独断と偏見の
まんがレビュー 2007年4月

2007年4月5日(木)
タイトル さんさん録
著者名 こうの史代
巻数 全2巻(ACTION COMICS)
出版社 双葉社
発行年 2006年
ジャンル 主夫の豆知識まんが
評価 ★★★  :家事の初歩を知りたい方へ。
ストーリー

 定年後のある日、参さんの妻が突然亡くなってしまった。そして、息子の家族と一緒に同居することになった。働きたいという嫁の希望をかなえるべく、参さんが家事を行うことになったのだったが…。

コメント

 みなさんは、「違和感を感じる」という言い回しに違和感を覚えますか?

 学生の頃、「違和感を感じる」というのは「感」と「感じる」が重なっているから、日本語として間違っている、と散々知人に言われました。いわゆる、「馬から落ちて落馬した」という言い回しは間違いであるというのと同じですね。

 実際、手持ちの広辞苑を引いてみると「違和感を覚える」といった例文は記載されているものの、「感じる」の方は記載されていませんでした。そのため、「違和感を感じる」は間違いだろうと漠然と思っていました。

 が、最近この言い回しをNHKのニュースでアナウンサーが使っていました。しかも、異なる番組で2回も耳にしました。

 この手の言葉遣いには相当うるさいはずのNHKで聞いたことにより、この言い回しは間違いではないのかもしれないと思い始めました。

 そこで手持ちの辞書だけでなく、ネットで使える無料の国語辞書もいくつか引いてみました。

 すると、三省堂のものをベースとしている辞書では、 「違和感」の項目に「−感じる」というのが記載されていました。

 う〜ん、すると「違和感を感じる」でも間違いではないんですね。勉強になった次第です。

 そんなわけで、違和感を感じさせない作品、こうの史代氏の「さんさん録」を紹介したいと思います。

 まず、このタイトルについてです。初めて見た方は、「さんさん録」って何のことだろうと不思議に思うと思います。これは、主人公の奥田参平(参さん)のことを、亡くなった妻が色々と記録していました。そのため、その「参さん」をひらがなに開いて、「さんさん録」と言うわけです。

 この「さんさん録」の内容は、おばあちゃんの豆知識ならぬ、おじいちゃんの豆知識と言えると思います。とは言っても、主人公の参さん自体、亡くなった妻の残した記録を元にその豆知識を得ているのですけどね。

 ただ単に豆知識まんがというわけではなく、物語性が先にあり、その上で家庭の豆知識を盛り込んであります。そのため、豆知識部分が押し付けがましくなく、すんなりと読み手に入っていきます。

 豆知識は色々披露されていますが、ボタンのつけ方、掃除の仕方、洗濯物の干し方から、おかゆや肉じゃがの作り方などの家事の初歩がほとんどです。すでにある程度家事をこなしている方にはこれといって特筆すべきものはありません。反面、これから一人暮らしなどで初めて家事を行うという人には、お奨めかもしれませんね。

 また、物語事態も、一話一話にちゃんとオチをつけています。コメディ路線で物語を進めるもののシリアスな内容を盛り込みそれでエンドとする、と見せかけて最後の半ページでギャグに逆転させオチとしています。

 それほど複雑ではないミスリードを行い、読者に意外性を持たせています。このおかげで、シリアスな事柄を描いているにもかかわらず、それほど重くならずに読むことができます。

 なお、個人的に最も好きなエピソードが、第12話の「理想と現実」です。

 これは、カレーの添物にきゅうりなますを作ろうとしたものの、買い物や調理の段階で予定外の行動をせざるをえず、なぜか鯖の味噌煮が出来上がってしまった、というお話です。

 これが、私のツボにはまり、何度読み返しても笑ってしまいました。コマとコマに独特な間があり、それが面白さを増しています。

 また、こうの史代氏はまんがならではという手法を色々と盛り込んでいます。

 例えば、第2巻の64ページです。参さん、仙川さん、息子の詩郎の3人が会話しています。それの各キャラの背景に蛙、蛇、ナメクジが描かれ、これらが三すくみであることを示しています。

 ところが、その蛙、蛇、ナメクジがまんが的背景かと思いきや、実は孫の乃菜がこれらの動物のおもちゃで遊んでいて、たまたまそう配置された、というギャグになっています。このように、まんが的表現を逆手にとったギャグも色々使われています。

 あとがきで、こうの史代氏はこの「さんさん録」を商業誌で発表した中で最も自信の無い作品と書いています。しかし、個人的にはこうの史代氏の中で、最も好きな作品です。事実、こうの史代氏の作品の中で、読み返している回数が最も多いものでもあります。

 そんなわけで、ちょっとした家事の豆知識を得たい方、参さんに癒されたい方にお奨めしますよ。

 蛇足です。カバー下の表紙にはカバーとは異なる絵が収録されていますので、持っている方は要チェックですよ。特に2巻のカバー下では、参さんの孫の乃菜が大人になった時のウェディング姿と、そのウェディングドレスを編んでいる参さんが描かれています。

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2007年4月19日(木)
タイトル いつもいっしょに
著者名 大井昌和
巻数 全2巻(BAMBOO COMICS)
出版社 竹書房
発行年 2005〜2007年
ジャンル 学園姉妹4コマまんが
評価 ★★   :後半はネタ切れでした。
ストーリー

 里宮茜は教員採用試験に受かり、学校の先生となった。その学校には似ても似つかない美人の妹の葵が通っていた。妹が大好きな茜は、家だけでなく学校でも妹にべったりなのだったが…。他にも、1巻には読みきり「妹日記」を収録。

コメント

 今春から始まったアニメで、実はすっごく楽しみにしている番組があります。それは、NHK教育で日曜日に放送される「ひつじのショーン(Shaun the Sheep)」です。

 これは、あの「ウォレスとグルミット(WALLACE&GROMIT)」に登場した羊のショーンが主人公となったクレイアニメです。先日、1話と2話が放送され、同居人と楽しみました。一緒にクスクスと笑いながら。

 それにしても、グルミットと言い、このショーンと登場人物はみな器用ですよね。黒板にチョークで絵を描いたり、車の運転をしたり、はては新しい道具を発明したりしますから。なお、キャラの造型ですが、ひつじ達のの尻尾がちょっと長すぎです。たぬきのしっぽみたいです。

 そんなわけで、当分の間日曜日の夕方が待ち遠しくなりそうです。

 さて、学生の待ち遠しいものと言えば、週末ですよね。そんなわけで、学園が舞台の、大井昌和氏の「いつもいっしょに」を紹介したいと思います。

 実は、この「いつもいっしょに」はがっかりさせられたコミックです。実は、1巻の時はそれなりに楽しめました。しかし、2巻の後半からは1巻に比べて絵・ネタともに大幅に変化していました。しかも、悪い方向に。

 絵が時間と共に変化するのは珍しくないので、初めは描き重ねるうちに自然に出てきた絵の変化かと思っていました。しかし、同時期に連載されていた「ちぃちゃんのおしながき」では、絵、ネタともに大きな変化はありませんでした。

 察するに、ネタに困りギリギリまで描けない状態に陥り、締め切りに間に合わせるため大部分をアシスタントが仕上げ異なった絵になってしまった、と邪推しています。

 特に目の描き方がかなり違うため、違和感を覚えずにはいられませんでした。2巻では、表紙と描き下ろしカラーページのキャラが明らかに異なっていましたし。どちらもコミック刊行にあたって描かれたものの筈なので、描いた時期に違いはないはずなんですけど。

 2巻の148ページのあとがきにも、
「毎回がネタ出し地獄と化していたからです…」
とあるので、上記の邪推もあながち間違いじゃないかもしれませんね。

 さて、内容を見ていきましょう。この「いつもいっしょに」の構成の柱となるのは、以下の3つになります。
1)背の小さい子供のような先生が登場
2)先生とは正反対の大人っぽい高校生の妹も登場
3)この姉妹が主人公で、同じ学校に通っている

 単純な構成の4コマでは、これらのうちの1つだけで成り立っているものもあります。例えば、ももせたまみ氏の「せんせいのお時間」は、この1)だけで成り立っていますよね。

 この「いつもいっしょに」では、これら3つの柱を絡ませたことにより、一工夫してあることが見て取れます。が、今ひとつ登場人物が動かず、話がうまく展開してきませんでした。

 ここでなぜ話がうまく展開していかなかったか考えてみると、それは登場人物同士の関係が影響しているように思われます。

 姉である先生の茜は妹ラブのため、妹の葵に振り回されるキャラクターです。この設定は特に問題ありません。

 ところが、妹の葵の方はその美貌ゆえ、何もしなくても事がうまく運んでいく、といったキャラです。そのため、物事に対し受身になり、キャラ自身がなかなか動いてくれません。

 妹の葵が動かないと、それに追随している姉の茜も動かないため、物語がうまく展開しません。そのため、物語内部で大きな変化がないため、マンネリに陥り面白いネタが発生しにくくなってしまいました。

 そういう意味では、妹の葵をライバル視している高島先生が動くことにより、ある程度物語に刺激を生じさせることができた筈でした。しかし、高島先生では妹の葵の美貌にはかなわない、という登場人物の立ち位置ゆえ、葵を動かすまでには至りませんでした。

 これらを打破すべく2巻の後半に登場したのが、転校生の岩崎美奈実だったのですが、残念ながらこれまた葵を動かすまでには至りませんでした。

 結論としては、妹の葵の受け身な姿勢が問題だったということになります。葵自身がもっと破天荒なトラブルメーカであれば、ネタ的にも困らなかったかもしれませんね。

 余談になりますが、高島先生は「高島」と「高嶋」のどちらなのでしょうか? 人物紹介でも、1巻では前者、2巻では後者で記載されていました。

 そんなわけで、へんてこな姉妹の学園4コマまんがを読みたい方にお奨めしますよ。ただ、後半はあまり面白くないため、その辺は覚悟しておいてくださいね。

 蛇足です。カバー下には表紙と異なる絵が収録されていますので、持っている方は要チェックですよ。

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2007年4月21日(土)
タイトル じゃりセン
著者名 胡桃ちの
巻数 全1巻(ACTION COMICS)
出版社 双葉社
発行年 2007年
ジャンル ヤンキー先生4コマ
評価 ★★   :いまいちな出来でした。
ストーリー

 烏丸キョーコは、元ヤンキーの社会科教師。個性的な生徒達も、キョーコの行動には振り回さている。そんな学校生活を描いた4コマまんが。おまけ描き下ろしにて、幼稚園の先生になった「それからどーしたキョーコ先生」も収録。

コメント

 みなさんは、以下のような状況に遭遇したとき、子供達にどのようにアドバイスしますか?

 知人の子供達の面倒を見ていたときです。まぁ、実際には面倒を見ていたというよりも、単にその子供達と一緒にジェンガで遊んでいただけなんですけど。

 このとき、小学3年生の兄と、小学1年生の弟が会話していました。ひょんなことから、弟のクラスメートが学校に持ってきてはいけないポケモンの攻略本をもってきていたことが判明しました。

 兄は猛烈に言いました。
「明日、先生にそのことを言うんだよ!」
と。弟の方は、
「う〜ん、年上だから…」
と少々否定的でした。

 同じ学年ながらも、弟よりも早く生まれたようです。ただ、年上というのは言い訳で、先生にこのことを言いつけたくないようでした。それを聞いて、小学3年生の兄は、
「言わなきゃダメだ! これを言わないと、みんなが学校に持ってくるようになる。ルールは守らないといけいない!」
それでも、やはり弟の方は先生には言いつけたくないようでした。

 さて、こんなとき、みなさんはその場にいる人間としてなんてアドバイスします?

 これがいじめなどの場合は、被害を受けている人間がいるので、先生に告発するのは正解でしょう。でも、今回の場合には被害者はいません。

 兄の言い分は理解できますし、正論です。でも、先生に言いつけることは仲間を裏切るみたいで、心情的には勧めたくありません。また、先生に告発することがその友達にばれることで、その弟のクラスでのポジションが微妙になり、今までの友達関係が崩れる可能性もあります。

 私は、
「う〜ん、言いつけなくても良いんじゃないかな。また持ってくるようなら先生に見つかって怒られるだろうし………ごにょごにょ」
と、歯切れの悪いことしか言えませんでした。適切なアドバイスはできず、ほとんど傍観者のような立場でした。

 みなさんなら、どのようなアドバイスをこの兄弟にしますか?

 そんなわけで、個性的な先生と生徒が登場する、胡桃ちの氏の「じゃりセン」を紹介したいと思います。

 胡桃ちの氏のコミックは、複数巻にまたがって発売されることが多いのですが。この「じゃりセン」は1巻で完結しています。その点ではちょっと珍しいと言えるでしょう。

 胡桃ちの氏は、どの作品も内容が比較的安定しています。傑出した作品がない反面、著しく劣る作品も少ないです。そのため、コミック化できるまんが家の入れ替わりの激しい4コマ業界で、安定的にコミックを出すことができるのでしょう。

 また、胡桃ちの氏の作品全般に言えることですが、関西ネタが多く含まれています。初期の頃の青木光恵氏が、関西と東京の差をギャグにしていたのと同様です。これは、胡桃ちの氏の初期の頃からある作風で、今でもそれは受け継がれています。

 青木光恵氏は関西出身であるのに対し、胡桃ちの氏は岡山出身です。一般に地方の人間というのは東京にコンプレックスを持っていて、東京に憧れていたりします(関西人は除きます)。胡桃ちの氏の場合は、それが東京ではなく大阪だったのではないでしょうか?

 そのため、青木光恵氏が段々と関西ネタのギャグが減っていったのに対し、いまでも胡桃ちの氏は関西ネタを使うのだと思います。

 また、作風にも初期の頃からの大幅な路線変更はありません。しかし、その時々で流行しているものを露骨にならないよううまく取り込んでいます。そのため、作風の大きな変化がなくても飽きがきません。

 ただ、残念なことにこの「じゃりセン」は胡桃ちの氏の作品の中では、あまり面白くない部類に入ります。事実、あとがきにもネームに苦しんだと描かれていました。前回レビューした大井昌和氏の「いつもいっしょに」もそうですが、ネームで苦しんだ作品というのは、面白くないことが多いですね。

 そんなわけで、関西ネタの4コマまんがを読みたい方にお奨めしますよ。ただ、痛快なギャグを求める方にはお奨めいたしません。

 蛇足です。カバー下にはカバーとは異なる絵が収録されていますので、持っている方は要チェックですよ。

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2007年4月25日(水)
タイトル 暴れん坊本屋さん
著者名 久世番子
巻数 全3巻(UN POCO ESSAY COMICS)
出版社 新書館
発行年 2005〜2006年
ジャンル 本屋エッセーまんが
評価 ★★★  :本が好きな方へ。
ストーリー

 主人公の久世番子は、本屋で働くまんが家である。本屋には今日も色々なお客様が訪れる。そんな本屋で働く日々を描いたエッセーまんが。

コメント

 みなさんは、テストで0点を取ったことがありますか? 私は、あります。しかも、実力で、です。名前の書き忘れとか、解答欄がずれたとかではありません。

 テストで0点というと、「ドラえもん」ののび太を思い出しますね。私も小学生の頃は、
「のび太って、頭悪いよね」
などと、無邪気に思っていたものです。そのときは、自分が0点を取ることがあるとは、夢にも思っていませんでした。

 しかし、時は流れ私が高校生になったときのことでした。中間テストだか期末テストだか忘れましたが、数学で0点を取ってしまいました。しかも、1年間に2回も。

 さらに悪い事に、これは大学受験を控えた高校3年生のときでした。返却された答案を見て青ざめたのを覚えています。

 不幸中の幸いだったのは、私だけでなく周りのみんなも悪かったことです。おかげで、平均点が下がり0点でも学内偏差値的にはそれほど下ではありませんでした。どんなに悪くても、0点より下がりようがないのがラッキーでした。

 ちなみに、その後の大学受験は失敗し、浪人生活を送る事になりました。まぁ、当然言えば当然なんですけどね。

 そんなわけで、第1巻98ページでドリルの採点を本屋の立ち読みでしている親子に向かって、
「あんたら親子…… 二人合わせて0点ですから!!!」
と呪っている主人公が登場する、久世番子氏の「暴れん坊本屋さん」を紹介したいと思います。

 この「暴れん坊本屋さん」を知ったのは、とある本屋さんに訪れたときのことでした。その本屋さんでは、このコミックが平積みしてあり、さらに最初の何章かを試し読みできるようになっていました。この試し読みで面白かったので、そのまま買ってしまいました。

 この「暴れん坊本屋さん」は、本屋さんでの苦楽の日々がおもしろおかしく描かれています。これらは、非常にテンポ良く描かれていて、リズミカルに楽しんで読む事ができました。第2巻はちょっとダレ気味でしたが、逆に第3巻は盛り上がりを見せての完結となりました。

 本屋さんエッセーとして面白いので色々な人に薦めたいところですが、あまりにもBLネタが多いのです。なので、普通(?)の人に薦めても良いのか迷うところです。そういう意味では、よく朝日新聞の書評に載ったものだと感心してしまいました。どんな書評だったのか、読んでいないので知りませんけど…。

 なお、第1巻にて92ページの立ち読み客が、矢場とんの絵が入ったTシャツを着ているのがすっごく気になりました。

 名古屋の人以外なら、スルーされそうな内容ですが、私と同居人H氏はこの部分に喰いつきました。これがあるということは、久世番子氏が働いている本屋さんは名古屋またはその近辺にあるのかもしれませんえ。

 さらに、私はこの「暴れん坊本屋さん」にて、今までこの「まんがフリーク」での言い間違いに気付きました。

 以前まで、カバーをめくったところにある表紙のことを、「カバー裏」と書いていました。でも、これは間違いで「カバー下」が正しいですね。だから、最近のレビューでは「カバー下」とちゃんと書いています。でも、古いレビューはまだ修正していないので、「カバー裏」で残っていたりしますが。

 そんなわけで、本が好きな方、本屋さんで働いている方、本屋さんで働いてみたい方、そしてBLがお好きな方にお奨めしますよ。単純にエッセーまんががお好きな方にもお奨めします。

 蛇足です。本好きの著者のコミックですので、当然のことながらカバー下の表紙には、描き下ろしまんがが収録されています。また、第3巻にはカバー下ではなく、カバー裏に描き下ろしまんがが収録されています。持っている方は要チェックですよ。

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