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 ケース・ウェスタン・リザーブ大学の概要

 

ケース・ウエスタン・リザーブ大学は、オハイオ州クリーブランド市にある私立の研究大学である。ケース工科大学(1880年創立)とウエスタン・リザーブ大学(1826年創立)が1967年に統合された大学。US Newsの大学ランキングでは、特にバイオメディカル工学分野で大学・大学院ともに10位以内にランクされている。また、NIHが毎年発表するメディカル・スクールのランキングにおいても、全米122校中12位にランクされるなど、ライフサイエンス分野に強い研究大学である。2005−2006年における学生数は、学部4186人、大学院(プロフェッショナルコース含む)5766人となっている。学部学生は、全米50州、世界82カ国から集まっているものの、およそ45%はオハイオ州内からの学生である。ノーベル賞受賞者は16人で、その中でもA. A. Michelsonは最初のアメリカ人受賞者(1907年)である。アインシュタインの特殊相対性理論の実証例として教科書などで紹介される有名なマイケルソン・モーレー実験(1887年)が行なわれた大学でもある。(写真は、歴史的なマイケルソン・モーレー実験を記念して建立された噴水 Michelson-Morley Fountain”。)

 

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訪問日: 2007年3月

テキスト ボックス: 物理学科の紹介

 ケース・ウエスタン・リザーブ大学は、物理学の分野において歴史的に有名である。Dr. William Fickingerから、Physics Department内部とその歴史について紹介をして頂いた。Physics DepartmentのあるRockefellerビルにはマイケルソン・モーレー実験の装置のレプリカや一世紀以上にわたる古い実験器具・教材などが展示されている。Fickinger教授は、これらの展示品の管理の他、多くの器材や貴重な資料(アインシュタインなどからの手紙も含む)の整理もされている。今回の訪問では、Fickinger教授しか足を踏み入れないという秘密の小部屋(多くの教員がこの小部屋の存在さえも知らないという)にも案内して頂いた。その小部屋には、未だ整理されていない過去の貴重な器材や資料・データが棚一面に置かれている。そして、その奥には、A. A. Michelsonの写真とA. A. Michelsonが描いたとされる水彩画(人物)が飾られていた。A. A. Michelsonには絵の才能があり、そしてX線による初の人体の全身撮影(1896年)を行ったD.C. Millerはフルート奏者(彼の収集したフルート1,500点、フルート楽譜10,000点等はLibrary of Congressの所蔵となっている)としても知られている。優れた科学者は芸術や文化の方面でも非凡な才能を示す典型例とも言える。また、分野の垣根を越えた共同研究(A. A. Michelson は物理学、E. W. Morleyは化学の専門家)が一世紀以上も前から行われていたことを考えれば、学際的融合の気質はすでに根付いていた校風であるという印象を受けた。

 

マイケルソン・モーレー実験のレプリカ           米国物理学会から歴史的施設として認定された説明ボード

 

Fickinger教授                A. A. Michelsonの写真(右)と彼が描いたとされる水彩画(左)

 

テキスト ボックス: 大学の周辺環境 University Circle

 宿泊先のホテルからケース・ウエスタン・リザーブ大学に行く際には、RTA Regional Transit Authorityと呼ばれる路線を使用した。降車駅は”University Circle”である。この”University Circle”は、必ずしも大学のみを意味するのではなく、ケース・ウエスタン・リザーブ大学を取り巻く周辺地域を含めた一帯を指している。ケース・ウエスタン・リザーブ大学への訪問を終了後、その地域の意味と重要性に気がついた。

 ケース・ウエスタン・リザーブ大学周辺には、1平方マイル圏内(徒歩圏内)に、大学の施設も含め多くの芸術や文化施設、博物館などが並んでおり、大学キャンパスの境界さえもよくわからない程に融合している。クリーブランド市およびオハイオ州北東地域の文化の中心(文化、芸術、医療、教育の集約された地域)としても位置づけられているUniversity Circleは、クリーブランド市中心から5マイルのところに位置している。大学以外の主な施設を列挙すると、The Cleveland Museum of Art (古代中国から現代アメリカまでを象徴する39,000点の作品を所蔵)、Severance Hall(クリーブランド・オーケストラの本拠地で、毎年秋から春にかけて演奏が行われる)、Western Reserve Historical Society(ウエスタン・リザーブ地域の歴史を展示)、The Cleveland Museum of Natural History(恐竜やプラネタリウムなどを含む過去から現在までの自然界に関する展示)、African American MuseumChildren’s Museum of ClevelandCleveland Center for Contemporary ArtDetrick Museum of Medical History The Temple Museum of Religious ArtCleveland Botanical Gardenなどである。ケース・ウエスタン・リザーブ大学のSAGESプログラムにおいても、学生の教育にこれらの施設を活用している。また、ケース・ウエスタン・リザーブ大学では、これらUniversity Circleのメンバー機関とともに、NSFから新たなグラント($786,000)を得て、近隣12の中学校生徒100人と教師20人に対して、芸術・人文学的要素を取り入れた科学教育プログラムを実施している。

さらに、University Circleの周辺にも多くの文化・芸術施設を見つけることができる。Cleveland Play House(米国でもっとも古いプロフェッショナル・シアター)、Rock and Roll Hall of Fame and Museum The Great Lakes Science Center(五大湖に関連した環境展示やインタラクティブ展示など)なども存在する。教育カリキュラムやファンディングなどの側面だけからではなく、大学と周辺地域を効果的に融合させた都市(街)づくりに見られる環境整備も重要であることがわかる。高等教育環境のあり方を考える上で参考になる点が多い。

実は、この地域一帯の開発とサービスを行っているのは非営利団体University Circle Incorporated (UCI)である。地域内のケース・ウエスタン・リザーブ大学を含む約40の非営利機関がUCIのメンバー機関になっており、これらの機関とともにUniversity Circleの卓越性を維持し、文化、芸術、教育、医療などを融合したクラスター開発と地域づくりを担っている。

 

 Image:Cleveland Botanical Gardens.jpg

University Circleに位置するSeverance Hall(左)とCleveland Botanical Garden(右)

 

エリー湖畔に位置する科学博物館The Great Lakes Science Center(左)と展示物(竜巻発生装置)の一例(右)