Last update 1998/07/31
(1)入力された感覚刺激を脳が解釈する際に起こる問題
1)触覚
2)前庭覚
(1)入力された感覚刺激を脳が解釈する際に起こる問題
前述したように障害児の場合,すべての感覚刺激を脳がをそのまま受け入れるというとそうではなく,ある部分では少なく,ある部分は多くというように,ケースによって様々な事例が見られます。
1)触覚
A. 過少解釈…少なく見積もりをしてしまった場合
簡単にいうと鈍麻,または感じない。
身体のやわらかい子はほとんどがそうですが,あまり痛みを感じない。だから触ってもわからないことが多い。
そういう子はどうするかというと,より大きな刺激を求めます。
ころんだりすると,もう一度やってみるようなことをするのを見たことはありませんか?
これが「自傷」という行為に発展することもあります。
<自傷>
頭をたたいたり,頭を壁や床にぶつけたりする子どもがいます。我々は見ていると痛そうなので,つい「痛いよ。」と言って,やめさせようとします。しかし,彼らは実はあまり痛みを感じてはいないことが多い。
「痛いよ。」と言ってそれを止めさせようとしていると,その行為を「痛いよ。」という名前だと思いこんでしまう子どももおり,そういう子どもは悲しいことに「痛いよ,痛いよ。」と言いながら頭をぶつけたりし始めます。
では,どうした方がいいのでしょうか?
◎ まず,自傷する原因を見つける。原因はいろいろあります。
a.「僕を見て!」
みんなが見てくれないとき,もっとかまってほしいとき,自傷行為が効果的であることを彼らは知っています。「ほら,僕はこんなことをしちゃうよ。見ていないと大変だよ。」私たちはそれにひっかかって「あらあら大変!」と駆けつけてしまいます。
このような場合は見て見ぬふり。
「なんだ。これじゃ,こっちを振り向いてくれないのか?」と子どもは次の手を考えます。そして,敵もさるもの。もっとひどい自傷に走る子もいます。
この辺がちょっと難しいわけで,普段から子どもが声を出して呼んだときや呼びに来たときには,できるだけ「おりこうだね。呼びに来てくれたんだね。」と,このやり方の方が正解だということを理解するような方向にもっていくことが大切です。
b.失敗したとき,うまくいかなかったとき
頭をたたいたり,髪を引っ張ったり,また自分の手を噛んだりします。
この場合は原因がはっきりとしていることが多いので,先に自傷が起こらないような対策をとることも可能です。
失敗したときも見て見ぬふり。子どもの失敗を見ていたり,「アーア」と声を出して失敗を助長すると,それが引き金となって子どもが自傷を始めることがあります。
さっと,次の遊びをさがして一緒にやると,案外すぐに機嫌が直ったりします。
c.子どもの要求が通らなかったとき
これもある程度予測がつきます。叱らないけどゆずらないをモット−に子どもとの駆引きに負けないようにすることが重要です。そして,前もって手を打つことができるよう日ごろから心がけておくことが大切です。どうしても子どもの要求を認めるわけにはいかない場合は,これだったら子どもが納得するというものを用意してあげるようにしておくこともいいかもしれません。
◎ いずれにしても,ことばがうまく言えない子に自傷が多いので,それを理解してあげることが重要です。自傷ではなく他のコミュニケーションの方法を使うように日ごろからもってゆくようにすることが大切になります。
◎ 自傷を予防する上で,触覚をいっぱい使って遊ぶことが意外に有効なことが多い。ときに強めの刺激を入れたり,石鹸や泥遊びをしたり,トントン鳴るようなものをたたいて(タンバリンetc.)遊ぶようにして,自傷の方向を変えて行く。
B. 過大解釈…多く見積もりをしてしまうとき
簡単に言うと,過敏。
身体全体に力を入れすぎてしまっている子に多い。常にピリピリしているような状態です。
<触覚防衛反応>
これは私たちが日焼けしたときと同じ状態です。日焼けした肩や背中に人が近づこうものなら大変。それに人が触ろうとすると腹が立って,手が出てしまいます。自分の身体を守るためにやっていることです。
人込みがきらいだったり(これは聴覚的なものもありますが),列に並べなかったりするのも同じ原理です。当然お友達とは遊べない。
抱っこがきらいということもあります。
◎ この場合も強めの感覚刺激が有効です。.お風呂では固めのタオルやタワシを使う。触覚ではなく圧覚(押しつけるような,ぎゅっと抱きしめるような)ものから入る。
◎ A.の過少解釈もB.の過大解釈も同じことで,身体にたくさん触ってあげる。おふとんの上で一緒にゴロゴロしたり,ちょっと派手に遊んだり,顔にもいっぱい触ってあげる。「上がり目下がり目」を鏡を見ながらやったり,「いないいないバア」をやってみましょう。
A.過少解釈
怖いもの知らず,高いところが大好き,すぐに高いところに登りたがり見ていてハラハラするというような場合です。
この場合は,へたに手を出すとこっちが危ない。おもしろがって逃げる子や,触覚が過敏で近寄ると逃げる子もいます。高いところに行ったりしていても,結構外傷はしないものです。できるだけ手を出さずに待っていましょう。
B.過大解釈
怖がり,これが情緒面にも影響するのが「重力不安」です。
たとえば,
・
小さいときにも抱っこされることを嫌がったり,高いところを嫌ったり。
・
床の材質が異なっていたり,ラインが引いてあるとそこで止まったり。
・ 洋式のトイレに座らなかったり。
・ どうしても通れない道(坂道etc.)があって回り道をしたり。
・
当然,ブランコなどゆれる遊具は怖がって乗らない(抱っこされていると乗ることもある。)。
・ あまり動かない。
・
またはブランコなどをしている子に対して「そんなのおもしろくない。」と言って自分の遊びの方に誘う。
・
ゆれるブランコを見ているだけで怖いので,泣き出す。近寄らない。
・
極端な場合は,運動発達も遅れます。寝返りをしない,いつまでも四つ這いをしている,なかなか歩かない。
・がんこだったり,笑わなかったり,いやみなことばを言ったりするので「かわいくない」印象を与えることもある。etc.
とにかく重力不安のある子は,情緒的に落ち着かないのでよく泣きます。このような子どもたちの場合は,無理にブランコetc.に乗せない。とりあえず,他の子がすることを見たり,おかあさんがやってみたり(楽しそうに)していると,そのうちにやろうとし始めます。そのときに手伝うようにすると「イヤ,しない!」と逃げられるので,さりげなくブランコを乗れそうな位置にしておく。子どもがブランコを触ったり,少しブランコに座ってみたりしても,「上手!」とか言わないで,こっそり見ていること。彼らは敏感なので,こちらが彼らを試していることがバレると逃げてしまいます。
* 赤ちゃんのときおとなしく寝ていることが多かった子は,触覚が過敏だったり,重力不安をもっていたりした可能性があります。
子どもを診察に連れて行ったとき「おかあさん,スキンシップが足りなかったのではないですか?」と言われたことはありませんか?
そして,「そういえば,小さいときにあまり抱っこもしなかったし…」と思い当たることかあったりして…。
しかし,育児の90%は子どもからの要求です。もし,子どもが抱っこが嫌いだったり,高い高いが嫌いだったりしたら…。
子どもは「僕のことはほっといて!」とおかあさんを呼びません。
一般には,「おかあさん,だっこして!おっぱいちょうだい!僕と遊んで!高い高いして!」と赤ちゃんはよく泣くものです。
ですから,これはスキンシップが足りなかったのではなく,何らかの原因で彼らがスキンシップを拒否していたことになります。おかあさんのせいではありません。
少し大きくなってくると,スキンシップや大きくうごく遊びも求めるようになってきます。そのとき,いっぱい抱っこして,いっぱい遊んであげてください。