「うっ…」

 ベッドの上で身動ぎしながらの声が上がる。

「おや、目が覚めたみたいだね」

 むくりと起きた少年が、ぼぉっと周囲を見渡す。

「体調はどうだい?」

「別になんとも… って誰や?」

 彼の誰何へ、ベッド脇の椅子に座っていた男が苦笑混じりに言葉を返す。

「僕は高畑タカミチと言う。 そう言う君は?」

「あ、横島忠夫って言います」

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その2   
 
逢川 桐至  


 

 

 

「あの… ところで、ここ何処っすか?」

 ようやく、傍に居た男だけでなく、部屋そのものに見覚えが無いと気付いたらしい。

「細かく言うなら、麻帆良学園中等部の保健室だよ。 大まかに言えば麻帆良学園都市と言う事になる」

「はぁ…?」

 まるで聞き覚えの無い名前に、思わず首を傾げる。

 その様子に、タカミチは話を切り替えた。 何せこの少年は、地上数十mの高さから墜落した後、更に絞め落とされたのだ。 記憶の混乱どころか、欠損があったとしても不思議ではない。

「で、何処まで覚えてるのかな? ここに来る前の事、何か覚えているかい?」

「えっ? …あ」

 そう言われて思い返す。

「そ、そうだ… 俺…
 あの胸は気持ち良かった。 美人の乳は さすがに違うっっ

 力強く握り拳を振り上げて、全身で感激を現わす。
 そんな姿に、ぽろりと咥えていた煙草を落として苦笑する。

「そ、そうかい… そりゃ良かったねぇ。
 …で、それ以前の事は?」

「えっ? その前っつうと……」

 再び首を傾げる。
 が、すぐに横島は顔を上げて大声を出した。

「あぁっ?!
 いっ、今、何年だか判りますか?!

「え?
 西暦で言うと2003年だが…」

「…3年後か」

 ポツリと小さく呟く。
 何故いきなり年を尋ねたのかと言えば、彼がココに来る直前までの出来事を思い出したからだった。

 依頼書からすれば簡単な依頼。 居座った雑魚妖怪を祓うだけのその仕事は、久しぶりに美神と二人きりでの作業だった。
 美神除霊事務所の他の所員はと言えば、タマモとシロはオカGへ出向中。 雑魚とは言え数だけは居ると言う事だったので、念の為おキヌには事務所での経理作業を任せる事にしたからである。
 当然の様に行きの車中でバカやって、一度 高速を走行中のコブラから突き落とされもしたが、それはまぁイマサラ語るほどの話ではない。

 問題は、雑魚しかいない筈のその中に、洒落にならない強さの雷獣が混ざって居た事。

 横島の記憶の最後に残っているのは、放たれたとんでもない量の雷撃が、自分と美神に襲い掛かって来る所、だった。
 反射的に使った『避』の文珠も、きちんと発動出来たのか判らない。 おそらく美神が時間移動を無意識に使用したのだろうと、彼はそう踏んでいた。

「美神さんがどーなったかも判んないしなぁ…
 あの、すんませんけど、オカGに連絡取れませんかね? あそこなら、身元の保証とかもして貰えると思うんで」

 美神が無事に戻っていればいいのだが、現段階では何とも言えない。
 それでも、彼女の母親の美智恵まで失踪しているなんて事は無いだろう。 たまたま席を離れていたとしても、気に食わないんで出来れば避けたいが、西条だっている筈だ。

 だが、しかし…

「? おかじーと言うのは、なんだい?」

「へっ?
 えと、ICPOの… なんだっけか……そだ、超常犯罪課ですけど…」

 今度はタカミチの顔が思案げに歪んだ。
 魔術師は確かに世界のあちこちに食い込んでいるが、公的な機関に専門部署が設けられるほど公になった存在ではない。

「それは、この日本にもあるものなのかい?」

「そっすよ。 去年……じゃねぇや、’99年の大騒ぎン時は、テレビでも雑誌でも大きく取り上げてたじゃないですか」

 何を言ってるのだ、とばかりの様子に、事情が飲み込めてきたタカミチも顔色を変える。
 考えてみれば、出現した時の状況が状況だ。 あれなら、この世界の人間である方が却って変だろう。

「その大騒ぎってのに、心当たりが無いんだが…」

「へっ? なんの冗談っすか?
 あのアシュタロスの件は、核ミサイルジャックもあったし、世界中の大都市で霊障事件が起きたから、知らない筈なんかない……と思います、けど…」

 ここに来て、横島も何か違うと思い始めたようだ。 声の調子が若干落ちて来ている。

「アシュタロスって、よもや悪魔のなんて事は…」
「魔族の大物の、に決まってるじゃないすか」

 即座の答に、さすがの彼も絶句した。

「…あ〜
 ちょっと僕の手に余る事態みたいだ。 済まないんだけど、君をここの責任者に会わせたいんだが、体の方は大丈夫かい?」

 

 

 

「つまり、君は妖怪を退治する時の手違いで飛ばされた、と」

「じゃないかと… あいつの最後の一撃は雷だったみたいですし」

 所を変えて、ここは学園全体を、いや実質的に学園都市全体を統括する学園長の執務室。

「雷じゃと、そう言う事が起きるのかね、そちらでは」

「つか、所長の美神さんが、雷を源にして時間移動する能力を持ってて…」

「時間移動じゃと?!

 驚きも顕に、ガタっと音を発てて学園長が立ち上がる。 タカミチも言葉にこそ出さないものの、表情には驚きが貼り付いていた。
 その剣幕に一瞬ビクっとしたものの、横島は言葉を続ける。

「…えぇ。
 で、始まっちまった時間移動の途中で、俺が更にそれを『避』けちゃったんじゃないかと…」

 彼のその言葉には、二人とも驚きを通り越して呆れた様に肩から力を抜いた。

 横島の推測は、実際の所 ほぼ的を射ている。
 開始した遡行に美神と共に流され出したタイミングで、文珠は発動したのだ。 一瞬でも早かったら、その場に取り残されていただろう。 その場合のその後は言うまでもないだけに、運良く、と言うべきかは微妙な所である。
 逆に遅ければ、時間移動した先で発動して、苦い笑いを提供していたかも知れない。
 …今となっては詮無い事だが。

「ふぅむ… なるほどのぅ。
 しかし、魔女が一度絶滅して、霊能力者が公に認められ広く知れ渡っている世界とはなぁ」

 再び腰を降ろし、髯を撫でながら学園長が感慨深げに呟く。
 この歳まで、彼自身 相当に変わった世界に身を置いてきたのだが、目の前の少年の話には驚かずには居られない。

 一頻り思考を走らせた後、横島へと尋ね掛けた。

「しかし…
 じゃとすると、簡単に帰る事は出来なそうじゃな」

 ガーンと稲妻が走った。
 整理する暇も無いまま連れて来られ、突き付けられて目を逸らしていた現実に、さすがにショックを受けずには居られない。

「そ、それは…
 もし帰れなかったら… そんな事になったら…」

 俯いて肩を震わせた横島は、やおら顔を上げると叫んだ

「お母んに、俺の写真集『巨乳コレクション』女子大生編、OL編、ナース編を始めとしたマニア垂涎のお宝コレクションたちが、見付かって捨てられてまうかも知れんやんか〜〜っっっ!!

 漂流者の孤独に、慰めようとした途端の魂の叫び。 学園長とタカミチは、揃ってズルっとのめる。
 どうにもシリアスの向かない少年だ。

「あれやそれやこれがもう二度と見れんなんてそんな不条理、たとえ小竜姫さまが許そうとも他の誰でもないこの俺が、絶対に絶対に絶対に絶対に許さぁ〜んっっ
 それに、それに、それにだっ 美神さんたちの、あの乳と尻とフトモモを、俺はまだまだ堪能しとらんのじゃ、帰る、帰るぞ、あいしゃるりたぁ〜〜〜んっっ!!

 その未成年らしからぬ激白に、二人揃ってこめかみを押さえる。
 声音から、本気で言っているのが判るだけに、確保した事を今更ながら後悔した。

「ま、まぁ、その気概はそれはいいと思うけどね…
 それで、帰る当て自体は有るのかい?」

 タカミチのその言葉に、さすがの横島も一気に暗くなった。

 言われるまでもなく、そんなアテなぞなかったからだ。
 文珠は自体は確かに自身の世界に在ってもデタラメな能力だが、制限が無いどころか縛りの相当にキツい能力である。

 霊能者にしか使えないのは、横島自身がそうだから何の問題も無いが、より細かく高度な事象を起こそうとすると文字数……イコール使用数が必要になるのが問題だった。 しかもその制御には、創り手である彼自身ですら、一つ増えただけでも倍どころでない集中力を要求されるのだ。 当然、他の霊能者では、複数鬼動なぞ まず不可能。
 その上、現段階での横島の最大制御数は、たったの3つだけ。 安定使用を望むなら2つが限度だ。 だが、おそらく『帰』『還』程度では、元の世界に戻る事は出来ないだろう。

 となると、知り合いの神・魔族あたりの連中か、さもなきゃカオス辺りの助けでも期待するしかないのだが、それもどれだけ当てになるかと言えば不安は尽きない。

 肩を落として座り込んだ横島に、学園長は本題を切り出した。

「…それでじゃな。 おまえさん、この後どうするつもりかの?」

 その言葉に、さぁ〜っと蒼ざめる。

 たといそのまま使用出来たとしても、財布の中に有るのは小銭だけ。 それも千円と入っていない。
 これでも、仕事の帰りに牛丼を買って帰るつもりだった分だけ、いつもより余計に入ってるくらいなのだが。
 そしてここが異世界となれば、唯一の手に職であるGS技能も生計の役に立つとは限らない。 証明の仕様がないから、学歴すら全くなくなる。 それ以前に住所も戸籍もだ。 文化・文明的な差異はあまり無さそうだが、それだけにマトモな職に就くのは かなり難しいだろう。
 割と意識せずにそう言う思考は回るだけに、先行きの暗さが思い切り顔に出ていた。

 蒼白になって黙り込む彼へ、学園長は更に言葉を続ける。

「この先、元の処に帰れるにせよ帰れぬにせよ、こちらでの生活基盤も必要じゃろう?
 わしらとしても、魔法に関するコトを一般に知られるのは困るんでのぉ。 君のバックアップをするのは吝かではない」

「そのためにも君の事を聞いておきたい訳だ、どんな事が出来るかとか、ね」

 学園長に続けて、タカミチが尋ねた。

 技術大系の判別すら付かない異能者を、野放しに出来るほどこの世界は平和でも幸せでもないのだ。 見た限りでは、力尽くで他人をどうこうしようなどと言うメンタリティーの持ち主ではなさそうだが、監視するにしても管理するにしても手元に置いておける方が都合が良いのである。

 少なくとも、無詠唱で何らかのエネルギー塊を放て、100mクラスの高所からの落下の衝撃をキャンセルし得るのだ、目の前の少年は。
 まぁ、前者はともかく後者に関しては穿ち過ぎなのだが。 落下に関しては、そのギャグ体質故の不死身さであって、技能として持ち合わせているのではないのだから。

「えっと、俺は今度の誕生日で18になる高校3年で、ゴーストスイーパー見習いで…」

 

 

 

 【続く……かな?】

 


 ぽすとすくりぷつ

 なんか反応がいいんで、つい…(^^;

 しかし、おそらくその期待を裏切って、女っ気100%無しときたもんだ(爆)
 まぁ次を書けば、出せない事も無い……つまり、今のトコのコンテではヤローだけ(^^;……のだけど。
 ネギまクロスとしては、異色もいいとこだよねぇ(苦笑) …いくら短いとは言え、2話掛けて出た女性が しずなだけってのは。


 
 

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