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エーテルドリフト実験の実際

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エーテルドリフト実験の実際

 

マイケルソン−モーレイの実験(MMX)で一般に生じている誤解は、MMXでは干渉縞の変化が観測されなかったとする論調です。実際には、確かにエーテル理論で予測されていた程の干渉縞の変化は得られなかったものの、MMXやそれ以降に行われた同様の実験において、特殊相対性理論の示す干渉縞のゼロ変化とは明確に異なる量の有限の変化が観測されています。特に興味深い点は、それら全ての測定結果に周期的な干渉縞の変化が現れていたことです。今回は、精度が高く長期間に渡って継続的に行われていたMiller(ミラー)による実験結果を彼のオリジナル論文から検証しましょう。



★マイケルソン、モーレイ、ミラーが活躍した米国ケース・ウエスタン・リザーブ大学への訪問記はここ

 

“The Ether-Drift Experiment and the determination of the Absolute Motion of the Earth”

Dayton. C. Miller, Rev. of Mod. Phys. Vol.3, p.203(1933)

 

■ マイケルソン−モーレイ実験 ■

マックスウェル(Maxwell)の提唱のもと、マイケルソン(Michelson)はアレクサンダー・グラハム・ベル(Alexsander Graham Bell)の援助によりエーテルドリフト実験器材(両腕120cm)を完成させ、1881年に最初の測定をポツダムで行った。

 

【結果】地球の公転速度のみを考慮した場合、干渉縞の変化は縞幅の0.04程度が理論的に予測されていたが、実際の観測では0.004~0.015程度の変化であった。

                                                                                   

 

マイケルソンはCase School of Applied Scienceの教授として招かれた時にエドワード W.モーレイ(Edward W. Morley)と知り合い、1887年に有名なマイケルソン−モーレイ(Michelson-Morley)実験を行った。

干渉計などは砂岩ブロック(砂岩ブロックの限界は、断面積150cm2 x高さ30cm)に固定され、鉄タンク内の水銀上に浮かせることで、回転に伴う機械的な振動を抑えつつ、実験系の回転を可能にしている。光を複数回往復させることにより、実質的には1100cmの距離に匹敵する行路を実現した。

 


【結果】7月8、9、11日の三日間、毎日6時間毎(正午及び夕方)にそれぞれ実験系を36回回転させ、干渉縞を測定した。その結果、地球の公転速度による干渉縞の変化は、理論的に0.4程度が期待されていたが、理論値の1/4以下の変化しか観測されなかった。

 

 

     

1887年のMichelson-Morleyの実験系と実際のMMX測定記録

 

 ■ Morley-Millerの実験(Cleveland, 1902-1906)■

1900年、ケルビン卿(Lord Kelvin)MMXの予想外の結果を受けて、より高精度な測定系の開発と繰り返し実験を行なうことを主張した。モーレイとミラーは、特にローレンツ−フィッツジェラルド(Lorentz-FitzGerald)収縮仮説を検証するため、430cm長の木製アーム(1887年のMMXのものよりも3倍長)による観測を1902年8月、1903年6月に計505回行なった。

 

【結果】MMXの結果よりも干渉縞の変化はやや大きかったが、やはり理論値よりも遥かに下回ることが確かめられた。但し、材質による違いは認められなかった。

実際のMillerによる測定記録

 

 1904年には、鉄製による全く新しい測定系を製作。干渉計は鉄製容器に貯められた水銀に浮かぶ木製台座に乗せられている。地球のエーテルに対する運動の方向がわからない事から、90度だけではなく180度まで実験系を回転させている。

エーテルが存在するとすれば、干渉縞は周期的な変化を見せるはずである。

 

【結果】実際の測定でも干渉縞の周期的な変化が確認されている。

 1904年7月には260回の測定が行なわれ、正午及び夕方の測定結果はそれぞれ7.5 Km/sの値を示した。

1905年7月及び11月に実施された230回の測定でも、やはりほぼ同様の干渉縞の変化を検出した。これによる地球―エーテル間の速度は、8.7Km/sと算出された。

          

(上図)実際の1904年7月に行われた午前と午後の測定結果。

(下図)上図測定結果を平均したもの。下図のように平均してしまうと効果が相殺される。

 

■   相対性理論以降の実験 ■

1921年3月、ウィルソン山の標高1750mの位置に測定系が設置される。

 

【結果】同年4月8日から4月21日まで、67セット(350回)の測定が行なわれ、やはり同様の結果(10Km/s)を得る。

 

1921年夏、鉄製の測定器をアルミやガラスに置きかえることで、磁場などの影響も完全に排除した。

 

【結果】同年12月、42セット(422回)の測定が行なわれ、やはり4月の測定結果と同様の効果を検出した。

 

 

     研究所(Cleveland)での測定(1922-1924) ■

ウィルソン山から測定系をClevelandの研究所に再び戻し、1922年から1923年にわたり観測が行なわれた。

 

【結果】干渉縞は写真で記録し、温度変化、回転速度、光源の種類などを様々に変えて測定を行ったが、それらによる影響は現れなかった。すなわち、周期的な干渉縞の変化は、機械的・環境的な誤差によるものでないことが確認された。

 

     ウィルソン山での測定(1924年) ■

1924年8月、観測所がウィルソン山の以前とは別の場所に再び移されて観測が行なわれる。

 

【結果】同年9月4,5,6日に、10セット(136回)の観測が行なわれる。前回と同様、約10Km/sの結果が得られる。

 

実際に観測された干渉縞(精度の高さがわかる)

 

     エーテルドリフト効果の解析 ■

1925年以前はエーテルと地球の相対速度やローレンツーフィッツジェラルド(Lorentz-FitzGerald)収縮仮説の検証が目的であった。一方、1925年4月、8月、9月、1926年2月には、太陽系の絶対運動の方向を確定するために重点的な測定が続けられた。

 

【結果】地球の絶対運動は2つの成分(30Km/sの公転速度及び太陽の絶対運動)から構成されると考えられる事から、理論計算での最適化を図り、地球のエーテルに対する速度を算出した(下図)。

これらの測定値から得られた速度と理論値の比率kを計算すると、下表のように、季節に関わらず、異なる観測時期であっても、同程度の比率で有意な値が得られる。      

観測時期        速度(測定)    速度(理論)      比率k

24       9.3 km/s        195.2 km/s      0.048

41       10.1               198.2               0.051

81       11.2               211.5               0.053

915     9.6                  207.5               0.046

 

4回の測定における測定値と算出された地球のエーテルに対する速度及び方向

 

比率k=0.0514を理論計算に利用し、地球の全天に対する進行方向を求めると、下図のようになる。

          

計算により求められた地球の全天に対する進行方向

 


<ミラー実験に関する補足>

 

(1)上記ミラーの一連の実験の中で観測された干渉縞の変化は、ミラーの学生であったシャンクランド(R. S. Shankland)らによって、"New Analysis of the Interferometer Observations of Dayton C. Miller"R. S. Shankland, S. W. McCuskey, F. C. Leone, and G. Kuerti, Rev. Mod. Phys. Vol. 27, p.167 (1955))の論文の中で、実験系の温度誤差によるものとして否定された。そのため、現在では、マイケルソン−モーレイやミラーの実験などで現れた周期的な干渉縞の変化は、実験系における温度管理などの不備によるものと解釈されている。しかし、これらの解釈の根拠は必ずしも十分とは言えず、厳密に議論をされたものは見当たらない。ミラー自身も実験系の温度管理には細心の注意を払っており、実際にヒーターなどを使用して実験系に不均等な温度分布を持たせ、干渉縞への影響を詳細に調べている。シャックランドらは実験室の壁の温度差が干渉縞の変化の原因である可能性を指摘したが、四季の温度変化や昼夜の温度差を考えれば、同程度の干渉縞の変化が継続的に観測された事実を説明するには不十分であると言える。

 

(2)近年、レーザー光を使ったマイケルソン・モーレイ型実験も数例(例えば、A. Brillet and J. L. Hall, Physical Review Letters 42, 549 (1979)を参照)行われており、これらの実験ではいわゆる"null"(干渉縞の変化無し)という結論になっている。しかし、これら温度管理がなされていると言われるFabry-Perot型装置を使った近年の実験であっても、エラー補正が行われており、実際のデータの値はゼロではない。電源ノイズなどを様々仮定することで、”変化なし”という結論を導き出している。