蓋さんは思わず笑みを浮かべながら…

演技派女優 蓋麗麗を訪ねて
ドラマ『大地の子』
 今回の私の北京帰郷の前に、蓋麗麗さんと会ったのは去年のこと、2001年の秋、場所は北京ではなく、神戸だった。そのとき彼女は日中関係史学会のフォーラムに出席するため来日していた。彼女はNHKテレビドラマ『大地の子』のなかで、主人公・陸一心の恋人像をみごとに描き出し、美しく強靭であると同時に優しさに満ちたその人間像は広く好評を得ていた。神戸での最後の日、大丸百貨店の資生堂のカウンターで化粧品を買うという彼女に付き添った。一人の店員さんが試しに彼女のメイクをしてくれた。最初は気づかなかったようだが、しばらくして店員は私にそっと、ひょっとして『大地の子』のあの美貌の恋人役の人ではないかと尋ねた。

  私が小声でそうだと答えると、彼女は慌てて別の店員を呼び、興奮ぎみに一緒に記念撮影をしてくれと頼んだ。テレビドラマの放映から何年も経っているのに彼女を覚えている日本の視聴者がいたことは、蓋麗麗さんをたいへん喜ばせ、いまだに印象深いようだ。そのせいか、今回彼女と北京で再会し、彼女の故郷青島のこと、その後上海へダンスの勉強に出てきたこと、そして女優になり北京に住むようになったこと等について話をしたが、それらの話題の中でも日本のことが度々不意に出てくるのだった。

 「日本は私の身体においては具象的に表現され、もとからどんな抽象的な内容もないのです。日本は私の芝居の中のひとつの日常の風景であり、私が今生活している北京と同じなのです。たとえば、私たちが湖のこちら側から見ている四合院、あの風景のなかの、一家団欒、または四世同堂、それは人々の日常であって、中国の政治情勢がどれだけ大きく変化しても、みんなの生活様式は変わらないでしょう。それは生活の土台の部分であって、ただ目を向けなかったり、見過ごしてしまいがちなだけ。そういえば北京には多くの四合院が残っていて、新しく補修されたところも沢山あるのよ。それを<造旧如旧>だという人もいるけど、私は昔を懐かしむのは一時の感情ではなく、そういう生活様式がすでに伝統になっているからだと思います」

 「あなたの演技生活のなかで、大都市、とくに北京はあなたにとって大きな影響をもっていますか」

蓋さんと毛丹青、北京後海の小船にて

  彼女の自宅で、私は彼女にそう問い返した。蓋麗麗さんの現在の女優としての活動は、基本的に北京で決められ、撮影の時には彼女は各地に飛ぶからだ。ときには国内に、ときには海外に。実際に、今回彼女に会った翌日にも、新作の撮影のために大連に飛ぶということだった。

 「北京の影響はもちろん大きいわよ、毎回台本を受け取ると、たいていは北京で読むんです。なぜかしら、この街は心を落ち着かせてくれる空気をもっていると言っていたけど、少なくとも私にとっては自分の役柄をつかむことができるのは、北京で脚本を読んできたことと関係あるかもしれないわね。<大地の子>の脚本を読んだのも北京でした」  帰り際、蓋麗麗は彼女の家の玄関で突然私に尋ねた。

 「日本に行って脚本を読んだら、どんな感じかしら」

 「日本はあなたにとって具象的だと言ったじゃないですか。きっと北京で読む感じとあまり大きな違いはないんじゃないでしょうか」

 私がそう答えると、あなたの言うとおりね」

 彼女はそう言って楽しそうに笑った。




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