「で、誰に任せるおつもりで?」

 問い掛けに ふむと顎へ手を当てる学園長へ、しずなは まず一番安心出来る名前を上げる。

「高畑先生ならば、実力的にも申し分ないんですけれど。
 …ただ、時間的に辛そうですし」

「うむ。 彼には『出張』も度々あるしの」

 本人の希望に沿っての事とは言え、ソレだけでも充分以上にハードワークなのだ。 これ以上の負担を負わせるのは、さすがに憚れる。

「シャークティくんの所は、ひよっこが付いたばかり。 君と瀬流彦くんには、ネギくんへのフォローがあるし…」

 更に続けて、彼を預けられそうな魔法先生たちを指折り数えるが、その度にその大きな頭を横に振る。

「明石教授たちの方へは、いざと言う時の『彼女』への対応の統括をお願いしていますしね」

「うむ。 となると、やはりガンドルフィーニくんに頼むしかないかの」

 学園都市内の治安維持に直接関わってる実動要員は、その範囲規模に対して少ないと言っていい。 東日本の総本山だけに、数だけなら『こちら側』の人間は優に3桁に届く。
 だが、あくまで人数は、であって、その全てが実戦に足ると言う訳ではない。 トラブル処理を任せられるほどの魔法使いは、けして多くない彼らの中の更に一握りに過ぎなかった。

 選択肢は、だから元より限られていたのだ。

「問題は、彼だけで手に負えるか、じゃな…」

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その5   
 
逢川 桐至  


 

 

 

 この規模の学園のモノとしては、けして小さくは無い学園長室。
 朝、食事を済ませて早々に、そこへと横島は呼び出された。

「呼びつけてすまんの、横島くん。
 取り敢えずそこに座ってくれ」

 大きな机越しに掛けられた言葉に、彼はぺこりと頭を下げて返す。
 そうして指示された通り、用意されていた椅子に腰を下ろした。

「さて、これからの君に関してじゃが…
 取り敢えず8日後の学期明けから、男子高等部に編入して貰う事になる」

「うぃっす」

 仕方ないかと納得しながらも、嫌そうに横島は頷いた。

 良くも悪くも成人男性に見えない以上、学生にと言うのは仕方ない事だろう。 役割を考えれば、学園都市内に居ても不思議でない身分は必要。
 だが、ただでさえ横島は勉強が嫌いな人間なのだ。 その上 それが男子校ともなれば、余計に嫌気が差すのも無理は有るまい。

「学生寮に空きが無い事もあるし、頼む仕事の都合もあるからの。 今使ってる教職員用の寮の部屋を、そのまま君に貸し渡す事になった。
 知っての通りキッチンもあるが、大食堂を利用する分には食費は掛らん。 込みになっとるから、その辺は好きにするといい」

 教員用の宿舎の空き部屋を、昨夜は仮の宿としたのだが、それがそのまま彼の部屋になるらしい。
 横島としては、この事にこれと言った文句は無い。 元の世界でのアパートなどより遥かにきれいで広いし。 しかも、食事が出ると言うのなら願ったりだ。

「で、じゃ。
 君には、ローテーションで夜間の都市内警備を頼む事になる」
「ちょい質問なんすけど」

「なんじゃね?」

 挟まれた言葉に、取り出した書類から目だけ横島に向けて聞き返す。

「ここ、そんなに物騒なんすか?」

 実力を確認されての配置となると、そう考える方が自然だろう。

「そうじゃのう、その辺のことも話しておく必要性があったか…」

 そう言って、一端書類を机に置くと、改めて学園長は話を始めた。

「この世界において、わしら魔法使いと名乗るものの人数は、ちょっとした小国の人口並みにおる…」

 かなりの人数が魔法使いたちのみで構成された国に住んでいるのだが、そうでない者たちの大半も関東魔法協会の様な何らかの組織を作って、そのコミョニティの一員として活動していた。
 それらの組織同士はある程度 横の繋がりを維持していたが、しかし必ずしも全てが友好関係を持っているとは限らない。 過去の遺恨や主たる術式系統の違いなどで、冷戦状態になっている組織もあるからだ。
 またそう言う組織への所属を良しとせず、フリーの立場を維持する者も中には居た。

 そう言った事情も有り、間諜や破壊工作員として侵入して来る者も居るのだ。

 その上、世界樹の様に強力な魔術的存在が多々この地に有り、それらを要因の一つとして何らかの超常存在が引き寄せられてしまう事があった。 今回の横島自身の出現は、ソレに分類される事になる。
 その際の対処にも人手は必要な訳で、その場合にも力尽くを要求される場合がある以上、相応に能力が有る者が必要なのだ。

「…と、まぁ、そう言う訳なんじゃ」

「なるほど…
 じゃあ、頻繁にって訳じゃないんですね」

 まぁ、そう頻繁に有る様なら、そも修学させようなどとは しないだろう。

 納得したようだと見て、学園長は書類に再び目を向け、その束の中から取り出した学園都市の簡略図を拡げる。

「労働時間は二日に一度、午後10時から翌6時迄の8時間。 学園都市内を6ブロックに分けた内の一つを、チームの一員として警備して貰う。
 取り敢えず外部雇用と言う事で、給与は手取り月額で25万。 無論、授業料及び寮費は免除じゃな。
 と、こんなトコで良いかね?」

「そんなに貰っていいんすか?」

 単純な時給換算で言えば2000円以上。 実質、支出は衣と食の一部のみなので、元の財政事情よりもかなり良い。
 加えて、戸籍その他の書類も一通り用意して貰えた訳だし、横島的には文句を言ったら罰が当たるくらいの感覚だ。
 …但し、渇望する潤いが得られるか、と言う一点に非常な不安が残る。

 どの道、彼には他に選択肢など無いのだが。

「そんなに、と言うほどの額かね?」

「えぇ。 じゃ、それでお願いします」

「うむ」

 ふっかけられるつもりで居た学園長は、それを胸の内に留めた。

 彼の能力からすれば、もっと上の額でも問題ないのだ。
 高畑・T・タカミチは、戦闘面で言えば世界でも上位の実力者である。 手加減していたとは言え、その彼に対抗して見せたのだ。 しかも、横島の方も全力では無かったのは間違いない。
 つまり彼の実力は、並の魔法使いの領域よりも上なのだ。

 この反応が立場を意識しての納得なのか、相場が違う故のソレなのか、それとも他に何か思惑が有るからなのか、判らないからもう少し様子を見る必要性が有ると、学園長は心にメモをした。

「さて、続けて警備に関与する者たちの紹介をしようかの。
 都市全体のチェックをやっとるのがおるんじゃが、ここのところ日中は何かと理由を付けてはサボりよってな。 今日も呼んでおいたんじゃが来よらんでの、紹介出来ないんじゃよ。 まあ、彼女へは後日に機会を作ると言う事で」

「彼女っつー事は女性っすか? 美人っすね? ならなら是非に紹介をっっ」

 耳ざとく一点に集中する少年に、思わず苦笑する。

「君の好みの範疇はまだ把握しきれとらんが、そこから外れてると思うぞ。 見た目もあれじゃが、君の何倍も長く生きとるしの」

「なんだ婆さんかぁ、ちぇ」

「それを本人の前で言ったら殺されかねんぞ。 …念の為、言うとくが」

 苦笑いで頷く横島に、「本当にせんようにな」と付け加える。

 

 

 

「それで、ガンドルフィーニ先生が担当される事になったんですか?」

「そうだ。 高畑先生は知っての通りお忙しいし、前線に立てる教員の中では、比較的 私の負担は少ないからね」

 教卓からそう答えたガンドルフィーニに、腰まで届く金色の髪を揺らして少女……高音・D・グッドマンは納得気に頷いた。

 そんな彼の補佐を任されたと言う事は、つまり魔法生徒たちの中で、それだけ彼女たちが優秀だと認められたと言う事だから。
 自身の実力に自信が有るだけに、横紙破りの今回の仕儀も仕方ない事だと受け入れられた。

「でも、お姉さま…」

「まぁ確かに愛衣が危惧する通り、それが男性だと言うのは、私たちと組むのにいささか不適当なのは確かですけど」

 呼び出された予備教室。 ここにいるもう一人の魔法使いである、ブラウンの髪を おだんごを作ってツーテールに纏めた少女。 隣の席に腰を下ろしている自身の後輩……佐倉愛衣の上目遣いでの言い淀みに、高音は大丈夫だと頷いた。

「その辺は、我慢してもらえると助かる。
 可能な限り私が指導して行くつもりだが、私の目の届かない所での監督を君たちにもお願いしたいんだよ」

 ガンドルフィーニの本音をはっきり言ってしまえば、出来るだけ目を離したくないのだ。 だが、自分では横島の行動を掣肘しきれないだろうとも考えていた。 これまで垣間見れた彼の行動原理を思えば、女性が……それも見目麗しい年頃の誰かの補佐は必須だ。
 如何に優秀とは言え、目の前の少女には荷が重いと判っていて、それでも助力を頼まざる得ないほどに。

 勿論、そんな彼の内心など判ろう筈も無く。

「えぇ、私に任せて下さい。 どんな遣い手だか知りませんが、私がみっちり教育してみせます」

 そう言って、生粋の魔法使いである高音は、胸を張って貧乏籖を引いてみせた。

「自発的にそう言って貰えて、本当に助かるよ。 こちらの常識を完全には理解していないようなんでね、彼は…
 それと、彼には巡回がチームで行われているものだと説明している筈だから、君たちもそう言うつもりでいて欲しい」

 なにせ、監視を兼ねているのだ。
 勝手に単独で動き回られては堪らない。 頭の出来はともかく、身体機能はすこぶる高いのだ、あの少年は。

「それで、その人とはいつ会う事になるんですか?」

「む、そう言えばそうだ。
 そろそろだと思うんだが…」

 そう彼が腕時計を眺めた時だった。
 扉の向こうから話し声が聞こえて来たのは。

「…おまえさんな。 美人が居たからと言う理由は理解出来んでもないが、ワシを無視してあちらこちらへと動き回るのは勘弁してくれんかの?」

「仕方ないんや〜 しわけた爺様なら無視出来ても、美人を無視するなんてそんな背徳的な事は出来んのや〜〜」

 ズルズルと言うBGMと共に耳に入った会話に、高音が、まさか、と言う視線をガンドルフィーニへと向ける。

 聞こえた声にも、その内容から窺える行動にも思い当たることが多過ぎて、彼は顔に手を当てて宙を見詰めた。

「先生?」

 重ねる様な問い掛けに、沈痛な顔でこくりと頷く。
 辞退の言葉を彼女が口にしようとしたその時、がらりと扉を開けてぐるぐる巻きに縛られた少年を引き摺った学園長が入って来た。

「遅くなってすまんかったの」

「い、いえ…」

 何だかんだ言っても、学園長は彼女たちからすれば雲の上の人である。 掛けられた声に、高音の言葉は しりすぼみになってしまった。

「生まれる前から愛してました〜〜っっ!!

「きゃあっ!!?
「のふは〜っ!!

 自動起動した操影術の一撃で、横島の身体が宙に舞う。
 そしてそのまま破壊音を立て、廊下側の壁へと突き刺さった。

「お、お姉さま… 大丈夫ですか?」

「え、えぇ、私は。
 それよりも…」
「うむ。 そこの彼が君たちとチームを組む事になる横島君じゃ。 ちょっとばかり常識外れな所が有るが、その辺はおいおい教育してやってくれ、頼むぞ」
「は、はい」

 思わず全力で排除してしまった相手を心配した声が、学園長に途中で遮られ、そのまま済し崩すように続けられた依頼に思わず頷いてしまう。

「って、そんな事よりも…」

「心配する必要は無かろ。 あれくらいでは、どうにかなるように出来ておらぬようじゃし」
「充分痛かったっちゅんじゃっ 心配くらい、ちっとぁせんか〜いっっ!!

 バコっと突き刺さっていた壁から身体を引き抜いて、何事も無かったかの様に横島が抗議する。

「な…」

 その何のダメージも無さ気な様子は、魔法使いである高音と愛衣の目にも……いや、繰り出してしまった一撃の力を知ってるだけに、彼女たちの目には異常としか見えない。 勿論、その突飛な行動も含めて。

 一緒にいる事に不安を覚えたのは、だから当然の事。

「…あの、ガンドルフィーニ先生…」
「自発的に受け入れて貰えて、本当に助かるよ」

 今度こそ、辞退を告げようとした言葉は、だがあっさりと切り捨てられた。
 横島を制御する為に必要な人員であるから、二人は、と言うより彼女は、この場に呼び出されたのである。

 高音は今日 初めて、安請け合いと言う言葉が持つリスクの高さを知った。

 

 

 

 【続くの…】

 


 ぽすとすくりぷつ

 ちょいと色々有って7月になっちゃいました(__)

 3−A勢以外のキャラの中で、一番お気に入りなのが彼女……高音・D・グッドマンです(笑)
 逆境も愛故だから、ガンバレ高音(^^)

 次回では、彼女たちにも横島が如何にアレでアレなのかを、実感して貰う予定。


 
 

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