「あ・な・た・と、言う人は〜〜っ
「またか? またなぬぉはぁれほれは〜〜〜っっ?!!

 なぜか愛衣と仲良く集合場所に現われた横島から、理由と経緯を聞き出して、高音は思い切り憤りを拳に変えた。
 垂直に宙を舞った彼の体が、ぐしゃっと鈍い音を立てて地に落ちる。

「お、お姉様、そのくらいで…」

「この方には言うだけじゃダメなのは、あなたも判ったでしょう?」

「け、けど、横島さんも知らなかったんですし…」

 犯罪者の疑いを掛けた揚げ句、奢られて夕食を共にした愛衣としては、さすがに彼を庇わない訳にも行かず。
 しかし、かと言って敬愛する高音の論は、見事に正鵠を射ているのだ。

 そんな妹分の困惑に、高音も振り上げていた拳をしぶしぶ下ろした。

 そもそも横島から聞き出した、桜通りで難儀していた麻帆中の生徒を手助けして寮まで送った、と言う話それ自体は、そう強く責めるほどのモノではない。
 …と言うか、その事だけなら人々の手助けすると言う、彼女にとっての有るべき魔法使いの在り様に沿っているのだ。 だから、注意事項を理解してなかったと言う一点さえなければ、褒めたって良かった。 不用意に女子寮に入り込んだ事も、その事情を鑑みれば許容出来ない事ではないのだし。
 だから、と言う事もある。

「まぁ、これからは判らなかった事はその場で尋ねる様になさって下さいね」

 地べたでピクピクしてる横島を仁王立ちで見下ろして、そう高音は言い置いた。

 

 彼が倒れたままだったのが実は下からスカートの中を覗く為だったのだと、その事に気が付いた高音が、再び折檻を始めたのは僅か20秒ほど後の事。

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その8   
 
逢川 桐至  


 

 

 

「けど、結局なんでやったんだか…?」

 ナニがと言えば、桜通りの全裸少女の事である。

「あれ? 横島さんは聞いた事無いんですか?」

「ん? 何を?」

 不思議そうな愛衣に、しかし思い当る事もなく横島は首を傾げ返した。

「知っていたら、桜通りの名前も知っていた筈でしょ」

「あぁ、そうですね」

 先程の1件が尾を引いているのか、少し棘のある口調の高音に、納得したように首が縦に振られる。

「二人してなんなん? なんか知ってるんなら、教えてくれたっていいんじゃんか」

「あのですね。 最近、桜通りに吸血鬼が出るって噂が流れてるんです」

 秘密めかした口調のソレを、横島は「へぇ、そうなんだ」と至極平然と受け止める。
 そんな彼の様子を、高音は訝しげに見詰めた。

 強大な魔力を持ち、多くの高等呪文を操る魔の申し子。
 素で強靭な肉体を持つ、高位の魔族にも匹敵する最凶の不死者。
 複数の魔法使いで当ってすら、返り討ちに遭う事のままある人の天敵。

 そんな吸血鬼の事を、しかし認識して居ないと言う訳ではなさそうだと見取ったからだ。

「随分、平然と聞き流すんですね」

「ん? まぁ、ホンモノならちょっちやっかいだけど、どーにもならんっちゅうもんでも無いだろ?」

「本物ならって?」

「いや、血を吸うのに服を全部ひっぺがす吸血鬼ってのもなぁ、と」

 苦笑する彼に、そう言う事かと二人は納得する。
 それは、介入者……それも魔法使いのだ……が有ってその結果『武装解除』の煽りを受けたんだろうと推測が出来ている高音たちと、そんな事を思いもしない横島との認識の差だ。 自分たちが監視も兼ねて横島と居る理由の一つに、超常的なチカラを持つ彼が日常的な常識だけでなく『こちら側』の常識も知らない為だと、彼女たちは僅かな付き合いから揃って理解していた。 …と言うか、させられていた。

「ま、なんにしても、死人が出てんならもっと大掛かりに捕り物してんだろうしな。 あのぬらりひょんが放置してんなら、被害も大した事ないんとちゃうか?」

 続けて口にされたあっさりとした言葉に、見直したとばかりの視線が向かう。

 横島とて、別に何も考えていないと言う訳ではないのだが。
 まぁ彼にとっては、ピートとブラドー、それにブラドー島の人たちが基準な訳で、吸血鬼と言う単語に大した危機感を持ってよう筈も無く、だからこその余裕が有るからだったりすると言う事もある。 自然、さして脅威に思えなくなっているのだ。

 そんな経験則に基づいて話している様な彼に、愛衣が尋ねた。

「あの… もしかして、吸血鬼に会った事有るんですか?」

「つか、知り合いにバンパイアハーフが居るんだわ」

「へっ?」

 返された返事に、彼女たちは間の抜けた疑問をハモらせた。

「ピートっつーんだけどさ。 こいつがボケっとしてやがる癖に顔だけはいいもんだから、クラスの女たちにきゃーきゃー言われて、昼とか弁当なんかも良く貰ってやがって、畜生、ちきしょう、どちくしょぉ〜っっ
 しょせん、男は顔だってかぁ?! 死ねっ、死んでしまえぇぇぇっっ!!!

 突然ヒートアップしたかと思うと、何処から取り出したのか、わら人形を傍らの木の幹へと五寸釘で打ちつけ出す。
 二人はと言えば、その言葉の前半に驚いて唖然と立ち尽くしていた。

 確かに狗族や烏族など、時として人界の中に居を保つ人外も居なくは無い。 が、半分にせよ吸血鬼と親しく出来る環境がどれ程在るかと言われれば、数えるほどとて有るとは思えないのが実情だ。 まして異族とのハーフは、どちらの族からも爪弾きにされる事が多いのである。

 そして、高音なぞ、逆に魔法使い以外が淘汰されてしまっている『魔法使いの国』出身だから、人以外を見た事自体がこちらに来てからの事。
 彼女たち魔法使いの感覚を以ってして尚、横島の口にした環境は想像を絶する異常なモノなのである。

 

 その頃。
 奇行を続ける横島と、呆然としている少女たちを他所に、ガンドルフィーニは困った事態に直面していた。

 

 

 

「困ったものじゃな」

 何がかと言えば、言うまでもない。 今日の横島の行動に関してだ。
 桜通りでの一件は、現在の最重要事項であるからすぐに情報は一番上まで届く。 それが孫娘に関するとなれば、学園長と言う立場に在るとは言え、当然 懸念しない筈も無い。 筈も無いどころか、彼は完璧な爺バカだった。

「はぁ…
 ですが、私もそのタイミングだけは見ていようが有りませんし…」

 届けられた報告を片手に、渋い顔をした学園長も仕方ないかと溜め息を吐いた。

 確かに、彼とて横島に24時間張り付ける訳ではない。 そも、家族持ちなのだ、ガンドルフィーニは。 2日に一度の夜勤を強いられてるだけでも、家族からすれば噴飯ものだろう。 こちら側の事情は知っているから文句は出て来ないが。

 それに、木乃香の行動も規制する事は難しい。 表向きには高い治安を誇る学園都市だけに、下手な誘導は不審を買うだけだ。
 専属でガードしている者次第ではどうにかならなくもないが、当人自身の一身上の都合でソレも難しかった。 孫の事で手間を掛けさせてる負い目もあるし、少なからずその桜咲刹那と言う少女を可愛がっても居る学園長だ。 心情的にも無理押しする訳には いかなかった。

 そんな双方の行動を、共に制御しきれない現状。 如何に広いとは言え同じ学園都市の中に居るのだから、確率的には出逢ったとしても不思議は無いのだ。

「まぁ、最後まで確認した刹那嬢の報告では、不用意な発言も不用意な行動も無かった様じゃし、その辺だけキツく言い含めておいてくれるかの?」

「判りました」

 神妙な顔で頷く。 今日の横島は説教漬け確定だった。
 ちなみに、少し遅れると高音には連絡してある。

「ついでじゃから聞くが、君の目から見て、彼はどうじゃね?」

「そうですね。 今 見れた範疇では、問題無し、と言う所でしょうか」

 あくまで、魔法使いの目で見た学園運営への影響、が主眼の話だ。

「…まぁ、色々と奇行に走るのは、教師として見ると困りものですが」

「そうじゃろうなぁ」

 同じ教育者同士にしては、学園長の声には面白がっている色が強い。
 まぁ、直接責を負う事が無い傍目から見れば、横島が引き起こすドタバタは ちょっとしたコメディーにすら見えるだろう。 だから、その反応も当然アリなんだろうと、ガンドルフィーニは文句を口にするのは諦めた。 それに上司に愚痴っても、評定にどう響くか判ったものじゃないだけで、良い事なぞほとんど無い。 

「ま、とは言えこれからも宜しくの」

「はい。 では、私はこれで」

 一礼する彼を見送った後、届いた第一戦の結果へと目を移す。
 そこに書かれていた ほぼ想定の範囲での推移に、今度は安堵の溜め息を吐いた。

 

 

 

「なんか多くないかぁ?」

 ぼんやりと輝く巨大な腕が、一閃 闇を切り裂く。

「そ、そうですわね」

 夜の帳より尚黒い豪腕が、力強く振り抜かれる。

「どーせ給料変わらんのやから、楽な方がえぇっちゅーのに…」

 手を動かしながらボヤく横島を横目で一瞥して、高音は別口へと向き直る。
 持てる余裕に多少の差は有るが、先を切って走る二人は互いの持ち技が見た目に対照的で、まるで息がぴったり合ってるようにも見えた。
 ちなみに、位の低そうな使い魔を蹴散らしながらのその会話は、今相手にしてる魔物の数に対してではなく、彼らがチームを組んでの仕事を始めてからの荒事の回数に関して、だ。

「こいつで終わりっ」

 一番動き回って……本人の動きに無駄が有り過ぎる為だが……いた割に誰より元気な横島が、お気軽に一段落を告げた。

 息を整えながら高音が一瞬 彼をキツく睨んだのは、制止する間も無く飛び込んだ横島に対しての不満でか、それとも釣られて飛び込んでしまった自分への反省からか。

 そんな敬愛するお姉様を後ろから眺める愛衣は、内心 複雑だった。

 フォーメーション的には、前衛に横島が増えただけなのだが、その結果 自身のやれる事が極端に減ったのだ。
 まるでふざけてる様にしか見えない横島は、どこか腰が退けてる癖に不思議と強かった。 対抗する様に高音が力を揮った事もあって、補佐も打ち漏らしの排除もロクに必要無く。 魔法の矢を数発放っただけで、後はほとんど二人を追い掛けていただけ。
 …まぁ、更に後ろに居たガンドルフィーニなど銃を取り出してすらいないのだが。

 ただ二人だけの頃の様な充実感が無いのが寂しかった。

「んで、実際のとこ、どーなんです? 今晩だけで3件目って、いくらなんでも多過ぎでしょうが」

 向けた視線の先にはガンドルフィーニ。

桜通りの方で人が集められてる分、他に隙が出来てしまうのは已むを得ないからね」

 アクセントを付けての返事に、薮を突いたと横島は首を竦めた。 合流してすぐに始まったお説教が終わったのは、2件目のお蔭なのだ。 いつ再開されても変ではない。 幸い、ガンドルフィーニはそれで口を閉ざしたが。

 実際の所、今夜 排除した連中がやすやすと侵入出来た理由は、確かにそこに端を発していた。
 桜通りの件の当事者の中に、侵入者排除の統括責任者が居るのだ。 関わっていた間は、当然対処など出来ない訳で、しかもその件の為に少なくない人員が投入されてるとなれば、警備網に隙が出来ない方がおかしいだろう。
 横島たち3人だけで当った1件目は、窃盗目的の一般人の侵入者。 ガンドルフィーニ合流後の2件目と、つい先ほどの3件目は魔法絡みである。 後者はまだしも、前者は完全に桜通りの件が故だった。

 その事を理解して、かつ安易に話す訳にもいかないから、黙るしかなかったのである。

 

 

 

 結局、その晩はもう何事もなく。

「3人とも、今日はご苦労様でした」

 登り始めた朝日の中、思い思いにそれぞれ肩から力を抜く。

「学校が始まるまでの短い時間、出来るだけ休養に務める様に。
 …それと、佐倉くん」

 いつもの〆のセリフに続けての呼び掛けに、愛衣は首を傾げて「はい?」と聞き返した。

「すまないが、今日の放課後からでも、横島くんに都市内の案内をしてあげて貰えないかな?」

 言葉はお願いだが、実質、それは指示だろう。 昨日の今日だ、何を考えてかはすぐ判る。

「へっ、何故に?」
「何故、メイに?!

 が、続けて上がる疑問。
 ガンドルフィーニは後者に答えを返した。

「キミと一緒では、彼が覚えてくれるか心許ないからだよ」

 そう言われては、高音も返す言葉が無い。

 確かに、自身が案内した場合、彼がどう言う行動に出るかなぞ容易に想像が付く。 自分がその時にどう出るかもだ。 昼の人目のある中で悪目立ちするだろうその光景に、思わず目眩いすら覚 える。

 それに、これまで見てきた限りでは、愛衣へと不埒な行為に出る事が無さそうなのも確かなのだ。 今日の集合までの話を思い返せば、自分よりも何ら心配の無い妹分の方がこの場合は より適任かも知れない。

 その事には、愛衣本人もすぐに思い至った。

「判りました。
 じゃ、横島さん、今日の放課後から、暫くお付き合い下さいね」

「…お、おう。
 って、ちょっと、俺の疑問は無視ですかぁ?」

 さっさと立ち去り始める3人に、しゃがみ込んで「えぇんや、えぇんや、どーせ…」不貞腐れる。

 桜通りの事をすっぱり忘れていた事を、これまたすっぱり忘れ去っている横島に、処置ナシと投げたいのは彼らの方だろう。
 ともあれ、本人を叱責するより飴で釣る方が良しとしたガンドルフィーニの判断で、横島の今日が騒がしい事になるのは、この時 確定したのだ。

 

 

 【続く続けば続くとき〜】

 


 ぽすとすくりぷつ

 これも大概時間進行が遅いよなぁ…(^^;
 ちなみに、ネギは原作通りエヴァと茶々丸に破れて、明日菜に助けられました。

 しかし、ネギま原作。 4月から5月にかけてスケジュールびっちりやん(苦笑) 南の島から土日休みの週休5日制と見て、日付を割り振ったら4月8日を始業式として南の島までの1月ちょっと、ほとんど毎日何かしてやんの。 5月中〜下旬は、ヘルマン戦と中間試験くらいしか入ってないんだけど、道理で16冊そこら掛けてんのに話の中じゃ半年経たない筈だよねぇ(^^;


 
 

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