Last update 1999/07/23

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おかあさんのための感覚統合療法

 

旭川荘療育センター療育園

若松 かやの

 

Ver.990721

目  次

 

1.感覚統合療法について
2.感覚(Sensory)とは
 1.感覚の種類
 2.感覚の役割
 3.脳の発達
 4.結論
3.感覚統合(Sensory Integration)とは?
 1.では「感覚統合に問題がある」とは?
 2.じゃあ「障害児は誰でも皆,感覚統合に問題があるのか?」
 3.「感覚統合に問題があると,どういう症状が見られるのか?」
4.感覚統合障害に見られる主な症状
 1.運動面
 (1)多動:性格やしつけの問題と誤解されがちですが…
 (2)寡動(動きが少ないタイプ)
 (3)すぐゴロゴロ横になる
 (4)狭いところや暗いところに行きたがる
 (5)狭いところや暗いところを嫌がる
 2.身体の使い方の問題(低緊張によって起こるもの)
 (1)低緊張の子どもの特徴
   1)立っているとき
   2)歩くとき
   3)すわるとき
   4)手では?
   5)指では?
   6)顔では?
 
3.身体の使い方の問題(身体を固くしてしまうタイプ) 
 4.身体の使い方の問題(行為障害)
 5.言語発達の遅れ   
 (1)入力の問題
 (2)出力の問題
 6.偏食について                          
 7.その他の症状
 (1)入力された感覚刺激を脳が解釈する際に起こる問題   
   1)触覚
   2)前庭覚
 (2)問題行動など
   1)固執傾向(こだわり)
   2)常同行動
   3)だらしない
   4)お友達と遊べない
   
5)パニック
   6)何でも口へもっていく
   7)何でもにおいをかぐ
   8)座っていると妙な身体の動き方をする
   9)おもちゃをちらかすだけであそべない
   10)なかなか文字に興味をもってくれない
   11)文字や絵をかこうとしない(鉛筆やクレヨンが持てない)
 8.チェックしておきたいこと

5.感覚統合療法の実際 
 1.感覚統合の発達
 2.では感覚統合療法とは何なのか

    (つづく)

 

1.感覚統合療法について


 
 感覚統合療法とは

 感覚統合療法(Sensory Integration Approach,以下略して「S.I.」)は,アメリカのエアーズという女性の作業療法士が,1970年当時アメリカで問題になっていた学習障害児のための治療法として開発しました。
  日本にも20年ほど前に導入されて,学習障害児や自閉症,自閉傾向児(学習障害児と自閉症児は共通点が多い。)に対して,主に施行され,現在ではその他の障害にも応用されています。
 感覚統合療法に関する本はいろいろ出版されています。
 読みやすいのは「みんなの感覚統合(佐藤剛,他著,パシフィックサプライ株式会社出版,)」,「子どもの発達と感覚統合(エアーズ著,佐藤剛監訳,協同医書出版)」です。
 
 感覚統合療法について話しをする前にまず知っているようで知らない「感覚」についてお話します。
 


2.感覚(Sensory)とは

1.感覚の種類

☆視覚…見ること
☆聴覚…聴くこと
☆触覚…さわること
☆味覚…あじわうこと
☆嗅覚…においに関すること
☆痛覚…痛みに関すること
などはおなじみの感覚


その他にも
☆温覚…あたたかさ
☆冷覚…つめたさ
☆内臓覚…おなかがゴロゴロするときetc.
☆振動覚…振動に関するもの
とか,もっとたくさんあるのですが,

ここでは(感覚統合療法),
★前庭覚…重力と運動に関する感覚
★固有覚…筋肉と関節に関する感覚
★触覚…皮膚に関する感覚の3つの感覚を主に使います。
 
 たとえば,ブランコやすべりだいなどは前庭覚,ジャンプしたり,キックしたりするのは固有覚,ミラクルフォームや小豆プール,ボールプール,くすぐりっこは触覚を取り入れることを目的にしていますが,一つ一つの感覚は単一に働くのではなく,いろいろな感覚と密接につながりあっています。
 ですから,ブランコをしているとき,ゆれる感覚としての前庭覚,ロープを握っている触覚,目の前のものを見ている視覚,歌を聴きながらの聴覚といった具合に,1つの遊具で遊んでいてもいろいろな感覚刺激が子どもの身体には入力されているのです。

 
2.感覚の役割

A. 生命を守る。
 痛みから逃げる。
 ころばないように身体をおこす。
 落ちないようにしっかりつかまる。Etc.
B. 感覚器それ自体の役目。
 例)目→視覚
   耳→聴覚
   舌→味覚etc.
 これが一般に言われている感覚です。
C. 感覚器から入った情報をキャッチする。
 これは知覚と呼ばれます。
 子どもは知覚すると運動をはじめます。
 たとえば,何か聞こえたから見てみよう…眼球運動の発達。
 もっとよく見よう…首を起こす(首が座る)。
 そばまで行ってみよう…手を伸ばす,四つ這いをする,歩いて行く。
 その結果,運動機能が発達する。
D. その情報の意味を知る。認知です。
 そうか,このおもちゃから聞こえるんだ。
 わあ,きれいなお花etc.
E. そして,運動や言語で最終的な行動をする。
 おもちゃをさわって音を出したり,お花を摘んでみたりするのです。
 
 A.は反射的に行われますが,B.からあとは,B.→C.→D.→E.とつながっています。C.で止っている場合は,情報は入っているのだけど,それが意味のあるものになっていないことになります。
 赤ちゃんのなん語がそうです。バブバブという自己刺激で止っているわけですが,D.になるとことばになり,E.になるとコミュニケーションとしての会話が成り立ちます。
 


3.脳の発達
 では,我々大人の脳はどのようにしてできたのでしょうか?
 子どもの脳は非常に敏感で受容的です。環境はその脳に対して様々な刺激を提供します。様々な音,風が触ったりいろいろなにおいがしたり,そして一番不思議なのが重力です。おかあさんのおなかの中では羊水の中で動けていたのに,外へ出ると動こうと思っても重力のために自由に動けません。
 それでも子どもはおもちゃがおもしろいから手を伸ばそうとしたり,おかあさんの方を向こうとします。様々の刺激の中で身体を動かしてうまくいった経験が積み重なって脳は発達します。

 
4.結論
 ここまで書いて言いたかったこと,それは「感覚刺激なしでは成長発達はありえない」ということです。
 小学校のとき,卵分割のはなしを習ったおぼえがあるはずです。まず二分割,それから四分割,八分割というように受精卵が分割していって一個の生命が誕生するわけですが,二分割のとき卵の上の方がポコッとへこみます。これは重力に引かれてへこみができるわけです。そして二つに割れ目がはいって身体の左右が決まります。重力は生命誕生の上でも大事な役割をしているのです。
 


3.感覚統合(Sensory Integration)とは?

 ここではりんごが入力だとします。りんごからは甘いにおいがしたり,赤い色だったり,つるつるしていたり,といういろいろな感覚刺激が出ています。それらは脳の中にはいって,過去に「りんご」ということばを知ったこととか,食べた経験など一緒になります。そして,出てくるのが「りんご」ということばや食べるという運動ということになります。
 我々の生活はこれらのことが何度もくりかえされています。
 そして,この「現在の感覚刺激や,過去の経験や記憶」を感覚統合といいます。つまり入力からのいろいろな感覚刺激と脳の中の記憶などの情報を一つにまとめて行動を決定するわけです。

 
1.では「感覚統合に問題がある」とは?
 入力は一般的には誰でも同じです。しかし,出力がちょっとおかしい,ことばや運動がおかしい場合がそれです。

 
2.じゃあ「障害児は誰でも皆,感覚統合に問題があるのか?」
1で一般的ということばを使いましたが,下の表を見てください。
 
   -----------------------------------------------------------

                  一次性感覚統合障害         二次性感覚統合障害
   -----------------------------------------------------------

          学習障害児               盲
          小児自閉症etc.              聾
                              脳性麻痺etc.
 
   機能系の障害(Functional System)        機能の障害(Function) 
        -----------------------------------------------------------

  例えば,目が見えない,耳が聞こえない,また脳性麻痺のように身体に麻痺がある場合は入力の時点で,他とは異なっています。と言うことは,出力がおかしくても仕方がありません。
 ところが,感覚統合療法を受けている子どもたちは,ほとんどの子が目はちゃんと見えているし,耳もちゃんと聞こえているし,身体にも麻痺がない。入力には異常がない。それにもかかわらずことばが遅れていたり多動だったりと出力がなんだかおかしいのです。
 つまり,二次性感覚統合障害は,機能が悪いために二次的に感覚統合の障害を起こしているのです。彼らには普通,感覚統合療法は行いません。問題のある機能を補ったり代償したりすること,例えば目が悪ければ眼鏡や点字を,耳が歩ければ補聴器を,脳性麻痺は麻痺に対しての訓練を行うことになります(子どもによっては応用として使うこともあります。)。
 しかし,一次性感覚統合障害の子どもたちは,どこが悪いのかわからない。結局,機能ではなく機能系が悪いのではないかという仮説が生まれます。バッテリーではなくコードがどこか変になっていると考えるとわかりやすいかもしれません。

 
3.「感覚統合に問題があると,どういう症状が見られるのか?」
 次に書いていくことは,一人の子どもにすべての項目があてはまるわけではありません。ある子にはここは見られるけれどこんなことはない,と言うこともあるかもしれません。
 また,これらの症状は今まであまり深く考えられず,両親のしつけの問題とか,性格として見られてきたことが含まれています。
 病院に行っても「スキンシップが足りないからだ」と言われたり,まわりの人から「おまえの育て方が…」とか言われてきたことも多いと思いますが,実はそうではなくちゃんと原因があることを知ってもらいたいので書いています。
 これは,おかあさんの気持ちを軽くするという意味もありますが,なにより子ども自身が「僕のことを知ってほしい」と訴えていることだと思います。
 ここに書いていることは,他の本や他の人から習ったことも含まれていますが,一番多いのは子どもが直接教えてくれたことです。私はそれを大事にしてゆきたいと考えていますし,折角教えてもらったのですから,多くの困っているおかあさんにも伝えてゆきたいのです。子どもたちの代わりに,私が彼らのことを上手に伝えていけるといいのですが。

 
4.感覚統合障害に見られる主な症状
 
 

一般的に筋肉の緊張度が低い子が多い(低緊張を参考)
 これは,他にもいろいろな症状を引き起こします。

  
1.運動面
 
1)多動:性格やしつけの問題と誤解されがちですが…
 多動とひとくちに言っても,次の2つの面があります。
 
1)やたらに走り回る(低緊張を参考)
 私たちの足には右足と左足,股関節,膝関節,足関節,そしてそれぞれに伸ばす筋肉,曲げる筋肉がついています。これらすべてがゆっくり交互に動くことで「歩く」ことができます。
 しかし,これがうまく動かない場合はバラバラに動いてしまうので,走っているように見えることがあります。実は,じっと止っていることやゆっくり歩くことの方が彼らには走ることよりむずかしいのです。手をつないで他人のテンポにあわせて歩くということは,もっとむずかしいことです。
 成育歴を聞いてゆくと,10ヶ月や9ヶ月で立ったあとすぐに走り出してしまったようなお子さんがこのタイプです。身体が上手に使えるようになると,歩くことができるようになります。
  
2)注意の集中が難しい
A.身体排除が困難(コロコロ,気が変わりやすい)(言語発達の遅れを参考)
 我々は常にいろいろな感覚刺激を取り入れています。
 例えば耳をすますと車の走っている音,遠くの人の声,風の音が聞こえます。ラ−メンのにおいがすると,どこかでラーメン食べてるなと思いますし,触覚もシャツのラベルがちょっとガサガサしたり,ソックスがちょっとゆがんでいたり,パンツのゴムがちょっとくいこんでいるなあ,とか…見えるものはもっとたくさんあります。しかも,ちょっと首を動かすだけで,ものすごい量の視覚刺激が入りこんでくるのです。
 でも,普段はあまりそんなことは気にしない。特に何かに集中しているときは,まわりのことなど気にもとめない。それが「身体排除」です。
 私たちの身体にはこの機構が備わっています。ところがこれができない子は,いろいろな刺激の中で今,自分に一番必要な刺激の選択ができません。いろいろなことが気になって仕方がないのです。結果,注意散漫になってしまうのです。
 
B.覚醒域が低い(何かをやっていてもすぐウロウロ動き回る)
 覚醒域が低いと聞くとボーッとして何もしないように思えます。しかし我々が頭がはっきりしなくてボーッとしているときに動かないのは,そんなときに動いてもろくなことにならないのを知っているからです。例えば,足を踏み外したり忘れ物をしたりしてしまうからです。
子どもが勉強しているとき,ちゃんと机についていますか?
しばらくは机についていてもすぐウロウロ動きはじめることがあります。つい「じっとしてなさい!」と叱ってしまいますが,彼らはボーッとした頭をはっきりさせようと動いているのかもしれません。
私たちも頭がボーッとしているとき,なんとかはっきりさせようといろいろ身体を動かしてみます。実はそれと同じことを彼らはやっているのかもしれません。 
運動したあとの方が計算その他の能力がすぐれているというデータもあります。
 叱らないで,いっしょに少し身体を動かすのもいいでしょう。
 


(2)寡動(動きが少ないタイプ)
 いろいろ原因が考えられますが
 
1)重力不安(怖がり):(ことばの遅れ,前庭覚,その他参考)
 ブランコやすべりだいが嫌い。小さいときも「高い高い」が嫌い。赤ちゃんのときにも抱っこすると泣く。放っておくとおとなしいといったタイプ。
 重力に抗して動くのが苦手です。とにかく地面に近いところにいると安心します。だからなるべく動かないように,お尻が床についているとよく遊ぶのに,動きたがらない子どもです。
 彼らはとにかく毎日不安だらけ。そのため情緒的にも不安定で,よくパニックを起こします。
 
2)失敗するくらいなら,やらない方がいいと思っている
 重力不安のある子に多いのですが,彼らはとてもプライドが高い。普通,赤ちゃんはいろいろな失敗をして(それでもやりたいから,みんなが見てるから,あれがほしいから…云々という理由で)何度もくり返しながらいろいろなことができるようになります。立ったり,歩いたり…
 しかし,彼らは失敗するのが嫌。「失敗するくらいならやらない方がいい」と思っているわけです。そのため,知的にはそんなに悪くない,またはむしろいいのに(物事を予測してやっているわけですから)できないことが多く,親がイライラさせられます。
 このタイプには無理強いは禁物です。また,心の中ではやりたいと思っているので,やりたくなるような環境作りが大切(親が楽しそうに遊ぶとか)。そして,もし失敗しても妙な励ましはいらない。見なかったふりをしてさりげなくつなげる。これには本人がやりたくなったときに手伝ってます,という態度もじゃまになるので,さりげなく手伝うことも大切です(彼らはプライドで生きているので,人の手を借りようとはしない。)。
 
3)叱られるくらいなら,やらない方がいいと思っている
 本来はちょっと多動ぎみの子。しかし,多動だと叱られることが多いので,何もしない。
 この子たちは動くこと自体は嫌いではないのですが,親の顔色を見てやっているところがあります。
 動いてもかまわないことがわかると動き始めます。
 
4)低緊張で疲れやすい(低緊張を参考)
 全身の筋肉の緊張度が低いと立っているだけでも疲れます。
 そのためなるべく動かないですむようなことを好むことになります。例えば座ったままでできるようなこととか(特に床に座る,床に寝そべるetc.)。
 


(3)すぐゴロゴロ横になる
 これにも様々な原因が考えられます。
 
1)低緊張のため疲れやすい(低緊張を参考)
 これまでにも書いてきたように普通の子よりもエネルギーの消費が大きいので,少し動くとすぐゴロゴロ横になります。
 腹ばいになったとき,カエルのように足が開くような子は,両足を内側にひっぱる力が弱いので,特に疲れやすいようです(当然,このタイプは歩きはじめが遅れることもあります。)。
 しばらくゴロゴロしていてもまた元気になって遊びはじめます。
 
2)身体排除ができないため疲れやすい(身体排除を参考)
 普通の子よりもたくさんの刺激を受け入れて生活をしているので,とても疲れやすくなります。
 ちょっと刺激を減らそう,落ちつこうとして横になっていることも考えられます。次の3)も参考にしてください。
 
3)冷たいところに横になる
 P−タイルの床やクーラーの吹き出し口etc.に横になる場合です。
 冷たい感覚は他の感覚をブロックする働きがあります(例えば,火傷をしたとき,歯が痛いとき,かゆいとき,私たちは氷や水で痛みやかゆみをやわらげようとします。)。
 彼らはそれを知っているので様々な感覚にさらされてイライラしている状態を治そうと冷たいところに横になります。
 ということは,ここで「起きなさい。ゴロゴロしないの!」と起こしたり,声をかけたりすることは逆効果ということになります。落ち着くとまた遊びはじめるので待ってあげてください。
 
4)フワフワしたところ,あたたかいところを好む
 これは私たちと同じ。気持ちの良いところなのでしょう。
 疲れているから休みたい。ちょっとさぼりたい。
 しょっちゅう使ってはいけないけど,時々使わせてあげてあげてください。
 でも本当は,おかあさんの膝とかに来る方が望ましい。
 


(4)狭いところや暗いところに行きたがる
 
 おかあさんのおなかの中にまだ未練があると,広いところや人ごみが嫌いです。静かで狭くて暗いところに行って自分を落ちつけようとします。
 


(5)狭いところや暗いところを嫌がる
 人間は本来,そういうところが嫌いです。
 トイレが嫌いな子の原因にもなります。
 (*トイレについては,トイレット・トレーニングを参考)
 
 


2.身体の使い方の問題(低緊張によって起こるもの)

 我々の身体の筋肉はある程度の緊張(Tonus)をもっています。簡単に言うと張り?かな。
キャンプでのテントと同じで(人間の場合,伸ばす筋肉と曲げる筋肉),両方から適当な力で張らないとぐらぐらになってしまいます。
 テントの場合は,左右から張っていけばいいわけですが,人間の場合は動かなければならないので,一つ一つの関節に,いろいろなテントがあることになります。
 例えば,首は前後,左右。また座るときも前後でおなかの筋肉(曲げる),背中の筋肉(伸ばす)というふうにいくつもテントを張らねばなりません。
 まっすぐに立っているときでも,全身のいろいろな関節のテントが一度にきちんと張らなければなりません。首も体幹も足も…。 関節ごとにあるわけですから,当然,指にもあります。
 
 ここに来ている子の多くは低緊張です。
 テントの張り具合が弱く,ぐらぐらしている状態と考えてください(脳性麻痺の場合は張りが一定でなかったり,片方のみが強かったりします。)。
 張りが弱いととても不安なので動くのを嫌がったり,逆に妙に力を入れすぎたりして固くなってしまうこともあります。それに疲れやすいのも特徴です。
 
(1)低緊張の子どもの特徴
 他の子ども(兄弟etc.)と比べると,妙に身体がやわらかいと感じたことはありませんか? 
とても関節が柔らかく,不自然なかっこうをしていること(私たちではとてもできないようなかっこう)はありませんか?
   例)おむつをかえるとき,すごく足が開く。足首がぐらぐらしていて靴をはかせにくい。妙なかっこうで寝る。
 
 以上は,おかあさんが日常生活の中で気づいていることもあるかもしれません。
  
 

低緊張の子どものその他の特徴を次にあげます。

1)立っているとき
A.いつも走っているので,立ち止まってまっすぐ立っていられない。
 前述したように,まっすぐ立っているというのは,彼らにとってすごく難しいことです。
 実は走っているのは運動神経がいいからではなく一つ一つの動作を止めることができないからなのです。歩くというのは左右の足,足のそれぞれの関節,またそれについている伸ばす筋肉,曲げる筋肉がそれぞれ交互に働くという,すごくむずかしい運動なのです。
 子どもによっては一才でつかまり立ちをしたと思ったらすぐ走りはじめる子がいます。バランスが悪いので転ばないために走っているのです。
 
B.おなかを突き出したようなかっこうで立つ。
 前述したように張りが弱いので関節をロックして身体の崩れを止めようとします。 体幹がぐらぐらするのを背中の筋肉を強く張ることでカバーしようとしています。膝の崩れを防ぐのに膝をうしろにひいてロックします。
 こんなことを日頃やっていると疲れるよね。            

C.だらだらしたような立ち方
 これも態度が悪いのではなく,できないのです。
 
D.偏平足(いわゆる「べた足」)
 赤ちゃんはつかまり立ちをはじめると,立ちながら膝を曲げたり伸ばしたりして一人で筋肉トレーニングをします。誰が教えたわけでもないのに,おりこうさんですが,これは歩きはじめはO脚なので膝が崩れないように内股の力をつけているわけです。
 
 ところが,低緊張の子は筋トレができない。
 しかたがないので,転ばないために走ってしまったり,彼らなりの工夫をします。膝が崩れるのなら,崩れないために膝を内側に入れればいいと考えるわけです。確かにこうすると膝はまがりにくくなるので崩れません(実際におかあさん,やってみたら!)
 ところが足元を見てみると,内側にはいるので,偏平足のかっこうになるのです。ましてや最近の日本では床はすべりやすい素材でできています。昔はタタミだったからタタミの目によって止ることもあったのです。また乳幼児用の靴底がピタッと床に吸いつくようなものでできていません。
 すべらないように子どもは必死で動こうとするのでスケートのような形になったり,ますます偏平足を作っていったりするのです。
 
<なぜ偏平足がいけないのか?>
 足の指や踵の骨は小さいときにはまだきちんと作られていません。骨を正しい位置に作っていけなくなってしまいます。
 偏平足の人は長距離歩くと疲れます。
 「土踏まず」は足のスプリングのような役目をします。バランスをとったりジャンプの着地のときのクッションになります。偏平足は土踏まずができにくいのです。
 

<靴を購入するときのポイント>
A.靴底が床にピタッとつくこと。

B.できれば土踏まずのところにパッドが入っている。
C.足首のぐらぐらする子には,バスケットシューズのように足首まであるもの。
*ちょっと高いのですが,リーボックのハイトップシューズを薦めます。しかし,リーボックでなくても上の3つの条件を満たしていればそれで結構です。
*子どもが自分ではけない(リーボックはひも靴なので)場合は,マジックテープをつけることもできます(別料金)。
*ひもの部分を紙にむすぶカラフルなゴムにするとかわいくなるし自分ではけることもあります。
 
 いずれにしても,靴を変えるだけでおどろくほど動きがかわります(はじめは歩きにくいかもしれないけど,そのうち慣れる。)。
 日本は靴の文化ではなかったために,子どもの靴に関してかわいいとか売れ筋のキャラクターのついたものにどうしても目が向きがちですが,一生つきあっていく大事な足を作るためにも子どものときの靴にはこだわってゆきたいものです。かわいい靴やキャラクターシューズを子どもがほしがるのは当たり前です。シールを貼ったりゴムひもなどの工夫でかわいい靴にしてあげてください。
 はだしの方がいいといって,はだしを勧める人もいます。それは,足がきちんとつく子にはいいのですが,彼らの足は地面との密着がよくありません。足の裏の感覚が過敏な子もいて,逆効果になることもあります。
 また最近の道路事情からもアスファルトの平坦な道では効果は期待できないと思います(坂とかでこぼこ道とか砂浜は意味があるのだけどね。)。
 また,ダウン症の場合はO脚が多い。これも早めに靴をきちんとはかせると,背中がのびてかっこうよくなります。

<自分で履くことを教えるとき>
 靴の履き口のところにリングやリング状のひもをつけると履きやすくなります。
 
<靴の左右を教えるとき>
 左右の靴があう位置に2つ合わせると一つになる絵を書いておくのもいいでしょう。
 
2)歩くとき
A.スケートのような歩き方
 前述
 
B.つま先歩き
 やってみるとわかるのですが,前述したとおりきちんと歩くということはそれぞれの関節が分離した動きをしなければなりません。
 彼らのつま先歩きは,股関節,膝関節,足関節をすべて伸ばした状態なのです。つまり関節の分離運動ができていないということになります。
 
C.手がパタパタ動く
 身体を動かすとき,我々は手にも緊張を与えています。そうしないとじゃまだし,いざというときに手が出ないし別なことに使っている場合もあるし…
 しかし,彼らは身体を止めるのに一生懸命。なんとか身体までは止めたけど手があまってしまった。こんなとき,あまった手がパタパタします。
 
D.いつもピョンピョンとんでいる
 つま先歩きと同じです。
 彼らにとってはとぶことより歩くことの方が難しいのです。
 いろいろなところで,とんだり,止ったり,リズムにあわせてとんだりしてみるとまた違ってきます。
 
E.走り回る
 子どもによっては歩くことの方が苦手で走る方が楽だという子もいます。

 
3)すわるとき        
A.でれっと机によりかかる。すぐ椅子からずりおちる。             
 こういう状態では,身体は自分を支えようとするので,脳に余裕がありません。おべんきょうや人の声も耳に入らないことになります。
 このときのポイントは,足がすべらないようにきちんとした靴をはかせる。
 お尻がすべらないように椅子にすべり止めマットを敷く。
 
B.机で何かをするとき,足が動いている。
  前述の対処である程度防げます。
 
C.床に座るときもaやbができない子がいます。
 特にbができないと和式のトイレが使えない。
 そのときは,前方のパイプetc.を持たせてください。
 

4)手では?
 前ならえのかっこうををやらせてみると(手の平は下),手のひらがそりかえったり,上腕ごとあがってしまったり,おばけのかっこうのように手があがらなかったり…というように,なかなかできない子がたくさんいます。
 これでは,キャッチボールでボールを受け取ったり,コップのジュースをこぼれないように持ったりすることはできません。
 

5)指では?
 そりかえるくらいやわらかい指をした子がいます。普通の大人の人にもいますがそれでも物をもてるのはきちんと指を伸ばす筋肉と曲げる筋肉が上手にはたらいて関節にテントを張っているからです。
 小さなものをつまもうとするとき,小さい子はどうしても力がはいってしまいます。そうするとつまめなくなります。
 我々がやっているつまむという動作は,本来指を曲げて使う動作です。 しかし,小さい子は全部の指を一度に使おうとするのでなかなか難しい(グーになるから。)。
 ジャンケンのときチョキが難しいのはわかるけど,パァが上手にできない子もいます。
 また遅れている子は手を見ればわかります。赤ちゃんのように丸っこいふわふわした手だったり,力がはいりすぎているのか白魚のように妙に細い手だったり,親指の付け根がペッタンコだったり(人間は親指が猿とは異なる使い方をするので発達しています。)。
 
 指と指の間には骨間筋という筋肉があります。これらがうまく働くことで我々人間は細かい動きができるのです。
 誰でもが小さいころにやったことのある砂遊びや泥遊びはこの骨間筋に刺激を入れることのできる唯一の遊びです。
 手や足の指の間から砂を落としたり,泥がグニュグニュとでてきたり。
 これはとても大事な遊びなのでたくさんやらせてあげてください。お風呂で石鹸を使ったり,おかあさんが指を組んでもいい刺激にはなりますが…,自分ですることが大事。
 泥遊びや砂遊びは誰が教えたわけでもないのに子どもは大好きです。それはこの遊びの重要性を知っているからです。
 おもちゃや指を口に入れるのも大事なことです。しゃべるのが遅れている子やラッパが吹けない子には,指しゃぶりをしなかったという子がけっこういます。
 

6)顔では?
A.いつもボーッと口を開けているのでよだれが多い子。
B.逆に身体全体を固くして使っているので,顔も固く表情に乏しい子
 自閉症や自閉傾向のある子で表情がないのは親のスキンシップが足りないからだ,という話しがありますが実はそうではありません。やわらかい身体を使うのに精一杯で,とても表情が出るようなゆとりがないだけの話しです。身体が上手に使えるようになると笑顔も出てきます。
 
 身体をたくさん動かしてあそぶこと,いっぱい触ってあげることが大事です。
 これは偏食にもつながったりしているので,偏食のところも読んでください。
 

3.身体の使い方の問題(身体を固くして使ってしまうタイプAni_017.gif (2150 バイト)

 2に記したように,身体が固い子も,元来は低緊張だったと思われます。
 しかし,それではとっても使い勝手が悪い。そのために必要以上に力を入れて生活しています。
 身体を無理に止めて使っているので(その方が動きの中で身体を上手に使うより簡単だから)どんどん固くなっていきます。


<症状>

(1)表情がなく,妙に生真面目な顔

身体の使い方に余裕がないので,顔にも力が入ってしまいます。自閉的な子にありがちな顔ですが,上手に身体が使えるようになると表情も出てきます。

(2)見た目でも全身に力が入っていて固い感じ

 足関節に拘縮(固まってしまうこと)が出てくることもあるし,首のあたりは特に固い。
 寝違えのように首に痛みが出たり,たぶん肩こりなどもおこって頭重感もあり疲れやすい。

(3)精神活動も不活発になり,あまり動かなくなってくる。

 イライラしたり怒りっぽくなる。


 大きくなった自閉症の人は,なんだかとっても動きが悪い。
 分裂症の人も,とっても身体が固い。
 自閉の子が成人になって精神科の病気を併発することがあるのも上のような流れが関係しているのかもしれません。

 前述の2の低緊張を参考にして下さい。

 

4.身体の使い方の問題(行為障害
 

 身体の使い方の問題(行為障害…やり方がわからないことによるもの)として,次があげられます。

A.新しい場面……一つのことができるようになっても,なかなか応用ができないので戸惑ってしまいがち。
B.複雑な工程……一つのことをやるとき,それには一連の流れがあります。私たちは経験を積み重ねることにより,それを頭の中でプログラムするのですが(「運動企画」といいます。),これが難しい子は途中でやめてしまいます。
C.ことばの遅れ……これもB.と同じで,呼吸や舌の位置,口のあけ方など様々なことをプログラムしなければなりません。
D.おもちゃを投げる……例えば「そこへおいて。」というとき,私たちはゆっくりと手を離します。ゆっくりはなす,というのは実はとても難しいことです。赤ちゃんもはじめは手をパッと一度にはなしてしまいます。
E.友達を叩く……ことばが遅れていて,なおかつお友達に興味のある,おせっかいやきの子どもによく見られます。悪気はないのですが,「ねェ,ねェ」とか「ほら,おかあさんが呼んでいるよ」とか。で,お友達を呼ぶとき,力のコントロールができにくいので,叩いているように見えてしまいます。
  

5.言語発達の遅れ
 
 ここに来ている子のほとんどは言語発達の遅れている子です。だから言語の訓練に来たのに「なぜ,遊びの訓練をしなければいけないのだろうか?」「この子は運動神経はいいんです。」と言われるおかあさんがときどきいます。
 
 では,なぜしゃべらないのですか?
 麻痺があるからですか?
 口蓋裂のように口の中に原因があるのですか?
 耳が聞こえないのですか?
 全部「No!」?

 では,なぜ?
 
 ここでは,なぜしゃべれないのかについて考えてみます。
 ことばを話すのは,まず耳で聞く入力と,自分で声に出してみる出力の大きな二つの力があります。
  

(1)入力の問題
 

1)身体排除という機構がうまく働いていない。
 身体排除とは,ふと耳をすますと鳥が鳴いていたり,車の音がしたり,ヒーターのうなる音が聞こえたり,遠くでサイレンが鳴っていたり…身体に集中すると,ソックスをはいているし,パンツもはいているし,トレーナーの襟元のラベルが少しガサガサしていたり…口の中ではさっき食べたチョコレートの味が少し残っていたり…目の前にはそれこそもっといろいろなもの,こんなところに髪の毛が落ちているとか,あ,あそこが破れてるとか,あのおもちゃは何だろう…etc.というようなじゃまな刺激を排除すること,そんなことにいちいち関わっていると集中できないし,先へすすめないから。
 つまり,身体排除のできない子は,今自分に必要な聴覚刺激を選ぶことができません。落ち着きがない,集中できない子も同じです。あれっ,何の音だろう?,あっ,ピーポーピーポーっていっている,首のところでガサガサするのは何だろう?と常に様々な刺激に対して反応しています。
 だから,おかあさんが「○○ちゃ−ん」と呼んでも,それがわからない。わからないと真似をすることもできないということです。耳が悪いわけではなく,むしろよく聞こえすぎているわけです。
  
2)重力に対する不安(重力不安)がある
 私たちは日常地球に重力があることなど感じていません。しかし,ものすごく怖がりの子がいます。四つ這いはできるのに,寝返りをしなかったとか,つかまり立ちは早かったのに,なかなか一人で歩けないとか。
 一般には,赤ちゃんは何度ころんでも待っているおかあさんの手があったり,好きなおもちゃがあったりするから,再び立ちあがって歩くことができます。しかし,重力不安をもっていると,一度ころんでしまうと,またころぶんじゃないかと,「こわい」が先になってなかなか次へ進むことができません。
 それは,ブランコや高い高いでも同じです。
 一般の子どもはブランコや高い高い,ぐるぐるまわりは大好きです。それはそれらの遊具が自分の神経系を成長させることを知っているからです(神経系が成長すると自然にブランコetc.に乗るのをやめます。)。
 重力不安のある子は,精神的に落ち着いていません。世の中は怖いものだらけです。いつもビクビクしています。そういう場合,頭の中は怖いものから逃げるのに精一杯で,とてもことばをしゃべるゆとりはありません。
 これは次の3)にも関係があります。
 
3)バランスが悪い,ころびやすいetc.
 普通,子どもは1才になって歩けるまでは「なん語」ということばしか持っていません(「ウマウマ,ダーダー」etc.)。
 1才になって歩けると,ことばは急速に増えます。
 つまり,独歩(一人歩き)というのはバランスの究極であるわけです。それまでは右と左の脳は,まず自分の身体を守るという働きをします。しかし,独歩できるようになると,脳にゆとりができて(右利きの人は)左脳に言語中枢ができるのです。
 これは次の4)にも関係があります。
 
4)情緒が不安定,パニックが多い
 パニックの原因はいろいろあります。
 1)が原因でうるさすぎてしまうとか,2)で怖くてたまらないとか,温度に敏感で暑すぎるとか,アトピー性皮膚炎があってかゆくてたまらないとか。
 つまり,3)までに述べてきたように,脳にゆとりがなくて言語中枢のできにくい環境にあるのです。
  
5)利き手の問題
 先に述べたように右利きの人は左に言語中枢ができます。しかし,利き手が決まってなかったり,元来左利きなのにまわりが右に直そうとしている場合,脳はどうすればいいか迷ってしまうのです。
  
6)人の顔を見ないで視線をさける
 自閉傾向のある子の中には,なかなか人と目をあわせない子がいます(「同一性保持要求」のところを参考)。
 一般に,子どもはおかあさんのしゃべっている顔を見て,真似をしながらことばを出します。だから,人の顔を見れないとことばは発達しにくいのです。
 

(2)出力の問題

 1)口周囲の筋緊張の問題
A.ボーッとあけていたり,よだれがでたり…
B.表情に乏しく,口も固く閉じている(身体がやわらかいので全身に力を入れて使っているため。)。
これらは,筋緊張が弱いと言うことになります。
私たちが何気なくやっている口の開閉も彼らにとってはとても大変なことなのかもしれません。
 
2)口唇や舌の動かし方がわからない
 口唇や舌も筋肉の運動なので意識しなければできません。手とか足など見える部分は目で確認して行えますが,見えないところは頭の中にある身体の地図(ボディ・イメージ)を使わなければなりません。
 たとえば,私たちは目を閉じていても,じゃんけんの手の形ができます。しかし,ボディ・イメージが未熟な場合,それはとても大変なことです。
 また,どんな風に口をあけて,どこに舌をもっていって,どれくらい息を出して,それを声にする…これらの動作は失敗しながらも何度も繰り返しているうちにわかってくるものですが,失敗を怖れる子どもはなかなか声に出せません。
 
3)何を言えばいいのかわからない。
 たとえば,おかあさんが「○○ちゃん」と呼んだとして,実はそれはその子にはわかっている,でもそれに対して「はい」と返事をすればいいのだ,ということがわからない。
 こんなこともきっとたくさんあるのだと思います。
 オームがえしも,その一つなのかもしれません。
  
4)同じことばかり言っている
 自閉傾向のある子はコミュニケーションとしての会話はできないのに,CMやTVの真似ばかりを言っている場合があります。
 先に述べた,人の顔を見ない子は,人は見ないけどTVは見る(偏食のところを参考)。そして,そのことばを覚えてしゃべる,といったことです。
 自閉の子は繰り返し行われるパターン化されたことが,よく入力されます。同じパターンでくりかえされるTVコマーシャルは彼らにとって覚えやすいものです。
 逆に,毎日繰り返されているようにみえる日常生活は,おかあさんの顔つきも音質も声のトーンも毎日違うので,とても覚えにくいものなのです。
  
5)自分がうまくしゃべれないのを知っている
 先に書いたように,彼らはとてもプライドが高い。そのため失敗してしまうようなことは絶対にしません。一度上手に言えたので「もう一回言って!」と言っても二度と言ってくれないのもそのためです。
 子どもは年齢が小さいのだから,上手にできなくて当たり前なのに,おかあさんと同じようにしゃべれないことはとても恥ずかしいことだと思っているようです。
 
6)偏食がある
 偏食のところを参考。
 
7)息をする,つばを飲み込む,声を出す,この3つを一つの気管が行っています。それがうまくできない
 私たちが話しているときも呼吸をして,つばを飲み込んで話をしている訳ですが,それが上手にできない。また,生まれたときに鼻にチューブなどを入れていた場合は傷がついていることもあるそうです。
 
 以上がことばをしゃべれない理由として考えてみたものです。
 ことばだけにこだわらず,脳にゆとりをもたせたり,失敗してもかまわないんだよ,誰にだって苦手なことはあるんだからという,おおらかな気持ちが大切なような気がします。
 

6.偏食について

 偏食というと,単に味の問題=好き嫌いで判断しているように思えます。でも,「納豆が嫌い」という場合,私たちはいろいろな説明をします。
 たとえば,「あの臭いがダメ」「ネバネバして気色悪い」「べちゃべちゃしている」etc.。臭いは当然,嗅覚,ネバネバは視覚,べちゃべちゃは触覚…というように,ある感覚が嫌だから好きになれないということで,味覚,特に好き嫌いで選んでいるわけではないことになります。
 子どもの場合も同じです。感覚統合に問題がある場合,それはいろいろな形で現れます。「言語発達が遅れている」ことが一番多いので,言語が遅れているだけだと思いがちですが,ではなぜことばが遅れているのかを考えてみてください。
 脳性麻痺のように,身体に麻痺がある子は,そのタイプによって口の周囲や舌etc.に麻痺があります。しかし,感覚統合をしている子のほとんどは麻痺がありません。それなのにことばがでないのはなぜでしょうか。耳が悪いのですか?口蓋裂があるのですか?そうでもないときには,どう考えればいいのでしょうか。知的な発達が悪いから?知的なものも確かに関係がありますが,(聴覚的な理解という意味)それだけでは説明できないことがたくさんあります。
 先に述べた納豆の話しを思い出してください。偏食はありませんか?「○○しか食べない。」とき,その○○をよく考えてみてください。共通点はありませんか。
 
(1)固いものが苦手
・かむ力が弱い
・口の中での触覚異常(あたる感触とか,ごわごわする感じが嫌い)
 偏食:ヨーグルト,プリン,やわらかい麺類etc.を好む。
・固さの調節をしてみたらどうでしょうか。
 
(2)臭いの強いものは苦手
・別のもの(レモンetc.)をかけるなど工夫してみましょう。
 
(3)味の濃いものしか食べない
・味覚が鈍い
 偏食:ラーメン,スナック菓子etc.を好む。生野菜,果物が嫌い。
・少しずつ味を調節しましょう。
 
(4)食べ物以外のものも口にする…
・赤ちゃんは誰でもそうです。口唇や舌の触覚が一番良いので,まずそれで確かめます。これは大切なことです。あせらないでゆっくり接してください。
・何でも口に入れ時期はそれで大きさの概念を練習しているという説もあります(私たちもトゲが刺さったりすると唇で確かめませんか?)                           ・味覚,触覚が鈍い。口の中だけでなく,身体の触覚が鈍かったり,痛みの訴えが少なかったりしませんか?身体がやわらかい子に多いのですが,身体全体での動きや手の運動が上手になると変わります。また感覚刺激をたくさん入れるために,しっかりお風呂で身体をこする(いろいろな物で)。圧迫刺激を与えるために,しっかりぎゅっと抱きしめてあげることも必要です。
・口で遊ぶもの,ラッパetc.を与えて,他の遊びへともってゆく方法もあります。
・口での遊びが足りない子はことばが遅れることが多いようです。

(5)食品のメーカーや色,形など視覚的なものにこだわる
・自閉傾向のある子は,固執,同一性保持欲求という独特の症状があります。
 偏食:同じメーカーのものしか食べない。細長いもの(モヤシ,糸こんにゃく,
麺類)を好む。
・細長いものしか食べないときは,線状の切り方をする。
・親のほうがパターン化するような行動を避ける(帰りにいつも同じ店に行くetc.)
・食事時間を決めて,それが終わったら片付ける(食べないからといって,いつまでも置かない。彼らの方が頑固である。)
・食べものがパターン化してもあまりあせらない(結構変化する。)
 
*同一性保持欲求=簡単に言うとこだわり 
私たちは,物を見るとき,左右の目を使って立体に見ることができます。それができない場合,ある物体は一方向で見たときしかその物体ではないということになります。自閉の子が親の顔がわからないというのも,おかあさんの顔が立体だからです。元来,自閉の子は新しいものを嫌がります。おかあさんの顔は角度によって,日によって,時間によって,服や化粧によつて毎回違うものに見えるのです。丸いものが好きなのは,丸はどこから見ても丸だからです。細長いものが好きなのも,より2次元に近いからです。
 
<ことばの問題との関係>
 ことばが出ないと言うのも,口の中の触覚の問題かもしれないわけです。ことばをしゃべるためには,口唇の位置,舌の位置を記憶しておかなければなりません。触覚に問題があると…。偏食はそれのサインかもしれないのです(ことばだけの問題ではなく,全身にいろいろなサインが出ています。)。また,声をだすためには,息をしたり,つばを飲み込んだりしながらの高等テクニックが必要になります。鼻が悪いと,口はあけていることが多いので,息をすることで精一杯ということになりがちです。
 身体のバランスの悪い子はことばが遅れます。私たちは普通1才で歩きはじめ,それ以後ことばが増えていきます。それは歩くまでの脳は転んだり,落ちたりしないように身体を守るために働いているからです。歩きはじめることにより,はじめて脳にゆとりができます。そして言語中枢が作られるのです。
 また言語中枢は普通左側の脳にできます。これは私たちが右手を利き手として使っているからです。つまり,利き手が決まっていないと言うことは,言語中枢も中途半端だということです。左利きの子を右手に直すと,脳はどうしていいかわからなくなります。これもあせらずによく使う手を利き手にしていきましょう。
 また,情緒を安定させることも大切です。怖がりの子(ゆれるものとか高いところとか,そのような重力に関する遊びを嫌がる,頭の位置が変わるのを嫌がる=重力不安)は,重力の中で自分たちの身体を守るので精一杯です。先に述べたように,脳にゆとりがないと言語中枢はできにくいのです。
 楽しく,おだやかに,ゆっくりがこつです。

 

7.その他の症状

(1)入力された感覚刺激を脳が解釈する際に起こる問題

 前述したように障害児の場合,すべての感覚刺激を脳がをそのまま受け入れるというとそうではなく,ある部分では少なく,ある部分は多くというように,ケースによって様々な事例が見られます。

1)触覚

A. 過少解釈…少なく見積もりをしてしまった場合

 簡単にいうと鈍麻,または感じない。
 身体のやわらかい子はほとんどがそうですが,あまり痛みを感じない。だから触ってもわからないことが多い。
 そういう子はどうするかというと,より大きな刺激を求めます。
 ころんだりすると,もう一度やってみるようなことをするのを見たことはありませんか?
 これが「自傷」という行為に発展することもあります。

<自傷>

 頭をたたいたり,頭を壁や床にぶつけたりする子どもがいます。我々は見ていると痛そうなので,つい「痛いよ。」と言って,やめさせようとします。しかし,彼らは実はあまり痛みを感じてはいないことが多い。
 「痛いよ。」と言ってそれを止めさせようとしていると,その行為を「痛いよ。」という名前だと思いこんでしまう子どももおり,そういう子どもは悲しいことに「痛いよ,痛いよ。」と言いながら頭をぶつけたりし始めます。

 

 では,どうした方がいいのでしょうか?

◎ まず,自傷する原因を見つける。原因はいろいろあります。

a.「僕を見て!」

 みんなが見てくれないとき,もっとかまってほしいとき,自傷行為が効果的であることを彼らは知っています。「ほら,僕はこんなことをしちゃうよ。見ていないと大変だよ。」私たちはそれにひっかかって「あらあら大変!」と駆けつけてしまいます。
 このような場合は見て見ぬふり。
 「なんだ。これじゃ,こっちを振り向いてくれないのか?」と子どもは次の手を考えます。そして,敵もさるもの。もっとひどい自傷に走る子もいます。
 この辺がちょっと難しいわけで,普段から子どもが声を出して呼んだときや呼びに来たときには,できるだけ「おりこうだね。呼びに来てくれたんだね。」と,このやり方の方が正解だということを理解するような方向にもっていくことが大切です。

b.失敗したとき,うまくいかなかったとき

 頭をたたいたり,髪を引っ張ったり,また自分の手を噛んだりします。
この場合は原因がはっきりとしていることが多いので,先に自傷が起こらないような対策をとることも可能です。
 失敗したときも見て見ぬふり。子どもの失敗を見ていたり,「アーア」と声を出して失敗を助長すると,それが引き金となって子どもが自傷を始めることがあります。
 さっと,次の遊びをさがして一緒にやると,案外すぐに機嫌が直ったりします。

c.子どもの要求が通らなかったとき

 これもある程度予測がつきます。叱らないけどゆずらないをモット−に子どもとの駆引きに負けないようにすることが重要です。そして,前もって手を打つことができるよう日ごろから心がけておくことが大切です。どうしても子どもの要求を認めるわけにはいかない場合は,これだったら子どもが納得するというものを用意してあげるようにしておくこともいいかもしれません。

◎ いずれにしても,ことばがうまく言えない子に自傷が多いので,それを理解してあげることが重要です。自傷ではなく他のコミュニケーションの方法を使うように日ごろからもってゆくようにすることが大切になります。

 自傷を予防する上で,触覚をいっぱい使って遊ぶことが意外に有効なことが多い。ときに強めの刺激を入れたり,石鹸や泥遊びをしたり,トントン鳴るようなものをたたいて(タンバリンetc.)遊ぶようにして,自傷の方向を変えて行く。

B. 過大解釈…多く見積もりをしてしまうとき

 簡単に言うと,過敏。
身体全体に力を入れすぎてしまっている子に多い。常にピリピリしているような状態です。

<触覚防衛反応>

 これは私たちが日焼けしたときと同じ状態です。日焼けした肩や背中に人が近づこうものなら大変。それに人が触ろうとすると腹が立って,手が出てしまいます。自分の身体を守るためにやっていることです。
 人込みがきらいだったり(これは聴覚的なものもありますが),列に並べなかったりするのも同じ原理です。当然お友達とは遊べない。
 抱っこがきらいということもあります。

 この場合も強めの感覚刺激が有効です。.お風呂では固めのタオルやタワシを使う。触覚ではなく圧覚(押しつけるような,ぎゅっと抱きしめるような)ものから入る。

 A.の過少解釈もB.の過大解釈も同じことで,身体にたくさん触ってあげる。おふとんの上で一緒にゴロゴロしたり,ちょっと派手に遊んだり,顔にもいっぱい触ってあげる。「上がり目下がり目」を鏡を見ながらやったり,「いないいないバア」をやってみましょう。




2)前庭覚

A.過少解釈

 怖いもの知らず,高いところが大好き,すぐに高いところに登りたがり見ていてハラハラするというような場合です。
 この場合は,へたに手を出すとこっちが危ない。おもしろがって逃げる子や,触覚が過敏で近寄ると逃げる子もいます。高いところに行ったりしていても,結構外傷はしないものです。できるだけ手を出さずに待っていましょう。

B.過大解釈

 怖がり,これが情緒面にも影響するのが「重力不安」です。

 たとえば,
・ 小さいときにも抱っこされることを嫌がったり,高いところを嫌ったり。
・ 床の材質が異なっていたり,ラインが引いてあるとそこで止まったり。
・ 洋式のトイレに座らなかったり。
・ どうしても通れない道(坂道etc.)があって回り道をしたり。
・ 当然,ブランコなどゆれる遊具は怖がって乗らない(抱っこされていると乗ることもある。)。
・ あまり動かない。
・ またはブランコなどをしている子に対して「そんなのおもしろくない。」と言って自分の遊びの方に誘う。
・ ゆれるブランコを見ているだけで怖いので,泣き出す。近寄らない。
・ 極端な場合は,運動発達も遅れます。寝返りをしない,いつまでも四つ這いをしている,なかなか歩かない。 

・がんこだったり,笑わなかったり,いやみなことばを言ったりするので「かわいくない」印象を与えることもある。etc.

 とにかく重力不安のある子は,情緒的に落ち着かないのでよく泣きます。このような子どもたちの場合は,無理にブランコetc.に乗せない。とりあえず,他の子がすることを見たり,おかあさんがやってみたり(楽しそうに)していると,そのうちにやろうとし始めます。そのときに手伝うようにすると「イヤ,しない!」と逃げられるので,さりげなくブランコを乗れそうな位置にしておく。子どもがブランコを触ったり,少しブランコに座ってみたりしても,「上手!」とか言わないで,こっそり見ていること。彼らは敏感なので,こちらが彼らを試していることがバレると逃げてしまいます。

 赤ちゃんのときおとなしく寝ていることが多かった子は,触覚が過敏だったり,重力不安をもっていたりした可能性があります。

 子どもを診察に連れて行ったとき「おかあさん,スキンシップが足りなかったのではないですか?」と言われたことはありませんか?
そして,「そういえば,小さいときにあまり抱っこもしなかったし…」と思い当たることかあったりして…。
 しかし,育児の90%は子どもからの要求です。もし,子どもが抱っこが嫌いだったり,高い高いが嫌いだったりしたら…。
 子どもは「僕のことはほっといて!」とおかあさんを呼びません。
 一般には,「おかあさん,だっこして!おっぱいちょうだい!僕と遊んで!高い高いして!」と赤ちゃんはよく泣くものです。
 ですから,これはスキンシップが足りなかったのではなく,何らかの原因で彼らがスキンシップを拒否していたことになります。おかあさんのせいではありません。
少し大きくなってくると,スキンシップや大きくうごく遊びも求めるようになってきます。そのとき,いっぱい抱っこして,いっぱい遊んであげてください。

 

(2)問題行動など

1)固執傾向(こだわり)

A.ものの位置にこだわって並べる,並べなおす。
B.TVコマーシャルが大好きで,それしかしゃべらない。
C.ボールetc.,丸いものが好き。
D.何でもまわしてしまう。まわるもの(扇風機,換気扇etc.)が好き。
E.長いもの(棒やひも)が好き。

 これらは,前述の同一性保持要求を参考にしてください。
 先に書いたように,彼らは立体視することができないのかもしれません。そのため,我々には普通に見える情況でも,たとえば一つのものを上から見たり,下から見たり,横から見たりすれば,それぞれ形が違うわけで,彼らにとって「同じ物だ!」ということがわかりにくい。
 彼らが鏡とかガラスに写った自分を,横目で見ているのを見たことがありませんか?または鏡に向かっていろいろなポーズをしたり,ものをわざわざ写してみたりするのを見たことがありませんか?
 一生懸命やってるのを見ると,私はへーっと感心してしまいます。不思議だなあと思っているのでしょうね。今持っているものは,鏡に写っているときには裏側が写っているのだから。
 彼らには「一つのものはどこから見ても,その本質が変わるわけではない」ということが理解できないのです。だから,別の位置から見ると違うものになってしまう。彼らは新しいものが増えるとストレスになります。したがって,同じ形にもどすために,元の位置に戻す。また,ボールや丸いもの,まわるものはどこから見ても同じに見えるので,彼らにとっては落ち着くのでしょうし,ものを回すのも自分を落ち着かせようとしているのかもしれません(落ち着くというより,大喜びするのは「やった,僕の好きな形の丸になった!」と思っているのかもしれません。)。
 長いものが好きなのは,より2次元に近いからで,それを動かすと3次元になるけれどすぐ2次元にもどってしまうのが楽しいのでしょうか?いずれにしても,彼らは3次元の立体の世界より2次元の世界が好きだから,おかあさんの顔はわかりにくいけれど,TVの中の顔はわかりやすい。そして,これは他のことにも影響します。

F.視線があわない。→対人関係ができにくい。お友達と遊べない。

G.同じおもちゃばっかりで遊ぶ。
 
 車が好きな子も多いけれど,ほとんどの子がメーカー名や形にこだわっている(TVコマーシャルや本,新聞の影響)。
  または,車というよりもタイヤが好き。ひっくり返してタイヤを触ったり,車を横から見て,目はタイヤの位置において車を動かすとか。結局は,丸くて,回るもので遊んでいることになります。
 他の遊びでも,わりにパターン化されたようなおもちゃが多いような気がします。観察してみてください。

H.新しいものは受け入れにくいので,日常生活の中でも同じようなものを好む。
・ 服とか靴とか。
・ ボタンは全部かけるとか,ドアは全て閉めるとか(開いているといろいろなものが見えるから)。

 ドアの開閉や自動ドアが好きだったり,隙間からものを見るのが好きだったりする子は,より狭い範囲での変化なら,楽しめるかもしれません。

I.本が好き,ビデオが好き。

 自閉傾向のある子は文字が好きです。それはどこにあっても,ほとんど同じ形であり,またよく知っているものだからです。だからよく本を見る。その本も,他の子が見るようなお話しのあるようなストーリ−の部分ではなく,広告のページ(彼らにとってはおなじみ)だったり,英語や数字が書いてある本(電話帳とか)がわかりやすいらしい。
  ビデオが好きな子も最近多いけれど,同じ場面を繰り返し見られるのでいいのかもしれない(わかりやすいアニメーションを好む。)。
 ビデオもTVと同じ2次元であり,しかもそれが繰り返せるというのは,彼らにとってありがたい。

J.字は書けるけど,絵がむずかしい。

 子どもの書字は,なぐり書きから始まります。なぐり書きをしているうちに,それがヘビに見えたり,丸になったりするのだけれど,適当に書いたものに点を2つ付けると顔になったりしますよね。

 たとえば,「へのへのもへじ」を書いても,私たちは「おかあさんの顔だ」と言うし,子どもはそれなりに顔に見えるから,「あ,おかあさんができた。 おこった顔だ。」とか言ったりします。でも,本当はそんなことはあるはずがない。
 つまり,3次元のものを2次元にすること,絵を描くということはウソの世界だということです。我々にとっては楽しいウソの世界は,彼らにとって理解しにくい。

 逆に,文字は元来2次元のものだから,それを書いてもほぼ同じように書けてしまいます。というわけで,彼らは文字が好き。絵よりも文字の方が早く書けるようになることが多い。
 しかし,中には絵の好きな子がいます。何を描いているのかなあと思うと,コマーシャル関係のものとか,車とか,信号とか,ガソリンスタンド。これらもパターン化していることが多い。
 そのため,絵を教えるときも,パターンを利用すると入りやすい。

 こだわりは困るけれど,利用すると扱いやすくもなります。また,ず−っと同じ物にこだわっていることは少ないので(周期的に変化する。),逆に,親がそのことにこだわりすぎるとパニックになったりします。
 腹が立つことも多いけれど,マニアだと考えるとあまり腹も立たない。
社会的に意味のあるこだわりに方向を変えて行くと,結構よいものになったりします(コマーシャルが好きならそれを書く。するとそれにアルファベットが混ざっているので,他の英単語にしてみるとか…)
 こだわることは悪いことではありません。気長につきあった方が良い結果が得られることが多いようです。

 

2)常同行動

 私たちから見ると無目的に見える,よくやっている単純な行動です。

2-1) 問題行動

A.ピョンピョンとんでいる

a.関節の分離した動き(歩くこととか)が苦手で,伸ばした筋肉のみを使って移動している場合がこれにあたります。
b.ピョンピョンとぶのは筋肉と関節に関する刺激(固有感覚刺激)を入れていることになります。普通はそんな刺激では遊ばないけど,物を操作(おもちゃであそぶetc.)ができない場合は,ピョンピョンを自己刺激として使ってそれで遊んでいるとも言えます。

B.手や指を振っている,物(主に長いもの,棒とかタオルとか)を持って振っている

この原因として,A.のaと同じ理由が考えられます。自己刺激としての遊びの一つではなかと思います。

C.手をパチパチ叩く
 固有感覚や感触での自己刺激ということも考えられますが,よりひひひく音を聞いて遊んでいるような気もします。

D.手や指を目の前に持っていってヒラヒラさせて,その隙間から見ている
E.フェンスのようなものの前を行ったり来たりしている
F.自動ドアの前を行ったり来たり,またはドアを開けたり閉めたりしている
G.窓ガラスやショーウインドウの前を行ったり来たり,そのとき横目で自分の映る姿を見ている

a.D.からG.は同じような行動だと思います。
b.前述したように立体視ができないので,2次元の世界,特にそのスペースを狭くすることで物が変化していくのを楽しんでいます。
c.これは視覚による自己刺激遊びと考えることができます。普通は小さいときに「いないいないばあ」をやることで,物が現れたり消えたりすることを学んでしまうものなんですが・・・。

H.いつも身体をゆすっている

<前庭覚刺激(重力に関する)による自己刺激>
いずれにしても,ひまなときにやっていることが多いでしょう。
私たちにとっては,くだらないと思えてしまいますが,我々でもひまなときは貧乏ゆすりをしたり,つめをかんだりの自己刺激が必要なことがあります。イライラしているときに起こりやすいですよね。
と言うことは,彼らもイライラしているのかもしれないし,それによって落ちつくのかもしれない。ですから,無理にやめさせることはないように思います。

I.物をグルグルまわす
 固執傾向のところを参考。

J.自分の首をまわす
K.立ってまたは座ったままでぐるぐるまわる
 これも前庭感覚による自己刺激。まだまだそういう刺激が足りない場合(例えば,欠いて 回転するものに乗ったあと)に多い気がします。


2-2) 対応

 ではどうするのか?

 もっとおもしろいことを用意してあげる。
 彼らの行動を分析して,それに近いものを与える(ただ振るだけじゃなく,振り方によって音が変わるとか。)。
 とにかく,いつもやっていることの中で「アレッ?変だぞ!」と,違うものに気づかせるようなチャンスを作ってあげる。
 上に似ていますが,彼らの遊びを一緒にやる(けっこう面白い。)。
 そして,リズミカルにそれに参加する(ドアを開けると,そこにいて「バァ」と言うとか。)。
 「いないいないばぁ」を一緒にやる。
 彼らはリズミカルにやっている場合が多いので,音楽的要素を取り入れる。
 彼らの動きに合わせて楽器を使い,少しずつ変化させる。

 


3)だらしない


3-1) 問題行動

A.歩き方がだらだらしている
 前述してきたように,彼らは身体がやわらかいので,きちんと身体を使えません。

B.身だしなみがきちんとできない
a.前にも書いたように,私たちは手足が今どういうかっこうをしているか,またシャツが曲がっていたりするようなことが,目で見なくてもわかります。それは脳の中に自分の身体の地図(ボディイメージと言います。)があるからです。そして,その地図は主に筋肉,関節に関する感覚(固有感覚)や,触覚で作られてゆきます。
 地図のできていない子は,それがわかりにくい。これに対して私たちは,「ちゃんと見て!」と指導しますが,見るためには首の角度を変えなければならず,それによってバランスの崩れてしまう子は物理的にも見ようとしても見ることができません。そこで,鏡を見ながら一緒に並んでやるとか,座ってやるとかの工夫が必要になります。

b.子どもによっては同じものを着たがる子がいます。
 そうすると,すぐにその服はボロボロになってしまいがちです。
 また逆に,ちょっとぬれたりすると,すぐに脱いでしまう子,そで口を折り返してもすぐに元に戻してしまう子もいますが,これはこだわりの一つで,そのうちにこだわらなくなってしまうことも多いです。

c.帽子をかぶらない,靴をはかない,ソックスがきらいというのは触覚に関するこだわりの一つです。帽子にしても,靴も,ソックスもなくても何とかなるものですが,それをそのままにしておくと,保育園や学校に行くようになってから困るので早めにきちんと毎日根気よくはかせてください。特に「靴」は大切です。

C. 散髪や歯医者に行けない
  触覚が過敏であったり対人関係が難しかったり,じっと座っていることができなかったりするような子には,とても難しい?ことのようです。
 何より彼らは新しいところがきらいです。
 ですから,近所のやさしい床屋さんや歯医者さんに相談して,髪を整えるだけとか歯磨き指導だけでもいいから,毎週一回とかの頻度で通ってください(慣れたら少なくすればよい。)。
 嫌がるから,パニックになるからと避けていてはいつまでたっても行けません。

D. お風呂やプールが嫌い
 お風呂は嫌でも日課として入ること,たとえ洗わなくてもいいからお水を使って子どもと一緒に遊びましょう。お水が楽しい遊びであることを教えることです。水遊びの道具はいろいろ準備してあげてください。
 水遊びは好きだがプールは怖くてという子どもの場合,水中メガネをつけてやると,顔(目)がぬれるという恐怖が消えて,プールが好きになって潜ったりできるようにもなることもあります。
 あせらないで,ゆっくり遊んでください。おかあさんが一緒に楽しむことがこつです。

 

4)お友達と遊べない

4-1) お友達の意見

A.「遊んであげようと思って近づくと逃げるよ。」

 触覚が敏感な子は,人と接することを好みません。
私たちが日焼けをしたときと同じで,人がそばに来ると,何かされるのではないかと,とても不安になるのでしょう。

B.「だって,ときどき叩くよ。」
 触覚が過敏でそばに来ると何かされるのではないかと怖がっている場合は,思わず手が出てしまうようです。
 力のコントロールができずに,肩とかトントン叩いて呼んでいるつもりが,思わずパチンパチンと叩くようなかっこうになってしまうこともあるようです。
 お友達は手伝ってあげようと思って手を出したけど,「僕は一人でやりたいんだ!」とプライドが邪魔をする場合もあります。

C.「しゃべらないんだもん。」
 子どもにとって,しゃべらないのはとても不思議です。しゃべらないのではなく,しゃべれないのだということを説明してあげた方がうまくゆきます。「独り言」を言ったり,「奇声」をあげるのも同じ理由で,お友達にとっては奇異な行動です。

D.「順番を守れないよ。」
 順番を守って,その場でじってしていることが苦手です。彼らは身体がやわらかいので,身体をじっとさせておくために,テントのように筋肉を張っておくことが難しいのです。そのため,他のところへ行ってしまうか,列に割り込んでしまいます。
 触覚が過敏だとお友達のそばに行けません。
 順番にやるということの意味を理解していない場合も多いようです。

E.「おもちゃをすぐ取ってしまうし,壊してしまうんだよ。」
 しゃべれないことが多いので,その場合は「貸して。」と言えません。
 自分の興味の対象(こだわりのあるもの)だけに目が向いてしまう場合は,他人のものも自分のものになってしまいます。
 壊すつもりはないけど,力のコントロールが難しいので,つい力が入りすぎてしまうこともあるでしょう。

F.「ゲームとかやっていても,すぐメチャメチャにするんだよ。」
 まず,ルールの理解ができていないことが多いように思います。
 プライドが高いので負けると嫌であったり,負けそうになると…
 細かい動作が難しいので,それを指摘されると嫌になります。
 また,ある程度わかってやっているのに,横からゴチャゴチャ言われると嫌になります。何でも1番にやらなきゃいけないというこだわりもあります。
 順番が守れないということもあります。
 このような理由で「こんな遊びおもしろくない!」とメチャクチャにしてしまうのではないでしょうか。

G.「一緒に遊んでいてもつまらないんだ。」
 上述したようなことがあると,お友達としてはどうしても喜びを共有できないので去ってしまいがちです。

4-2) 本人の意見

A.「一緒に遊ぼうと思って近づくと去って行くよ。」
 お友達が言ったような原因があり,それが積み重なっている場合,友達は去ってしまいます。
 何となく雰囲気が違うとお友達の方が感じている場合もあるでしょう(子どもはシビアな見方をします。)。

B.「子どもと遊ぶより大人と遊んだ方が楽しい。」
 大人はその子のレベルに合わせるので,当然,大人や年長の子どもとしか遊べないような情況が生じてきます。

C.「他の子と遊ぶより一人で遊んだ方がいい。」
 その子の興味の幅が狭いとき(こだわりetc.があって)一人で遊んでしまう。
 他の子がいると邪魔をされてしまうから一人で遊んでしまう。
 他の子が本人の嫌いなもの,苦手なもので遊んでいるから(重力不安や触覚が過敏だと揺れる遊びや砂遊びetc.には参加しない…でもやりたいとは思っている。)一人で遊んでしまう。
 対人関係が難しくて一人で遊んでしまう。
 一人でじっくり遊びたくて一人で遊んでしまう。
 他の子の前で失敗するところや,できないところを見せたくなくて一人で遊んでしまう。D.「楽しそうに見えるけど,何やってるかわからないよ。」
 子どもの遊びもいろいろなルールがあり,それが理解できないと仲間には入れない。でも楽しそうなので,参加したい気持ちはある。


4-3) 対応

 では,どうしたらよいのでしょう。

 無理に一緒に遊ばせようとしなくても,その場には参加させる。
 子どもと一緒に思いきり楽しく遊ぶ。そうすると,他の子は「何か楽しそうだな?」と思ってやってくる。
◎ 逆に,他の子と一緒におかあさんが楽しく遊ぶ。本人に遊びたいという欲求はあるので,時間はかかるがやって来る。
 他の子も楽しめるような遊びの機会を,おかあさんが用意してあげる(一緒にケーキを作る。一緒に泥んこになって遊ぶetc.)
 他の子をお家に呼んで,他の子が遊ぶところを見せてあげる。
 子どもは子どもなりのルールを決めるので,ある程度子どもにまかせてもよいでしょう。
 勝ち負けがはっきりしているようなゲームは避ける。
 単純なもの,いろんな遊び方ができるようなおもちゃを用意する。
 とにかくみんなで楽しみを共有できるようにやってみましょう。etc.

5)パニック

5-1) パニック

 不安が強くなって大騒ぎしてしまう状態です。パニックには次のような状態があります。子どもによって起こし方は様々です。

A.怒る。
B.ひっくり返って泣きわめく。
C.その場から逃げ出す。
D.自傷(自分の手にかみつく,頭を叩くetc.)
E.他害(他人にかみつく,ひっかく,髪を引っ張る,叩く,けるetc.)
F.器物破損(物にあたる,おもちゃを壊す,投げる,壁をける,壁を頭突きでこわす,ガラスをわるetc.)


5-2)パニックの原因

A. 自分の主張がとおらない
a. ことばがうまく通じないので,相手がわかってくれない。
b. こだわりを邪魔されたときや,いつものバターンですまなかったとき。
c. 相手のやろうとしていることが自分とは違う場合。
d. 急に予定が変更されたとき。

B. 体調が悪い
a. アトピ−性皮膚炎があると,かゆいし,イライラする。
b. 気温が高いと,アトピーの子はかゆみやイライラが増す。
c. パニックを起こして泣いたりしているうちに,汗をかいてもっとイライラする。
d. 中耳炎etc.で耳が痛かったり,気持ちが悪かったり,音が変だったりする。

C. 気温,湿度が高い
a.気温,湿度が高いとイライラするのは私たちでも一緒です。

D. 服装に原因
a. 服が厚いので体温が高くなる。
b. 服がチクチクする。

E. 触覚に原因
a. 汗をかいて服がぬれた。
b. きらいな感触のものがついたetc.

F. 感覚刺激がたくさんありすぎる
a. 人込みの中。
b. 音がうるさいところ。
c. 自分とって嫌な音。

G. 重力不安
日常生活の中でも常にビクビクしていることが多くあります。
a. 道へのこだわり(坂道,でこぼこ道etc.がダメ)。
b. 揺れる遊具。
c. ラインが引いてあるところ。
d. 敷石のあるところ。
e. 急に動かされたとき。
f. 床の材質が違うとき。
g. 高いところetc.

H.こだわっているもの,大好きなものが見つからない

I.プライドを傷つけられた
a. 他人の前で失敗した(我々には大したこでとはなくても)。
b. その失敗について何か言われた,笑われたとき(バカにして笑ったわけじゃなくても)。
c. できると自信をもってやったけど失敗したとき。
d. 自分のことを何か言われたとき。


5-3) 対策

どうしたらいいのか?

 原因を見つける
 原因によっては,それに対応できることもある。

 こだわりのある子どもの場合
a.パニックになるときは予測がつくので,おかあさんが早めに手を打っておく。子どもとは駆引きのようなものなので,上手に立ちまわる。こだわるだろうなと思うようなものは初めから避ける。

こだわり自体はそんなに悪いことではないと思っています。ただし,身体に影響するようなこと(食べ物に関すること)で,たとえば甘いお菓子やジュースばっかり飲むのには反対です。自閉傾向のある子の中で,就学してから急に太ってしまう子がいます。太ってしまうと動きは緩慢に,そして何にもしない子になってしまいます。もちろん健康にもよくない。
 また,どこかに行ったら,パニックの解決方法として必ず何かを買うというおかあさんもおられると思いますが,パターンにはまりやすいので,この方法はお勧めできません。

b.急な予定変更に対して起こすパニックに対しては,スケジュールカードの提示等により視覚的に変更を理解させることにが効果的です。特に事前に予定(の変更)がわかっている場合は,あらかじめ本人にスケジュールを視覚的に示しておく。
c.こだわりは一定期間続くけど,そのうち変わることも多いので気長に接する。
d.こだわりがあっても,常に良い方向にかえてあげるように日頃から心がける。

人やものに対して危害をおよぼすとき
a. 視線を合わせて叱る(キンキン高い声ではなくて低い声で)。
b.他害や器物損傷の危険があるときは,まずおかあさんが子どもを諭してとめること。そして,お友達とかはおかあさんがしっかりかばって,その場から去ってもらう。
c.おかあさんに手を出したときは,もし我慢できるのであれば知らん顔をしている。そうすると,「何だ,これじゃ意味がない。」とやめてしまうことも多い。本当はこれが一番いいように思います。

 放っとく
a.そばでギャアギャア言われるともっとひどくなる場合が多いので,部屋で一人にしておく。
b.音の出るものを消す(換気扇の音も邪魔なことがある。)。
c.温度を下げる(扇風機,クーラーをつける。窓を開けて風を入れるetc.)
d.部屋を暗くする。

 ギューッと抱きしめてじっとしている
 アトピーetc.で熱くてバニックになっている子には向かない。

知らん顔をしておく,気づかないふりをする。
 特に本人が自分の失敗を気にして起こしたパニックは,気づかないふりをしていた方がよい。

 

6)何でも口へもっていく(偏食を参照)

 口は身体の中でも一番敏感なところです。

  小さい子が何でも口へ入れる時期があるのは,感覚刺激を取り入れる練習を一番敏感な口の中でやっているのかもしれないし,物の大きさを口で測っているという説もあります。口を使って遊ぶというのは重要な遊びなのです。

また,「かむ」こともとっても大事で,ガムが集中力を上げる効果があるのと同じで,ボーッとしている頭をはっきりさせようとしているのかもしれません。

 いずれにしても口を使う遊びは大事なので,「汚い」とやめさせないで,ラッパやシャボン玉に変化させていくうちに少なくなるような気がします。

 ホースを短く切って一方をくわえさせ,もう一方を耳にもっていくと,初めはガリガリかじっていますが,その音が耳に伝わることで「アレ!」と自分が出している音に気がつきます。それから自然に「アー」と声を出して,それが耳に伝わったりすることで,ラッパが吹けるようになり,最終的には発声にもつながります。

 

7)何でもにおいをかぐ

 動物は,においでそれが自分にとって無害なのか,毒なのかを知るそうです。

 赤ちゃんは,おっぱいのにおいで,自分のおかあさんを見分けることができるそうです。

 また,嗅覚は記憶と深く結びついています。ふっとただよってくるにおいで,「ラーメンだ」とラーメン屋さんが浮かんだりします。おなかがすいていることに気づいたりしますよね。

 何でもにおいをかぐ子どもたちは,私の経験では今まであまりにおいに対して反応しなかった子どもが突然急に「におい」というものに気づいているのではないかと思います。確かに,いろいろなにおいをかいで回ったり,足とか靴下とかおむつとか,私たちにとっては嫌なにおいにこだわっていることが多いのですが,ある程度かいでいると,またこれも自然とやめてしまいます。

 

8)座っていると妙な身体の動き方をする

A.身体を前後,または左右にゆする子がいます。

 これは,自分で前庭刺激(重力に関する刺激)を入れて,遊んでいると考えられます。私たちでも赤ちゃんの時,おかあさんに抱っこされてゆっくりゆらしてもらうと気持ちよくなったはずです。
 ブランコetc.でも同様の効果があるので利用してみてください。

B.椅子にこしかけると,貧乏ゆすりのように常に足が動いている子がいます。

 やわらかい身体を固くして使っているという話をしてきましたが,このような子は椅子にこしかけた状態で足をつま先立ちにすると足がふるえます。これは筋肉の緊張が高まった状態なので,かかとをおろすとすぐ止まります。
 また,椅子にこしかけること自体がすべりやすくて足元も自然に流れていくような状態だと常に足の位置を変えて身体を止めようとします。
 椅子にすべり止めマットを敷いたり,すべらないような靴をはかせたりしてください。 

 

9)おもちゃをちらかすだけであそべない

 けんちゃんはいつもおもちゃをちらかします。輪投げをひっくり返したかと思うと,積み木の箱をひっぱり出して,パズルをひっくりかえし…,私とおかあさんはいつもお片付け。

 ある日ふと,「今日はちょっとけんちゃんを見ていてみよう」と思いました。いつものように,けんちゃんは輪投げをひっくりかえし,積み木をバラバラにして,パズルを出して…。ところが,次にけんちゃんがしたことは,輪投げに戻ったのです。輪投げのところへ行って,ちょっと1つの輪に触ってみる。そして,積み木の1つを積もうとしてみる。でも,うまく積めないから投げる。パズルの1ピースを手にとって「何じゃこりゃ。」とひっくりかえしてみる…またまた輪投げに行って,今度は輪を両手で引っ張ってみる。でも,何の変化もないから積み木に行ってみる。積み木を2つ持ってカチカチ音を出してみる。「ヘエ,音がするんだ。」としばらくカチカチいわせて飽きがきたのか,パズルに行って今度はピースをかんでみる…。

 「何だ。そういうことだったのか。」
 私は初めて気づきました。子どもが1つのおもちゃで,10の遊びをするとします。しかし,けんちゃんは,いくつかのおもちゃを1,1,1  2,2,2  3,3,3…というようにして遊んでいたのです。私が片付けたことによって,けんちゃんは1,1,1のあと,「あれ,またなくなっている。」と(0,0,0に戻ったのですから),また1,1,1,そして0,0,0。またけんちゃんが1,1,1…。これでは遊びが発展するわけがありません。何と犯人は私とお母さんだったのです。

 その日,私はおかあさんに言いました。
 「おかあさん。片付けるのはやめよう! もしも,片付けなきゃならない情況になったら「危ないから片付けるからね。」とか「ご飯だから片付けようね。」って言えばいいじゃない。その時,片付けてもいいのなら,「いいよ。」って顔をするかもしれないし,もし,「だめ」だったら「だめ!」って,やってくるよ。きっと。」

 その日から,けんちゃんの遊びはどんどん発展していきました。
 残念ながら,私に大事なことを教えてくれたけんちゃんは,突然逝ってしまいました。しかし,私はいつも,けんちゃんのことをいろんなおかあさんに伝えています。あの日のことわ私は忘れないし,今でもけんちゃんは私の中で元気にちらかしながら遊んでいます。

 

10)なかなか文字に興味をもってくれない

 ウルトラマンのお人形を見て,私たちは「ウルトラマンだ」と言います。でも,子どもは「ちがうよ。これはウルトラマンダイナだよ。」
 これと同じようなものではないでしょうか。
 子どもにとって,文字が文字であることはわかっていても,その一つひとつが違うものだということがわからない。私たちも,それがウルトラマンシリーズのどれかだとわかっていても,どれがセブンで,どれがダイナで,ティガでとかはわからないし,どうでもいい。子どもたちは「ちがうよ。ほら,セブンはおなかのところがこうなっていて…」と説明してくれるけど,その時はなるほどと私は思うけど,しばらくたつと忘れてしまう。
 きっとそうなのです。興味がわかなければ,必要性がなければ,頭の中に入ってこないものなのです。
 興味が出たり,必要性があればおぼえるものなので,それが必要な環境を作ってあげることは大切です。
 お買物に行くとか,自分や兄弟のものは同じものにして名前を書いておくとか…。
また,なにも平仮名でなくても,カタカナの方がおぼえやすい子もいます。たとえば,ウルトラマンetc.のシリーズが好きな子などはカタカナがおぼえやすいのでは…

 

11)文字や絵をかこうとしない(鉛筆やクレヨンが持てない)

 小さな子どもは,関節を一つひとつ分離して動かすことができません。
 そのため,ペンを持たせても全部の指でにぎってしまい,手を机から浮かして肩の方から動かすようにして描きます。そして,その時には上半身全体に力が入っているから身体も机に近づくように倒れているわけです。
 身体がうまく使えない子も,小さい子と同様に上半身全体を使って描こうとしているのですが,私たちはどうしてもペンの持ち方にこだわったり,利き手にこだわったりして,ごちゃごちゃ横から口を出してしまいがちです。または椅子にちゃんと座ることとか,紙の中に書けとか。
 でも,小さい子は椅子にちゃんとすわって描くのではなく,ねころがって描いてみたり,床に座ってみたり。描くところもいろいろ。たとえば広告だったり,壁だったり,地面だったりするわけです。
 と言うことは,椅子に座ったりすることをやめてみたり,描く場所も変えてみたりすると,いいかもしれません。

 当園では,水性クレヨンを使って床や壁に描きます。あとで雑巾を使うときれいになるので,それもおもしろいし(自閉の子は失敗するとすぐ消せるようなものの方がよかったりもする),雑巾,つまり,平らな物を全部の指をひろげて使う練習にもなります。
 寝転がってもいいし,鏡に描くのもおもしろい。特に自分の顔のところに描いたりしてもいいし,自分の手をおいてなぞってみてもいい。
 また,ミラクルフォームという泡状の石けん(フォームのようなもの)もよく使います。鏡にぬりたくって,指でその上に描いてもいいし,ペンキ用のハケにつけてペンキ屋さんごっこをしてもいい(この時は,水を少し足してぬりやすくする。)。

 だから,いろいろなやり方を試してみましょう。何かを描くということが楽しいものだということをわかるのが一番です。
 お風呂で石けんだらけになって身体に描いたり,くっつけたり,窓に息を吹きかけて指で文字や絵を描くのもすぐに消えるし,楽しいようです。
 前述してきたように関節の分離した動きが苦手なのだから,どこかを支えてあげるのもいい。

 私たちが文字を書くとき,やってみるとよくわかるのですが,肩や肘,手関節は固定していて動きません。ペンが落ちないようにしっかり指先で持って,それでも指先を細かく動かして文字を書いています。これって,すごく難しいことです。私たちが何気なくやっている動作も本当はとても大変なことなのです。また,年齢が大きくなってからやろうとするので,ペンの持ち方などに,おかあさんの方がこだわりがちです。まずペンを持ちやすいものにかえたり,輪ゴムですべらないようにしたり,ほんの少し手関節を支えてやったりすることで文字が書けることがあります。

 FC(Facilitated communication)とか,ペンペン文字とかもこのようなことが元になっていると私は考えています。これについては別の機会に書いてゆきます。

 

8.チェックしておきたいこと
 
 感覚統合に障害のある子は,一般的には感覚器官には問題がないと第3章で書きましたが,一応チェックしておいた方がいいことを並べておきます(以下の病気があると他にも影響を及ぼすことが多くなります。)。

(1) 目

 視力や斜視。
 当然ですが,見え方に問題があると読み書きが遅れたりすることがあります。 
 眼鏡などで矯正するとびっくりするほど落ち着いて集中できることもあります。

(2)耳

 聴力や中耳炎(滲出性中耳炎が多い。)。
 耳からの情報をうまくとらえることができないと,なかなか指示も入らないし落ち着きません。
 これも補聴器を使用することで大きく変わることがあります。ただし,最初は急にはっきりと聞こえるようになるためか落ち着きません。
 中耳炎の子には,落ち着きのない子が多いことが知られています。特に滲出性中耳炎は,本来の中耳炎の症状が出にくいのでわかりにくい。

(3)鼻

 鼻が悪いと息がしにくくなります。そのため,口をあけて息をするので言葉がはっきりしなかったり,口をあけていることが多くなります。

(4)口

 偏食(偏食のところを参考。)。

(5)皮膚

 アトピー性皮膚炎。
 落ち着かない子が多いようです。

(6)脳波

 小さい時に脳波をとって「大丈夫」と言われたからといって,放っておく人も多いようですが,自閉症の子は就学前後と思春期の頃の2回に突然脳波異常があらわれることがあります。それは自閉症児の1/3〜1/2にあらわれるのでけっこうな高率です。脳波異常があるとてんかん発作が出現しやすいので気をつけてください。発作は気がつかないくらいの小さなものから意識を失ったりけいれんを起こしたりするものまで症状は様々です。早目に投薬しないと生命にかかわることもあります。
 自閉症や自閉傾向があると言われたお子さんは,「異常がありません。」と言われても,年に1回脳波の検査を行ってください。もちろん最初は嫌がる子が多く,睡眠薬を使ってもなかなか眠ってくれません。しかし,毎年繰り返すことで慣れてきますし,ここではおとなしく眠った方がいいとわかることも多いようです。

(7)汗

 ものすごく汗をかく。
 重力不安のある子は,情緒的に不安定なのでよく汗をかきます。
 特に,手のひらや足の裏がびっしょりぬれている子がいます。
 それでも,身体を動かすことが上手になると,だんだんとおさまってくることが多いようです。
 また,多動の子はどうしても汗をかきやすいので,いつも着替えを用意してあげてください。

 

5.感覚統合療法の実際


1.感覚統合の発達

 次は,エアーズの発達表です。

0歳 1歳 3歳 5,6歳  

聴覚(聞くこと)

…… …… 話す能力,言語 集中力,組織力, 自尊心, 自己判断,自己抑制,自信, 教科学習能力, 抽象的思考, 推理力, 左右の特殊化
前庭(重力と運動) 目の動き,姿勢,バランス,筋緊張,重力への安心感 身体知覚,身体の両側の協調性,運動企画,活動レベル, 注意の持続性, 情緒の安定 目と手の協調,視知覚,目的的活動
固有受容器(節と関節) 扱う,食べる
触覚(触れる) 母と子のきずな,心地よい触覚
視覚(見ること) …… ……


 この表を見てもわかるように,一つひとつの感覚(表の左端)は年齢を追うごとにお互いにつながりあっています。
 そして,一番右端が「脳の最終産物」と呼ばれるものです。「脳の最終産物」は6歳以降にできるということになり,この次期に学校に行って,教科学習(国語や算数etc.)を始めるというのは脳の発達にとって当たり前のことなのです。と言うことは,それ以前にはいっぱい身体を動かしたり,いろいろなものに触ったりすることが子どもにとっては必要だと言うことにもなります。つまり,国語や算数ができなかったりというような子ども達は,その前の段階がうまくいっていないのではないかとエアーズは考えたわけです。

 


2.では,感覚統合療法とは何なのか?


 エアーズが唱えている理論の中で,わかりやすい2つの重要な点があります。

(1)『脳の上位中枢はそれ以下の下位の部分に依存する』

 脳の上位中枢を表の右端だと考えてください。そしてそれをピラミッドのようにつまれたブロックの一番上だと考えると,ピラミッドをきちんと支えるためにはブロックがきちんとつまれていなければなりません。下のブロックがぐらぐらしているといつ倒れるかわからないのです。

 つまり,感覚統合療法では,たとえば文字が書けないからといって文字の練習をするのではなく(それは教育として学校でやればいいのだから,学校の先生にお任せしています。),それができない原因をさぐって,そこを治療するわけです。

(2)『子どもは自分の神経系が成長することをよろこぶようにできている』

 誰も教えたりしないのに,子どもはいつのまにかどんぐり返しをやったり,砂遊びをしたり,ブランコに乗ったり,一人でぐるぐる回ったりします。そして,それは世界中どこの子もやっているし,大体同じ年齢でやっています。それらの遊びが自分を成長させていることを,子どもが知っているからなのだそうです。
 逆にかえせば,子どもがよろこばないことはまだ準備ができていないからだということになります。


 感覚統合療法は,この2つの理論を基に,子どもに必要な遊具と場所を提供していくものだと私は考えています。そこで,私は何をするのか?私はそのお手伝いです。

 感覚統合療法では,決まったプログラムは普通は作りません。なぜなら子どもがその日やりたいことを重視したいからです。もちろん目標はあります。しかし,それを無理にやらせるようなことはめったにありません。そのため,ただ遊んでいるだけではないか,保育園でもできるし,公園でもできるではないか,と言われることもあります。

 しかし,治療者と子どもの1対1(慣れると増えてくる)でやることに意味があるのです。この冊子で繰り返し書いてきたように,彼らはプライドが高かったり,怖がったりと集団の中では自由に遊べない子ども達がほとんどです。子ども達がもっている内的な欲求*を大切にして,彼らが自ら動いてゆくように援助していきます。人にやってもらうのではなく,子ども自身がやろうとする気持ちを引き出してゆくのが,感覚統合療法の第一歩です。


内的な欲求*
前述してように,子どもは自分の神経系を成長させることが何であるかを本能的に知っています。たとえ現在はそれが怖いものであっても「やりたい」という気持ちは必ずあります。それが「内的欲求」です。

 

(つづく)

 

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