Last update 1998/07/31

2.身体の使い方の問題(低緊張によって起こるもの)
(1)低緊張の子どもの特徴
  1)立っているとき
  2)歩くとき
  3)すわるとき
  4)手では?
  5)指では?
  6)顔では?


2.身体の使い方の問題(低緊張によって起こるもの)

 我々の身体の筋肉はある程度の緊張(Tonus)をもっています。簡単に言うと張り?かな。
キャンプでのテントと同じで(人間の場合,伸ばす筋肉と曲げる筋肉),両方から適当な力で張らないとぐらぐらになってしまいます。
 テントの場合は,左右から張っていけばいいわけですが,人間の場合は動かなければならないので,一つ一つの関節に,いろいろなテントがあることになります。
 例えば,首は前後,左右。また座るときも前後でおなかの筋肉(曲げる),背中の筋肉(伸ばす)というふうにいくつもテントを張らねばなりません。
 まっすぐに立っているときでも,全身のいろいろな関節のテントが一度にきちんと張らなければなりません。首も体幹も足も…。 関節ごとにあるわけですから,当然,指にもあります。
 
 ここに来ている子の多くは低緊張です。
 テントの張り具合が弱く,ぐらぐらしている状態と考えてください(脳性麻痺の場合は張りが一定でなかったり,片方のみが強かったりします。)。
 張りが弱いととても不安なので動くのを嫌がったり,逆に妙に力を入れすぎたりして固くなってしまうこともあります。それに疲れやすいのも特徴です。
 
(1)低緊張の子どもの特徴
 他の子ども(兄弟etc.)と比べると,妙に身体がやわらかいと感じたことはありませんか? 
とても関節が柔らかく,不自然なかっこうをしていること(私たちではとてもできないようなかっこう)はありませんか?
   例)おむつをかえるとき,すごく足が開く。足首がぐらぐらしていて靴をはかせにくい。妙なかっこうで寝る。
 
 以上は,おかあさんが日常生活の中で気づいていることもあるかもしれません。
  
 

低緊張の子どものその他の特徴を次にあげます。

1)立っているとき
A.いつも走っているので,立ち止まってまっすぐ立っていられない。
 前述したように,まっすぐ立っているというのは,彼らにとってすごく難しいことです。
 実は走っているのは運動神経がいいからではなく一つ一つの動作を止めることができないからなのです。歩くというのは左右の足,足のそれぞれの関節,またそれについている伸ばす筋肉,曲げる筋肉がそれぞれ交互に働くという,すごくむずかしい運動なのです。
 子どもによっては一才でつかまり立ちをしたと思ったらすぐ走りはじめる子がいます。バランスが悪いので転ばないために走っているのです。
 
B.おなかを突き出したようなかっこうで立つ。
 前述したように張りが弱いので関節をロックして身体の崩れを止めようとします。 体幹がぐらぐらするのを背中の筋肉を強く張ることでカバーしようとしています。膝の崩れを防ぐのに膝をうしろにひいてロックします。
 こんなことを日頃やっていると疲れるよね。            

C.だらだらしたような立ち方
 これも態度が悪いのではなく,できないのです。
 
D.偏平足(いわゆる「べた足」)
 赤ちゃんはつかまり立ちをはじめると,立ちながら膝を曲げたり伸ばしたりして一人で筋肉トレーニングをします。誰が教えたわけでもないのに,おりこうさんですが,これは歩きはじめはO脚なので膝が崩れないように内股の力をつけているわけです。
 
 ところが,低緊張の子は筋トレができない。
 しかたがないので,転ばないために走ってしまったり,彼らなりの工夫をします。膝が崩れるのなら,崩れないために膝を内側に入れればいいと考えるわけです。確かにこうすると膝はまがりにくくなるので崩れません(実際におかあさん,やってみたら!)
 ところが足元を見てみると,内側にはいるので,偏平足のかっこうになるのです。ましてや最近の日本では床はすべりやすい素材でできています。昔はタタミだったからタタミの目によって止ることもあったのです。また乳幼児用の靴底がピタッと床に吸いつくようなものでできていません。
 すべらないように子どもは必死で動こうとするのでスケートのような形になったり,ますます偏平足を作っていったりするのです。
 
<なぜ偏平足がいけないのか?>
 足の指や踵の骨は小さいときにはまだきちんと作られていません。骨を正しい位置に作っていけなくなってしまいます。
 偏平足の人は長距離歩くと疲れます。
 「土踏まず」は足のスプリングのような役目をします。バランスをとったりジャンプの着地のときのクッションになります。偏平足は土踏まずができにくいのです。
 

<靴を購入するときのポイント>
A.靴底が床にピタッとつくこと。

B.できれば土踏まずのところにパッドが入っている。
C.足首のぐらぐらする子には,バスケットシューズのように足首まであるもの。
*ちょっと高いのですが,リーボックのハイトップシューズを薦めます。しかし,リーボックでなくても上の3つの条件を満たしていればそれで結構です。
*子どもが自分ではけない(リーボックはひも靴なので)場合は,マジックテープをつけることもできます(別料金)。
*ひもの部分を紙にむすぶカラフルなゴムにするとかわいくなるし自分ではけることもあります。
 
 いずれにしても,靴を変えるだけでおどろくほど動きがかわります(はじめは歩きにくいかもしれないけど,そのうち慣れる。)。
 日本は靴の文化ではなかったために,子どもの靴に関してかわいいとか売れ筋のキャラクターのついたものにどうしても目が向きがちですが,一生つきあっていく大事な足を作るためにも子どものときの靴にはこだわってゆきたいものです。かわいい靴やキャラクターシューズを子どもがほしがるのは当たり前です。シールを貼ったりゴムひもなどの工夫でかわいい靴にしてあげてください。
 はだしの方がいいといって,はだしを勧める人もいます。それは,足がきちんとつく子にはいいのですが,彼らの足は地面との密着がよくありません。足の裏の感覚が過敏な子もいて,逆効果になることもあります。
 また最近の道路事情からもアスファルトの平坦な道では効果は期待できないと思います(坂とかでこぼこ道とか砂浜は意味があるのだけどね。)。
 また,ダウン症の場合はO脚が多い。これも早めに靴をきちんとはかせると,背中がのびてかっこうよくなります。

<自分で履くことを教えるとき>
 靴の履き口のところにリングやリング状のひもをつけると履きやすくなります。
 
<靴の左右を教えるとき>
 左右の靴があう位置に2つ合わせると一つになる絵を書いておくのもいいでしょう。
 
2)歩くとき
A.スケートのような歩き方
 前述
 
B.つま先歩き
 やってみるとわかるのですが,前述したとおりきちんと歩くということはそれぞれの関節が分離した動きをしなければなりません。
 彼らのつま先歩きは,股関節,膝関節,足関節をすべて伸ばした状態なのです。つまり関節の分離運動ができていないということになります。
 
C.手がパタパタ動く
 身体を動かすとき,我々は手にも緊張を与えています。そうしないとじゃまだし,いざというときに手が出ないし別なことに使っている場合もあるし…
 しかし,彼らは身体を止めるのに一生懸命。なんとか身体までは止めたけど手があまってしまった。こんなとき,あまった手がパタパタします。
 
D.いつもピョンピョンとんでいる
 つま先歩きと同じです。
 彼らにとってはとぶことより歩くことの方が難しいのです。
 いろいろなところで,とんだり,止ったり,リズムにあわせてとんだりしてみるとまた違ってきます。
 
E.走り回る
 子どもによっては歩くことの方が苦手で走る方が楽だという子もいます。

 
3)すわるとき        
Aでれっと机によりかかる。すぐ椅子からずりおちる。             
 こういう状態では,身体は自分を支えようとするので,脳に余裕がありません。おべんきょうや人の声も耳に入らないことになります。
 このときのポイントは,足がすべらないようにきちんとした靴をはかせる。
 お尻がすべらないように椅子にすべり止めマットを敷く。
 
B机で何かをするとき,足が動いている。
  前述の対処である程度防げます。
 
C床に座るときもaやbができない子がいます。
 特にbができないと和式のトイレが使えない。
 そのときは,前方のパイプetc.を持たせてください。
 

4)手では?
 前ならえのかっこうををやらせてみると(手の平は下),手のひらがそりかえったり,上腕ごとあがってしまったり,おばけのかっこうのように手があがらなかったり…というように,なかなかできない子がたくさんいます。
 これでは,キャッチボールでボールを受け取ったり,コップのジュースをこぼれないように持ったりすることはできません。
 

5)指では?
 そりかえるくらいやわらかい指をした子がいます。普通の大人の人にもいますがそれでも物をもてるのはきちんと指を伸ばす筋肉と曲げる筋肉が上手にはたらいて関節にテントを張っているからです。
 小さなものをつまもうとするとき,小さい子はどうしても力がはいってしまいます。そうするとつまめなくなります。
 我々がやっているつまむという動作は,本来指を曲げて使う動作です。 しかし,小さい子は全部の指を一度に使おうとするのでなかなか難しい(グーになるから。)。
 ジャンケンのときチョキが難しいのはわかるけど,パァが上手にできない子もいます。
 また遅れている子は手を見ればわかります。赤ちゃんのように丸っこいふわふわした手だったり,力がはいりすぎているのか白魚のように妙に細い手だったり,親指の付け根がペッタンコだったり(人間は親指が猿とは異なる使い方をするので発達しています。)。
 
 指と指の間には骨間筋という筋肉があります。これらがうまく働くことで我々人間は細かい動きができるのです。
 誰でもが小さいころにやったことのある砂遊びや泥遊びはこの骨間筋に刺激を入れることのできる唯一の遊びです。
 手や足の指の間から砂を落としたり,泥がグニュグニュとでてきたり。
 これはとても大事な遊びなのでたくさんやらせてあげてください。お風呂で石鹸を使ったり,おかあさんが指を組んでもいい刺激にはなりますが…,自分ですることが大事。
 泥遊びや砂遊びは誰が教えたわけでもないのに子どもは大好きです。それはこの遊びの重要性を知っているからです。
 おもちゃや指を口に入れるのも大事なことです。しゃべるのが遅れている子やラッパが吹けない子には,指しゃぶりをしなかったという子がけっこういます。
 

6)顔では?
Aいつもボーッと口を開けているのでよだれが多い子。
B逆に身体全体を固くして使っているので,顔も固く表情に乏しい子
 自閉症や自閉傾向のある子で表情がないのは親のスキンシップが足りないからだ,という話しがありますが実はそうではありません。やわらかい身体を使うのに精一杯で,とても表情が出るようなゆとりがないだけの話しです。身体が上手に使えるようになると笑顔も出てきます。
 
 身体をたくさん動かしてあそぶこと,いっぱい触ってあげることが大事です。
 これは偏食にもつながったりしているので,偏食のところも読んでください。
 

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