張藝謀さん

巨匠チャン・イーモウ映画監督を訪ねて
『苦難こそ芸術か』
今の人は映画館にも行かず、どんな映画も見ないのです。カネがないわけではなく、麻雀や旅行、グルメに使うお金はあるのです。それも映画館、劇場、ステージとは比べものにならないほど。

人類にはある共通の癖があります。とりわけ災難が過ぎ去ったばかりのときに、人々は深く考えることをしたがる、例えば文革でも、日本の戦後でも、欧米の場合でも、あらゆる苦難や戦争が終わってしばらくが芸術の質が高まる時期かもしれません。

ひとり一人が関心を寄せ、そのなかから何かを理解したいと思う。今は平和な時代になり、日本映画もダメ、素晴らしい監督をたくさん出した日本映画でもダメになっていると思います。平和な時代、衣食は足り、ほとんどの時間を消費に使い、気楽さを求め、ほかの事はしたがらない。まじめな芸術は観る者がなく、あとは本しか残っていない。しかし私はこの時代に文学者であることは幸運だと思います。

映画のジャンルでいえば私がいま作っているのは娯楽映画、アクション映画ですが、まじめな文学の読者が減っているのは残念なことです。とはいえ、いいところもありますよ。誰も読む人がいなければ、自由に小説が書けますから。

莫言自宅にて、2002年旧正月

しかし、わたしはいまだに作家にはなれません。一番難しいのは、目の前に一枚の白紙を広げ、ペンをとり、最近ならパソコンを立ち上げるでしょうが、ゼロから始めるというのは私には到底できません。ですから私は作家に心底敬服します。どうやったら一枚の白紙からあれほど沢山のストーリーをすらすらと描き出せるのでしよう。普通の人にはできないことです。ですから作家にも、詩人にも敬服するのです。



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