「ふむ… なるほどの」

 パラパラと捲っていたレポートを眺めつつ、学園長は呟いた。

「何ですの?」

「いや、この間のの報告書の1便目が届いてな。 …彼の能力に関するモノじゃが、なかなかに興味深い」

 小首を傾げて続きを待つしずなに、こほんと一つ咳払いをすると話を続けた。

「基本的に彼の攻撃は、『気』の様なモノをソレだけで物理干渉可能とするほどに収束したモノの様じゃ」

「あの結界を突き抜けるほどに、ですか?」

 少なからず驚きが口を衝く。
 魔力供給していれば、魔法使いやその従者の肉体も、かなりの強度になるのは確か。 だが、その程度なら完全に抑えられる……障壁すら形成される程の結界が張られていたのだ、あの時は。

「それなんじゃが…
 計測された正体不明のチカラは、せいぜい魔法の射手換算で数発から十数発程度だったらしい」

 はい?と眉を顰める彼女に、うんうんと頷きながら学園長はレポートを捲った。

「つまりじゃな。 彼のアレらが、気なりなんなりをただ束ねたモノだと言うのが、あの状況に直結したと言う事らしい」

 気であれば、肉体なり武器なりに纏わせ、または充満させて物理強度を上げる。
 魔法の場合、一部の例外的呪文を除き、攻撃魔法はマナを用いて光なり、火なり現界する何かを召喚して特異な現象を構築する。
 どちらの場合にしても、着弾した段階の効果は、基本的には物理的な範疇に収まるのだ。

 対して横島のソレは、物理的な干渉力を持つほどに収束された『ナニカ』。
 つまり、例えるなら、1対1の格闘戦を前提にボクシングのようなリングを用意して周囲に被害が出ないようにしたのに、人知に外れた大声が攻撃手段だった為に周囲にも被害が及んだ、と言った感じだろうか。
 気や魔法を前提にしていたが故に、大した事の無いチカラが多大な被害を出したと言う事だ。

「…と、そう言う事じゃないかと、研究の連中は結んどる」

 それは、充分に的を射た推察だった。

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その6   
 
逢川 桐至  


 

 

 

「あなたと言う人は〜っっ!!
「のへらはっ!?

 意識的に影を纏った拳で下から顎を突き上げられ、横島の身体が嘘の様に宙を舞った。
 べしゃっとアスファルト舗装の地面に落ちる身体を見て、麻帆中の制服姿の少女が思わず制止に入る。

「お、お姉様、落ち着いて…」

 だが。

「そうそう、愛衣ちゃんの言う通り、女の子なんだからもう少し落ち着きを見せないと、高音ちゃんも」

 ひょいっと、何も無かったかの様に復活してくるのもまた、まるで悪夢そのものだった。

 なにせ余りにも堪えないものだから、高音は魔法抜きでツッコミを入れるのを諦めた程なのだ。
 そこまでしていると言うのに、この化物じみた不死身っぷり。 僅か2日のやりとりで、彼女はこの男に対して遠慮容赦と言う言葉を失っていた。

「横島さん?」

「はいぃっ?!

 何やら、怨念が篭っていそうな響きの声。 可愛らしさにも定評のある聖ウルスラの制服が、今ばかりは喪服に見えるほどの重い雰囲気を纏っている。
 さすがにふざけ過ぎたかと、横島は背筋を走る冷たい汗に姿勢を正した。

「あなた、私たちが何故こんな夜更けに学内を巡回しているか、その理由をきちんと判っていて?」

「そりゃ、普通じゃ手に負えない不埒モノが…」
「そう。 学園内の治安を守り、一般の方たちの安全を維持する。 そんな魔法使いであるが故の崇高な使命を果す為、私たち魔法使いは存在すると言うのにっ」

 ぷるぷると震わせた腕に力が篭り、ざっば〜んと砕けた波が背景効果として感じられるほど言葉に力が入る。
 そんな彼女に、望まずしてここに居る横島としては、嘆息するしかない訳で。

「んなコト言われても、俺は魔法使いじゃないし、ただ喰う為に働いてるだけだしなぁ…」

「な・に・か?」

「い、いえ。 なんでもないっす」

 ぺこぺこと謝り出す年上の少年に若干の溜飲を下げつつも、しかし高音はそれで終わりにするつもりは無かった。

「しかるにっ
 あなたと来たら、巡回中にナンパを始めるは、更衣室で覗きをしようとするは、無節操にナンパを続けるは、散策中のカップルにちょっかい出そうとするは、覗きを再開しようとするは、ナンパを…
 警備を任とする者が、率先して治安を乱してどうしようと言うつもりなんですかっっっ!!!

「し、しかたないんや〜 綺麗な姉ちゃんに声を掛けないなんて失礼な事は出来んのじゃ〜っ。
 それに煩悩を高めとかんと、いざって時にチカラが出せなくなるし…」

 横島にとって正当この上ない理由だが、無論、他の人間からすれば必ずしもそんな事は無く。
 勿論、彼の事情の詳細など知らぬ高音にとって、言うまでもなくソレはふざけてるとしか思えない内容だ。

「あ・な・た・ね〜っ!!!

 真綿で締め付ける様な声が、彼の体を縛りつけ……いや、無意識に展開された影の帯が、ギチギチと横島を絞りきる様にねじ上げる。

「痛いっ っつーか、マジで死ぬっっ!!
 いや、ホント、マジなはな… うぎゃっ?! ちょ、ヤバいっ、モツが出… うぎゃぎょぎゃ、ぐはっ…」

「お、お姉様、それ以上やるとホントに…」

 再び愛衣が止めようと、高音を後ろから抱きすくめる。

 ぴくぴくとしながら、どばどば全身から血を流しているのだ。
 我を失くしてる高音にはともかく、ごく普通の感性を持ち傍観者になっていた彼女には、刺激の強い……と言うか、かなりマズイ事になるのではと思わせる様な状況。

「はっ。
 …こ、これはちょっとマズイかしら? 回復呪文を…」

 さすがに高音も冷静になってみれば慌て出す。
 自身のなした事とは言え、横島の姿はまるで絞られたボロ雑巾。 人間に使っていい形容では無かろう、とばかりの状態なのだ。
 しかし。

「今のは痛かったぞぉ…」

 ゆらりとゾンビの様に立ち上がる。

「こうなったら、もう。
 高音ちゃんの、その豊満な胸で甘えるしかっっっ
「きゃあっっ?!!

 飛び掛かってきた横島に、思わず高音は涙目になって身を竦めた。
 だが、彼の行動は果されない。

「お姉様にっ、ナニをっ、しようとっ、するんっ、ですかっっ!!

 いつの間に手にしていたのか。
 両手で構えた竹ぼうきで横島を迎撃するなり、愛衣はそのままバシバシと叩き続ける。

「イタっ。 ごめ… ごめんなさいっ。 やめ… 痛いって、マジに」

 自分の胸に届くかくらいしかない背の少女に、外聞もなくヘコヘコと這いつくばって横島は謝り続ける。

 その時だった。
 夜の帳の下、清閑なこの一画に相応しくない……横島たちの騒ぎが相応しかったかは この際 置いておくとして……エンジン音が響き渡ったのは。

「なんや?!

 一瞬にして意識を切り替えたのは横島だ。

 その視界に入って来たのは、何と言うか、SF映画にでも出て来そうな四足歩行する亀の様なロボット。 軽自動車ほどもある押し潰され平坦になった玉から、どちらかと言うと甲殻類を思わせる脚が出ており、全体的には未完成の匂いが漂っている。
 とは言え、その移動速度はけして鈍足ではない。 普通の人間が轢かれたら、洒落にならない程度の勢いは優に付いている。

「高音ちゃん、愛衣ちゃんっ!!

 事態に付いて行けず、ぼーっとしたままの二人に警告を入れた。
 彼女らとて突発的な事件に対する心構えは有り、それに対する経験もこの麻帆良の地で何度か踏んでいる。 しかし、チカラなんかスパッと抜けそうな横島との遣り取りの後だっただけに、意識の対応が遅れたのだ。

「いけない、メイっ」
「はい、お姉様」

 切り替えさえ出来れば、二人共さすがに魔法生徒である。

「大学部のいつもの暴走ね。 派手な攻撃は避けて停止させましょう」

「はいっ」
「ほいよ」

 いつもの、と言うのが何だが、それでも魔法を始めとした超常技能は、一般生徒に明かす訳にはいかないのだ。
 高音の指示の下、横島は構えを取り、愛衣は周囲に人払いの結界を張る。

 そんな彼らを認識したのか。 ロボットは進路に立ち塞がる3人へと、突然速度を上げて突進してきた。

「こしゃくなっ」

 高音が影の傀儡を人垣として配すると、3人はバラバラに取り囲む位置へと移動する。
 どしんと衝突音がして、拮抗状態に停止したロボットへ、愛衣と横島がそれぞれ攻撃を仕掛けた。

 愛衣は炎の系統を得意としているだけに、アーティファクトであるほうきを武器に戦うも、かなり厚い金属の外骨格を持つ相手にはイマイチ効果が薄い。
 対して、横島は握り拳を作った『栄光の手』での一撃で、問答無用に脚の1本を叩き折る。

「すごい…」

 悔し混じりの、感歎の声が上がる。
 愛衣も高音も、顔合わせの後 内密にタカミチとの模擬戦のビデオを見せられていて、性格はともかく横島が強いと言う事は認識していた。 それでも、こうも見事に能力を見せ付けられては、最前の彼の振る舞いもあって、違和感や戸惑いは隠せない。

 それを隙と見たのか、ロボットの脚が突然 愛衣へと振るわれる。
 本体を挟んで居る為、すぐに気付けなかった横島と違い、高音は妹分の危機に即座に反応した。 ロボットの前進を抑え付けていた影の一部を彼女の盾へと回したのだ。

 その結果、愛衣は辛くも一撃を受けずに済み。
 そして、高音が逆に無防備になった。

 暴走していようとも、ロボットの攻撃プログラムはその隙を見逃さなかった。

「きゃっ?!!

 ギリギリで避けるも、上着は弾けとび、崩れたバランスが続く一撃への対処能力を奪う。
 高音は、更に振るわれた一撃に、思わず目を瞑った。

「お姉様っっ!!

 愛衣の叫びと共に飛び散る血潮。
 重い衝撃に吹き飛ばされた高音は、しかし傷を負っては居なかった。

「…えっ?
 横島さんっ?!!

 自身に伸し掛かる様にして背から血を流している彼に気付いて、高音の口から悲鳴にも似た声が上がる。

 そう。 ロボットの一撃を直接受けたのも、それによって傷付けられたのも、突然高音の前に回り込んだ横島だったのだ。
 ただし…

「こ… この感触はぁ〜っっ
 我が人生に一片の悔い無し〜〜っっっっ!!!!!

 いきなり、拳を天へと振り上げ、仁王立ちで叫ぶ。
 気だか何だか判らないが、天にも届くほどのエネルギーを吹き上げながら。

 その時になって、愛衣も気が付いた。

「お、お姉様… その、前、前を…」

「へっ…?」

 妹分の言葉に、眼前の横島に目を向け、しかし彼女の表情から違うと悟り自分自身を見下ろす。

 そうして理解した、自身の現状を。
 夜目にも白い肌が、余すとこなく剥き出しになって居ると言うその事を。

 そう。
 彼は、高音を助ける事は無論考えていたが、それ以上に彼女の胸に吸い寄せられて攻撃の前に背を晒したのだ。
 もし、助けるだけだったら、彼女を抱えてその場から飛び退るくらい簡単な事なのだから。

 そこへ、更に余計な事を横島が呟く。

「ビバ、美しき乳、柔らかき乳、暖かき乳っっ。 幸いなる哉 幸いなる哉 幸いなる哉…
 それはともかく、我が桃源郷に再びレッツ…」
「い… いやぁあぁぁぁぁ〜〜っっ!!!!!!
 無意識に纏った ノクトゥルナ・ニグレーディニス
 無意識に纏った『黒 衣 の 夜 想 曲』の巨大な腕での一撃が、狼に変貌し掛けていた横島を殴り飛ばし、そのまま踵を返して高音は泣き叫びながら逃げ出した。

「あ… えぇと…
 お、お姉様、待ってぇ〜」

 逡巡していた愛衣もその後を追い、そしてその場には横島が突き刺さったロボットの残骸だけが残された。

 

 

 暫くして人払いの結界が晴れた後、回収され最寄りの校舎の保健室に運び込まれた横島は、鼻血を流しながらも なんともいい笑顔を浮かべていたと言う。

 

 

 

 【続きは、まったね〜 んがごっこ】

 


 ぽすとすくりぷつ

 高音ちんらう゛(笑) …いや、ネギまン中では、まいすいーとは夕映なのじゃが。

 それはともかく(^^;
 明日菜曰く、『ウルスラの脱げ女』ですからねぇ、彼女。 誰か、上手い人、挿絵付けてくんないかしら(爆)

 愛衣が「お姉様、お姉様」とうるさくなっちゃったんですが…
 原作見返してみたら、数少ないセリフの中、かなりの割合で口にしてるので、まぁいいかと(^^;

 ちなみに、次回は漸く3−Aの生徒が出ます。 ネギは… 名前くらいはちらっと出る……かなぁ? 出ない気もするなぁ…(苦笑)


 
 

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