「美神さんっ!?

 その金毛の魔獣が振るった腕を、美神は神通棍を犠牲にして辛くも避けた。

「なんなのよっ?! あんなのが居るなんて、聞いてないわよっっ!!

 そう叫びながらも、彼女は鋭く周囲に視線を走らせる。
 周りを囲んでいるのは雑魚ばかりだが、しかしこの大物から逃げる障害には なるだろう。

 その時、正面のソイツがニヤリと笑うと大きく口を開いた。

「…!? ヤバっ…」

 咆哮と共に溢れ出た光が横島と美神へと伸び、そのまま貫いた…

 

 

 


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GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その1   
 
逢川 桐至  


 

 

 

 あまりに不自然なその高さが、慣れた者の目にすら錯覚を引き起こすからか。 いっかな近付いている様に見えない大樹へ向かって、彼……タカミチ・T・高畑は急いでいた。

「相変わらずの威容だねぇ」

 威容、どころではない。
 何せ枝葉の及ぶ領域が、キロ単位になろうかと言うバケモノじみた大木である。 彼の様な特殊な人間ですら、威圧を感じる程なのだ。 世界樹と呼び慣わせられているのも当然だろう。

 この世界樹を中心に広がる麻帆良学園都市は、その全域を魔術的結界によって外界と遮断されていた。
 その結界担当の魔法使いから、夜間警備に出向いているタカミチを始めとした上級の術師たちに連絡が入ったのは、つい先程の事。 彼が向かっている先、結界の中心とも言える世界樹そのもの 、もしくはその至近距離に、超常的な力場を含む歪みが観測されたのだと言う。
 世界樹そのものも一般から秘匿すべき魔術的存在である以上、その保守もまた欠かせない。

 確定的ではないものの、その歪みが門を推測させると言うのも問題だ。
 魔界などのアチラとコチラとを繋ぐゲートは、普通は召喚魔術などによって開かれるものだが、稀に向こう側のチカラ有るモノが無理に押し開くケースが有る。 その場合、それは厄介な事態に発展するのがほとんどなのだ。 その可能性も考えると、かなり強力な布陣を敷かなくてはまずい。

「さて、そろそろかな?」

 ボヤきながらのその移動は、だが不自然な程に早い。
 見た目には少し早めに歩いている様にしか見えないと言うのに、全力で走るスプリンターのソレを確実に上回っている。 歩法がどうこうと言うのではない。 単にその実質的な歩幅が普通でないのだ。

「あぁ、確かにかなり強い力場だねぇ、アレは」

 世界樹前広場に入り込み思い切り見上げた視線は、茂りに茂った枝葉の間で怪しく散る火花を見据えていた。

「そうですね、高畑さん」

「まぁ、でも何が出て来るかは判らないけど、魔物じゃなさそうですね」

 何時の間にか音も立てずに隣に立っていた、アフリカン系なのか肌の浅黒いスマートな体付きの同僚へと、視線は上に固定したまま言葉を返す。

「今の段階では、何とも言えないと思いますが…」

「何度か見てきたけど、悪魔連中の時は大抵その予兆現象もソレっぽいモノしかなかったからねぇ。
 そちらの手持ちで、アレに探知掛けられませんか?」

 男二人が並んで見上げるその先では、明らかに何かが出て来ようと言わんばかりに歪んだ空間が穴を形作っている。
 タカミチ自身が調べようとしないのは、基本的に呪唱を必要とする術を彼が行使出来ない為だ。

「もう出て来そうですし、さすがに間に合いませんね。
 さて、鬼が出るかそれとも…」

 そう言ってる先から、鈍い音が響いて来る。
 やがて、一瞬だけ仄暗く黒い渦が脈動する様に膨れ何かを吐き出すと、歪みが修復される様に縮んで行った。

 …………っ

 先程よりも低い音が、僅かに大きく響いて来る

「……………〜〜っっ

 人の声だと気付くのと、落ちて来るシルエットが人のソレだと気付くのと、果たしてどちらが早かったか。

「これは?!
「いけないっ!?

 落ちて来る人間らしき存在は、完全なフリーフォール状態で真っ直ぐ広場へと直線を描いている。
 一番低い枝ですら10階建のビルよりも尚高い。 アレがただの人間なら、まず命が助かる事は無いだろう。
 即座に落下点へと走ったタカミチを見て、ガンドルフィーニは落下速度を緩和しようと衝撃波を送り出す。 勿論、急場の事だけに無詠唱、且つその威力も絞ってのソレだ。

「どわぁぁぁ〜〜〜っっ なんっぢゃあぁこりゃあぁぁっっ?!!

 聞こえてきてるのは、最早はっきりとした人語、それも日本語だった。

 真下に辿り着くなり、続けてタカミチの身体が直上へと跳ねる。
 ただ下で受け止めても、未だにかなりの速度が出てる為、その衝撃が落ちてきた相手に致命的なダメージを与えかねない。 とにかく少しでもベクトルを変える必要がある。

 まるで飛ぶ様に跳んで行く彼が、相手を受け止めようとしたのを見てホッとしたその瞬間。

「なっ…?!

 信じ難いモノを見て、ガンドルフィーニは絶句した。
 落下者の手からナニカ光るモノが真横に撃ちだされ、その反動で落下軌道を変えたのだ。

 しかも…

「男はイヤぢゃあぁぁぁぁぁっっ!!!

 聞こえてきた叫びがソレである。
 肺腑を振るわす様な情感の篭った声だけに、そんなに嫌だったのかと思わず得心させられて、余計に呆然としてしまった。

 タカミチも、そうだったのだろう。 そのままただ真っ直ぐに跳んで行き、重力の導くままにストンと下へと降りて行く。

 だが、続けて聞こえてきた大きな衝撃音に、ガンドルフィーニはすぐに我に返った。
 どうやら樹の根元、芝生に覆われた土の上に墜落したようだ。 鈍い打撃音に続けて、土煙がもうもうと立ち上がる。

「いかん、私とした事が…」

 走り出す横目で見やれば、下に降り立ったタカミチのシルエットも、即座に平面方向での移動を始めている。
 さすがは、と思いながら、自身も足を速めて墜落地点へと走り出した。 魔術師かはともかく、超常の能力者となれば見失う訳にもいかないのだ。

 辿り着いたソコで、二人は再びあっけに取られた。

 薄いクレーター状の窪みの中央に、逆さに生えている人……まだ若い、下手をすると10代の少年かも知れない男性の足が、ぴくりとも動かずに突き出ているのを見て。

「なんて言うか…」

「えぇ…」

 思わず二人して顔を見合わせた。

 何をしたかは解らないが超常能力行使をして見せたのだから、よもやそのまま策も無く墜落してるとは思わなかったのだ。 それも、頭からまっ逆さまに、とは。
 僅かに地上に露出したGジャンのすそが、地面に広がっているのが微妙に滑稽で場違いな笑いを誘う。

「これ… 生きてますよね?」

 呟く様なタカミチの声。
 尤も、生きているのは二人の特殊な目から視れば明らかだ。

 肉体強化の類いか、もしくは一種のバリアーの展開か。 そうでもなければ、落下の衝撃で突き刺さった人体が、意識が無い状態で纏っている程度とは言え、はっきりとした気を発して居る……つまり生きていられた筈が無い。

 そこへ、更なる登場人物の声が掛けられた。

「お二人とも、さすがに早いですわね」

 旧知の声に振り向こうとした二人の視界に、何かの動きが掠めた。
 反射的にそちらへ目を遣ると、しかしソコにはすり鉢状の窪地だけが残るのみ。

「生まれる前から愛してましたぁ〜〜っっ

 響いた声に視線を戻せば土塗れの少年が、二人の同僚である女性……源しずなに抱き着いていた。
 動きに気付いてから目が追付くまでの、0.1秒と経たない間での非常識な瞬動っぷりに、二人の背筋に冷たいものが走る。
 気を抜いていたとは言え、二人は歴戦の魔術師だ。 なのに反応しきれなかったのである。 もしも、これが戦いの最中だったとしたら、揃ってただでは済んでいまい。

 …尤も、当の少年がやった行動はと言えば、あまりに青すぎる暴走っぷりで、頬を引き攣らせて苦笑いするしかなかったのだが。

「あらあら…
 ボク、おいたはダメよ」

 しずなも苦笑しながら、胸に抱き付いた少年を両手で抱きしめた。
 胸に押し付けられくぐもった声が、苦しいのか嬉しいのか判別不明な響きで聞こえてくる。 多分そのどちらとも、なのだろう。
 やがてそうこうしている内に、ピクピクと足に震えが走る。

 彼女は抱きしめていたのではなく、不躾な少年を絞め落としていたらしい。

 今度こそ完全に失神したのか、腕を放されると同時に少年は膝を突いて地に伏した。
 鼻血をつつっと垂らした顔は、苦しそうに、けれどニヤけたまま固まっている。 憐れむべきか羨むべきか、ちょっと難しい所だ。

「で、一体何が有ったんです?」

 少年に見向きもせずに尋ねて来る彼女へ、タカミチたちは慌てて答え始めた。 …顔を強張らせ、被害者から目を反らしたままで。

 それが、本来交わる事の無かった筈の少年……横島忠夫が、この世界に現われた時の一幕だった。

 

 

 

【続くのか?】

 


 ぽすとすくりぷつ

 やはり、ほとんど投げ棄てのネタです。 そう言うリクをしてきた方がいらっしゃいまして(^^;
 赤松作品としては、私、こっちの方が好きなんですよね。 なもんで、ちょい気の向くままに時々書いてたりした物です。

 いや、単に他のが進んでなくって更新する物が無いので、お蔵出ししただけだったり…(苦笑)


 
 

  
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