「はい?」

「いやぁ、あん時はさすがの俺も病院行きだったんだよなぁ、ははは…」

 頭を掻いてそう曰う彼に、愛衣は漸くその時の状況を理解した。
 障壁も何も無しで、剥き出しのままその速度に至ったらどうなるか、敢えて考えるまでもない事だろう。

「…えっと、その。 良く、生きてますねぇ、横島さん…」

「ま、アレだ。 慣れだな、うん」

「慣れって…」

 こちらの常識的には、ただ唖然とするしかない。

 そんな ただ足を動かすだけの数分の後、更なる目的地が間近に見えてきた。

「なんだ、今度は城かなんかか?」

 見えてきた小振りな島のその上を建物が占拠している。 尖塔か時計塔か、高い部分を持つ、かなり大きな建物だ。
 その外観に、またしても横島が感歎の声を上げた。

「図書館島ゆーんよ」

「へぇ、そうなん、だ… って、え?」

 返事した相手が愛衣でないと気付いて、思わず振り返る。

 そこには、つい先日会ったばかりの木乃香と忍者少女、それに見慣れぬ双子の幼女とが居た。

 

 

 

 【続きは、またやなー】

 


 ぽすとすくりぷつ

 案内行3日目。 図書館島編の第1話と言う感じでしょうか(苦笑) 今作中で触れた通り、楓にとっては2度目の図書館島探検、木乃香にしてみればいつもの、鳴滝姉妹はおそらく初めての、って事になりますね。

 ただ、愛衣と木乃香は予定通りなんだけど、残りのは筆が滑ったんだよね(笑) シーン辺りの人数多いと、私自身書き辛いからこーするつもりなんか無かったのになぁ。 一気に倍だよ… orz 鳴滝姉妹は、口調とかイマイチ判んないし(^^;

 ってか、あまり余計な遊び入れると、ただでさえ遅いペースがひたすら遅くなりそうなのが問題だ(爆)
 何せ横島がこっちに来てから、作中ではまだ半月。 途中2日とか5日とか、何度か飛ばしてるから、時間の流れの遅い事遅い事(苦笑)
 学園祭前にこの話は終わるったって、エンドマーク打てるまでに何回掛かるのやら…(^^;

 ついでに補足すると、明日菜はネギやカモと茶々丸の後を追ってます。


 
 

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