「さて、どうするかな…」

 疲れた様な響きは、まぁ先程までのドタバタを考えれば仕方有るまい。

 ただ、タカミチは横島の話を直接聞いただけに、それが話半分でも侮る気は無い。 それでも、とにかく彼を見てるとやる気が減って行くのは事実で。
 ここ数年、悪ガキの相手もしてきたから、横島の行動も理解出来なくは無いのだが。

 軽く視線を向けると、こちらの出方を窺う気なのか、ぴくりと小さく動いてその場に踏み止まっている。

「ま、とにかく、軽く行ってみようか」

 そう呟くと、タカミチはポケットに突っ込んだ手に力を入れて、けして軽くない一撃を繰り出した。

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その4   
 
逢川 桐至  


 

 

 
 

「ぬのぅわぁぁ〜〜っ?!!

 鈍い音を立てて張られていた障壁へとぶつかり、横島はどさっと床に落ちた。
 いきなりの一撃に吹き飛ばされたのだ。

 これで終わりの様に見えたが、しかし周囲の教員たちは床に伏す少年へと視線を注いで離さない。 何より誰よりタカミチが、姿勢を保ったまま彼を見据え続けている。

「なぁ、そろそろ起きてきてもいいんじゃないか?」

 距離を保ったままの呼び掛けに、横島がしぶしぶ起き上がる。

「ちっ、バレてたんか」

「いやぁ、タフだねぇ… 結構 本気で入れたつもりなんだが」

「めっちゃくちゃ痛かったわいっ!!

 死んだフリして油断を誘うつもりの当てが外れて、ついつい大声で言い返してしまう。

 美神の本気の折檻に比べれば大した事が無いのは確かだ。
 だが、だからと言って痛くない訳ではないのだ。 と言うか、かなり痛かった。 ちょっと涙目になってるくらいだ。 横島を良く知る人が居たならば、その威力が充分に伝わった事だろう。

「それじゃ続けるよ」

 再びタカミチの身体が僅かに揺れる。

「のわっ、ちょっタン…」

 さすがに同じ攻撃を食らうつもりはないから、悲鳴を上げながらも大袈裟に避ける。

 その動き自体は、洗練からは遥かに遠い。
 言ってしまえば素人のソレだ。 完全に身体が泳いでいて、次の手に対応する何らかの動きの片鱗も窺えない。

 話の誇張が思っていたより大きかったのかと、内心で軽く舌打ちする。
 興味が薄らいだタカミチは、さっさと終わらせようと攻撃の回転を上げた。

 だが…

「おわっ
 どわっ
 のはっ
 おひょっ

 しかしそんな彼の見込みとは裏腹に、その全てが気の抜ける気合いと共に躱される。 背後に在る障壁に、バシバシと弾ける音を追奏させて。

「ほぉ…」

 笑みと共に呟きが漏れる。
 タカミチのみならず、周囲の面々の顔付きが改めて真剣なモノに変わった。

 横島のソレはあからさまに無駄の多い、と言うよりも無駄だらけの動きだ。
 なのに、攻撃を再開してから一撃とて当っていない。 掠めては居る。 が、その全てを横島は確実に見て避けきっていた。

 そう、『見て』だ。
 視力と反射神経だけで、全ての攻撃を避けている。

 彼の居合拳は、言ってしまえば衝撃波だ。 その馬鹿げた打撃力は、空気を媒介にし音速にすら到達している。
 横島の見てから避けると言う行動、それ自体が如何に非常識極まりないか、今更言うまでも無い事だろう。

「なかなかやるじゃないか。
 とは言え、避けてるだけじゃ話にならないぞ」

 嬉しそうな笑顔でそう言うなり、音も立てずにタカミチの姿が消えた。

「みにゃっ?!

 いや、消えた訳ではない。 横島の斜め後方に移動したのだ。 この世界では割とポピュラーな歩法の一つ、瞬動術である。
 そこから放たれた居合拳が、しかしまたしてもギリギリ躱された。

「ふむ…
 だったら、こう言うのはどうかな?」

 横島を中心に、消えては現われ消えては現われ、ほぼ正三角形を描きながらの攻撃が放たれる。 ほとんど同時に三方から迫り来る拳圧。

「にょっとぁっのぁっ
 そこじゃあっ!!

 へしゃげたカエルの様な姿勢で避けまくり、揚げ句、自身の身長を優に越える高さまで飛び上がる。
 眼下を通り過ぎる攻撃を尻目に、更に別の場所へと移動していたタカミチへと、横島は何時の間にか作り出していたサイキックソーサーを投げ放った。

「おっと」

 が、タカミチはそれを簡単に見切って避けた。

 外されたそれは軌跡そのままに障壁へぶつかり、即座に弾けて暴力的なエネルギーを撒き散らす。
 その爆圧は障壁を突き抜け、その先の板張りの壁までもを破壊した。

 

 

「なっ…」

 周囲の魔法教師たちが、今度こそ驚きを顕にした。

 今 張ってある魔法障壁は、出現時に撃ち出されたモノの観測結果を受けて、充分に強度に余裕を見て張られたモノだったのである。 そもそも場として屋内を選んだのだから、当然簡単には突き抜けない様に手配されていたのだ。

「予想以上ですわね」

「うむ、そうじゃな…」

 しずなと学園長が頷き合う横で、シャークティたちの横島を見る目が改まっていた。

 この世界の魔法使いたちの常識からすれば、呪唱無しでのその威力が何より規格外なのだ。 種を明かせば、単に想定にないエネルギー塊だったから、結界が対応しきれていないだけなのだが。

 一度、ある程度見ていて余裕のあるガンドルフィーニが、学園長たちの会話に口を挟む。

「これで、ますます彼を放置する訳にはいかなくなりましたね」

「うむ。 ネギ君の事もあるし、これから忙しくなりそうじゃな」

 目を輝かせながらでは、疲れたとばかりの口調も説得力に欠ける。

「木乃香さんも一緒ですし、なるべく引き合わせない方が望ましいですわね」

「あれの両親との、なるべくこちらに携わらせない、と言う取り決めもあるからのぉ」

 ネギは、なにせ英雄の忘れ形見であるし、加えて自身の孫の事も有るから、学園長が不確定要素の異邦人を遠ざけたがるのは当然だろう。

 外野のそんな会話をよそに、横島たちの動きは更なる展開を見せていた。

 

 

 さすがのタカミチが、一瞬 動きを止めた。

 体術の練度とその技の威力とが、まるで比例していない。 魔術界の常識から見てすら、この少年はあまりにもアンバランスで常識外れに過ぎる。

「高収入ゲットじゃぁっっ

 そんな隙を見逃す横島では無い。
 瞬動と言うほどではないが、かなりの早さで一直線にタカミチへと向かう。

 が、防御姿勢をとった彼の目の前で、しかしそこから慣性を無視しての急制動を掛けた。
 目の前でいきなり入ったフェイントに、更に動きが制限させられる。

「サイキック猫だましぃっっ

 ばちんと打ち合わされた両掌の間から走った閃光が、一瞬、周囲を蔽い尽くした。
 だが視界を封じられて尚、タカミチは後ろへと身体を飛び退かせる。

「貰ったぁっ

 これまた何時の間にか剣の様なナニカを右手に貼り付け、横島は腕を下から上へと逆袈裟に振り上げた。

 だが、それすらぎりぎりで躱され、瞬動で一気に間合いを取られる。
 まずいと思いながらも追いすがる彼に、舌打ちと共にぶれた腕から斬り付けてきたソレを弾かんと拳圧が飛んだ。

「にょにょわぁっ!?

 これまた間の抜けた気合いを上げて、その居合拳の一撃は横島にあっさりと切り飛ばされた。
 どちらもの人外じみた反射神経に、周囲から感歎の吐息が漏れる。

「こなくそっ

 続けて勢いそのままに斬り付けた攻撃が防御した腕に当った瞬間、火花ならぬ爆発が撒き散らされ、その衝撃がタカミチの身体を容易く弾き飛ばした。

 再構築されていた魔法障壁へ ぶち当たった衝撃で、響く鈍い音。

 一瞬、宙に大文字が描かれ、苦痛と一緒に吐息が漏れる。
 それでも、地に伏した先の横島と違って、すくっと床の上へタカミチは降り立った。

「いやぁ、なかなかやるね…
 これ以上続けたら、ちょっと本気になってしまいそうだ」

「ヤローの相手なんぞ、謹んで遠慮しちゃるわいっ

 憎まれ口を叩きながら、横島は横島で内心の動揺を押え込むのに必死だった。

 いつも通りに自分のペースへ持ち込もうと思ったものの、相手が早過ぎて場当たり的な対応しか出来なかったのだ。
 超加速の問答無用さではないが、それでも浴びせられた攻撃を避けるのが精一杯。 揚げ句に、人間相手には強過ぎる栄光の手を直撃させたのに、受け止めた腕は服が弾け飛んでるだけで外傷の一つも見当たらないときてる。

 そこへ、終了の声が掛かった。

「うむ。 これくらいでええじゃろ。
 二人ともご苦労さん」

 まだ、10分は経っていないが、験しには充分過ぎるモノが見れたと言えよう。

 学園長の言葉で、張り詰めていた周囲の気が緩む。
 横島も、ぺたりと腰を下ろして身体を休ませた。

「さすがに疲れたじゃろ? 案内させるから、今日の所はゆっくり休むといい。
 雇用条件の煮詰めや今後の生活に関する話は、日を改めて明日にでもするのが良かろう」

 その言葉に頷くと、横島は周囲をきょろきょろと見回した。 ナニを捜してるかなど言うまでもない。

「あの… しずなさんたちは?」

「もう、戻ったようじゃな」

「そ、そんなぁ…」

 お目当ての姿が既に居ないと聞かされ、ガクリと肩を落とす。
 そこへ学園長が、更に追い打ちの言葉を続けた。

「それとな、今日壊したそこの修繕費用じゃが、君への報酬からさっ引くんでそのつもりでの」

「の、のぁんですとぉ〜っ?!!

 叫ぶなり、横島はショックで真っ白に染まって立ち尽くした。

 見るだに派手な傷痕を残しているのだ。 軽く見積もっても、2〜30万は簡単に届くと思われる。 しずなたちが居なくなっていただけでも充分気落ちしていた彼には、それはとどめの一言だった。

 そんな横島を、苦笑しながらの別の男性教員二人が、両側から支えるようにして連れ出していく。
 彼らしい幕切れと言えば、そう言えなくもないかも知れない。

 

 

 

「高畑くん。 今のアレ、充分ホンキだったでしょう?」

 帰ろうと扉を潜ったタカミチに、似た様な角縁眼鏡の男性が声を掛けた。

「明石教授… ご覧になってましたか」

「えぇ。 なかなか楽しそうな子じゃないですか」

「確かに。
 こうまでされたのは久しぶりですよ」

 肘辺りまで破れ散った腕をぶらぶらさせて、しかしその割に嬉しそうにタカミチは頷いた。

 気を流し込んで回復を始めているが、それでも実のところかなり痺れが残っている。
 気分の高揚が痛みを抑えているものの、あまり回復に時間が掛かるようなら保健室に寄って手当てを受ける必要も有るだろう。

「並の遣い手なら魔法を使っても、簡単には君をそんな風には出来ないからねぇ。
 どんな按配かな?」

「どうやら腕と言う肉体よりも、強化に使ったチカラそのものに直接斬り掛かられたみたいです」

 ある程度の魔法なら、そのままでも弾く事が出来る。
 だが、巡らせた力そのものを中心に、ダメージを受けてしまっているのだ。 あれなら、悪魔相手でも斬り伏せられるかも知れない。 一撃の大きさはそれなりだが、その有効性は下手なアーティファクトにも匹敵しよう。

「こちらで言う退魔師の類いだったらしいんですが、アレは『気』とはかなり違うものですね」

「ほぉ…
 僕も、話を聞くがてらで手合わせして欲しいところだけど、彼は受けてくれるかなぁ?」

「どうですかねぇ?
 今回は給料に響く、って言うのと、しずな先生たちにいいとこ見せたいってので受けてくれたみたいですけど」

「そうかぁ…
 でも一応、頼むだけは頼んでみるかな。 刀子くんか誰かに付き合って貰えば、なんとかなりそうな気もするし…」

 未練がましそうな言葉に苦笑する。

「ただ、それなりの準備は要るでしょうね」

「まだ何か隠し球もありそうだからねぇ。
 いや本当に面白そうだ。 本気で見てみたいなぁ」

 男二人、笑顔で頷き合う。

 横島が聞いていたら、逃げ出しただろう。 こうも朗らかに戦いを望まれては。
 元々彼は戦いが……と言うより、痛い目に遭う事が嫌いなのだ。 どこぞのバトルジャンキーもどきがうようよしてるとなると、三十六計とばかりに失踪しかねない。
 尤も生計を立てる当てが他に無い以上、魔法使いたち
 尤も生計を立てる当てが他に無い以上、 麻 帆 良 から逃げられる筈も無いのだが。
 彼の受難はまだまだ始まったばかりだった。

 

 

 

 【続け……この思い】

 


 ぽすとすくりぷつ

 やはり戦闘シーンは苦手だ。 その上、想定以上にファイルサイズ膨れちゃったし…
 とまれ、次でようやく女の子が出せる(笑) なんて亀の歩みの鈍さなんだか(^^;


 
 

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