「ったく、しつけぇったら しつけぇったら…」

 疲れた様に横島が独りごちる。
 いや実際のところ、体力はともかく精神的にはかなり疲労しているのだ。 理由は言うまでもない。

 HRの終了と共に逃げる様に教室を飛び出した彼の後を、中村を始めとしたクラスメートたちが……正確には昨日の事を引き摺っている全校の生徒たちが、鬼の首を取らんとばかりに追い回してくれたのである。

 確かに今日もこれから愛衣と合流するのだから、彼らが僻むのも無理ない事。
 だが、彼女を可愛いとは思っていても対象外と認識している横島にとって、同窓たちのソレは傍迷惑なだけだった。
 それに、その所為で昨日はロクに案内を受ける事が出来なかったのだ。 学園都市の広さを考えれば、最低でも1週間は掛かるだろうと言うのに。

 そんな事をぶちぶちとボヤキながら、向かう先に見知った人影を見付けて走り寄る。

「よっ」

「あ、横島さん」

 掛けられた声に応じながら、愛衣は軽く首を傾げて微笑みを浮かべた。

 そんな彼女を見て、やっぱり可愛いよな この娘、せめて高校生だったらなぁ、などと胸の内でだけ呟く。 年相応のボリューム不足も、後2年経てば充分期待が持てるだろう。

 そんな邪な思いを裡に隠して、横島はまず頭を下げた。

「昨日は、マジすまんかった」

「い、いえ、状況が状況でしたし、私も混乱しちゃって…」

 頭を下げた彼に、愛衣は苦笑いで手をパタパタと振る。 迷子になった事自体は、かならずしも横島だけの所為とは言い難い。 一因は有るにせよ、それを言ったら自分もだと理解している。

 それに後から思えば、自身のアーティファクトで飛んで帰る事だって可能だったのだ。
 想定外の鬼ごっこに始まったドタバタペースを崩されまくって、まともにモノを考える余裕も愛衣には無かったので、今更言っても詮ない事ではあるのだが。

「ま、ともかく、改めて案内よろしくな」

「はい、こちらこそ」

 顔を見合わすと、横島はそれでも周囲を窺ってから一緒に歩き出した。

 興味深げに自分たちを見詰める瞳が有った事に、いっかな気が付かないままに。

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その11   
 
逢川 桐至  


 

 

 

「どう言う事ですかっっっ?!!

 いつもの巡回の為に合流した場で、ガンドルフィーニの提案に高音が叫ぶ様に聞き返す。
 その反応は予期済みで、だから人払いの結界は念入りに展開してあり、その大きな声を聞く者は集ったいつもの面々のみ。

「いや、どう言う事と言われてもだね…」
「なら横島さんと『パクティオー
「なら横島さんと『仮契約』しろ だなんて、何でそんな話になったのか、説明して下さいっ

 びしっと横島を指差し、彼女は再び声を荒げる。
 まぁまぁと手で宥める様にジェスチャーした後、ガンドルフィーニは口を開いた。

「つまり、鈴を付けたいんだよ」

 本人の前で言う言葉ではないが、要はそう言う事だ。
 話は午後3時近く、横島が愛衣と落ち合ったくらいの時刻まで遡る。

 

 

 

「実際、どうしたものやら…」

 雑用に追われての、かなり遅めの昼食。
 運ばれてきたランチセットを前に、ガンドルフィーニは溜め息混じりに そう零した。

 同席しているしずなも、苦笑を浮かべながら溜め息一つ。
 言うまでもなく、話題は横島に対しての話だ。

「下手に行動力と体力を持て余しているのが、少々問題ですわね」

 気軽に相談に乗って見たものの、彼女とてあの少年の取り扱いには妙案なぞ簡単には浮かばない。

 昨日の例で言えば、横島は男子高等部のある区画から、森林公園、外縁山岳地帯まで、のべ20km以上をなんだかんだで走破している。 しかも、ほとんどの距離を愛衣を抱えたままで。
 それを考えると、ちょっと目を離しただけでも、どこまで行き、どれ程 事を大きくしてしまうか…
 やらかす事自体は覗きだのナンパだのと言った、大した事の無いお馬鹿な行動に収まっているのだが、問題無しとは到底言えないのも確か。

「愛衣くんには引き続いて案内をさせてますが、地理的な叩き込みはともかく、何かあった時の連絡の取り付けも難しいですし」

 携帯回線の妨害なぞ、この管理された都市内でもそう難しい事ではない。
 と言うか、時々大学部での実験の失敗や特殊な同好会の活動で、電波障害が発生する事自体珍しくなかったりするのだ。

 かと言って、魔法使いではない横島とでは、念話による遣り取りなぞ出来よう筈も無く。
 なのに、突発的な緊急事態の際などには彼が野放しにされかねない事を、誰ならぬ横島の昨日の一件が知らしめていた。

「いっそ、誰かと仮契約を結ばせてしまうのも、手かも知れませんわね」

「…はい?」

 考え込んだその果てに零された言葉へ、ガンドルフィーニは思わず聞き返した。

「いえ… 私もこんな使い方はどうかと思うんですけど…」

 そう前置きしての続けられた理由の内訳に、次第に彼の顔にも納得が浮かんでいく。

「なるほど… しかし、私相手では彼も嫌がるだろうしなぁ。
 かと言って…」

 尤も広く普及している契約方法が、契約陣の上でのキスなのだ。 となれば、横島が男性相手を承諾するなんてコトは まず無い。
 キス以外の方法が無い訳では無いのだが、時間や手間、その他いくつかの条件を整えねばならず、選択肢としてはあまり建設的ではないのである。

 だが、高音や愛衣に契約を結ばせようとするのも、それはそれでどうかと思う。

 高音は、まず嫌がる。
 横島の能力への評価ならまだしも、異性としての、となれば かなりの低空飛行だろう事は否めない。 それになにより、暴走する彼の姿が脳裏にくっきり浮かんでくるのだ。

 かと言って、まだ中学生で発展途上もいいとこの愛衣にと言うのも、これまた躊躇われる所が有る。
 当事者が年少である例など、それこそシャークティの所の見習いペアの様に無い訳ではない。 のだが、それにしても教育者としては看過し難い部分が有るのも事実なのだ。

 しかし、現状の問題点の解決の為である以上、例えばしずなと言ったチーム外の人間に頼むのも意味が無い。

「悪い子じゃ無いんですけどねぇ…」

 しずなの言葉に、ガンドルフィーニは苦笑で同意を返した。

「しかたない、また高音くんに貧乏籖を引いて貰わざる得ないか…」

 

 

 

 そんな回想混じりの説明を聞きながら、しかしその話題の当人である所の横島と言えば、全く話が判っていなかった。

「えと… その博奕王ってなんなんすか?」

「バクチオウじゃありませんっ、パクティオーです」

 高音の言葉に愛衣が続けて補足を入れる。

「魔法使いとのパートナー関係を結ぶ為の契約術式なんですよ」

 良くも悪くも愛衣相手だとまともに聞いてくれる為、説明は彼女がいる時は任せてしまう事が多い。 勿論ガンドルフィーニたちも、補足など必要に応じてちゃんと入れているのだが。

「パートナーねぇ…
 なんでそんなのが要るんだ?」

「私みたいな魔法使いなんかだと、呪文を唱えている間って無防備になっちゃったりするんです」

「あぁ、なるほど。
 けどソレって、別にンなコトしなくても出来ないか?」

 少なくともこれまでの実務中で、このチーム内では詠唱のフォローが必要だった事は無い。
 必要性がその点だけなら、彼らの誰もが互いに出来る。 少なくとも今やっている業務内容からすれば、わざわざそんな手続きを踏む理由は無いのだ。

 横島の尤もと言えば尤もな疑問に、答えたのはガンドルフィーニ。

「仮契約を結ぶ事で、相互間での連絡が容易くなるんだよ」

 あ、と高音と愛衣の顔に納得が浮かんだ。

 勿論 一人だけ解っていない横島は、説明係へと顔を向ける。
 その様子に苦笑しながら、愛衣は何処からともなく1枚のカードを取り出した。

「契約すると、こう言うのが手に入るんです」

 よく解らないまま、彼はまじまじとそれを眺めた。

 縦長のカードには、中央にいつもの箒を持った愛衣の姿が描かれている。 背景には魔法陣。 肖像に被せたカード下半分や4隅などに、ちょこちょこと書き込まれた数字や文字。
 よくよく見れば、その内、真中の大きな文字は、彼女自身の名前だと気が付いた。

「ふ〜ん。
 こう言ういつもと違った雰囲気の愛衣ちゃんも、これはこれで可愛いねぇ」

「え、えっと… その…
 そ、それでですねぇ。 これは私のコピーカードなんですけど、コレを介してマスターカードをもってるお姉さまとの間で念話を交わせるんです」

 照れながらも、理由の一つを説明する。

「それは別に魔法使い同士じゃなくても出来るんで…」

「おおっ、タダで掛けられる携帯電話って事か」

 そう言われて、横島もぽんっと手を打った。
 そんな事が出来るなら、少なくとも昨日の一連のドタバタは起こらなかっただろう。

「タダで使える携帯って、あなた…」

「ったって、んな ぶるじょわじーなシロモノ、高くて使えんわっ」

 横島の感覚では、の話。
 対して、高音たちにとっては誰もが持ってる普及品だ。

 その差異は、2003年現在に生きている彼女たちと、2000年当時に生きていた彼との、時代的な違いが生んでいる。 勿論、常軌を逸して低かった横島の懐事情の所為の方が大きいのだが。

 そんな事までは知らないだけに、さすがに高音も想像出来よう筈が無く。

「ブルジョワジー…? 高い…?
 イマドキの学生なら皆 大抵持ってると思いますけど…」

「なんですとぉっ?!
 貧富の格差はソコまで?! どーせ、俺は社会の最底辺だよ、どちくしょ〜〜っっっ!!

 何を恨めばいいのか、明確な対象が無くて……勿論 元の雇用主は恐過ぎて埒外だ……取り敢えず天に向かって呪いを掛ける。

 何処から取り出したのか白装束を纏い、一人何やら怪しい儀式に耽る横島をよそに、ガンドルフィーニは高音たちに向き直った。

「それにいざと言う時、強制召喚もかけられるしね。 どうだろう?」

「どうって言われましても…」

 高音の返事は、歯切れが悪い。

 そもそも『魔法使いの従者』とは、信頼に足るパートナーとの結びつきを産み出すシステムなのだ。
 その為の補助機能として、確かにガンドルフィーニの言った通りの事も可能としている。 従者が魔法使いであるとは限らない……と言うかそうでない事が多い以上、連絡やいざと言う時の確保を可能にしなければならないからだ。
 現状の横島の問題は、だから確かにそれで解決し得る。

 ただ、あるべき魔法使いとしては、そんな理由での契約には抵抗が大きかった。

 それに元になった伝説 故に、正規の契約が実質 婚約と同義な事もある。
 高音とて異性とのお付き合いには、それ相応に夢も希望も持っていた。 白馬の王子様が などとは言わないが、仮、であっても横島とと言うのは少なからず抵抗が有る。

 そんな私情を交えた煩悶に、恐る恐る愛衣が口を挟んだ。

「その… 私なら、別に…」

「な、何を言ってるの、愛衣?!
 ま、まさか、あんな人の事が…?」

 高音のぷるぷると震える指が示す先には、世を呪ってる内に主眼がスライドしたのか、「カップル撲滅〜」とか叫びながら藁人形に釘を打ち付けている横島の姿。

「いえ、私も今の横島さんはさすがにちょっと…」

 リアルタイムで奇矯な行動に出てる彼を見ながら、愛衣も腰の退けた苦笑いを浮かべる。

 この中で一番横島に好意的な彼女にしても、受け入れ難い部分はやはり受け入れ難いのだ。
 特に、敬愛する高音への行動とかそう言った様子とか。 だから愛衣にしても、マイナス評価が有るのは否めないのである。

「それなら…」

「でも、必要なのも確かですし、お姉様は嫌なんですよね?」

「メイ、あなたって子は…」

 自分を気遣っての妹分の言葉に、高音も言葉を失う。
 思わずぎゅっと愛衣を抱きしめると、彼女は拳を握ってガンドルフィーニに向き直った。

「判りました。 私も世に貢献する魔法使いとして、どんな耐え難い事だってきっと耐えてみせます。 それが、たとえ横島さんとキスしなきゃならな…」
「なにぃっ?!
 高音ちゃんとキスだとぉっっ!!

 キスと言う言葉に現世復帰したのか、突然横島が話に割り込んできた。
 目は爛々と輝き、口元からは涎が垂れかかっている。

「ひっ…」
「のぁぎゃっ?!

 突風が撒き上がるように湧き出た影の触手が、ルパンダイブ一歩手前を絡み取って締め付ける。

 獲物と目された少女が、つい過剰防衛に出たとしても、まぁこれは当然と言えよう。
 美神が居たなら、徹底的に躾直す事を提案する筈だ。 それでどうなる横島でもないが。

「つう事で、さぁしよう、すぐしよう、今しよう」

 捕らえられ締め付けられているくせに、こんなにも元気一杯なくらいだ。

 そんな彼を抑えて、ガンドルフィーニが間に入る。

「まぁ、待ちなさい。
 で、いいんだね?」

「はい。 メイにそんな苦行を課すくらいなら…」

 本人的には生贄にされる乙女といった心情か。

「では、後日契約用の魔法陣を準備しよう」

「な、すぐじゃないんすかぁ…」

 横島がガクッと肩を落とす。 勿論、変わらず黒いす巻き状態で。

「仮契約陣を描ける人って多くないですから」

 苦笑する愛衣の言う通り、実際 そう多くは居なかったりする。 なにせ、そう何度も使う事は無いシロモノだ。

 そこに掛かった闖入者の声。

「なんなら、俺っちが描きますぜ、ダンナ方」

 一斉に集まった4人の視線に、ソイツは口を大きく歪めて不敵に笑った。

 

 

 

 【…続くんじゃない?】

 


 ぽすとすくりぷつ

 あれ? 仮契約まで行く筈だったんだが…(^^;
 月一を崩してしまいました、すいません。 色々と展開に悩みましてなんかズルズルと… orz 体調がアレだった事も、いつも通りに(苦笑)

 それと、原作において明示されていないんですけど、本作中では愛衣と仮契約を結んでいるのは高音って事にしました。


 
 

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