王晋と毛丹青
王晋を訪ねて

「実験・透明・金銭」
“騾馬を娶る”…
テキスト・石川郁

 中国を代表するパフォーマンスアーチストの王晋は今年36歳。92年に 5年間勤めていた大学(デザイン)教師を辞めて、フリーで実験的なアート活動 を始めたという変わり種だ。いつも沈着冷静でもの静か、黒いコートとベレーに身 を包み、一見ハードボイルドタッチだが、素顔はけっこう楽天的な、面倒見のいい兄貴肌の“好漢”である。

 中国のパフォーマンスは、しばしば地下活動の形で行われる。裸体表 現やメッセージ性を帯びるとおのずから“地下”に潜らざるを得ないわけだが、 一方にこうした<閉じられたパフォーマンス>を否定し、社会性を重視した<開かれたパフォーマンス>をめざすアーチストも登場し始めている。王晋はその代表的存在で、近年もっとも精力的に活動している一人だ。
王晋金属作品 「前向きに行こう」福岡銀行本店 1999年春頃、テーマは「実験・透明・金銭」
 彼の作品は主に、経済が人々にもたらす変化や影響をテーマにしている。代表作の一つである故宮の城壁レンガを使った米ドル紙幣インスタレーションや観客との物々交換。また、北九鉄道の線路を真っ赤に染めた<紅・北京−九竜作品>や、洪水に題材をとった<抗洪−紅旗渠>など、現実の社会環境に密着したパフォーマンスも多い。

 「貨幣や経済の持つ意味や社会的影響力にはとても関心がある。中国は今、市場経済への移行をはかっているけど、それに伴って起こるシステムパニックや価値観の混乱は僕の大きなテーマ」。

 96年には、中国ではまだ珍しい企業とのタイアップによる大衆参加の大型パフォーマンス<氷・96中原>で話題を呼んだ。3m、600 個の氷塊の中に隠された商品を、観衆が次々と叩き割って奪っていく。「この〃宝探し〃はある意味でとても中国的。芸術が経済活動を巻き込む形で社会問題を提起していく傾向は今後ますます増えていくだろう。アートはもっと社会の中に入っていかなきゃ。大衆との交流がなければ芸術とは言えないし意義がない。企業との協賛はまだ始まったばかりで難しいが、リーダーシップ的きっかけが果たせればいい。小賢しさでは大きな運命を変えることはできない」。  最近はドイツや東京・ワタリウム美術館での「現代中国芸術展覧」など、海外での活動も増えつつある。昨年はマルチスライドを用いた展覧会に参加して、新しいメディアにも挑戦した。理論肌で高踏的な姿勢を崩さない一方で、中国のアーチストには珍しく、コマーシャルな感覚と時流をキャッチするアンテナを備えている。軟化ビニール材料PVCで京劇の衣装を再現した作品は、最近の現代美術オークションでも高値がついた。中国の芸術界にも商業主義の波は容赦なく押し寄せ、多くのアーチストがその挑戦を受けている。王晋はそのプレッシャ−を相対化し、時にそれを逆手にとりながら飄飄と自分の表現を模索していく。こうした姿勢は彼一人に限らず、94年以降ある流れを形成しつつあるようだ。

(『留学生新聞』98.2.15号 掲載)
王晋image desinged by Joka

















< < B a c k







Copyright(C)