「おーい、横島」

「あん?」

 帰りのHRも終わり、それぞれが思い思いに立ち上がる中、横島は後ろから掛けられた声に振り向いた。

「確か今日はバイト無い日で遅くまで大丈夫なんだろ? お前も来ないかと思ってさ」

 地味で眼鏡を掛けたクラスメートのそんな言葉に、少しだけ残念そうに彼は首を振った。

「あ〜 今日は先約有んだよなぁ」

「あれま…」

 不思議そうな反応は当然だ。
 横島は、今月になってこの地に転居してきたと言う事になっているからだ。 『この世界』に現われてから僅か2週間に満たないなんて、本当の事を言う訳にもいかないので当然ではあるが。
 何にしても、学園都市内に知己などそう多く居る筈が無いのは、目の前の眼鏡君を含め昨日一緒に出歩いた数人には知られている事なのだ。

「そっか…
 今日は女子部の子たちが良く集まってっトコ 案内してやるつもりだったんだけど、用があん…」
「なにぃいぃぃっ!?

 昨日の『超包子』も彼らに案内して貰った場所なのだ、その目は確か。 ましてや、特に今回は射程範囲内の女子高生目当て。
 そうと聞いて、心揺れない横島ではない。

「いや、しかし… だが、しかし… ぬぬぬぬぬぬ…」

「ん? こっち来るんか?」

 心の天秤が、ナンパスポット探索へと傾ぎ掛けた、その時。

「横島〜っ てめぇと言うヤツはぁっっ!!

 駆け戻ってきたクラスメートに、横島は渾身のツッコミを食らった。

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その9   
 
逢川 桐至  


 

 

 

「こんタワケ〜っ いきなしナニしぃやるんやぁ〜っっ!!

「ナニもクソもあるか、この変質者っっ

 問答無用で野郎にドツかれれば、横島とて腹を立てぬ筈が無い。
 思い切り怒鳴りつけるが、茶髪の薄くそばかすの浮いた軽薄そうな少年は、しかし負けじと言い返してきた。

「見損なったぞ、横島っ。 おまえを巨乳愛好の同士と思えばこそ、親友と思ってきたと言うのにっっ
 よもや、そんな性癖の持ち主とは、恥を知れ、恥をっっ!!

「はぁ? ナニ言っとんのや、おまい?」

 涙流さんばかりの勢いに、毒気を抜かれた横島の口から呆れた様な言葉が漏れた。

「そうだぞ、全然話みえないぞ。 ちゃんと話せって」

 続けての眼鏡の言葉に、ふぁさっと茶色い髪を掻き上げる。

「フッ… ならば教えてやろう」

「ナニかっこつけてんねん」

「うっさいっ
 でだ、ついさっきの事だ。 用があって急いでいた俺は、終わるなりとっとと校門へ向かった」

 グッと握り拳を作って宙を睨む。
 急いでんならさっさと帰ればいいのに、と口を挟むにはアレな雰囲気に、横島たちは仕方なく ふむふむと合いの手を入れる。

「何故か門のトコでたむろっている有象無象を掻き分けた俺は、そこでナンパをやってるバカを見掛けたのさ。 可愛かったのは確かなんで、聞くとはなしに聞いていたんだよ。
 そしたら、『ごめんなさい、私、3年の横島さんを待ってるんです』と、そう答えたんだよ、中等部の制服を着たその子はっっ!!

 ビシっと空気の固まる音がした。
 幸か不幸か、その名を持つ3年生は、この学校には一人しかいない。

「よ〜こ〜し〜 …って、何処行った、あいつ?!

 横島の言う先約が誰かと気付いた眼鏡が、怨念の声を挙げ掛けた時には、彼の姿はその場には無かった。

「逃げやがったな、あの野郎っ?!

「追うぞっ

「「「応っ!!」」」

 組んだ腕を振り上げた眼鏡と茶髪だけでなく、残っていたクラスメートたちが怒声を上げて頷くなり走り出す。 学生で溢れ返っている学園都市とは言え、だからと言って付き合っている異性が誰にでもいる訳ではない。 ましてや、ここは男子校。 抜け駆け野郎に天誅を求める者が多々居ても、まぁ仕方のない事だろう。

 そんな悪友たちの追撃に先じて、逃げ……もとい、走り出していた横島は、近付いてきた校門の様子を見て、思わず額に手を当てた。

 少々普通より大きめの、しかし良く有る造りをした校門の周辺は、放課後とは言え多過ぎる人だかりが出来ている。
 その中心にぽっかりと開いたスペースには見知った少女の姿。 周囲の人いきれに気圧され、動くに動けず困惑が顔にはっきり出ている彼女は、言うまでもなく、佐倉愛衣、その人である。

 アメリカより帰国してからこちら、彼女はその多くの時間を高音やクラスメートたちとのみ過ごしてきた。 それだけに、男子校の校門前で待ち合わせると言う行動が、一種の暴挙であるとは きちんと認識出来ていなかったのだ。

「くっ… まずい、まずいぞ、これは…」

 考えてみれば、どう落ち合うかなんて決めてなかった。 だから、これも有り得ない状況ではないのだが、こんな事を横島が想定して居た筈も無く。
 異様な緊張を湛えたソコに、だが行かない訳にもいかなくて。

 強行突破するしかないかと考え込んでいた横島の姿に、気付いた愛衣がホッとした様な顔で「あ、横島さん」と呼び掛けてきた。

 直後、ギンっと、周囲の視線が掛けてくる彼へと突き刺さる。

 この時間に帰ると言うことは、部活に精を出すでもなく手持ちぶさたにだらだらと帰宅部する様な連中ばかりだろう。
 だとすれば、らう゛に恵まれている者など、そう多くは居る筈が無い。 「あいつか…」とか、「許せん…」とか、玉砕した者から始まった妬みの声が、取り囲んでいた者たちにブツブツと広がって行くのは見ていてかなり恐かった。

「いたぞ〜っっ

 そこへ更に背後から迫って来る声。

「げっ…」

 その瞬間、横島は一陣の風になった。

「えっ? きゃ…?!

 突然抱え上げられた愛衣が、小さく悲鳴を洩らす。
 だが、気になぞしていられる状況ではない。 人垣の僅かな隙間を縫って、横島は駈ける駈ける駈ける。

「逃げたぞ〜っ 追え〜っっっ!!

 一気に脹れ上がった集団を背に、横島の足は更に加速した。

 

 

 

 30分後。

 外周の山裾に面した区画に設置された森林公園。 その片隅に有るベンチに、二人の姿は在った。

「はぁ… はぁ…」

「な… なんだったんでしゅかぁ…?」

 10km近い距離を抱えられて、まるで耐久ジェットコースター状態だったからか、愛衣は言葉尻おかしくしながら横島に尋ねた。

「あ、あのな… 愛衣ちゃん…」

「はい?」

 訳判らないままの彼女に脱力しながらも、溜め息混じりに答える。

「愛衣ちゃんみたいにな、可愛い娘があーゆー連中の前に出てったら、あーなっちゃうもんなんだよ…」

 それでも可愛らしく首を傾げたままの愛衣に、更に噛み砕いて説明する。

「つまりね、まるで俺が彼女を見せびらかす為に校門で待ち合わせたみたいに、あいつらには見えたって事なんだよな… 頭痛い事に」

「あ…
 そそそそ、それじゃ、あの人たち…」

 説明されて漸く理解出来たのか、彼女の頬がうっすらと染まる。
「そ。 嫉妬に駆られた『み な し ご ど も
「そ。 嫉妬に駆られた『彼女無き輩達』って訳だ、あいつらは」

「か、かっぷるとか、すてでぃとかに、その、見えたんでしょうか?」

「見えてたんだろうなぁ、アノ分じゃ…」

 微妙に噛み合ってない遣り取りの末、はぁ、と明日からを思って横島は溜め息を吐いた。

 彼にとって中学生は範疇外だが、だからと言って他の同窓たちまでそうとは限らないのだ。 と言うか、中学生と高校生くらいのカップルなぞ、探すのは けして難しい事じゃない。
 である以上、明日 あまり楽しく無さそうな状況が待っているのは確実だ。

 そんな自分と隣で赤くなってる愛衣とが、傍目には充分にカップルに見えてるだろうなんて、思いもしないから余計に横島の溜め息は深かった。

「ま、つーこったから、これからは今日みたいに校門前で待ち伏せとかナシで頼むな」

「は、はい」

「そいじゃ、ま、いきなし出足からケチついちゃったけど、そろそろ行こか?」

 立ち上がった横島が、愛衣にそう話を振った時だった。

「ぜぇ… はぁ… やっと、追付いた、ぞ…」

 現われたのは、横島と同じ制服をラフに着込んだ、オールバック気味に後ろに流したツンツン髪の少年。

「ちぃ、こんなとこまで…
 しつこいぞ、この女々ヤローどもが」

「だ、誰が、女々しい野郎だっっ!!?

 気の強そうな顔に、苛立ちを浮かべて言い返す。

「いくら可愛いからって、まだ中学生の愛衣ちゃんを追い掛けてこんなとこまで来るロリコンなんざ、女々ヤローで充分だっちゅーのっ

「ち、ちちちち、違うっ い、いや、その子が可愛くないと言うんじゃなくてだな…
 俺が追い掛けて来たのは」
「えっ?!
 横島さん目当てなんですかっ?!

 愛衣が上げた言葉に、横島は盛大に退いた。 彼女が、どこか興味津々な様子を見せている分、余計に。

「ち、ちちちちちちちち違ぁ〜〜うっっっ!!

「そう言う趣味の輩には、余計ご遠慮願うぞ、俺はっ

 横島にしてみれば、悪霊やら妖怪やらなんかより、よっぽど想像の埒外の存在なのだ。

「そ、そうじゃなくてさぁ…」

 ベンチの後ろに回り込んでの彼の警戒も露な様子に、ツンツン髪の少年はガックリと肩を落とした。

「なんだぁ、違うんだ…」

「ナニユエ、愛衣ちゃんはそんな残念そうに?」

「え、だって、その…」

「だってその、じゃないっちゅーの」

 横島も横島で、愛衣の様子にベンチの影でしゃがみ込んで溜め息を吐く。
 それでも、このしらけた空気の中 立ち上がって、自己崩壊を起こし掛けている少年へと顔を向けた。

「で、そっちのおまえ。
 愛衣ちゃん狙いのロリコンでも、ホモでも無いっつーんなら、何しに来たんだ?」

「…ッ?!

 声を掛けられて、正気に返るとこちらもやおら立ち上がる。

「俺は、横島に訊きたい事があって追ってきたんだ」

「な、なんで俺の名前を?!
 まさか、ホントにホ…」
「頼むから、そっちから離れてくれっ
 って言うか、同じクラスに居るのに名前知ってちゃおかしいのかよ?」
 
えっ、そうなんですか
ほへ? そーなんか
?」

 愛衣だけでなく、記憶にございませんとはっきりくっきり顔に出している横島に、なけなしのやる気も削られて、彼は再びしゃがみ込む。

「はぁ… なんかもうどーでもよくなってきちゃったんだけど、一応 自己紹介しとく。
 俺の名は、中村達也。 そこの横島と同じクラスに所属する空手家だ」

「そうなんですか?」

 これは、横島に向けて、だ。

「いやだなぁ、愛衣ちゃん。
 美女・美少女ならともかく、この俺が野郎なんか ちゃんと覚えてる訳ないってば、ハッハッハッ…」

「…まぁ、そうでしょうね」

 爽やかな笑顔でロクでもない事曰う彼に、普段の行動を思い返して愛衣は納得した。

 高音を始めとして、見映えのいい女性には率先して話し掛けるが、それ以外の相手には目もくれない所が有るのを何度となく見ているのだ。
 ガンドルフィーニにすら、立場的に仕方ないとばかりの様子を隠さないのだから、その辺 徹底している。

「んで、その中村なんとかが、俺に一体 何の用なんだ?」

「教室でのお前の様子を見て、他人の空似なんじゃないかと思っていたんだよ」

 何を言ってるんだとばかりの横島を無視して、彼は言葉を続けた。

「けど、さっき見せた信じられない体力と、一緒にいる その子の顔を見て確信した。
 昨夜 見掛けた3人組が、お前らだって事をな」

 その言葉が何を意味するか理解が及んだ瞬間、横島と愛衣は真っ白になって固まった。

 

 

 

 【マスター、このまま次回に続きます】

 


 ぽすとすくりぷつ

 こやつは原作キャラと言っていいのだらうか?(笑)
 私が確認出来た限りでは、登場コマ数、僅か10コマ弱。 しかし、一応セリフもあるキャラですし、ネギと関係ないトコで使うならいいかな、と…(^^;
 3−Aを除くと、名前の出てるキャラってホントに多くないのですよね、ネギまってば。

 ちなみに、女々ヤロってのは、ときメモからです。 一時期、ハマってたもんで(笑)


 
 

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